JR東海 キハ85系「ワイドビューひだ」・「ワイドビュー南紀」 
 JR-CENTRAL DIESEL CAR Series85 Limited Express"WIDE VIEW HIDA""WIDE VIEW NANKI"


 JR東海発足後に、一番最初に登場した在来線の新型車両がこのキハ85系です。
 デザインテーマは「自然界と調和する『あたたかさ』と、未来を想像させる『宇宙感覚』」

 高山本線の特急「ひだ」で使用しているキハ82系の老朽化置き換えのために開発設計され、
 ステンレスボディに普通鋼の先頭部を結合し、オレンジの帯を撒いた軽快な姿で登場。
 以後、このエクステリアデザインは、JR東海の新型特急の共通イメージとなって継承されていきます。

 「ワイドビュー」の愛称に違わない巨大な側窓と前面展望は、多くの乗客に楽しい旅の時間を提供し、
 また、アメリカ・カミンズ社製のエンジンによる電車のような加速と速さは、
 高山本線沿線の各観光地への到達時分の速達化を果たしました。

 1989年2月から特急「ひだ」で登場後、翌1990年にはすべての「ひだ」号がキハ85系化。
 続いて1992年には特急「南紀」の全列車もキハ85系になり、JR東海のキハ82系は全廃となりました。

 以後34年間、第一線で活躍し続けましたが、後進のハイブリッド気動車HC85系にその座を明け渡し、
 2023年3月に「ひだ」と「南紀」から同時に退き、最後はさよなら運転で全車引退となりました。


 1989年 グッドデザイン賞受賞

 (撮影時期:2005年・2008年)







グリーン車 グリーン車/GREEN CAR (FIRST CLASS)



キハ85系ファミリーにはグリーン車が2タイプ存在します。
1つは「ひだ」投入時に登場した中間車の「キロハ84」型。もう1つは「南紀」投入時に登場したパノラマグリーンの「キロ85」型。
まず、前者の「キロハ84」型をご紹介します。

普通車と合造の「半室グリーン車」なのでコンパクトな空間になっています。2+2の横4列配置が8列展開する全32席での構成。
ですが、横4列配列なので一見すると普通車と見分けがほとんど付きません。
座席サイズはもちろん普通席よりも大きめになっているのですが・・・
キハ85系では、普通車でも全車セミハイデッキ構造・リクライニングシート・床全面カーペット敷き・ワイドな側窓という豪華な仕様になっているため、
このグリーン車の場合、普通車との「格差」がほとんど感じられないというのが実情です。

シートピッチは1,160mm。側窓は普通車より若干大きめの1,920×950mmの超・ワイドビューとなっています。
肘掛内側の音楽サービスの操作パネルは、すでにサービス終了となっているため、順次撤去が進んでいます。

床面は通路から200mm高い位置に座席を設置した「セミハイデッキ構造」。窓の下辺と肘掛の高さが同じとなっています。
ブラウン系のモケットはシックな雰囲気を醸し出し、グリーン席らしい落ち着き感に溢れています。

一部の「ひだ」号では、先頭車にパノラマグリーン席を、中間車にこの半室グリーン席を連結した「グリーン車2両連結」の豪華編成となる列車が存在しました。






こちらのグリーン席は、特急「南紀」号にキハ85系が投入された時に登場した「キロ85」型です。
ご覧の通り、先頭車の運転席からの眺めを大きく開放した「パノラマ仕様」となっています。
さらに2+1の3アブレスト配置で1両丸ごとをグリーン席としているので、客室内は前述の「キロハ84」型とは全く異なっています。

シートピッチは1,250mmで、グリーン席の標準ピッチ(1,160mm)を大きく越える破格の広さとなっています。
テーブルはインアームテーブルと背面収納の2タイプが装備されています。
肘掛内側の音楽サービスパネルは、こちらもすでにサービスが終了となっています。
シートモケットはブルーグレーの単色となり、「キロハ84」型のブラウン系と比べるとナチュラルな雰囲気になっています。

現在このパノラマグリーン車「キロ85」型はその後、全車両が「南紀」号から「ひだ」号へとコンバートされ、「南紀」号には連結されていません。
「ひだ」号に「10号車グリーン車」が連結されている場合がこのパノラマグリーン車となり、下り高山本線内で前面展望が楽しめます。

このパノラマグリーン席と中間車グリーン席の両方に乗っていますが、座席サイズではパノラマ車の方がいうまでもありません。
ただ、座席のクッションの柔らかさとリクライニングした時のバランスでは、中間車グリーン席のほうが優位性を感じました。
中間車グリーン席のほうは柔らかさと座席幅の狭さから、ふっくらと包み込まれるような感覚があります。
逆に、パノラマ車の椅子は全体的に張りがあり、このあたりは個人的な好みによるでしょう。


 パノラマグリーン車の最前列は2人掛けが1A/1B席、1人掛けが1C席。
 運転席とはアクリル板で仕切られているだけなので、最前列なら迫力ある前面展望が楽しめる。
 フットレストは2面展開。手前に引き出すと靴を脱いで足を載せる面が出てきます。
 荷物棚下には読書灯。1990年代前半に流行ったタイプの読書灯です。
 音楽放送のパネルは撤去が進んでいます。一部にはまだ残されている座席もありますが、パネルは非稼動。
 インアームテーブルは実用本位の四角いタイプ。高山本線では名物駅弁も多く、このテーブルは重宝します。
 カーテンは遮光性のあるものとレースのカーテンの2種類を装備。
 カーテンは遮光性のあるものとレースのカーテンの2種類を装備。
 電光情報表示板。停車駅やニュース・情報のほか、観光案内や現在の走行速度なども表示されます。







普通車 普通車/ORDINARY CAR (ECONOMY CLASS)



大きな連続窓と床面を200mm嵩上げしたセミハイデッキ構造の客室。さらに客室内は全面が絨毯敷き。
今見ても「なんとハイグレードな普通車か!」と思わせる。これこそが「ワイドビュー」85系気動車の普通車です。

腰掛けるとまず窓の大きさにワクワク。走り出すと、この窓に映る車窓がまるですぐ目の前に広がるかのようです。
窓の下辺がアームレストの高さと同じ位置ということで、窓側席なら視界には窓の縁や框すらも入りません。

シートピッチは1,000mmで、普通車としては破格の広さ。JR東海では、これ以後の新型特急の標準ピッチとなっています。
座席モケットは3種類。オレンジとブルーは「ひだ」車、グレーは「南紀」車で登場したもの。
現在、これらのモケットカラーは使い分けされておらず、混合して編成が組成されています。
バケット型のシートは、背中背面・背中脇・腰部・座面が体のラインにフィットするようにクッションが詰められています。
クッション詰めはメリハリが効いていて、モケットの毛足も長めでフワフワ。これはかなり満足の掛け心地です 。
足元には跳ね上げ式のフットレストも設けられており、普通車座席としてはトップクラスの完成度だと言えます。

車椅子対応席は、セミハイデッキ構造の客室の一部を低くして、車椅子での客室への出入りが容易になっています。
通常では2脚の座席が置かれるスペースに、1脚しかも1人掛けの座席なので、かなり広々としています。
また、デッキにも車椅子での転回を考慮した大型のサニタリーコーナーを設けています。(→






洗面台/トイレ トイレ・洗面室/TOILET・SANITARY SPACE


いまとなってはどこか古めかしさも感じるサニタリーコーナーです。

グリーン席のある車両には「洋式トイレ」、そのほかの車両は「和式トイレ」。男性用は「南紀」用車両から登場し、初期の車両には設置されていません。

前述のような大改造によって生まれた車椅子対応サニタリーはさすがに広々。車椅子の利用者でなくても、一般の利用者にもこのくらいの広さが一番使いやすいと感じます。





デッキ設備 乗降口・デッキ設備/ENTRANCE・DECK SPACE


デッキにはご覧のように、ごく浅いステップが1段あります。
この高さが曲者で、ちょっと意識して足を上げるようにして踏み出さないと・・・・コケます。
グリーン席の仕切りドアのみ、3つのサークル窓を施した特別なものになっています。

運転席の背後は全面のガラス張り。運転席の中も丸見えです。
さらには天井部にはサンルーフも設けられて、こんなところでも「ワイドビュー」の愛称に偽りなし!








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