1995年に衝撃的なデビューを飾ってから早10年目を迎えた883系“sonic883”。 自らを「ワンダーランドエクプレス」と名乗り、極彩色で彩った車内と奇抜なエクステリアは話題をさらい、 対高速バスでジリ貧に陥っていた日豊特急の活性化と利用者増加に大きく貢献しました。 その後の増発とスピードアップで大分方面の利用者をJRへと呼び戻し、後継車両885系「白いソニック」も登場。 「派手な装いで人々の目を惹きつける役割は完了した」ということで、10周年目の節目に大胆な改装が行われました。 リニューアルのコンセプトは「子供のワンダーランドエクスプレスから、大人のWONDERLAND EXPRESSへ」。 |
リニューアル前は、まさに編成全体が「ワンダーランド・アトラクション」といったファンキーな装いでしたが、 その中でもグリーン席は原色のカーペットに黒光りする革製シートで、「異国」というより「異世界」の雰囲気を漂わせていました。 今回のリニューアルでは、座席数や座席配置は変わらずで、室内レイアウトに大きな変化はありません。 座席そのものの交換も行われていませんが、メタメタに黒光りしていた革が、しっとりとした「こげ茶色」になり、 壁から天井までグレーで塗られていたのが、艶のあるパールホワイトに塗り替えられました。 さらに“カラフル”という表現を越えた極彩色のカーペットは、渋い色合いのグリーン・ブルー・オレンジのモザイク柄に。 目立つ部分ではたったこれだけの改装ですが、驚くほどに車内の雰囲気は一変しました。 以前の雰囲気が「宇宙船チック」だったのに対し、まるで「高級スイーツショップ」のような上品さに。 キャラクター性ばかりが突出していたヘッドレストも、まるで白い箱に並べられた「チョコレート」のように見えてきます。 窓の下にはコンセントが装備されました。2人掛け席のほうは1つだけなので、実質「窓側席専用」といった感じです。 ブラインドは以前の透過性のあるモザイク柄から、遮光性のあるレインボーカラーに。 さらに窓框下部には木製の細長いカウンターテーブルが増設されていて、飲み物などをちょっと置くのに利便性が増しています。 しかし、座席そのものの構造が変わっていないため、使い勝手の悪い背面収納テーブルはそのまま。 この点は、やはり座席を大きく改造するか、座席そのものを交換しないと改良にはならないようです。 |
コックピット背後のグリーン車乗客専用の展望コーナー「パノラマキャビン」も変わらず設置されています。 初期編成の「チェリーウッド」と後期編成の「シルキーオーク」による素材の違いもそのままで、 引き続き2タイプの「パノラマキャビン」が混在しています。 |
赤・緑・青で彩られたヘッドレスト、星屑柄のモケット、幾何学模様を極彩色で織り込んだカーペット・・・。 客室のどこを取っても到底「ビジネス特急」向けの装いとは思えない、ブッ飛んだインテリアが「ソニック883」の特徴でした。 リニューアルコンセプト「子供のワンダーランドエクスプレスから、大人のWONDERLAND EXPRESSへ」が、 最も表れているのが改装後の普通車です。 まず、座席の彩りの変化に「子供」から「大人」への成長を感じさせます。 落ち着いた朱色や深みのある茶色、癒されるような緑色、濃い目ながら瑞々しさに溢れる青色。 3原色や星屑のようなポップチュ−ンのカラーリングは、もうどこにも見当たりません。 グリーン車が「高級チョコレートショップ」の装いなら、こちら普通車は「和」の文化で彩られた街のようです。 緑色とコゲ茶色のモケットを纏った車両なら店頭に抹茶とおまんじゅうを並べた「和菓子屋」、 瑠璃色の車内は伝統的な染物反物が並んだ「着物屋」、朱色の車内はどこか「社寺」のお祭りを思わせます。 決してモノトーンの装いで「大人」とせず、シックな色合いで「ソニック」らしいカラフルさを継続させる。 なるほど「大人のWONDERLAND EXPRESS」と謳ったこのリニューアルの真髄は、このへんにありそうです。 |
今回のリニューアルによって床面のカーペットは剥がされ、全面フローリングへと改装されています。 このフローリング、よ〜く見ると「883 SONIC FAMILY」「HAKATA OITA」と四角い焼印が押されていて、 このあたりの細かい芸当と凝り様はさすがJR九州。 窓框下にはグリーン車同様に小物を置ける小さなカウンターが増設されています。 グリーン車と合造となっている1号車半室普通席には窓下にコンセントが設置されています。 「車内でパソコン使う」「モバイルの充電したい」という方は、1号車の窓側席指定券を押さえておきましょう。 |
今回のリニューアルで普通車客室は雰囲気こそ大きく変われど、 座席そのものやシートピッチはいじられておらず、基本的な車内レイアウトは変わっていません。 しかし、客室の真ん中にあったセミコンパートボックス「センターブース」が姿を消しています。 自由席車両では、始発駅の座席争奪戦でまずココが埋まるほどに人気があったこの区画ですが、 指定席となると見知らぬ乗客同士が相席となってしまい、けっこう不評を被っていたそうです。 今回のリニューアルではその点を考慮してか、普通のリクライニングシートに換装されました。 さて、元々「ボックスシート」だったところへオープンなシートを設置するとどうなるのでしょう? 「センターブース」の窓は、ボックス席のピッチに合わせたサイズの大型窓になっていました。 で、この窓サイズを変えずに普通の座席を設置した結果、向きによって「窓なし席」が出来上がってしまいました。 この窓なし席は、下記の座席番号で発生しています。 7両編成では、2号車・4号車〜6号車の7番ABCD席と8番ABCD席、7号車の6番ABCD席と7番ABCD席。 5両編成では、2号車・4号車の7番ABCD席と8番ABCD席、5号車の6番ABCD席と7番ABCD席。 先頭を小倉向きで運転の場合は、中間車は7番列は微妙に窓が遠く、8番列は完全に窓なし席。 先頭が博多・大分向きの場合は、中間車は8番列は微妙に窓が遠く、7番列は完全に窓なし席。 ちなみに7番列と8番列のシートピッチは「センターブース」時代のままで、1,300mmと超ワイド。 小倉向きの場合6番列が、博多・大分向きの場合は5番列が、窓割りが一致したままシートピッチ1,200mmとなり、 ちょっとしたボーナスシートとなっています。 |
3号車の「サービスブース」は、アルミパネルを多用した改装前の雰囲気のままを色濃く残しています。 曲面壁には「プチ・ビュッフェ」の準備工事である開口部がそのまま残されていました。 車内販売準備室のギャレイ設備には特段の変わりは無いようです。 2号車のデッキの「マルチスペース」も健在です。客室同様に壁面がホワイトに塗り替えられ、明るい雰囲気になりました。 ベンチシートのモケットは、以前の「ソニック」の頃のままです。 一部の編成のマルチスペースは、画像のようにベンチシートが撤去され、木製のパーテーションが設置されています。 向かいのコモンスペースも同様の改造がなされ、ちょっとした「小部屋」に生まれ変わっています。 |
アルミパネルで覆われたサニタリーコーナーの各個室は、客室同様にホワイトベースに塗り替えられ、 以前の近未来的な雰囲気から一転、明るく清潔感に溢れる雰囲気に生まれ変わりました。 1号車の車椅子対応個室は、観音開きのドアから引き戸に改造されました。 2枚扉のロックをそれぞれ外して開けるという面倒が、簡単に軽い力でスーッと開けられるようになりました。 出入りドア付近やデッキ、フリースペースの「コモンスペース」などは、基本的に改装前のままを保っており、 アルミパネルで囲まれたギラギラメタリックな「ソニック883」らしい雰囲気を残しています。 1号車デッキからグリーン客室へのアプローチアイルは、2タイプが確認できています。 1つは、グリーン客室ドア近くのカーブガラスに囲まれた部分に電話コーナーが設置されているタイプ。 もう1つは、通路に電話が設置されていて、カーブガラスのスペースはガラス戸付きの「喫煙コーナー」になっているタイプ。 |