伝統の愛称を引っ提げて、1992年に復活した特急「つばめ」。 歴代の特急「つばめ」がその時代の最高の設備とサービススピリットに溢れていた以上に、 この787系「つばめ」も「鉄道車輌」をいうものを根底から覆すほどのフォルムとインテリアを持って登場しました。 日本国内のみならず、世界の鉄道界からも絶賛され、多くの賞を獲得した「革命」的車輌です。 |
オープンキャビンは、およそ車輌の半室分。 大型ハイバックシートとシートピッチは余裕の1,200mm。日本鉄道史上でも稀に見る「ゆとり」の空間が誕生です。 アルミパネルと緩やかな曲線を描くハットラックは、今でも新鮮さを失っていません。 現在は「リレーつばめ」仕様にリニューアルがされて、室内の雰囲気が一変しましたが、 このシックなモケットとカーペットとメタリックなアルミパネルが織り成す独特な雰囲気が好みというファンは多いはずです。 座席は言うまでもなくフリーストップリクライニングシート。テーブルはインアーム式のみを装備。 壁面には「ちょっとした小物置きに」と、曲面木目テーブルが用意されています。 この座席の特徴は、なんといってもバックレストとヘッドレストも任意に位置で可変できること! 新幹線のグリーン車ですら、過去にこのようなシートを採用した例はありません。 これなら「背」は倒して「頭」は起こすといった、最もくつろげる態勢を自然に維持できます。 モケット柄は2種類が存在し、1次量産車と4次増備車が幾何学模様のシルバーブラウン系のモケットなのに対し、 2・3・5次増備車は細かい花柄を複雑に絡ませたブラックブラウン系のモケット(トップキャビンと同種)になっています。 |
グリーン席でのドリンクサービスは、1992年7月から継続して行われ、2010年3月31日で終了となった。 ドリンクメニューには季節を問わず、常にアイスとホットが数種類が用意されていた。 | |
オーディオサービスは常に4チャンネルほどが用意され、イヤホンも無料で貸し出しサービスが行われていた。 | |
各座席には車内販売のメニューやJR九州の情報誌のほか、時代によっては日韓航路「ビートル」の情報誌も用意していた。 さらに新聞や雑誌の貸し出しサービスも行われていた。 | |
夜行特急「ドリームつばめ」「ドリームにちりん(787系時代)」が運転されていた頃には、 グリーン席の乗客には各種アメニティをセットした「おやすみグッズ」を配布していたこともあった。 |
デッキは乗客がまず最初に足を踏み入れる場所。言いなればデッキの印象が「ファーストインプレッション」となるわけです。 凡庸な印象しか持ち得ないデッキが、「787系つばめ」ではしっかりこだわりの空間になっています。 グリーン車のデッキは、一面を深みを帯びたブルーのアルミパネルで構成。 さらにオリジナルデザインの灯具で、照明でも抜かりなく雰囲気作りを行っています。 デッキからサロンコンパート(グリーン個室)通路を通り抜けオープンキャビンへと繋がるアプローチ部分は、まさに圧巻! まるでホテルのようで、「あっぱれ! 鉄道車両でよくここまでやってくれた!」との一言に尽きます! |
オープンキャビンの一番奥、ガラス戸の向こうは「トップキャビン」。 4人ボックスと2人ボックスで構成され、大型のテーブルを中心に配した「走る会議室」です。 室内の広さは約7平方メートル。運転室の直後にありますが、前面展望は考慮されていません。 しかし、最高級のシートの座りごこちと人的サービスは「パノラマ」を補って余りあるほどです。 ヨーロッパの高速鉄道のファーストクラスのように向かい合わせに座席を配置。 木目の折り畳み式の大型テーブルを備えています。リクライニング機構は、オープンキャビンの座席と同じです。 2人掛け座席の回転は出来ませんが、1人掛けの座席は、内側へ30度ほど向きを変える事ができます。 最大6名でこのスペースを使った場合を想定しての機構で、会議室としての利用なども考えられますが、 この機構自体があまり知られていないようです。(特に車内で案内もしていませんが) トップキャビンの壁面には、ブルーリボン賞受賞プレートが飾られています。 787系「つばめ」は、1993年のブルーリボン賞受賞車。 300系「のぞみ」や400系「つばさ」といった強豪を打ち破っての受賞でした。 さらに、世界鉄道デザイン大賞「ブルネル賞」、「グッドデザイン賞」「ライティングコンテスト大賞」など、 鉄道用車輌としては異例ともいえる、多くの賞を受賞しました。 |
こちらは「サロンコンパートメント」。デッキからオープンキャビンへのアプローチ部に設けられています。 リクライニングシートとソファーを装備して、一時期大流行した欧風客車の個室とよく似ています。 「トップキャビン」とは異なり、完全な個室形式。最大で大人4人での利用が可能です。 しかし室内の広さ約6平方メートルやソファーの大きさから見ると、ゆうに大人6人は入りそう。 「つばめ」のこの個室は、他のJR特急の個室が定員販売されるのに対して部屋単位で換算して販売されるので、 例えば1人でこの個室を使う場合、1人分の乗車券とグリーン券と個室料金を払えば使え、 定員分の差の子供料金を払う必要はありません。 夜行特急「ドリームつばめ」で利用すれば、ソファーで横になって寝ることも…?! |
普通車は画像を見ていただいて分かる通り、実に多くの柄のモケットを採用しています。 基本的に「ブルー」系、「レッド」系、「カラフル」系、「ブラック」系に分かれますが、 その種類と配置たるや、調べ出すとキリが無いというよりも全てを調べるのは、ほぼ不可能なのでは… 「ハイパーサルーン」での「半室構造」は意外と好評だったそうで、この「つばめ」では 客室なかほどに大型バゲージラックを備えて、 客室を「半室」のように分断する方法が採られました。 普通車も全席に「フットレスト・バー」と「読書灯」を備えています。 博多−西鹿児島(現:鹿児島中央)間・4時間弱の乗車を考慮した構造の座席になっているとは思いますが、 やはり1,000mmのシートピッチと、ビュッフェなど気分転換に出歩ける設備の充実が「つばめ」の普通車の強みでしょう。 |
透明ガラスのパーテーションで仕切られたボックス席が6区画。 直線的なデザインの車輌は、「つばめ」デビュー時に投入された初期型車輌です。 特急「かもめ」用の4次増備車からパーテーションが天井に向かってカーブを描く仕様になりました。 グリーン車「トップキャビン」のような折り畳みテーブルと照明器具が備えられています。 ただ、夜行特急「ドリームつばめ」の一晩をこの席ですごすのは、ちょっとキツそうですね…。 実際に座ってみると、ガラスのパーテーションの効果で包み込まれるような感覚になります。 荷物棚もちゃんと、頭上に設置されています。 この「セミコンパートメント」は当初指定席でしたが、多くの人に使ってもらおうと自由席になりました。 が、しばらくして3人以上の利用に限っての指定席になったりと流転を繰り返しています。 ケーキやお菓子をいっぱい持ちこんで、車内でミニパーティ。書類とノートパソコンを広げて「移動書斎」。 1つの設備でも、用途にいろんな広がりがあるのは、787系「つばめ」こそが成せるワザですね。 |
「つばめ」のビュッフェは新幹線のビュッフェとは異なり、開放的な感じです。 とにかく車内全体がアルミパネルで輝き、未来的な印象。 この広々とした空間を演出する卵型の天井は「スーパーエッグライン」と呼ばれ、「つばめ」のために特注されたもの。 この部分は「吊り天井」となっていて、天井裏にはそれを支える金属柱がめぐらされています。 ギャレーは見たところ大変に狭く、ピーク時にはさぞレディさん達は大変だったことでしょう。 ギャレー内にはフード類のストックヤードと冷蔵庫があります。 カウンター裏はラックになっていて、収納スペースとして使われています。 3台の電子レンジも、ピーク時間や繁忙期にはフル稼動でも足りないくらいの注文が殺到します。 自動販売機は、ビュッフェ営業を行わない一部の「つばめ」号のために設置されています。 (後期増備車からは自動販売機ではなくAV装置が設置されました。) この自動販売機脇の自動ドアの向こうが「セミコンパートメント」ブースになっています。 ビュッフェは、2003年2月の営業を持って終了。 九州新幹線のアクセス特急「リレーつばめ」に対応した改造が施されると、丸天井をそのままに残した普通車に改造されました。 |
「とんでもない列車が出てきた」・・・787系登場時に、このトイレを見てそう思った方も多いでしょう。 どこのホテルのサニタリースペースかと思ってしまうほど、従来の鉄道車両のトイレからは想像もつかない美しさです。 洗面台が独立しているのは「グリーン車専用」のサニタリーのみで、普通車のは全て個室内にビルトインされています。 一応「男性用」「女性用」とドアには表記されているのですが、個室内は全て洋式のものがセットされています。 「男性小用」の個室は無く、この男女分けは「女性」への気分的な配慮によるものだと思われます。 2号車デッキの車椅子対応のサニタリールームです。 広い室内はL字に動線を配し、これまでには前例の無い大型サニタリーになりました。 室内に設けられた大型洗面台は、女性がパウダールームとしても使うのにも充分の大きさ。 シンクの下には折り畳みの大型踏み台を収納しているので、車内での着替えも可能です。 |
普通車の客室中央(一部車両は車端部)に大きな荷物置き場が設置されています。 783系「ハイパーサルーン」の「半室構造」は1つの車両で2通りに客室を使うことでき、 また半個室的な雰囲気による落ち着きある空間作りが可能だったことから、787系でもその良い点を取り入れようと、 ちょうど客室を半分に仕切れるように、客室中央にこのバゲージラックを設けました。 結果、「半室客室構造」と同時に、自分の席から目の届く場所に荷物を置けるという点で利用者に安心感も与えることができました。 2号車デッキの車椅子対応の大型サニタリースペースと、息抜きと休憩の「マルチスペース」。 車輌内の通路がこのように「かぎ型」に造られているだけでも、特徴的な「見せ場」となっています。 カガミ張りの「マルチスペース」は、当時の鉄道車輌で発展しつつあった「多目的室」を一気に進化させたものです。 車掌の利用許可が必要で、常に施錠されていたほかのJR特急車の「多目的室」に比べ、 つばめの「マルチスペース」は、いつでも開放されていて、自由に誰でも使える設備になりました。 室内側から施錠でき、カーテンを閉めきれば「授乳室」としても利用できます。 デッキはどの車輌も共通して「メタル」調に仕上げられています。 ドアが開き、車内に足を一歩踏み入れると、まるで「宇宙ステーション」な雰囲気。かなりインパクトがあります。 そして乗降ドアの内側は「真っ赤」。銀と赤が織り成す色彩のコントラストが、スポット照明に照らされて実に美しい。 ドアの内側にはその号車の設備案内が英語表記で表示されています。 (肝心の情報が英語のみということは、案内というよりデザインの一部としての表現でしょうね。) 2号車には飲料の自動販売機が設置されています。 同じく2号車の車椅子対応サニタリの脇の通路は、3号車へとカギ型に曲がって繋がっています。 この通路部分に電照広告スペースがあり、自社の代表的な列車などが紹介されています。 |