全11部屋が設定されている「あけぼの」号のA寝台個室「シングルデラックス」。 1991年3月に登場したこの個室車は、基本的な室内構造を寝台特急「北陸」のそれに倣っています。 枕木方向にベッドが据え付けられ、室内には木製キャビネットに収まったビデオモニターと収納式の洗面台。 テーブルはビデオモニターの下から引き出すタイプのものですが、あまりに小さく“簡易物置き”程度のもの。 室内で書類やパソコンを広げるにはこのテーブルは使えず、あくまでもナイトテーブルとしての装備のよう。 洗面台は湯温の調節が可能で、つまみを回すことで自由に温水・冷水を切り替えることができます。 ビデオモニターでは映画プログラムの放映が行われており、基本的には2つのチャンネルが選べるようになっています。 また、室内BGM装置も組み込まれており、こちらもインストミュージックが2チャンネル用意されています。 ビデオ・BGMをはじめ、空調・照明などのスイッチは、全て窓下のコントロールパネルに集約されています。 ベッドに座った状態だと操作しにくい位置なのですが、ベッドで横になった時に操作するにはちょうど良い位置。 照明は天井灯、壁灯(読書灯)が光量を自由に絞ることができ、ベッド下部には床下灯も装備しています。 空調は季節に関係なく冷房・暖房を入れることができます。そのほか空気清浄機・換気扇も装備しています。 個室は、隣同士がコネクトドアで繋がっており、双方のコネクトドアのロックを解除すると繋ぎ部屋となります。 1番個室のみコネクトルームを持たず、「2番−3番」「4番−5番」・・・・・「10番−11番」の順で個室が繋がっています。 後述しますが、個室内にエキストラベッドを備えているので、最大「4人部屋」として利用することも可能。 仲の良い友達グループや家族旅行で、他の乗客に気兼ねなく一夜を過ごしたいという時には便利です。 そのほかの設備としては、洗面台の上にカガミ、洗面台の脇には靴磨きのブラシや靴べら。 「あけぼの」号には「シャワー室」がありませんが、A個室利用者には洗面アメニティキットが配られます。 コンセントは2つ口が用意されており、携帯電話やデジカメなどの充電にも利用できます。 個室ドアのロックは、以前はカードキー式でしたが、現在は暗証番号読み込みによる電磁ロックになっています。 |
「北陸」号のシングルデラックス同様に、ベッドは簡単な操作でソファーへと転換することができます。 ベッド下にはオットマン(足置き)も収納されていて、ソファーにもたれてくつろぐにも最高の個室です。 「あけぼの」号では下りは朝方、上りは夕刻に起きている時間が比較的長いので、このソファーモードは重宝します。 ベッド上部の壁側にはエキストラベッド(補助ベッド)が装備されています。 補助ベッドとはいえしっかりしたつくりで、決して寝心地に劣るものはありません。 エキストラベッドを展開させると、ちょうど「北斗星」の「ツインデラックス」のような感じになります。 上段ベッドに上がるためのハシゴは、洗面台脇のコネクトドアに備え付けられています。 ちなみに上段・下段ベッドとも仕切りのカーテンはなく、オープンな状態での展開となります。 (上段ベッドの壁側にも、簡易型ではありますがちゃんとコントロールパネルが装備されています) |
あけぼのの「ソロ」は、枕木方向ではなくレール方向にベッドを設置した構造となっています。 「北斗星」や「北陸」の「ソロ」とは明らかに造りが異なり、「カプセルホテル」のような雰囲気が強く感じられます。 (これと同様のスタイルの「ソロ」は、「なは」や「あかつき」・「サンライズ瀬戸・出雲」でも採用されています。) 2階個室と1階個室が完全に上下で重なり合う造り(完全な2層建て構造)になっているため、室内はやや狭め。 それぞれに長所と短所はあり、2階個室は天井が大きく湾曲するもののそこに窓があるので開放感があります。 ただ、個室に入るためには向かいの個室と共用の狭い階段を上がる必要があります。 一方の1階個室は、屈む姿勢ではありますが通路からスッと個室へと入れる反面、室内は出っ張りが大きく圧迫感が強いです。 この出っ張りは上部の2階個室の階段で、寝ていても起きていてもこの出っ張りが視線に入って、気になります。 2階個室では階段部分でかろうじて立ちあがる事はできますが、1階個室では立ちあがって着替えなどができません。 室内設備は折り畳みテーブル、カガミ、ゴミ箱にハンガー。コンセントはないので、電子機器の利用・充電はできません。 室内BGMは2つのチャンネル用意されており、コントロールパネルでチャンネルとボリューム操作ができます。 ドアのロックは「シングルデラックス」同様に暗証番号打ち込みによる電磁ロックが採用されています。 個室番号の奇数は「1階個室」、偶数番号は「2階個室」。 1・2・5・6・9・10・13・14・17・18・21・22・25・26の個室は、羽越線内では鳥海山側、 3・4・7・8・11・12・15・16・19・20・23・24・27・28の個室は、羽越線内では日本海側となります。 |
前述の「シングルデラックス」1両と「ソロ」2両のほかは、昔ながらの開放型B寝台車が編成の中心となっています。 ベッドモケットはグレーブルーの、クールで落ち着いた雰囲気。カーテンの柄は、号車によって色合いが異なります。 個室車両、そして後述の「ゴロンとシート」が連結されているため、価格に見合ったバリューさが希薄なB寝台ですが、 特に秋田エリアではあけぼのが利用できる格安の東京往復切符が好評なのと、個室の狭さと複雑なドアロックを嫌う 年配客が複数人数でグループ乗車することもあって、「あけぼの」のB寝台は利用者が多いようです。 4号車にオハネフ24が連結されることがあり、その際は車端部の15番寝台が2人区画となります。 (オハネ24の時は15番と16番が組みとなる通常タイプの4人ボックス寝台となります。) |
寝台料金不要・指定席特急券と乗車券だけで乗車できる格安サービスがこの「ゴロンとシート」。 「シート」といっても「あかつき」号のレガートシートのように座席が設置されているわけではなく、 B寝台から毛布やマクラ、シーツいったリネン類を一切省略して、寝台をそのまま開放したスタイルになっています。 (ハンガーやスリッパ、浴衣といった付帯装備品もセットされていません。) ただ、寝台がそのまま開放されているということは「横になって寝て移動できる」というわけで、 座席車で座った姿勢で一晩明かすよりかは、はるかにラクに、そして熟睡を得られるはずです。 各寝台を仕切るカーテンはそのままなので、一人旅でも寝顔を向かいの寝台の人に見られることもありません。 1号車は「レディース・ゴロンとシート」で、1両丸まるが完全なる女性専用車両。 洗面台やトイレも男子禁制となっていますので、女性の一人旅には心強い味方となることでしょう。 東北地方から東京へ、また首都圏からみちのくへ気軽に格安で移動できる手段としてかなり認知されていて、 繁忙期はもちろん、閑散期でも週末には満席に近いことも珍しくありません。 |
洗面台はどの車両も、温水温度調節ができるものにリニューアルされています。 仕様は2タイプで、センサー式による自動給水のものと、コックをひねって給水する手動式のものがあります。 またB寝台車のサニタリスペースには昔ながらの冷水サーバー機が設置されていて、全てが元気に稼動中です。 トイレはA寝台個室車と一部のB寝台車が洋式に改造されています。 見た目にややゴツいのは、ウォシュレットではなく便座シートの自動交換装置が装備されているためです。 B個室「ソロ」車と、大部分のB寝台車は和式トイレですが、ほとんどがFRP製のものに改造されています。 |
B寝台車でオハネ24形式の車両は、デッキ寄りに「更衣室」が設置されています。 室内には靴を脱いで上がれる踏み台と、小さなテーブルとカガミが設置されています。ドアはもちろんロック可能。 開放型B寝台の乗客でも、乗車時にはラフな格好、一晩過ごして下車時にはスーツ姿に着替えるなんてことも。 A個室車とB個室車のデッキ寄りには荷物収納スペースがあります。 特に「ソロ」の場合は室内にスーツケースなどは持ち込めないので、大きな荷物はここに置くことになります。 ただ、出入り台に近いことと、個室内にいては全く目が届かない場所であることから盗難の不安は拭えません。 編成内に「オハネフ」車が組み込まれるときは、貫通路でトレインマークを間近に見ることができます。 |