JR東日本 14系 寝台特急「北陸」

 

昭和50年3月。
国鉄〜JRの歴史の中でまさに“最後”ともいえる、多くのブルートレインを輩出したダイヤ改正が行われました。
この時に誕生したのが寝台特急「安芸」「紀伊」「いなば」「北星」、そして「北陸」。

そして時は流れ、ブルトレの衰退に歯止めが利かない時代になり、時を同じくして生まれた4列車は全滅。
伝統の東海道ブルトレもあっさりと切り捨てられる時代に「北陸」は生き残りました。
全8両中、半分の4両に1人用個室車を繋げた編成で深夜を疾走する姿は、まさに「ビジネス型夜行列車の雄」。

東京地区・北陸地区ともに「北陸」号のB寝台個室を使える格安切符を設定していることから、
直前では個室寝台券が“プラチナチケット”並に取りにくい、人気のブルートレインです。

その乗車率の高さから、少なくとも北陸新幹線の開業までは安泰と思われていましたが、
2010年3月のダイヤ改正を持っての廃止が決定となりました。






A寝台1人用個室 シングルDX
A寝台1人用個室 シングルDX
















「北陸」号の3号車に連結される個室車は1人用A寝台個室「シングルデラックス」。全11室の設定です。
JR化2年目の1988年、まだJR各社が前途洋々の未来へ走り出した頃に登場したこの個室車。
JR東日本ではこの1年前に寝台特急「北斗星」をデビューさせているだけあって、個室内は豪華でキッチリした作り。

ベッドの幅は80cmで「ロイヤル」と同じサイズ。収納式の洗面台、AVモニターによる映画放映と室内BGMサービスを完備。
この個室レイアウトは、のちにJR西日本の「あさかぜ」号「あかつき」号の「シングルDX」へと発展していきます。
テーブルはAVモニタの下から引き出すのですが、大きく広がるテーブルではないので使い勝手は良くありません。
ビジネス利用が多い列車なので、「パソコンを持ち込んで車内で一仕事」なんて利用者も少なくないとは思いますが、
このテーブルではパソコンどころか書類をちょっと置くだけでも無理があります。
ちなみに、コンセントは洗面台の上部(カガミの脇)に、なんと2つ口も用意されています。JR東日本さん、太っ腹!
ほかには、洗面台の脇にスーツのホコリ落しと靴磨き用のブラシと靴べらが装備されています。

この個室の大きな特徴は、ベッドがソファーに早変わりする“変身機能”を備えているという点。
通常「上野」「金沢」発車時点では寝台状態でベッドメイクがなされていますが、
ベッドを壁側へと持ち上げるだけで簡単にソファーになります。
ただ、せっかくの機能ですが「北陸」号は下り上りとも深夜発早朝着の運転なので、
ソファー状態にして室内でのんびり寛ぐほど、時間のゆとりがないのがちょっと残念です。

ドアのロックはカードキー式。「北斗星」同様に持ち帰ることが出来るので、乗車のよい記念になります。
また、この「シングルデラックス」利用者には、歯ブラシやシェーバーなんかがてんこ盛りのアメニティセットがもらえます。
隣の2号車にはシャワー室がありますが、「北陸」のシングルデラックスではシャワーカードの無料配布はありません。
A寝台利用者も車掌さんから購入となります。

個室のベッド(ソファー)は上り向きの部屋と下り向きの2タイプがあり、長岡での方向転換でさらに向きが変わります。
個室番号が奇数の部屋は、下り列車の上野→長岡で正向き・長岡→金沢で逆向き。(上り列車はこの逆)。
個室番号が偶数の部屋は、下り列車の上野→長岡で逆向き・長岡→金沢で正向き。(上り列車はこの逆)







B寝台1人用個室 ソロ
B寝台1人用個室 ソロ










「北陸」号の「ソロ」は、この個室車の前年に登場した「北斗星5・6号」用の「ソロ」がベースとなっています。
上段個室は室内に階段を抱え込まない、上段2室で階段を共有するタイプ。
そのため、室数設定は多めですが室内空間は若干狭めに感じられます。

ベッド幅はスタンダードな70cm。室内BGMシステムを装備し、冷暖房も好みに応じて個別操作が可能。
3つの室内照明も個々にON/OFFが可能で、狭いながらもプライベート空間としては充分。
室内のテーブルは簡単な折りたたみ式ですが、シングルデラックスのテーブルに比べれば使い勝手は良いです。
壁の抜き取り部分には荷物を置く事が出来ますが、大きなキャリーバッグなどの持ち込みは無理があります。
なお、室内にはコンセントがないので携帯電話やパソコンなどの充電はできません。

「北陸」号では、この個室車が投入された1988年3月から前代未聞のサービスが行われていました。
それが「ステイオーバー・チェックアウトサービス」と呼ばれる画期的なサービス。
下り列車の「金沢」着後のみに行われていたもので、「金沢」着が早朝であることから、ビジネスが動き出す時間まで、
基地のある「東金沢」駅へ回送される列車内にそのままステイして寝ていることができるというもの。
車内では車掌さんがモーニングコールをしてくれたり、軽食の販売が行われたりと、まさに「ホテル」感覚。
午前9時まで滞在が可能で、東金沢から金沢までは普通電車に乗って戻ることができたそうです。
残念ながら、思ったほど利用者は定着しなかったようで、1991年6月で取りやめになってしまいました。








B寝台
開放型B寝台






8両編成中、4両が前述の「シングルデラックス」「ソロ」の個室車ですが、残りの4両は昔ながらの開放型B寝台。
寝台はブラウン系のモケットに張り替えられていて、リファインの手が入っていますが・・・
やはり個室車に比べると古めかしさが漂い、「ソロ」と同料金という点でバリューさが皆無に等しいのが実感です。
室内が狭い「ソロ」に比べるとプライバシー感はないものの、空間の広さからくる開放感ではこちらのほうが上。
また、ベッドが向かい合いになっているので、グループ利用ならこの開放型B寝台のほうが利点がありそうです。

デッキ寄りの壁と向き合いになった「2人用区画」は、1・5・8号車の15番上下寝台に設定されています。
(検査などによる車両の入替があった場合はこの限りではありません。あしからず)







ロビー シャワールーム
ロビーコーナー&シャワースペース




     






2号車にはシャワーコーナーがありますが、そのシャワーコーナーと個室の間にささやかなサロンコーナーがあります。
3〜4人掛けの長ソファーが隙間を埋めるようにドン!と置かれているだけで、
「サロン」や「ロビー」というより、シャワーの順番待ちのためのスペースといった風情です。

2号車のシャワーコーナーには、全乗客が使える「パブリックシャワーブース」が2部屋あります。
車掌さんから1枚310円でシャワーカードを購入すると、1回で6分の給湯時間でシャワーを浴びることができます。
脱衣室にはドライヤー・カガミ・脱衣カゴがあります。ドライヤーは無料ですが、あまり風量が強くありません。

シャワーカードは枚数限定なので、シャワーを使いたい時は早めに車掌さんから購入しておきましょう。
また、タオルやシャンプーなどがセットになったシャワーセットも個数限定で車掌さんから購入できます。







洗面台/トイレ デッキ










     





サニタリースペースは、洗面台・トイレ個室ともに改造の手が入ってリファインされたスタイルがほとんどですが、
まだ旧式の古めかしいスタイルを残している車両もあり、編成内で新旧トリドリの“品揃え”となっています。

3号車A寝台個室車のデッキにはドリンクの自販機があります。7号車のデッキには更衣室が1室設置されています。








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