ANAが2009年11月に発表した新しいサービスブランド「inspiration of japan」。 その新ブランドの元で生まれた、新キャビン仕様のボーイング777-300ERが、2010年4月に成田−ニューヨーク線でデビューしました。 新しいプロダクトは、「イノベーティブ」「際立つ個性」「モダン・ジャパン」がキーワード。 既存概念にとらわれることなく、自由で柔軟な発想の元で、キャビンやサービスの刷新が図られました。 ファーストクラス・ビジネスクラスともにプライベート感の増した空間となり、エコノミークラスもシートピッチを拡大。 1世代前となった「ニュースタイル」仕様機のB777-300ERも、順次この「inspiration of japan」仕様機への改造が進行中。 成田−ニューヨーク線以外の、成田発着の欧米各路線へと新仕様機と新サービスの拡充が行われています。 |
「inspiration of japan」プロダクツによって生まれた新しいファーストクラス。その名は「ANA FIRST SQUARE」。 「ファーストクラス」は、客室最前方Aゾーンに8席が設定されています。 席配置はB777-300ER「ニュースタイル」と同じですが、新仕様では「SQUARE」の名前の通り、座席が真四角に囲われています。 これによりニュースタイル機のカプセルのような雰囲気から一転、キャビンは個室が整然と並んでいるような雰囲気に変わりました。 世界的なファーストクラスの個室化の潮流の中、ANAではこのファーストクラスを「個室風」とし、あえて完全な個室とはしていません。 キャビンアテンダントの目が行き届く作りとすることで、常に搭乗客の発するウォンツを察知して即座にケアできることを目指しています。 確かに自席の空間と通路は完全に隔離されておらず、「半個室」という感じがしますが、実際に座ってみるとこれが実にちょうどいい。 座席の両脇は仕切りで完全に隔てられているので、座った状態からでは左右の客席は全く見えません。 一方で、通路から自席へと入る部分(仕切りが切れている部分)からはCAさんとアイコンタクトが取り易く、即座の対応が実に心地よい。 また、座席左右の仕切りが低いように見えますが、座ってみると低さは感じず、逆に天井方向への開放感で空間が広く感じます。 仕切りの外側はカッチリとした都会的なデザインですが、仕切りの内側は木目調のインテリアで上品かつ落ち着いた雰囲気。 シートコントローラーやエンターテイメントコントローラーなどは、手元からすぐに手を伸ばして操作できる位置に集約。 小物の収納スペースも増え、それらは小扉付ですっきりと収納することができます。 液晶モニターは23インチ。旅客機内のサービス用パーソナルモニターとしては、各社エアラインと比較しても最大級の大きさです。 モノター下から引き出すダイニングテーブルは、ANAカラーの深い青。鏡面仕上げのような美しさが引き立ちます。 ニュースタイル機では固定式だったカクテルテーブルは、この新仕様では手前に90度回転で引き出すことができ、便利になりました。 座席後方の仕切り通路側(外側)には扉があり、ここはジャケットなどの上着収納スペース。窪みには靴を入れることも可能です。 ベッドモードはもちろんフルフラットに。座席モードとベッドモードはボタンひとつで切替操作が可能です。 |
新仕様機で最も大きく変化し、またANAでも最も力を入れたであろうと思われるのが、この新しいビジネスクラス。 これまでのビジネスクラスの愛称「CLUB ANA」を廃し、新仕様キャビンは「ANA BUSINESS STAGGERED」の名が付けられました。 「STAGGERED(スタッガード)」とは、「少しずつずらした」の意味を持ち、その意味の通り座席を交互に千鳥状にずらして配置。 この複雑な座席配置にすることで、全座席の「通路側席」化とベッドモード時のフルフラット化が可能となりました。 座席は基本的に「隣の席」が存在しない、全て独立した座席となっています。 中央列は1+1配列となっていますが、各席間はサイドテーブルとパーテーションが存在するため、隣席とはかなり距離があります。 座ってみると、驚くほどプライベート感があります。「個室」とまではいかない作りながら、座っていると感覚的にはほぼ個室も同然。 特に通路からひとつ内側へと入る恰好になるA席・E席・F席・K席では、隔離された空間のような雰囲気が強くなっています。 各座席はサイドテーブルを擁し、これが各席のプライベート感を高めている理由のひとつ。 視界に自由に使える広い空間(サイドテーブル側の空間)が入ってくることで、手元の広さが実際よりも何倍にも広く感じます。 テーブル表面は、ANAのカンパニーカラーのブルーで仕上げられ、テーブル内側に仕込まれたネオンもブルーに点灯。 特に夜間飛行では、このブルーのネオンが周囲の空間へと反射することでサイバーで宇宙的な雰囲気が自席空間に漂います。 メインテーブルはモニター下から引き出し、さらに手元へと引き寄せることも可能。 ワイドなサイドテーブルとともに活用すれば、手元でパソコンを、脇には書類を広げての作業も可能で機上でのお仕事も捗りそう。 シートコントロールとエンターテイメントコントローラーはサイドテーブルの下部、手元周辺に集約して設置。 液晶モニターは17インチのワイドスクリーンで、タッチパネルによる操作も可能となっています。 座席は、日本のエアラインのビジネスクラスでは初となる完全なフルフラットを実現。 これもスタッガード配席が可能にしたもので、足が入り込む空間は前席のサイドテーブル下の空間となります。 |
機体中央となるCゾーンとDゾーンの間の空間には、ビジネスクラス専用のバーコーナーがあります。 また、L2ドア付近とL5ドア付近には、機内から国際電話が掛けられる「ANAスカイリンク」が設置されています。 ラバトリは機内10箇所に設置。 ファーストクラスゾーンのラバトリは、シンク周りが透明なパネルで構成されているクリスタル調で、上品な雰囲気が漂います。 トイレはウォシュレット付き。足元には、ナイトウェアへの着替えなどに使える、折り畳み式のフットマットも設置されています。 機体最後方のL5ドア近くのトイレは、珍しい「男性専用」のラバトリとなっています。 |