JR東海 キハ85系  ワイドビュー「ひだ」「南紀」

 

JR発足後「雨後の竹の子」の如く各社で新型車両が次々と生まれました。
東海道新幹線を抱えるJR東海が最初に世に送り出した新型車両がこの「キハ85系」。
新幹線車輌でも特急電車でもなく、新型の「ディーゼルカー」という点が鉄道ファンを驚かせました。

およそ「気動車」という響きから感じられる“無骨さ”が全く感じられないスマートなボディ。
「ワイドビュー」の愛称に違わぬ、眺望に優れた明るい客室。
このキハ85系を「JR東海の作品の中では最高傑作」と評価する人は少なくありません。







グリーン車


キハ85系ファミリーにはグリーン車が2タイプ存在します。
1つは「ひだ」投入時に登場した中間車の「キロハ84」型。もう1つは「南紀」投入時に登場したパノラマグリーンの「キロ85」型。
まず、前者の「キロハ84」型をご紹介します。

普通車との合造なのでコンパクトな空間になっています。2+2配置が8列展開する全32席で、一見すると普通車のようです。
座席サイズはもちろん普通席よりも大きめになっているのですが、
普通車でもセミハイデッキ・カーペット敷き・ワイドな窓を奢っているので、普通車との「格差」が薄いのが実際の感想。

シートピッチは1,160mm。側窓は普通車より若干大きめの1,920×950mmの超・ワイドビューとなっています。
肘掛内側の音楽サービスの操作パネルは、すでに使用停止となっていて撤去が進んでいます。
一部の席ではまだこのパネルが残っていますが、電源が入っていないのでイヤホンを挿しても何も聴こえません。
床面は通路から200mm高い位置に座席を設置した「セミハイデッキ構造」。窓の下辺と肘掛の高さが同じとなっています。
ブラウン系のモケットはシックな雰囲気を醸し出し、グリーン席らしい落ち着き感に溢れています。

一部の「ひだ」号では、先頭車にパノラマグリーン席を、中間車にこの半室グリーン席を連結した「グリーン車2両連結」の
豪華編成となる列車が存在します。






こちらもグリーン席です。特急「南紀」号にワイドビュー気動車が投入された時に登場した「キロ85」型です。
ご覧の通り、先頭車の運転席からの眺めを大きく開放した「パノラマ仕様」となっています。
さらに2+1の3アブレスト配置で1両丸ごとをグリーン席としているので、客室内は前述の「キロハ84」型とは全く異なっています。

シートピッチは1,250mmで、グリーン席の標準ピッチ(1,160mm)を大きく越える破格の広さとなっています。
テーブルはインアームテーブルと背面収納の2タイプが装備されています。
肘掛内側の音楽サービスパネルは、こちらもすでに使用停止状態となっています。
シートモケットはブルーグレーの単色となり、「キロハ84」型のブラウン系と比べるとナチュラルな雰囲気になっています。

現在このパノラマグリーン車は、全車が「南紀」号から「ひだ」号へとコンバートされ、「南紀」号には連結されていません。
「ひだ」号に「10号車グリーン車」が連結されている場合がこのパノラマグリーン車となり、下り高山本線内で前面展望となります。

このパノラマグリーン席と中間車グリーン席の両方に乗っていますが、座席サイズではパノラマ車の方がいうまでもありません。
ただ、座席のクッションの柔らかさとリクライニングした時のバランスでは、中間車グリーン席のほうが優位性を感じました。
中間車グリーン席のほうは柔らかさと座席幅の狭さから、ふっくらと包み込まれるような感覚があります。
逆に、パノラマ車の椅子は全体的に張りがあり、このあたりは個人的な好みによるでしょう。


 フットレストは2面展開。手前に引き出すと靴を脱いで足を載せる面が出てきます。
 荷物棚下には読書灯。1990年代前半に流行ったタイプの読書灯です。
 音楽放送のパネルは撤去が進んでいます。一部にはまだ残されている座席もありますが、パネルは非稼動。
 インアームテーブルは実用本位の四角いタイプ。高山本線では名物駅弁も多く、このテーブルは重宝します。
 カーテンは遮光性のあるものとレースのカーテンの2種類を装備。
 車端部の荷物棚にはひざ掛け毛布がセットされています。セルフサービスでどうぞ。
 電光情報表示板。停車駅やニュース・情報のほか、観光案内や現在の走行速度なども表示されます。







普通車


大きな連続窓と床面を200mm嵩上げしたセミハイデッキ構造の客室。さらに客室内は全面が絨毯敷き。
今見ても「なんとハイグレードな普通車か!」と思わせる。これこそが「ワイドビュー」85系気動車の普通車です。

腰掛けるとまず窓の大きさにワクワク。走り出すと、この窓に映る車窓がまるですぐ目の前に広がるかのようです。
窓の下辺がアームレストの高さと同じ位置ということで、窓側席なら視界には窓の縁や框すらも入りません。

シートピッチは1,000mmで、普通車としては破格の広さ。JR東海では、これ以後の新型特急の標準ピッチとなっています。
座席モケットは3種類。オレンジとブルーは「ひだ」車、グレーは「南紀」車で登場したもの。
現在、これらのモケットカラーは使い分けされておらず、混合して編成が組成されています。
バケット型のシートは、背中背面・背中脇・腰部・座面が体のラインにフィットするようにクッションが詰められています。
クッション詰めはメリハリが効いていて、モケットの毛足も長めでフワフワ。これはかなり満足の掛け心地です 。
足元には跳ね上げ式のフットレストも設けられており、普通車座席としてはトップクラスの完成度だと言えます。

車椅子対応席は、セミハイデッキ構造の客室の一部を低くして、車椅子での客室への出入りが容易になっています。
通常では2脚の座席が置かれるスペースに、1脚しかも1人掛けの座席なので、かなり広々としています。
また、デッキにも車椅子での転回を考慮した大型のサニタリーコーナーを設けています。(→






洗面台/トイレ


いまとなってはどこか古めかしさも感じるサニタリーコーナーです。

グリーン席のある車両には「洋式トイレ」、そのほかの車両は「和式トイレ」。
男性用は「南紀」用車両から登場し、初期の車両には設置されていません。

前述のような大改造によって生まれた車椅子対応サニタリーはさすがに広々。
車椅子の利用者でなくても、一般の利用者にもこのくらいの広さが一番使いやすいと感じます。





デッキまわり コックピット

      

デッキにはご覧のように、ごく浅いステップが1段あります。
この高さが曲者で、ちょっと意識して足を上げるようにして踏み出さないと・・・・コケます。
グリーン席の仕切りドアのみ、3つのサークル窓を施した特別なものになっています。

運転席の背後は全面のガラス張り。運転席の中も丸見えです。
さらには天井部にはサンルーフも設けられて、こんなところでも「ワイドビュー」の愛称に偽りなし!








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