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    人吉駅です。建物は高くはありませんが、白壁の堂々とした構えで、いにしえから栄えた古い町の玄関口という佇まいです。
駅舎脇の歩道橋を渡って、駅の裏手へと行ってみました。
    駅の裏手には人吉機関庫があります。明治時代に建造された、日本で唯一の石造りの鉄道車庫。
そんな車庫の中では、「SL人吉」の牽引機であるハチロク(8620型)こと58654号機が出発の準備中でした。
日本全国で活躍する復活蒸気の中でも唯一の大正生まれ。線路の上を疾走する現役SLの中では最古の存在です。
   
    SL「人吉」は、発車の20分ほど前にホームに入線。機関車が客車を押して入ってくる「推進回送」での入線です。
SLが入ってくるのをみんな今か今かと待っていますが、ホームにいる人の数も首都圏のSL列車に比べればとても少なく、実に静かな入線シーン。
赤いシャツを着ているのは、客室乗務員さん。特急つばめなどの入線と同様に、一列に並んでお辞儀をして列車が入ってくるのを迎えます。
    さっそく車内へ。 私に指定された席は最後尾となる1号車。車内はSLの模型が飾られたショーケースを挟んで2分されています。
私の席は黒い本革が張られた、見た目にもなんとも豪華な区画でした。黒い革と明るめの木材と使った車内のコントラストが実にシック。
その奥に見えるのは、展望ラウンジコーナー。
    座席に張られた表面の柄や素材は、車両や区画によって異なっていて、3両編成という短い中に5タイプのインテリアが存在しています。
画像は2号車・熊本側の客室。ワインレッドの革素材が座席に張られていて、1号車の黒革とは異なった華やかな雰囲気です。
    こちらは同じく2号車ですが、人吉側の客室は緑色の市松模様を施した座席になっています。
    客車の両端は展望ラウンジになっています。
人吉行きでは3号車が、熊本行きでは1号車がそれぞれ最後尾となり、ラウンジの大きな窓に広がる180度のパノラマが楽しめます。
機関車側となる展望ラウンジでは、目の前に機関車が来るので前方が全く見えませんが、ハチロクの息づかいがすぐそこに聞こえてきます。
    発車時間まで、先頭の機関車では順番に代わる代わるに記念撮影タイム。
入線から発車まで充分に時間があるので、反対側のホームに回って機関車と客車全体を入れた写真を撮ることも可能です。
   
    機関車の運転室では、出発準備の合間に運転台を見せてくれるサービスも。
運転室には上がらせてもらえませんが、ホームから運転室の中を見せてくれたり、運転士さんがカメラで中の様子を写真に撮ってくれたり。

火室の中では灼熱の炎がすさまじい熱気を放っていて、運転室に近づくだけでものすごい熱さを感じます。
運転室は思っていたよりも狭く、張り巡らされたパイプやハンドル、ずらり並んだ計器などで、いかにも「機械を操る場所」という感じ。
このメカニカルな雰囲気、男なら誰でも好奇心と憧れを抱いてしまいますね。
    「SL人吉」は、時間通りに人吉駅を出発。 汽笛を鳴らせ、白煙を上げながらまさに「ゴトン、ゴトン」と走り出して行きます。
熊本行きの上り列車では勾配を駆け下って行くかたちになるのですが、サービス演出なのか黒煙をモクモク吐き出していく場面も。
沿線ではもうSLが来る時間が定着しているのか、近所の人たちが線路端にたくさん繰り出して来てSLを見送っていました。
    私は車内でちょっと遅めの昼ごはん。人吉駅で買った駅弁「栗めし」です。
    肥薩線の人吉駅から八代駅までの区間は、ずっと球磨川に沿って走ります。
線路は球磨川と山の間のわずかな平地に敷設されているところが多く、意外とトンネルは多くありません。
山間の美しい風景がどこまでも続くので、思わず時間を忘れてしまうほど車窓に釘付けになってしまいます。
    「白石」駅は、明治時代に作られた木造駅。
途中にはこんな駅がいくつかあり、この路線がまさにSLを走らせるために存在し、演出しているかのような風情漂うシーンばかりです。
    あそ高原線を「SLあそBOY」として走っていた時代には、車内にウエスタン・カフェがありましたが、「SL人吉」にもビュッフェがあります。
「カフェ&バー」として窓側にはスタンドテーブルも設置されていますが、商品購入の行列ができて常に人だかりで大混雑していました。
    飲食物ももちろんですが、「SL人吉」グッズもいろいろと揃っています。
    私はポストカードセットを買ってきました。
水戸岡先生がいろんな角度から描いた58654号機や「SL人吉」のカードが7枚入って500円。
    軽食に甘いものが揃っているのも嬉しいところです。
「白玉あずき」と「いもパイ」、ホットコーヒーを買ったら熱伝導の少ないカップは「SL人吉」のオリジナルデザインのものでした。
    時折トンネルもあり、車窓は変化に富んでいて目が離せません。
トンネルもこんな古めかしいところが多く、ぜひ一度はSLの中からではなく、SLが走っているところを外から見てみたくなります。
    途中駅では、「九州横断特急」を行き違うために停車。車内放送で「進行方向右側を九州横断特急が通過します〜」と流れる親切さ(笑)
向こうの特急の乗客は、行き違いの列車がSLということに驚きの様子。窓越しに携帯のカメラをこっちに向けている人がたくさんいました。
    途中、客室乗務員さんが車内を回って記念乗車証明書を配布。
「SL人吉」の乗車証明書は、カードサイズのコンパクトなもので、デザインも実にシンプルでした。
    トンネルを抜けると・・・・・・
    球磨川を渡る「第一球磨川橋梁」に差し掛かりました。明治41年に竣工した歴史ある鉄橋。
トラス部分はニューヨークで製造されたものらしく、このダイナミックな鉄橋をSLはガタゴトいいながら走り抜けます。
    肥薩線内、最後の停車駅「坂本」駅。ここも木造の古い佇まいが特徴的な駅です。
5分ほど停まるという放送が流れましたので、ホームに下りて先頭の機関車を見に行ってきました。
    客室乗務員さんが運転室に駆け寄って来て・・・・何かと思ったら、運転士さんへ冷たい飲み物の差し入れでした。
    大正生まれのハチロク爺さん。決して巨大でインパクトあるというわけではありませんが、スマートでキリリと凛々しい男前の顔つきです。
次の停車駅は「八代」駅。そこから先は熊本に向かって鹿児島本線を一直線。今日のお仕事も、もう一頑張りです。
    坂本駅を出発すると、球磨川と肥薩線を一気に跨ぐ九州新幹線の高架が見えてきます。
新幹線がシューッと走って来そうですが・・・残念ながら「SL人吉」の運転ダイヤでは、新幹線とは遭遇しないそうです。
(ちなみに「SL人吉」がわずかに遅れていると、八代駅手前で進行方向右手に、新八代へと向かう新幹線との一瞬の併走が見られます。)
    「八代」駅に到着。ここで下車する人も結構いましたが、八代−熊本間の短距離乗車のお客も多く、車内は変わらず大盛況です。
新幹線接続駅の「新八代」駅にも停車。停車中は、ガラスの城のような新幹線駅とSL列車の佇まいのギャップがなんとも・・・。
    「リレーつばめ」だけが乗り入れる、新八代アプローチ線。
最後尾の展望ラウンジから眺めれば、アプローチ線と本線の複雑な配線と交差の様子がよく見えます。
    新八代−熊本間では一度だけ「リレーつばめ」号とすれ違います。JR九州の看板列車同士のすれ違いは一瞬。
SLが吐き出した白煙をすれ違いざまに浴びる「リレーつばめ」号。白煙を纏わり付かせたままで走り去り、ちょっと迷惑そう?!
    「まもなく終点、熊本駅です」と車内放送が流れる頃・・・・
車窓に見えた車両基地には、この春で引退した「富士・はやぶさ」号に使われていたブルートレイン客車がいました。
    編成をバラされて細かく分割された状態で、点々散り散りに基地のあちこちに押し込まれていました。
    終点「熊本」駅に到着です。鹿児島本線の一般ホームに到着するので、普通電車を待っている人たちは突如現れたSLに驚きの様子。
最後に記念撮影をする乗客に、たまたま居合わせたから記念に撮っておこうという待ち客も加わって、機関車の周りは大盛況。
    数分の待ち時間で博多行きの「リレーつばめ」号に乗り換えられるのですが、実際にはSLが到着してすぐに「リレーつばめ」が入ってきます。
この「リレーつばめ」号、実は先ほどすれ違った列車。新八代から折り返して猛烈なスピードでSL列車の後を追ってきたことが分かります。
    私はこの「リレーつばめ」に乗り継いで博多へと向かいます。
よく見たら・・・「クモロ787-1」。またしても787系のファースト編成。今回の旅行でファースト編成に当たるのは3回目です。
    今回の旅行では、この「リレーつばめ」号が九州島内最後のランナーとなるので、「デラックス・グリーン席」で豪勢に締め括り。
「デラックス・グリーン席」は、終点の博多まで私1人の貸切でした。
    リクライニングはここまで倒れます。椅子というより、もはやベッドに近い角度。さすがにここまで倒して過ごしはしませんでしたが。
壁側にはコンセントが付いていて、携帯電話やデジタルカメラの電池の充電に使わせてもらいました。
    「デラックス・グリーン席」では、ドリンクサービスに加えてクッキーと使い捨てスリッパがもらえます。
    大きな座席に腰掛けて、お茶とクッキーを楽しみながら車窓を眺める。そんなひと時も、JR九州の特急グリーン席ならではのシーン。
「リレーつばめ」号は、まだ旅の余韻を残したままに終点「博多」駅に到着しました。
    博多駅をあとに、地下鉄で福岡空港へ。
九州入りには全日空の「プレミアムクラス」を利用したので、帰りは日本航空の「ファーストクラス」にしてみました。
ファーストクラス専用のチェックインカウンターで搭乗手続きして、専用のセキュリティレーンからはそのままラウンジへ直通。
    東京行き最終の便だったのもっと混雑しているかと思ったのですが、ラウンジ内はガラガラでした。
全日空の羽田のラウンジは開放的でカジュアルな雰囲気でしたが、日本航空のラウンジは重厚で落ち着いた雰囲気。
出発までの30分ほどを、ラウンジ備え付けの雑誌を見ながら、お茶や紅茶を飲んでまったりと。
    出発の20分ほど前にゲートへと向かいましたが、ラウンジから搭乗ゲートまでが想像以上に遠くて焦ってしまいました。
ゲートに着くとすでにボーディングは始まっていて、機内に入るとファーストクラスはほぼ満席という盛況ぶりでした。
    ファーストクラス・クラスJはほぼ満席だったにもかかわらず、普通席はほとんどガラガラ。
長距離路線では、上のランクのクラスを積極的に選ぶ人が多いみたいですね。
この日の機体は「JA8979」。元・日本エアシステムの「レインボーセブン」3号機です。
    窓側席でしたが、夜間飛行なので窓の外は真っ暗で何も見えません。となると、機上での楽しみはファーストクラスご自慢の「食事」です。
この日の夕食は、東京・神楽坂のフレンチレストラン「ラリアンス」の、「サーモンとエビを詰めたコンソメゼリー」と「アニスムース」。
メインのほうはとても美味しかったのですが、付け合せのパンがガッチガチに固くて噛み切れないほどだったのはちょっと残念でした。。。。
    飛行機に乗る前に夕食を食べてこなかったので、先ほどのコンソメゼリーだけでは物足りず・・・
メニューに軽食用の「かた焼きそば」があったので、注文しました。こちらのほうがボリュームがあって、むしろこっちが食事のメインという感じ。
あんかけはホカホカに暖かく、味もほどよく濃い目でとても美味しかったです。

    「ラリアンス」の「アニスムース」が美味しかったので、フライトも終盤に差し掛かってからムースだけもらえないか頼んでみました。
最終便ということで機内で食事をせずに寝ているだけの人も多かったので、食事も余っているということでムースをもう1回頂けました!
    飛行機はほぼ定刻に羽田空港に到着。すでに夜の11時を過ぎた時間ということもあって、空港ターミナルは驚くほど静かでした。
これにて今回の九州旅行は完結です。






            
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