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1950年から続いてきた、小田急の新宿駅から国鉄御殿場線の御殿場駅への直通運転。 |
JR東海と小田急は、沼津や西伊豆へ新たな観光客の呼び込みと富士裾野エリアのゴルフ場利用客の獲得に向けて、 それまでの小田急車両のみの乗り入れから、双方が新型車両を製造しての相互乗り入れの協議を開始。 そして、1991年3月。 JR東海は371系を、小田急は20000形「RSE」を登場させ、小田急新宿−JR沼津の相互直通運転が始まりました。 1989年に登場させたキハ85系「ワイドビュー」車両で取り入れた、巨大な側窓と展望座席を371系でも採用し、 JR東海では初めてとなる在来線車両の2階建て車も組み込んで、リゾート向け車両を演出しました。 時代は流れ、相互直通運転の開始から約20年。 2012年3月に小田急20000形が引退するのに合わせて、371系も同時に「あさぎり」から撤退。 しかし、371系は「あさぎり」運用の終了後もJR東海エリア内で営業運転が続けられ、休祝日に臨時快速などで活躍。 「あさぎり」時代には走ることがなかった中央西線でも営業運転が行われました。 最後は2014年に、走り慣れた御殿場線の80周年記念列車で引退の花道を飾り、全ての営業運転を終了しました。 その後、7両中の3両が富士急行に譲渡され「富士山ビュー特急」として生まれ変わっています。 1991年 グッドデザイン賞受賞 (撮影時期:2002年〜2005年・2007年・2010年・2012年) |
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グリーン車は3号車と4号車の2階建て車輌の2階部分に設定されています。 この2階建て車両のエクステリアデザインが非常に大胆で、2階の窓と1階の窓を縦に繋げたような意匠は、いつも沿線の注目の的でした。 グリーン車のインテリアは、座席や車内の空間全てが、全体的に100系新幹線の2階建てグリーン車を意識したようなものになっています。 まさに在来線版100系新幹線といった感じで、座席はどっしりとしていて、体全体を余裕で受け止めてくれる安定感があります。 座面はかなり柔らかめで、フカフカ。 固めの座席仕上げが多い現在の車輌に乗り慣れていると、実際に座った際にとても驚きます。 座り心地に関しては、圧倒的に体の大きくて体格のいい人向けという感じ。 普通体型で標準的な体重の人が座ると、フカフカすぎる座面がかなり沈み込み、臀部が異様に低い重心に持って行かれてしまう体勢になります。 この姿勢になると、背ずりは最大まで倒さないと体全体のバランスが取り難く、倒す角度が浅いと逆に臀部が低すぎて立ち上がりにくくなります。 テーブルは背面収納と、外側のアームレスト内に収納式の2タイプを装備。 フットレストは2面展開で、折り畳み時が土足で直接載せるカーペット生地、展開時が靴を脱いで載せるモケット生地。 シートピッチは、1,100mm。グリーン車標準の1,160mmよりやや狭いのですが、座った際に狭さは全く感じません。 登場当時はグリーン車でオーディオサービスと液晶テレビでBS放送の放映が流行していた時期で、「あさぎり」でもこのサービスが行われていました。 その名残で、センターアームレストの内側には、オーディオサービスのコントロールパネルが備えられています。 センターアームレスト内には6インチの液晶テレビが折り畳み内蔵式で装備されていましたが、こちらは撤去の上、アームレストカバー内が鉄板で封印されています。 車内の中ほどには一人掛け席の並びにマガジンボックスが設置されています。 登場当初はここに花が飾られていましたが、早々に花の装飾サービスは止め、沼津や西伊豆の観光パンフレットが置かれるパンフレットラックになりました。 その後、西伊豆リゾートブームも去ると、ゴルフ雑誌やビジネス雑誌が置かれるマガジンラックに役割を変えています。 この不自然なボックスの正体は、1階席にある非常用出口。 この非常口部分の天井高さが2階部分の床面に突き出して干渉するため、このボックスを設置して2階客室に違和感のないように仕上げています。 特急「あさぎり」では、グリーン車で軽食のデリバリーサービスが比較的後年まで続けられていて、小田急・JR東海ともに両社の車内販売子会社が担当していました。 座席ポケットにはメニュー表が用意されていて、頭上のコールボタンで車内販売アテンダントを呼ぶと、オーダーを取りに来ます。 オーダーした商品は車端部のサービスコーナーで用意され、アテンダントが座席まで運んでくれるという流れでした。 ちなみに、グリーン車のフリードリンクサービスはなく、使い捨ておしぼりのみがが提供されていました。 3号車と4号車は、2階フロアレベルで貫通幌が通されていて、階段の昇降なしに車両間の移動が可能となっています。 エントランスから2階に上がって客室に入ると両脇に、縦長のバゲージ収納スペースがあり、ゴルフバッグなどの収納が可能。 グリーン車/普通車とも、座席の回転をさせて向きを変えようとすると回転の動きが重く、手動で向きを変えるのにかなりの力を要します。。 これは、駅でのの折り返し時の作業負担軽減のための「全自動座席回転機構」を装備しており、油圧の関係で座席回転が重くなっています。 |
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普通車の座席はブラックとグレーを基調としていて、明るい雰囲気のグリーン車とはかなり趣きが異なります。 エッジの際立つなかにも不思議な柔らかさを放つこの座席は小糸工業製。キハ85系「ワイドビューひだ」以来、JR東海の新型特急ではおなじみの座席です。 シートインプレッションはキハ85系「ワイドビューひだ」同様になかなかの掛け心地。普通車クラスの座席では、個人的にトップクラスの出来栄えではないかと思います。 バックレストに入った切り込みラインが、ほどよく体をホールドしてくれます。 座面も柔らかめですが、グリーン席のそれがズルズルと沈み込むのに対して、普通車はそのようなことはありません。 アームレストのレザー部分もギリギリまで貼られていて、全体的に丁寧に開発・設計されたことがうかがえます。 テーブルは背面収納が基本ですが、向かい合わせにした時のために、窓框部に物が置けるよう幅広になっていて、ペットボトル飲料なら余裕で置くことができます。 シートピッチは1,000mmと広々。窓には横引式のプリーツカーテンを装備。 JR東海では愛称を「(ワイドビュー)あさぎり」としていますが、平屋建ての普通車でも、その愛称に違わぬ眺望が約束されます。 その窓の大きさたるや、1,650mm×1,020mmサイズ。窓の下辺がアームレストよりもさらに下になるというすごい設計です。 当初371系には車椅子対応席はありませんでしたが、「ワイドビュー」気動車への車椅子席設置工事と時を同じくして、371系「あさぎり」にも設置工事が行われました。 元々2号車のデッキ寄り席は、通路側のアームレストが跳ね上げ式で、車椅子からの座席へ座ったままで移動できるように配慮がなされていました。 しかし、車椅子を座席脇に固定することのできる1人掛けの専用席を設置するのが主流となり、「あさぎり」でもこれにならって、車椅子専用の新たな座席を設置。 「ワイドビュー」気動車がハイデッキを通常のフロアレベルに下げる大工事だったのに対して、371系の普通車はハイデッカーではないので、違和感なく仕上がっています。 |
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3号車と4号車の2階建て車の1階部分は普通車となっています。在来線2階建て車特有の船底構造のため、普通車ですが2+1の横3列配置となっています。 奥行きが6列しかないので、全18席のこじんまりとした空間で、ちょっとした個室のような雰囲気。 窓の高さがやや高い位置になるのですが、窓框部分の小物置きが設置できない代わりに、わざわざ窓下に小物置き用のテーブルを別に設置しています。 371系の2階建て車は、2階の窓と1階の窓を縦に繋ぐような特異なデザインとなっているので、上階と下階で窓割が強制的に一致となっています。 そのため、1階の普通車も2階のグリーン席と同じ1,100mmのシートピッチとなっています。 2階建て車は2階部分で貫通しているので、1階席の奥は行き止まりになっています。 突き当たりは非常用の避難口になっていて、ドアの奥には外に出られる緊急用ハッチがあります。 独特な雰囲気とワイドなシートピッチ、横3列配置という余裕のある座席空間が買えるということで、使い慣れたリピーターに人気の席でした。 |
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グリーン車の3号車と4号車のデッキにはサービスコーナーが設けられています。 登場からしばらくはここのサービスアテンダントが常駐していて、グリーン車への軽食デリバリーサービスが行われていました。 (詳しくは、このページのグリーン車の項をご参照ください) 中期から末期にかけては、主に車内販売の基地として機能していて、デリバリーサービスは終了となっていました。 カウンター内には冷蔵庫やレンジ・コーヒーメーカーなどが揃えられていて、プチビュッフェとして機能できそうです。 ちなみに、371系の「あさぎり」号は小田急線内でも「JR東海パッセンジャーズサービス」が車内販売を担当していました。 |
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洗面台、トイレとも「JR東海の在来線特急」らしいつくり。 洗面台のカラン、シンク廻り、三面鏡の作りには、1990年代前半に登場した新型特急に共通する雰囲気があります。 2号車は車椅子対応の洋式トイレと男性用トイレ、そして洗面台。(洗面台は車椅子対応にはなっていません) 6号車は和式トイレと男性用トイレ、そして洗面台。 和式トイレにもベビーベッドが設置されています。 |
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先頭車(1号車・7号車)を除く中間車のデッキ寄りには、わずかな隙間に荷物収納スペースが設けられています。 (グリーン車は、デッキ寄りと貫通路寄りの2箇所に設置されています。) 御殿場線沿線にはゴルフ場が多いので、大きなゴルフバックが2〜3本収納できる幅と奥行きを持っています。 ただ、大型スーツケース級の大きな荷物になると・・・このスペースに収納するのはキツイかもしれません。 |
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デッキから2階グリーン席への階段は横幅が1メートル以上のワイドサイズ。 おそらく日本中の2階建て車輌の階段では、ぶっちぎりの悠々サイズなのではないでしょうか。 階段脇には、カード式の公衆電話コーナーがありましたが、こちらはサービス終了に伴って後年に撤去されました。 グリーン車デッキの天井には「リラックス、デラックス、新『あさぎり』」と書かれた電照広告。 運転台は、この371系がJR東海の新型車両として初めて「ワンハンドル式マスコン」を採用となりました。 「あさぎり」号ではJR371系/小田急20000形のどちらも、新宿−松田間は小田急の運転士が、松田−沼津間はJR東海の運転士が運転を担当しています。 |