JR東日本 E351系 スーパーあずさ

  

カーブの多い中央線でのスピードアップを目的に生まれた、JR東日本初の新型振り子特急。
JR東日本ではこの車輌から、車輌形式には頭文字に「E」が付与される新しい形式表記を始めました。

1993年12月、当時の183系「あずさ」で運転されていた列車へ振り子機能を固定して代替投入。
それに並行して振り子試験走行を繰り返しながら地上設備の改良が進められました。
そして1994年12月、振り子機能を活かした速達列車「スーパーあずさ」の営業運転がいよいよスタート。


1995年には2次車が増備されましたが、到達時間のさらなる短縮と高速運転の区間延長を図るには
山岳地帯の急カーブ・急勾配と狭いトンネルが連続する難所の路盤・設備の全面改修に莫大なコスト増が予想され、
また振り子車輌にしたことで車内の居住性と乗り心地が犠牲になっていたこともあって、
その後の中央線特急は、居住性の向上に重点を置いた非振り子のE257系の登場と増備へと取って代わられました。
最終的にE351系は全5編成60両の少数派で増備を終えています。


E257系が登場後も、E351系は振り子による高速運転に重点を置いた最速達タイプの「スーパーあずさ」専属編成として活躍を続けました。
しかし、2017年12月に新型車両「E353系」が登場。
E351系とは機構が異なる車体傾斜機能を持つE353系は、実質的にE351系の後継となる存在で、登場と同時に一部の「スーパーあずさ」へ先行投入。
この時点でE351系に初めて運用離脱〜廃車となる編成が出始めました。

そして、2018年3月に「スーパーあずさ」はE353系に統一化が図られ、E351系は他列車への転用・転属されることなく全車が引退することとなりました。




−E351系 Super Azusa エクステリアカラーテーマ−
   
ベースカラー:アースベージュ「自然・地球」
上部ライン:グレースパープル「気品・優雅」
下部ライン:フューチャーバイオレット「未来・新鮮」





グリーン車






中央線特急「あずさ」のグリーン車といえば、当時は「グレードアップ183系あずさ」編成の横3列大型ハイバックシートのグリーン車が人気でしたが、
E351系では前作の255系「房総ビューエクスプレス」を引き継いで横4列配置のグリーン席となりました。

シートピッチは、グリーン席標準の1,160mm。
量産先行編成のグリーン席はリクライニング角度が浅めでしたが、量産編成ではリクライニングがかなり深くまで倒れるように設計変更されています。
テーブルは、量産先行車ではインアーム収納テーブルだったものが、量産車ではインアームテーブルに加えて背面収納テーブルも設置されました。

このほかにも量産先行車と量産車では細かな違いが多々あり、例えば量産先行車では天井がスリット入りなのに対し、量産車ではフラットなスリット無しのデザインになっています。
また、量産先行車では荷物棚下の読書灯に沿って補助照明が設置されていますが、量産車ではこれが省略されています。


客室中ほどに残るパーテーション跡は、登場当時の分煙パーテーションの名残です。
客室の全面禁煙化に伴い、透明アクリル板は撤去されましたが、台座だけは残されたままになっていました。
パーテーションのあった部分には側面に窓ガラスがないので、台座だけ残さざるを得なかった模様。
ですので、同様に全面禁煙化に伴いパーテーション撤去が行われた651系「スーパーひたち」のように、パーテーションのあった部分へ座席を詰める工事は行われませんでした。

座席内側には2つのスイッチがあり、1つはリクライニング。もう1つは「シートヒーター」のスイッチで、バックレストが暖かくなるという摩訶不思議なサービス。
このE351系「スーパーあずさ」のみに装備された機能で、この後に登場する新型車両には設置されることはありませんでした。


あまり知られていないのが「カップホルダー」の存在。
センターアームレストの下部に白い取っ手があり、これを引き出すと2つ分のカップホルダーが現れます。
飲み物の液ダレではなくホコリで汚れているあたり、このホルダーの日陰っぷりが分かるようです。






普通車







普通車は、指定席・自由席とも同じ座席が設置されています。
座席自体は「表皮一体成形」なる工法を初採用。
滑らかな曲線を描く形状と、淡いパープルとグリーン組み合わせが、客室全体に爽やかで軽快な印象を与えています。


シートピッチは、当時としては普通車標準ピッチの970mm。
振り子車両特有の低重心な車体の作りは客室環境にも大きく影響しており、特に窓側席に着席する際は荷物棚を「潜って入る」という感覚。
着座位置もかなり低く感じられ、駅停車中のホームの高さからすると、自分がかなり沈み込んだ位置に座っている感覚になります。


普通車でも量産先行車と量産車ではこまかな違いがあり、グリーン車同様に荷物棚下部の補助照明の有無や、天井の形状デザインが異なっています。
座席周りで大きく違いを感じるのが、量産先行車では座席下が塞がれて蹴り込みが付けられているのに対し、量産車は座席下が空洞で足先を伸ばすことができます。
また、リクライニング角度も先行量産車に比べると量産車ではやや浅めに設計変更されています。


テーブルはインアーム式のみ。背面テーブルがないのは、やはり振り子運転の「揺れ」「振られ」を想定してでしょうか。
量産車では、グリーン席に背面収納テーブルが装備されましたが、普通車では装備が見送られています。
細めの窓キセには三日月型の小型テーブルもあります。ここにもしっかりドリンクをホールドする窪みが。
座席背面のマガジンラックは当初ゴムバンド式でしたが、その後網ポケットタイプに交換されています。
そして観光バスっぽいユーティリティのカップホルダー。


座席は新工法の結果なのか、けっこうホールド感に優れています。
私個人の感想としては、E257系よりも揺れが大きいはずなのに、E257系の座席よりも乗り心地が良いように感じました。
ランバー部分の張り出しからヘッド部分へのバランスが大変よくできています。
しかし、卵形の上すぼまりの車体断面形状は、特に窓側だと壁面が自分に向かって沿ってくるような圧迫感が非常に強いです。

ちょっと厳しいのが「アームレスト」で、よく見るとすぐ分かるのですが、なんとアームレストが真っ平ら。(しかも細い)
リクライニングした体勢だと、人間は自然と肘の部分が奥へと下がるのですが、この真ッ平らさでは肩が下がりません。

振り子車輌には付き物のグリップは、飾り気の無い実用品位のものが全席に付いています。
(実際に移動中に使ってみると、握りやすくてとても使いやすいです。)







マルチスペース ラゲージスペース サニタリーコーナー デッキ設備 運転台










デッキは無機質であまり飾り気の無い雰囲気。寒冷地対策でデッキには薄型のヒーターが乗降ドア付近に設置されていました。
量産車からは、乗降ドア付近に大型のバゲージスペースが設置されました。
これは冬季のスキー板やスノーボードの収納を目的としたもので、可動式のパイプで転倒を防ぐ作りとなっています。


デビュー当時からしばらくは、編成内に車内公衆電話や飲料の自動販売機が設置されていましたが、のちにこれらは全て撤去されています。
(電話コーナーは3・7号車に、自動販売機は3・7・11号車に設置されていました)
電話コーナーは、量産先行車では壁で仕切っただけの「電話ブース」という感じのものでしたが、量産車ではドアが付いた完全な「電話室」になりました。


トイレは、車体断面が卵形で上すぼまり形状のため、壁面が内側に迫っていてかなり圧迫感があります。
洗面台も他の新型車輌に比べて、かなりコンパクトなつくりになっています。
10号車のサニタリは車椅子対応個室。ドアは2枚スライド式になっていて、ワイドに広がるようになっています。
2・6号車の洋式サニタリには、個室内にベビーベッドが設置されています。
量産先行車と量産車では、洗面台まわりのデザインが変更されていて、特にシンクは全く違うデザインのものに変更されています。


編成は1〜4号車の付属編成と5〜12号車の基本編成で組成されていて、晩年は12両編成固定で基本・付属編成をバラした運用はされていませんでした。
(登場当時は1〜8号車が基本編成で9〜12号車が付属編成で組成。1994年頃に上記のように編成の組成変更が行われています)
基本編成と付属編成を繋ぐ4号車と5号車は運転台が設置された先頭車両ですが、貫通路があって行き来ができるようになっています。









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