沖縄がアメリカの支配下にあった頃、返還の願いをこめて命名された「なは」。 沖縄に最も近いターミナル駅「西鹿児島」へと走り続けましたが、九州新幹線の開業で「熊本」止まりに。 「那覇」からちょっと遠くなってしまった「なは」ですが、多彩な客室設備はそのまま。 2005年10月からは長崎特急「あかつき」との併結運転となり、座席車「レガートシート」が消滅。 そして、併結運転となってからわずか3年後。 栄華を誇った関西ブルトレの生き残りであった「あかつき」と「なは」は、2008年3月のダイヤ改正で2列車同時に廃止。 京都・大阪を基点に九州へと走るブルートレインは長い歴史にピリオドを打ち、全廃となりました。 |
1991年に登場した「なは」専用の2人用B個室「デュエット」。 当時のJR九州ではブルートレインの利用活性化に向けた車両改造が盛んで、この車両もその1つ。 個室数は11部屋で、奇数番号が1階個室、偶数番号が2階個室になっています。 個室構造は、博多特急「あさかぜ」以来おなじみとなった「千鳥配置」構造。 ベッドの大きさは、縦1,925mm×横幅700mmで、寝台列車におけるいわば「レギュラーサイズ」 2階個室の階段部分では完全に立ち上がることができるので、着替えなどをするのにはラクです。 個室内の設備は1階・2階とも同等。 室内灯は「天井灯」「読書灯」のほか、足元壁側にデルタ形状を作っているバーが間接照明になっていて、 気分に応じて明るさの調節ができるようになっています。 テーブル側壁面のコントロールパネルではこれら室内照明のほか、エアコンの調節やアラーム・換気扇のオンオフ、 さらにトイレの使用状況が分かるランプなども搭載。ただ、登場当時にはあった、ミュージックパネルは撤去されてしまいました。 ちなみに、室内をグルッと囲んでいる木枠にはめられたオビ状のものはカガミ。 |
一人旅の強い味方、B個室「ソロ」。「なは」号に連結されているのはレール方向にベッドがセットされた、室数の多いタイプ。 各個室は上下2段に設定されたユニット構造で、全28室。偶数番号が2階個室で、奇数個室が1階個室になっています。 室内はほぼ一面がベッドスプレッドで覆われていて、寝て移動することに特化した個室構造。 このため、ベッドサイズが縦1,925mm×横幅1,000mmと、ベッド幅が破格の広さになっているのが特徴的です。 このタイプの「ソロ」に共通していえるのですが、1階個室よりも2階個室のほうが開放感があります。 2階個室の天井に向かって大きく湾曲する壁と窓には好みが分かれるところでしょうが、 1階個室は2階個室からの張り出しなどもあって、極端に室内が狭く感じられます。 通路から2階個室への階段は、隣り合う2室で共有するタイプ。 曲線でデザインしたステップと壁面に飾られた絵画が、リーズナブルな個室にはもったいないほどの優雅さを醸し出しています。 |
室内の枕元壁面にはコントロールパネル類が集約されて設置されています。 パネル内には電源用のコンセントが1つ用意されています。 おそらくは髭剃りシェーバー用の電源だと思うのですが、位置的にちょっと使いにくいです。 MacintoshのノートPCやボックスタイプのデジカメ充電器・携帯電話充電コードなど、特殊なカタチのプラグだと、 コンセントのまわりにある換気扇スイッチや室内灯スイッチに干渉されてしまって、プラグが完全に差し込めません。 この「ソロ」でPCやデジカメ・携帯電話の充電をする予定の方は、短くてもいいので延長コードをご用意されたほうがいいかも。 室内照明は、天井の蛍光灯(室内灯)のほかに枕元の読書灯と靴脱ぎのステップにある足元灯があります。 室内灯と読書灯はそれぞれ独立してオンオフが可能ですが、足元灯はスイッチがなく、消すことはできません。 |
乗車した日は、4両のB寝台車で3タイプの寝台モケットが見られるという、バリエーションの多さにビックリ。 「タイプ1」は、木目調のパネルで寝台内の雰囲気がガラッと変わったタイプ。 モケットには787系「つばめ」を連想させるシックなベージュのボチボチモケットが使われています。 床面はリノリウムのまんまですが、これも787系「つばめ」をイメージしたボチボチのテキスタイルになっています。 ここで紹介する3タイプのうちで、もっとも好感の持てるイメージチェンジです。 「タイプ2」は、アズキ色のモケットに張り替えられたタイプ。 あんまりカラーポリシーが感じられない、やっつけ仕事一直線なイメージ。おそらく初期のリニューアルかと思われます。 床面はカーペット敷きになっていますが、このカーペットの色が暗いので、車内全体がくすんで見えます・・残念! 「タイプ3」は、もはや「ブルトレでこれはどうなのよ?!」と誰しもが思う、883系「ソニック」タイプ。 没落激しいブルトレを「明るく見せよう!」と、“ワンダーランドエクスプレス・テイスト”を持ち込んだのかもしれませんが・・ 車内のあまりの閑散ぶりに、ド派手なモケットだけがギンギラギン。別の意味で「ワンダーランド」になってしまいました。 |
この車両が誕生した頃、関西−九州は夜行高速バスが大流行の時代でした。 リーズナブルでそこそこ速い夜行バスを尻目に、ジリ貧状態に陥るJRブルートレイン。 そこでJR西日本とJR九州がタッグを組んで生み出したのが、この「レガートシート」車。 夜行バスをそっくりそのままブルトレに持ち込んだ、世にも不思議な「3列独立・超リクライニング」の普通車。 JR西日本は「あかつき」に、JR九州は「なは」にこの車両を投入して、特急料金だけで利用できる、破格のサービスを開始したのでした。 「寝て移動」が前提の座席なので、リクライニング量は60度。 とてつもなく奥底まで倒れる感じがしますが、実際に「寝る」体勢になってみると・・・あと10度ほど倒れてくれたらウレシイ。 足元にはレッグレストがあり、3段階でのストッパー機能付き。登場当初はオーディオパネルを装備していましたが、今は全席撤去済み。 アームレスト内側に見える黒いパネル上のものが、オーディオパネルを撤去した跡です。 読書灯はヘッドレスト部分に埋め込まれていて、使いたい時に引き出すようになっています。 スイッチはアームレストの内側にあり、手元でスイッチのオンオフが可能。 左右2本で貫通している通路ですが、ちゃんと「メイン通路」が設定されています。 この車両を通り抜ける時は「メイン」のほうを使いましょう。ちなみに「メイン通路」の幅は520mm、もう片方の通路幅は450mm。 |
レガートシート車の車端部(デュエット車側)には、ロビーコーナーが設けられています。 貴重なフリースペースで、スツールとカウンターがあり、ちょっとした「バー」のような雰囲気。 登場初期は無料で使えるティーサーバーが完備されていましたが、現在は飲料自販機が設置されています。 |
各寝台車両のサニタリーコーナーはリニューアル工事の手が入っていますが、佇まいは旧態依然といったところ。 いまや絶滅寸前の「冷水器」もほとんどの洗面台に設置されていて、元気に稼動中です。 レガートシート車は、洗面台・トイレともになぜかピンク系のカラーリングでリニューアルされています。 デッキは、こちらも国鉄時代からの寒々とした雰囲気が漂っています。 「オハネフ」車が貫通路側に連結されているところでは、貫通扉の「なは」のヘッドマークが間近に見られます。 |