石勝・根室線系統の特急は「スーパーおおぞら」の登場により。速度向上と到達時間の短縮・車内サービスのグレードアップが図られましたが、 帯広止まりの「とかち」は長らく183系が使われ、速度はもちろん車内設備も新型車両には見劣りする存在となっていました。 そこでJR北海道では、帯広・釧路特急の全体的なスピードアップとサービス向上を掲げ、2007年10月に「とかち」に新型車両キハ261系を投入。 すでに宗谷特急「スーパー宗谷」で使われていた車両に、「とかち」向けアレンジを加えてキハ261系1000番台という区分けでの登場となりました。 2009年10月には増備用の車両が出揃い、「とかち」は全列車「スーパーとかち」に。 帯広・釧路特急は道内の他の長距離特急群で一早く全ての特急の「スーパー」化が達成されました。 |
同じキハ261系で先にデビューしていた「スーパー宗谷」ではわずか3列・全9席というミニマムな空間だったグリーン客室。 「スーパーとかち」では、JR北海道のドル箱路線である釧路方面特急の一翼を担う存在ということもあってか、1両丸ごとがグリーン車に。 シートピッチは1,145mm。1+2の3アブレストが8列で全24席。 座席は深い色合いのコバルトブルーに色付けされた牛革シートとなっていて、しっとりとした風合いの表面が美しいです。 アームレストは木製パーツを用いています。白く淡い色調の木製パーツと青い牛革との組み合わせがとても落ち着いた高級感。 グリーン客室で最も目を見張り、また印象深いのが、空間全体のコントラスト。 天井全体がコバルトブルーで仕上げられていて、座席も青一色。そこを真っ白な壁で包み込むかのような空間。 この青と白のコントラストが、不思議と色調のキツさを感じさせず、目に鮮やかながら癒しのような雰囲気に満ちています。 ヘッド部分のカバーとして掛けられている白いリネンも、青い座席がズラリと並ぶ中でちょうどいいアクセントとなっています。 「スーパー宗谷」「スーパー白鳥」以来のデンマーク国鉄とJR北海道の共同デザインワークですが、 両者とも半室構造のグリーン客室だったため、空間全体で「魅せるデザイン」はこの「スーパーとかち」で真骨頂を発揮したかのようです。 座席と空間全体の醸し出す上質さでは、数ある日本国内の特急グリーン客室の中でもトップクラスだと感じました。 座席のヘッド部分は上下に可動。柔らかさはそこそこで、リクライニング時にゆったりと頭を乗せることができます。 このヘッド部分ももちろん牛革製。 テーブルはインアーム収納タイプのみを装備。2面ワイド展開が可能で、片面展開だけでも利用できます。 窓側にはパソコン用の電源コンセントが設置されています。2人掛け席側には2口。位置的に通路側の乗客はちょっと使いにくいです。 足元のフットレストは土足面(カーペット敷き)と素足面(牛革敷き)の2面展開。 床面は一面のカーペット敷きで、床下からの防音と足に掛かる負担軽減効果に。ちなみにカーペットはウール100%。 リクライニング時に座面が前方にせり出しますが、キハ283系「スーパーおおぞら」のそれよりせり出し幅が小さくなっています。 しかし、掛け心地に影響されるほどのものは感じません。 この座席は「鉄道車両の座席」というより「上質なインテリアソファー」という感じの掛け心地です。 革座席の特有な匂いや横滑りするような感じはありませんし、腰周りの沈みも充分なものです。 カッチリとしたホールド感を誇る「スーパーおおぞら」のグリーン席とは、いい意味で対照的な座席。 帯広までなら「スーパーとかち」と「スーパーおおぞら」、どちらのグリーン席を選ぶかはこのあたりの好みに左右されそうです。 |
自由席車両は2色のカラー設置がなされていて、グリーンとブルーが存在します。 これらもデンマーク国鉄との共同デザインによるもので、「スーパー宗谷」以来おなじみの色調のものが採用されています。 シーチピッチは、道内の他の「スーパー」特急の普通車と同じ960mm。 JR北海道ではすでに「標準」となった感のあるこの座席は、座った時の腰がフカッと沈む感触が気持ちよいです。 座面・背ずりとも体のラインにフィットした成型がなされていて、ホールド感たっぷり。 リクライニング量はやはり「ほどほど」で、これは「スーパー宗谷」の車両でも感じたちょっと惜しい点です。 座席背面にはテーブルと網ポケットが装備されています。テーブルはワイド幅で、A4サイズのノートパソコンが載せられる大きさ。 網ポケットは、車内誌や車内販売メニューを差し込んでおくラック程度のもので、ペットボトルなどを奥深くまで差し込めません。 座席間のアームレストは幅広になっており、座席間の仕切りとしては充分なもの。座席間への跳ね上げ収納も可能です。 窓周りでは、窓框部分に幅があるので携帯電話や飲み物を置いておくことが出来ます。 床面のダイアゴナルパターンは、デンマーク国鉄との共同デザインで生まれたもの。 これも「スーパー宗谷」以来、JR北海道の新型特急車ではおなじみのデザントとなりました。 車内の奥行きに広がりを感じさせるもので、車内がより広く見えるデザインによる空間マジックが隠れた効果となっています。 天井は通路に沿って一直線にコバルトブルーで塗られていて、空間全体で見た時に奥行きにかなり広がりがあるように見えます。 この天井のカラーデザインやブルーの色合いも北欧らしい色彩感覚で、日本離れした雰囲気が感じられます。 登場当初は普通車は全てこのタイプの座席でしたが、後に指定席は下で紹介する「グレードアップシート」に交換されました。 |
2006年12月から登場した、JR北海道の長距離道内特急の指定席用「グレードアップ・シート」。 まずはキハ283系「スーパーおおぞら」の指定席車から座席交換が始まり、徐々にキハ281系「スーパー北斗」へも拡大。 この「スーパーとかち」用のキハ261系にも「グレードアップ・シート」への交換が波及していきました。 現在では、これら3列車の指定席となる車両では、基本的にこの座席を搭載した車両が当たるようになっています。 座席は、789系「スーパーカムイ」の「uシート」の原型となったもので、ほぼそのままの形で「uシート」へと受け継がれています。 シートスペックの数値では、これまでの座席より座席幅を2センチ広げて、背ずりの高さを8センチ高くしたそうです。 「uシート」では装備されていた電源コンセントは、こちらでは装備されていません。 ちょっと気になったのが、座席幅を広げたためか座席がかなり窓側に詰めて設置されているような感じがあります。 そのため窓側席では外側の肘掛に腕を載せようとすると、ちょうど二の腕の部分が窓枠に干渉してしまって不快に感じます。 せっかくの座席なのに、こういう点で快適さを欠いてしまったのは残念。 シートインプレションは、789系「スーパーカムイ」のページで書き綴ったものと同じ感想です。 とにかく自由席の車両とは、座席そのものの快適性や付帯設備の利便性が向上しているのはもちろん、 座席そのものの「見た目」が全く違うもので、明らかにこっちの方が「重厚な高級感」を醸し出しています。 指定席料金との差額を考えると、これは過去に無いほどの落差を持った格差。 ここまでの違いがあるということを乗ってから知ったのならば、誰でも次回からはこっちにしようという気になるはずです。 |
サニタリースペースは、いずれも洋式個室・男性用小用個室・洗面室から構成されています。 洗面室は通路に向かって斜めの角度でシンクが設置された、ちょっと変わったスタイル。 2号車のサニタリーは車椅子対応の大型個室となっていて、ドアは2枚扉でワイドに開き、もちろん手すりなども完備。 室内には洋式トイレ、洗面台、収納式のベビーベッドを備えています。 |
各車両ともデッキの乗降ドア内側がライトグリーンに塗られていて、明るい雰囲気になっています。 4号車には電話室がありますが、JR北海道では車内電話サービスを終了したため、現在では電話を使うことが出来ません。 電話室のドアは封鎖されていないので、現在は携帯電話ブースとしてこの小部屋を利用することができます。 1号車グリーン車には多目的室があり、授乳や着替え、気分が悪い時の休憩に使えます。 常時施錠されていて、利用時には車掌への申し出が必要です。 一部の車両間には大型の荷物置き場が設置されています。 トマム・サホロのスキーリゾートを行く列車ということで、冬場はスキー板やスノーボード置き場として使われています。 両端の先頭車は運転室直下が通路となっているので、最前方・最後方となる場合はこの通路が展望スペースとなります。 (キハ261系「スーパーとかち」の増結は中間車で行われるので、この先頭車側にさらに増結車を連結することはありません) |