「きょう、あたらしいロマンスカーで」
初冬の箱根ワンデートリップ の続き


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伊勢原駅を通過するあたりから車窓は徐々に山めいてきて、 「街のロマンスカー」から「山野のロマンスカー」へと変貌していきます。

正面に見える丹沢の山々のさらに向こうには、富士山が見え隠れし始め、遠くまで来たんだなと実感!


頻繁にロマンスカー同士が行き交う中、今日は最後の1編成となったHiSEロマンスカーと出会いました。

VSEの登場はHiSEロマンスカーの置き換えも兼ねているので、いわば「新旧世代交代の一瞬の出会い」のシーンということになりましょうか。
そのため、HiSEロマンスカーはVSEの登場以来、予備車的な扱いとなって本線上では時々姿を見せるだけになってしまいました。 心なしか、鮮やかだったワインレッドも色褪せて見えます。


渋沢駅を通過すると、車窓からは人家が姿を消し一気に山深くなります。
新宿駅を出てから、車窓から人家が途絶えることは無く、それだけいつもこの区間に入るとハッとさせられるほど 四季折々の移ろいが見られます。

このあたりの渓谷沿いの走行シーンは、小田急ロマンスカーのTVCMや広告媒体にしばしば登場し、 ロマンスカーの旅路の中でも最も旅情豊かに車窓が映える場面です。

さぁ、トンネルを抜け、山向こうへと飛び出ると・・・・


目の前には、手に届きそうなほど間近に富士山が!

車内からは一斉に「あ、富士山!」と歓声が上がるほどで、ロマンスカーらしい行楽気分のボルテージが一気に高まる 瞬間です。


新松田駅の手前には、JR御殿場線への連絡線が分岐しています。

1日8回、JR直通の特急「あさぎり」号が通るだけの線路です。


新松田駅を通過して酒匂川に掛かる鉄橋を渡ると、もう小田原はすぐそこです。

余談ですが、下りVSEロマンスカーは新宿を出ると西へとひた走るわけですが、 これが太陽が顔を出している方角へと向かって走るわけで、特に展望席は温室のような暑さと眩しさです。
真正面のパノラミックウィンドウには、多少のUVカットコーティングがなされているようですが、 常にまともに太陽光に向かうことになるので、眩しいこと眩しいこと!
実はVSE展望席が一番楽しいのは、上り列車の前展望かもしれません。


ロマンスカーカフェは小田原到着を前に営業を終了。 てっきり終点の箱根湯本までオープンしているのかと思っていたので、グッズやお土産を買いそびれてしまいました。

ロマンスカーにご乗車予定の方、車内でのグッズ購入はお早めに!


もうまもなく小田原駅に到着です。

車内放送が流れると、車内の半分くらいの人が立ち上がりガサゴソと降り支度を始めました。


小田原駅に到着。思ったほど下車客は少なく、ほとんどの乗客が箱根湯本まで乗りとおすようです。

小田原と箱根湯本間は1時間当たりの列車本数のうち1/3が特急ロマンスカーという状態ですが、 この区間だけのロマンスカー乗車は認められていなくて、利用者は不便を被っていました。 ですが、今年の10月から200円の座席券を購入すればロマンスカーに乗れるというルールになり、 今日も何人かが小田原からこのVSEに乗り込んでくる姿が見受けられました。


VSEは「パ〜プ〜♪」とチャイムをかき鳴らして、小田原駅を発車。

左手に小田原城を見ながら、箱根登山鉄道線へと乗り入れていきます。


箱根登山鉄道線は単線で、急カーブと急勾配の連続なのでロマンスカーも実にゆっくりとした足取りで進みます。

小田原からは線路のレールが3本に。よく雑学クイズにも出てくるネタなのでご存知の方も多いとは思いますが、 小田急の電車と登山鉄道の電車では使用しているレール幅が違うためですね。
右のレールを共用に、真ん中のレールをロマンスカーなどの小田急の電車が、一番左のレールを登山電車が使っているというわけです。 (ちなみに画像の一番右側のレールに沿うように敷かれているのは、脱線防止用のガイドレールです。)


途中で複線になって、反対側の線路にはEXEロマンスカーの「はこね」号がこちらの通過を待っています。

てっきり行き違い用の信号所なのかと思ったら・・・


これがなんと「駅」!

この「風祭駅」は、EXEロマンスカーの2両と半分くらいしか有効長がありません。
てっきり箱根登山鉄道の電車だけが停まるのかと思ったら、 小田急の電車も停車する駅らしく、その時は箱根湯本側の1両だけのドアを非常用コックで開放して、駅員さんが手動で ドアを開けるらしいです。


箱根登山鉄道線は進むごとに勾配が激しくなり・・・ご覧のように展望席からは急な坂道がよく分かります。

VSEロマンスカーはキューキューと車輪を鳴らしながら、一歩一歩踏みしめるように坂道へと挑んでいきます!


木々に囲まれた山道を進むロマンスカー。小田原を出てからもうすでに相当な高さまで上ってきています。
途中には最大40‰の急勾配が連続して、座席に座っているだけでも「平坦ではないところを走っている」 というのが分かります。

こうして見るとどっかの高原森林鉄道のようで、大柄なボディのロマンスカーからの眺めとはとても思えませんね。


さぁ、ついに終点「箱根湯本」駅が見えてきました!

山と川に挟まれた狭い場所に、駅と街並みがへばり付いているかのような「温泉街」らしい佇まいが展望席からもよく見えます。


定刻に終点・箱根湯本駅に到着。

「ここまでは旅のプロローグ」とばかりに、乗客たちは我先にとVSEロマンスカーを降りて、 向かいのホームで待つ登山電車に乗り込んだり、改札口を出て行きます。

展望席からもあっという間に人の気配がなくなりました。


展望席やカフェカーなどにこんなプレートがこっそり掲げられているので、ご乗車の際にはぜひ見つけてみてください。

VSEロマンスカーをデザインした岡部憲明先生のアーキテクチャワークプレート。
同氏は建築を主に手がけるデザイナーで、日本国内の有名作品に、レンゾ・ピアノ氏とデザインした「関西国際空港」のターミナルビルなどがあります。 鉄道車両のデザインはこのVSEが処女作で、到底「鉄道屋」の頭から生まれないであろうデザインが随所で見られるのは、 建築家らしい発想が生かされている証拠。

水戸岡鋭治先生が787系「つばめ」で魅せた「楽しい電車」の再来のようで、今後、岡部先生が鉄道車両に関わってくるのか、大変楽しみです。


ホーム上はロマンスカーから降り立った人、これからロマンスカーに乗る人、登山電車乗り場に向かう人、 立ち止まって談笑するグループに記念撮影の家族などで、狭いホームと駅構内は錯綜状態。

人の動きが切れた一瞬に、VSEの先頭部分を写真に収めます。まさに「流れるような」という表現がピッタリの、 ダイナミックかつ麗しく艶やかなボディ。このVSEを人間的に例えるなら、間違いなく「女性」でしょう。


新宿駅では撤去されてしまったVSEのイメージボードが、箱根湯本駅ではまだ健在です。

遠めに見ると・・・VSEの並びのよう?!














-SONIC RAIL GARDEN-

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