1956年に登場した日本初の「夜行寝台特急」に付された愛称が「あさかぜ」。 その後、1958年に20系寝台客車が投入され、元祖「ブルートレイン」として活躍しましたが、 1往復が残るのみとなった“下関あさかぜ”が最後となり、惜しまれつつ2005年3月に長い歴史に幕を閉じました。 晩年までかつての「栄華」を伝えるかのように、個室・ラウンジカー・シャワー室と、そこそこの多彩な設備を誇っていました。 |
「あさかぜ」といえば20系客車。そして20系客車といえば一人用A寝台個室「ルーメット」でしょうか。 その頃の栄華とプライドを引き継ぐかのように、「あさかぜ」には最後まで一人用A寝台個室が連結されていました。 この「あさかぜ・シングルデラックス」は、一緒に残った東海道ブルトレの僚友たちのそれとは一線を画していて、 他の列車が昔ながらの“独房”スタイル(笑)を保っているのに対し、「あさかぜ」は全面的な改造が施されていて、 ほぼ「新製車」といっても過言ではないほどの車輌になっています。 ほかの「シングルデラックス」のベッド幅が70cmなのに対して、「あさかぜ」ではベッド幅80cm。 さらにこのベッド、通路側3分の1が電動リクライニングのように起き上がる機能を備えていて、 寝ながらに上半身を起こすような体勢でリラックスできます。 下り「あさかぜ」では午前中、上り「あさかぜ」では夕方〜夜にかけての走行時間が長く、 意外と車内で起きている時間が長いので、個室内でのんびり読書などをして過ごすには打ってつけの機能です。 ちなみに壁面の読書灯は、このベッドを起こした状態で本を読むのに適した位置にセットされています。 室内にはほかに折り畳み式の洗面台とビデオ再生機能を持ったAVモニターに、オーディオチューナーを備えています。 AVモニターでは月イチのプログラム改編で、映画と複数の音楽チャンネルが流れていました。 VHSビデオデッキもあって、手持ちのビデオが再生可能です。ビデオ端子付きなのでビデオカメラからの再生もOK。 (普段から旅行者がビデオソフトを持ち歩いているのか?という疑問はさておき(笑)) 中にはビデオデッキではなく、「テレビデオ」を設置している車輌もありました。 オーディオチューナーは一般家庭用のケーブルテレビチューナーと同型です。汎用性がある機械なんですねぇ。 洗面台の脇にはコネクトドアがあり、2部屋つなげてコネクトツインとする事もできます。 これは両部屋のロックを外さないと扉が開きませんので、隣の部屋から勝手な侵入をされるということはありません。 ちなみにこの個室はテーマカラーが2種類あり、奇数番号の部屋はブルー&グリーンで寒色系。 偶数番号の部屋はピンク&ベージュの暖色系になっています。 この車輌の車端部にはA個室利用者専用の「シャワー室」が備えられています。 車内改札時にシャワーカードが1枚手渡され、1回の乗車でシャワーが1回無料で利用できます。 シャワーの給湯時間は、ほかの寝台特急のシャワー室と同様に6分間。 またアメニティポーチもプレゼントされ、中には洗面用具がギッシリ詰まっています。 |
「あさかぜ」号の編成の大半を占めるのが、昔ながらのスタイルの開放型B寝台。 カーテンやモケットのカラーリングはブルー系で、ややもするとそっけない印象なのですが、 全ての寝台がこのカラーリングで統一されています。(JR西日本のコーポレイトカラーがブルーだからか?) ベッド幅も、この24系25型が登場して以来の70cmをキープ。 床面にカーペットを敷いている車輌と、リノリウムのままの車輌が混ざっていますが、 特に後者は化粧板の飾り気が無いのと相俟って、20系客車登場時のようなギラギラ感が萌え萌え(笑) 逆を返すと、室内自体には大幅改造のようなリニューアル工事はされなかったものの、 最後の最後までこれほどまでしっかり手入れがされて美しい状態だったというのは、特筆に価するかもしれません。 |
ソファーコーナーと簡単なスツールを備えたフリースペースです。 「ラウンジカー」と称していますがどちらかというと「ロビーカー」という印象。 車内の一角には売店カウンターが設けられていますが、常にシャッターが掛けられた状態で使われたことはなさそう。 中はアイスストッカーに電子レンジと充分な装備なのに勿体無い…。デッキ部分には、飲料の自動販売機があります。 「ラウンジカー」の車端部には共用シャワールームがあります。 給湯時間は1回で6分間。シャワー利用カードは車掌さんが販売しています。利用時間の予約は必要ありません。 晩年のシャワーの設備状態は尋常ではなく、温水の途中で一瞬冷水が出たり、給湯が途切れたりとひどい状態でした。 |
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ほとんどのサニタリーコーナーは、「国鉄時代」炸裂の古めかしい雰囲気を色濃く残していました。 ホーロー製の仕切りの無い洗面台にアルミ製の便器。洗面台のスケルトンブラウンのプラ製コップが泣かせます。 サニタリーにリニューアルの手が入った車輌がありましたが、編成内ではごく一部。 A個室車輌のサニタリーは洋式トイレになっていて、洗面台も個室内に設置されていました。 デッキは、こちらも国鉄時代からの寒々とした雰囲気が漂っています。 「A個室車」のデッキ仕切りドアのみが自動ドアになっているほかは、すべて手動のドア。 |