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朝。 目が覚めて、障子を開け放つと目の前には漁港。夜間に漁に出ていた漁船が港に戻ってきていました。
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とりあえず、朝風呂に。 朝は6時30分から浴場が使えます。
朝一番の時間なので、お風呂にはまだ誰もいません。展望浴場を貸し切り入浴です。
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脱衣場はこじんまりとしていて、木のぬくもりが感じられる作り。小さな旅館のお風呂場っていう感じです。
ロッカーなんかも、木そのものの素材感がそのままで、とても素朴なつくり。手に触れる部分全てが温かみに溢れています。
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朝食はレストランで7時30分からなのですが、今日はそれより早い時間に出発なので、朝食を摂ることができません。
笠沙恵比寿側のご好意で、お弁当を用意して下さいました。おにぎりや煮物を詰めた、とってもスローフードなお弁当。
車を運転しながらお弁当を食べるような器用なことはできませんので、出発前にお部屋でいただきました。
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お弁当を平らげたら、さっそく出発です。
海を見つめている恵比寿様に一晩の宿をお借りした感謝をして、車に乗り込み一路鹿児島中央駅へ。
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この日も朝から雲が空を覆っていたのですが、海岸線に沿って車を走らせていると、フッと雲が切れて眩しい朝日が顔を覗かせました。
夜の静けさにまだ沈んでいた海の青と半島の緑が、光を浴びて生気を取り戻したかのように一気に輝き始めました。
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レンタカーを返して、鹿児島中央駅へ。
本日のファースト・ランナーは、特急「はやとの風」号。真っ黒なボディのディーゼルカーの入線風景は圧倒的な存在感を見せ付けてくれます。
漆黒の列車を出迎える客室乗務員さんの白い制服が、一際白く見えます。
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「はやとの風」号の車内は、どこもかしこもウッディーなインテリア。
椅子も荷物棚も、床も仕切りも木・木・木・・・! 列車の車内というより、ログハウスの中にでもいるような感覚になります。
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今日も平日ですが、夏休み中ということもあってか、通常は2両編成のところが3両編成。
1号車の指定席はほぼ満席。2号車の指定席・3号車の自由席も半分くらいが埋まっているほどの盛況振りでした。
鹿児島中央駅を出発すると、すぐに次の駅の「鹿児島」駅。ここには使われなくなった電車がたくさん集められていました。
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鹿児島駅を出ると、錦江湾の海岸線に沿って列車は走ります。
車窓に桜島の勇壮な姿がはっきりと見える区間で、乗客はみんな右側の車窓に釘付けです。
この日の桜島は、山頂に雲の帽子を被っていました。
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隼人駅に到着。意外にもここでたくさんの人が下車していきました。短区間の体験乗車で利用する観光客も多いようです。
隼人駅からは日豊本線を離れ、肥薩線へ。
単線のローカル線を行く「はやとの風」号は、緑の中を駆け抜けて行きます。展望スペースにも真夏の緑が眩しく映ります。
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肥薩線に入って最初の停車駅。周囲に町がある様子は無く、大きく鄙びた木造の駅舎だけが異様に目立ちます。
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ここは「嘉例川」駅。鹿児島空港まで車で8分という場所ながら、驚くほどひっそりとした佇まい。
肥薩線は鹿児島へと通じる最古の鉄道線で、嘉例川駅はその開業当時から設置されていました。すでに100年を超える歴史を持っている駅です。
土日には駅弁販売などのイベントが駅で行われているようですが、この日は平日ということで、駅は昔ながらの静けさに包まれていました。
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ホームに張り出した屋根部分を支える柱も、もちろん木製。年季の入った皺枯れた表面に100年という時間の流れを感じさせます。
駅の放送も、人のざわめきもなく、聞こえるのは蝉の鳴き声と風に揺れる木々のさざめきだけ。
まるでこの「はやとの風」号だけがタイムスリップして来てしまったかのような、本当にそんな錯覚を覚えるほどです。
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山間部を走る肥薩線。もちろんいくつかのトンネルを抜けて先へ先へと進みます。
トンネルに入ると、車内は照明によって独特な雰囲気が広がる空間となります。
飾り照明によって、アメ色に染まる車内。さりげなくデザインされた照明器具がトンネル内では短い主役に。
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「はやとの風」号では車内販売がおこなれていて、沿線の名物が中心に取り揃えられています。
メニューは季節ごとに替わりますが、その多くが土日限定だったりするので、平日に乗車するとその楽しみは半減かも。
まったり気分で旅したいなら平日、「はやとの風」号を120%楽しみたいならやっぱり土日の乗車がおすすめです。
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車内販売で「メロンパン」と「紅いもふくれ」を購入しました。
「メロンパン」は沿線のパン工房の商品、「紅いもふくれ」は鹿児島名物ふくれ菓子を洋風にアレンジした新しいお菓子。
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「大隅横川」駅に着きました。ここも大きな木造駅舎を持った駅。
さきほどの「嘉例川」駅同様に肥薩線開業当時からの「100年駅」です。
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第2次世界大戦中にアメリカ軍の空襲を受け、機銃掃射で打ち抜かれた柱が今でも現役でホームの上屋を支えています。
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ここの駅舎は国の登録有形文化財に認定されています。
この日は駅前でコンサートイベントが行われるということで、その準備で町の人たちが集まっていて、駅前は賑やかでした。
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「はやとの風」号は大隅横川駅で対向列車の普通電車の到着を待つため、しばらく停車します。
普通列車を待つ特急列車というのもなんだかヘンな感じですが、「はやとの風」号は先を急ぐ特急ではないのでこれでいいのです。
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鹿児島中央駅から1時間30分。終点の「吉松」駅に到着です。
吉松駅は、肥薩線から別れて都城へと向かう「吉都線」の駅でもある山の中の交通の要所。
駅はご覧のように大きなホームが2つ。広々とした空き地にはきっと昔はたくさんの引込み線があったのだろうと想像できます。
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吉松駅では「はやとの風」と「いさぶろう・しんぺい」の記念オレンジカードが販売されていました。
台紙付きで1枚1000円という値段だったので、思わずどちらも購入しちゃいました。
それにしても・・・「記念オレンジカード」ってすごい久しぶりに買ったような気が。(それ以前にオレンジカードまだ新規販売してたのね、という驚き)
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「吉松」駅からは、さらに観光列車「しんぺい」号に乗り換えます。
「はやとの風」で吉松駅に到着した頃から雨がハラハラ降り始めていたのですが、
折り返し「しんぺい」号となる「いさぶろう」号が吉松駅に到着する頃から雨はドシャ降りに。
全身「古代漆」一色のボディは、ハッとするような明るさ。これが暗いところで見ると漆色が滲み出るような艶やかな深い色にも見え、
光の加減で全く違う色に見えるのが驚きです。
さきほどの「はやとの風」号同様に、通常は2両編成のところ、今日は3両編成でやってきました。
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ボディを飾る、JR九州お得意のロゴマークやサイン。「いさぶろう・しんぺい」のロゴマークは、ちょっと「サンリオ」商品チックな雰囲気?!
「いさぶろう・しんぺい」の愛称は、肥薩線を全通させるに当たって一番の難工事だった矢岳第一トンネルを貫通させた際に、
両方のトンネルの出入り口に石額を掲げた、当時の逓信大臣「山縣伊三郎」と鉄道院総裁「後藤新平」に敬意を表して付けられました。
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車内はボックス席が主体。画像のように、それぞれのボックス席は背もたれ部分に格子状の仕切りが増設されていて、古典車両のイメージ。
こちらも床や格子部分などにふんだんに木材が使われていて、独特な雰囲気。元がローカル線の通勤電車だったとは想像もできません。
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一部にはこのようなベンチシートやソファーシートが。実はこれ、フリースペースではなくこの列車の「自由席」として使われています。
「いさぶろう・しんぺい」号は肥薩線の普通電車の一部として一日の列車に組み込まれているので、地元を行き来する地元の人にも大切な足。
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大雨による遅れが心配されましたが、「しんぺい」号は吉松駅を定刻に発車。
どんどん山を登っていっているのが車窓からも分かり、ものの数分でこのような標高まで辿り着きます。
これでもまだまだ山登りの途中。もっともっと高いところへと線路は伸び、「しんぺい」号はディーゼルエンジンを唸らせて走ります。
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「いさぶろう・しんぺい」号は「普通列車」という扱いですが、観光列車らしく客室乗務員さんが乗務しています。
車内の一角にはサービスコーナーも設けられていて、車内販売まで行われています。
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山深い中を走って「真幸(まさき)」駅に到着。
ホームには、鳴らすと幸せになるという鐘があり、5分ほどの停車時間を利用して鐘を鳴らすことができます。
この日も大雨の中、車内で貸し出ししている傘で外に出て鐘を鳴らす人続出。私は外に出るのが億劫だったので、見てるだけ〜。
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肥薩線の山登りはここからが本番!
真幸駅を発車した「しんぺい」号は、進行方向を変えて、さきほど吉松駅から来た線路を戻り始めます。
ここ、真幸駅はスイッチバックの駅。次の矢岳駅までは7キロあまりなのに標高差は160メートル近くにもなります。
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いったん引込み線に入った列車は、再び進行方向を変えて前進。
坂を上り始めると、車窓の先にはさきほどの真幸駅が見えてきました。わずかな距離で駅と線路はすでにこの標高差です。
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真幸駅を眺めながらその横を通過する頃には、もう駅舎とホームは車窓の「真下」といった低さに見下ろすような恰好。
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いくつかのトンネルを抜け、肥薩線の最標高が近くなる辺りで列車はゆっくりとしたスピードになり、やがてストップ。
「こんな山の中で、エンジントラブルで立ち往生か?!」と思いきや、実はこれ、車窓に広がる絶景を楽しんでもらうためのイベント。
この風景、「日本三大車窓」の一つである「矢岳越え」です。この日は天気が悪かったので、画像のように景色が真っ白で残念・・・。
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「しんぺい」号は、肥薩線最高地点駅である「矢岳(やたけ)」駅に到着。
ここは標高537メートル。吉松駅との標高差は324メートル!
矢岳駅でも5分ほど停車。駅構内には蒸気機関車D51が展示してあるスペースがあり、停車中はそちらの見学が人気ですが・・・
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私は古い佇まいの駅舎内をゆっくりと散策。
「はやとの風」号で見た「嘉例川」や「大隅横川」の駅に似た作りですが、ここ矢岳駅は飾り気が無く、古くからのままがそのままという感じ。
乗客がみんなSLを見に行っている間、しーんと静まり返る駅舎内。まるで止まってしまった時間の中に自分が置き去りにされたかのような感覚に。
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改札口の上には、こんな大きくて古めかしい駅名表示板が掲げられていました。
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矢岳駅を発車した「しんぺい」号。ここから先は下り勾配の連続。次の「大畑(おこば)」駅までは243メートルの標高差を駆け下ります。
「大畑」駅の手前には日本でも珍しい、円を描くように線路を敷いて標高差の負担を軽減させる「ループ線」があります。
ループ線の始まりの辺りでは、ループして進んだ先に見える線路が見下ろせる地点があり、列車は減速してそれを見せてくれます。
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ループ線を一気に駆け下りる「しんぺい」号。転がり進むようなスピードは、感覚的にジェットコースターのよう。
しかもループ線を行くので、延々とカーブを走り続けるため異様な迫力があります。
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ループ線を進みきると、今度はまたもスイッチバック。
ループ線の中にスイッチバックが組み込まれている線は、日本でもここが唯一。とんでもない標高差を駆ける路線であることが分かります。
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スイッチバックで進行方向を変えて進んだ先にあるのが「大畑(おこば)」駅。
この駅もスイッチバックになっていて、さらに進行方向を変えて(というか元の進行方向に向きを戻して)進みます。
運転士さんも一度ホームに出て、一度後ろになった運転席へ。 大畑駅の次は、もう終点「人吉」駅です。
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いくつものトンネルを抜けて、山を登って、坂を駆け下りる「しんぺい」号の旅も佳境に。
これだけふんだんに見どころが詰まった路線・区間にも関わらず、吉松−人吉間の所要時間は約1時間。
観光列車らしいアトラクションも目白押しなので、実に充実した1時間で、時間以上に楽しんだような満足感が得られます。
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終点「人吉」駅に到着です。熊本方面へ向かう「九州横断特急」が待ち受けているので、待ち時間無く先へと進めます。
もっとも、この日は「九州横断特急」ではなく、このあとのSL列車に乗り継ぐ人がほとんどでした。
「しんぺい」号は、今度は「いさぶろう」号となって再び矢岳越えの難所に挑むべく、山へと走り出して行きました。
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人吉駅といえば、ホームに置かれた「きじ馬」が有名ですがこの日は見受けられませんでした。
その代わり、こんなタペストリーがいっぱいに貼り出されていました。
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