「衝撃的」なフォルムとインテリアで登場した特急「ソニック」。 鉄道誌のみならず、建築誌やファッション誌、インテリア雑誌から果ては男性週刊誌にまで取り上げられました。 さまざまな業界に巨大ムーブメントを引き起こしたこの「不思議の国から来た列車」は、 787系「つばめ」に続いて、色使いの面で多くのJR特急に革命をもたらしました |
グリーン車は半室構造。2+1配置の3アブレストを5列で、たった15席のみの設定です。 開発当初、883系ではグリーン車の設置を想定していなかったそうで、 「フルムーン」と「豪遊券」利用者のために急遽設定されたそうです。(「豪遊券」は現在販売廃止) そのためか、どうも間に合わせのような印象があり、後述の普通車とはシートサイズ面でもあまり差がありません。 客室構成はオープンキャビンのみから成り立っており、787系「つばめ」のような個室やトップキャビンはありません。 そのかわり「つばめ」では叶わなかった「前面展望」が、後述の「パノラマキャビン」で実現しています。 今までの特急グリーン車車両は「静けさ」と「落ち着き」を求めるインテリアだったのが普通でした。 ところがこの「ソニック883」はご覧の通り、耳のようなヘッドレストに原色を織り交ぜた柄のカーペットの柄。 まるで「動き」「激しさ」といったものを求めているかのようなインテリアになっています。 キャビン内は、座席のサイズが小さめなのと、振り子車特有の天井の低さがないので、全体的に広々としています。 シートピッチは1,150mm。九州の特急にしては若干狭めで、フットレストの取り付け位置で「狭さ」が拭えません。 このピッチだとフットレストの高さと据付位置が、どうも着座姿勢のバランスを悪くさせてしまいます。 もう少し小型のものを、展開状態では立たせた状態で広がると足への負担も軽減されるのではないかと感じます。 座席モケットには、鉄道車輌で初めて本格的な「革」を用いました。 「ソニック883」の統一イメージ(と同時にキャラクターでもある)の耳型ヘッドレストは、上方向へ高さ調節が可能。 全体的に、高級乗用車のシートをほうふつさせます。 |
「ソニック883」のグリーン席はデビュー当時から全席禁煙でしたが、なぜか「灰皿」を装備して登場しました。 後日、やはり「禁煙」にもかかわらずタバコを燻らす乗客が絶えず、 その後この灰皿部分を埋めたり、丸いアンテークに取り替えたりする対応に迫られる結果となりました。 リクライニングは、これまた前例のない電動式。 低い電動音をたてて倒れるリクライニングは、倒れる動きがゆっくりすぎて、レスポンスに若干難アリ。 実際に利用してみての感想は、もともとが普通車との差が薄いために「ゴージャスさ」は感じられません。 シートのボディホールドは革特有の滑り感があり、この点でも普通車の方が上回っていると思います。 もっとも閉口させられたのが、独特のシートデザインが影響してしまった背面の収納テーブル。 テーブルを広げると手元から程遠い場所で展開されてしまい、「実用性ゼロ」なのには参りました。 それでもついついこのグリーンを選択してしまうのは… 「ソニックレディのドリンクサービス」と「パノラマキャビンからのダイナミックな走行展望」があるからでしょうか?! |
コックピットの背後には、グリーン車乗客専用の展望コーナー「パノラマキャビン」があります。 円柱形のパーテーションの向こうには、木製の円形ベンチとテーブルカウンター。 乗務員室ドア寄りには「ソニックレディ」さんのサービススペースがあり、ドリンクとおしぼりのストッカーがあります。 パノラマキャビンのベンチは木製で長居にはあまり向きませんが、目の前に流れるダイナミックな展望が存分に楽しめます。 特に振り子を作動させながら高速でカーブに突っ込んでいくシーンは、ファンならずとも見入ってしまいます。 登場初期の編成は、ベンチの木材質が赤めの「チェリーウッド」で、ソニック特有の派手さに色を添えています。 後期の増備編成からは材質が「シルキーオーク」に変わり、おとなしい雰囲気に変わりました。 |
普通車の色使いは、爆発的なまでに激しく派手になっています。 ブラックベースのモケットと原色炸裂のカーペットもヘッドレストが織り成すコントラストは物凄いパワーを感じます。 シルバーの座席框体は、座席の機能とはなんらリンクしない装飾だらけで、まるでテーマパークのアトラクションライドのよう。 こんなにブッ飛んだインテリアとカラーパターンの列車は、地球規模で見回しても他にはないでしょう。 座席は一見チャチで、子供遊びのように見えますが・・・最初から狙ったのか、デザインしているうちに偶然そうなったのか、 非常によいボディーホールドのチカラを備えています。 程よい弾力のある大きめの座面と、バックレストの腰部分に付けられた微妙なカーブラインが身体に非常に良くフィットします。 シートピッチ1,000mmと足元のTバーフットレストも着座姿勢に無理が無く、全体的に絶妙のバランスです。 コレ、鉄道車両に搭載されている普通車座席の中では「最強」ではないでしょうか。 ただ、背面収納のテーブルがグリーン席同様の理由でまったく使い物になりません。 バックレストの大きさと高さから、これ以上はこの背面テーブルの大型化は望めないので、 せめて手前にスライドするか、テーブル支柱の傾斜角度を変えて、手元で展開できるようにしてほしいです。 ヘッドレストはグリーン車同様に上下での高さ調節が可能になっています。(ウィング式には可動しません) ソニックを批判する文章を見ると、必ずこのヘッドレストの形状と色彩が最初にヤリ玉にあがりますが、 このヘッドレスト、もたれてみるとこれまた頭をよくホールドしてくれます。 カーペットの柄も、ド派手に賑やかに! まるで1編成の頭から尻尾までが街のストリートのようです。 一部車輌を除いて、室内なかほどにはセミコンパートメントが設けられています。 「ソニック」では「センターブース(車輌のインフォロゴでは「CB」と案内)」と呼んでいます。 787系「つばめ」ではビュッフェの隣りに集約して設置されていましたが、いまいち認知度が低かったため 一般客にこういう設備もあることをもっと知ってもらおうという意味も含めて、このように分散されて設置されました。 |
3号車の一角に「サービスブース」と呼ばれるミニショップがあります。(現在は「車内販売準備室」になっています) アルミパネルの一部は開口できるようになっており、内側の車販準備室もコーヒーメーカーや大型冷蔵庫などを完備していて 少しの改造で、すぐに「プチビュッフェ」へと変身できそうです。 「ビュッフェ」を連結した「つばめ」では、ビュッフェ兼車内販売用のメニューが各席にセットされていて、 「何を食べようかな〜?」と旅行気分を盛り上げてくれていますが、「ソニック」でも車内販売用のメニューが用意されています。 主にお弁当・おつまみ・飲み物が内容の中心ですが、「ソニック」の増発に従ってメニューの内容も豊富になっていき、 途中駅からの積み込み弁当や、洋菓子とコーヒーの喫茶セット、沿線のお土産品なども充実していきました。 ソニックマスコットマークをあしらったオリジナルグッズも豊富に揃っていて、思わず目移りしてしまいます。 |
1号車のデッキにある巨大なカプセルは、車椅子対応の大型サニタリースペースになっています。 アルミパネルで構成された室内は、もはや「列車内のトイレ」といったカテゴリー区分を超越しています。 洗面台の「鏡」は裏側が窓になっていて、鏡のまわりに自然光が漏れる仕掛けつき。 室内には着替え用の踏み台、折り畳みベビーベッドが収納されています。 その他の車両のサニタリーコーナーは「振り子車両」ゆえの制約があり、非常にコンパクト。 2号車のデッキには「マルチスペース」があります。 室内は簡単なベンチシートがあるだけですが、気分が悪い時などには簡易ベッドとして使えるほか、 カーテンを引くこともできるので、赤ちゃんへの授乳などの際にも使えます。 各車両ともデッキは非常に凝った作りになっています。 まず乗客の目に触れる部分でもあり、そのインパクトがあればこそ、その列車が強烈な記憶となって残ります。 1号車のデッキは深いブルーのアルミパネルとレッドの枠で飾ったガラス扉。 この演出はこの1号車のみで、他の車両とは一線を画しているので、ぜひこのデッキからも乗車してみてください。 他の車両のデッキは全壁面にアルミパネルを使い、「つばめ」のデッキ以上のメタリック感があります。 小さく覗かせるショウウィンドウには、JR九州の特急のPOPがあったり、オブジェが飾られていたり…。 奇数号車の客室仕切りには、全面ガラスの自動ドア。まるで街中のお店にでも入るかのような感覚です。 787系「つばめ」以上にガラスを多用したインテリアは、ドイツの高速列車「ICE3」へと派生し、 さらに国内でも、JR東日本のE653系「フレッシュひたち」などの汎用特急シリーズに大きな影響を与えました。 各車輌のデッキには「コモンスペース」と呼ばれる息抜きの場が設けられています。 「コモンスペース」やデッキは、それぞれの車輌でインテリアや趣きが異なるので、 ついつい出歩いてみたくなります。まるでひとつの「街」を歩いているような感覚になりますよ。 「パノラマキャビン」からはコックピットが丸見えです。 L字に展開するコックピットは基本的な作りが「787系」をベースとしています。 サンバイザーにも「sonic」のロゴが大書きされています。 |