JR九州 800系新幹線 「つばめ」

 

博多−西鹿児島(現:鹿児島中央)の全線開通に先立って、新八代−鹿児島中央間の部分区間で先行開通した九州新幹線。
「JR九州」にとっては初となる記念すべき新幹線車両は、800系の形式が与えられ、愛称も一般公募から「つばめ」に決定。
伝統の愛称がこの真っ白な車両で、ついに日本を代表する高速列車「新幹線」の愛称にまで登り詰めました。

車体は既存の700系をベースに、ドーンデザイン研究所がオリジナルの顔を作り上げ、700系の面影もないほどの斬新なデザインに。
車内はJR九州オリジナルの車両ということもあって、大胆で枠にとらわれない奔放さがこれまでの「新幹線」とは一線を画しています。


−800系 TSUBAME デザインコンセプト−

デザインコンセプト
日本・九州のアイデンティティ 先端技術と伝統素材と職人技術の融合
天井:古代漆色
エクステリアテーマ
九州初/21世紀を走る/親しみ/上質感
ベースカラー:パーフェクトホワイト(純白)
インテリアテーマ
日本の伝統美/地元九州の素材を生かした質の高いデザイン
ラインカラー:九州レッド(コーポレートカラー)






普通車
















「ゆふいんの森3世」、885系白い特急シリーズで「木」をワンポイント素材としてきたJR九州ですが、
同社初の「新幹線」となる800系では内装のメイン素材にこの「木」を展開させました。
それら全ては「九州産」というこだわりで、「九州初の」「九州だけの」という、JR九州とデザイナーの情熱が感じられます。
そのため、新幹線車両はもちろん、既存の鉄道車両にもなかった雰囲気が、全車に渡って圧倒的な迫力を醸し出しています。

座席は、背面・肘掛部分にプライウッドを使い、そこに西陣織のクッション材を貼り付けるという、新幹線初の試み。
客室全体を見回した時に、この木材部分が視覚に強く訴えかけてくるので、まるで森の中にでもいるような感覚にさえなります。
これがレストランやカフェではなく、時速260キロで走る新幹線の中だというのだから、にわかに信じがたい光景です。

クッション材は背面部分が4段に分かれて張られていますが、これは背の高い人にフィットするもののように感じます。
私の場合は、一番張り出した頭部分と、一番下の段と2番目の段(ちょうど腰の部分)のフィッティングがやや漫然とした感じでした。
モケット柄は「つた」と「草」が複雑に絡み合ったもので、古くから「皇室」で好まれてきた模様だとか。
カラーは号車によって3種類。シートバックの「木」の部分もモケットによってテーマカラーを変えています。

1号車・4号車は「緑青(ろくしょう)」で、深いモスグリーン。シートバックは「桜色」。
2号車・6号車は「瑠璃(るり)」で濃いパープルブルー。シートバックは「柿渋色」。
3号車・5号車は「古代漆(こだいうるし)」で発色を抑えた「赤錆」色。シートバックは「「楠色」。

各車の妻面寄りの座席にのみ「電源ジャック」を備えています。
もちろん走行中に「無電源状態」にならないようになっていて、パソコンの連続使用が可能。
このジャックを備えた部分には固定テーブルがありますが、「ひかりレールスター」のようにテーブルを引き出すことはできず、
また、座席のテーブルは収納式の半円形テーブルのみなので、パソコンを使うにはキビシイ環境と言えそうです…。

客室内にはあちこちに「木製」素材が使われていて、妻面壁は一面が「木」。鹿児島産の楠の木を加工してアルミ板に貼りつけています。
ブラインドも木製の簾(すだれ)。ここは鹿児島産の桜の木をきちんと簾状に編んだものを使っています。

この800系、ベースは「のぞみ」で使われている700系ですが、700系の残像が見えるのは荷棚下の「空調吹き出し口」くらいでしょうか。

シートは全席自動回転装置を備えていて、折り返し時間が短い「新八代」駅などでは車内清掃時間の短縮につなげています。



 3号車・5号車の座席は、布地表面が「古代漆(こだいうるし)」。シートバックは「楠色」。

 1号車・4号車の座席は、布地表面が「緑青(ろくしょう)」。シートバックは「桜色」。

 2号車・6号車の座席は、布地表面が「瑠璃(るり)」。シートバックは「柿渋色」。

 1号車と5号車の博多寄りには車椅子対応席を設置。
 通路を向いての固定が可能で、車椅子から座席への移動を容易にしている。

 壁面に対面となる席には、壁側に小物置き向けの長テーブルが設置されている。
 その下にはパソコン用の電源コンセントが装備されている。

 コンセント部分のアップ。大容量電源を必要とする電気機器は使えない。
 パソコンや携帯電話の充電が主な用途。

 全席インアーム収納テーブルを装備。現状では走行時間が短いため、あまりテーブルを使う機会はない。
 しかし、JR九州社長の「短い旅にも豊かなひとときを」という意見でテーブルの設置が決定したという。

 座席を向かい合わせにしてテーブルを展開させると、このようになる。

 テーブルの木製パーツを支える金属部分には「800」をデザインしたエンブレム。

 窓のブラインドは、鹿児島産の山桜を使った贅沢なもの。目線部分にわずかな隙間を作りかすかに風景が見える演出も。
 JR社員の中に、廃材となっていた山桜を持っている親戚がいたことから、この前代未聞の木製ブラインドが実現したという。

 各車両ともデッキ仕切り壁は見事な木目を描いている。これは「木目調」ではなく、正真正銘の本物の「木」。
 クスの木が原料で、これを金属板に張り付け難燃加工した物。「豊かな」空間作りに大きく貢献しているのはこの「壁」






サニタリー












アルミパネルや特殊な照明器具を多用してギラギラな印象の強いJR九州の列車内サニタリーですが、
九州新幹線では鉄道サニタリーの原点に帰るかのように「純白」で清潔感を出す手法になりました。

トイレは設置個所によって様式が異なっています。
1号車と6号車は、車椅子対応サニタリーと男性用トイレ。3号車は洋式トイレと和式トイレと男性用トイレ。
車椅子対応サニタリーでは、手がかりでも特に触れることが多い個所には木の使って、握った際の「冷たさ」を払拭させています。

洗面台にはカーテンではなく、なんと暖簾(のれん)が掛かっています。
これは八代産のイグサを編んだ「縄暖簾」で、通りかかると草のよい香りが漂い、畳敷きの和室の匂いを思い出させます。








デッキまわり













車体の出入り口には各デッキとも号車表示の数字と「つばめ」のロゴを大書き。
JR九州のロゴやサインには美しいと定評がありましたが、その反面ではお年寄りなどには「分かりにくい」という声もありました。
これなら、子供もお年を召した方も一目で分かりますね。

デッキ部分は壁面は「柿渋色」、ドアは「古代漆」で深みのある色を使い、ダウンライトで暗めの演出。「しっとり」とした雰囲気が漂います。
この暗めのデッキから、自動ドアが開いて白熱灯色の客室が目の前に広がった瞬間は、何度体験しても新鮮です。
「暗」と「明」の対比。夏休みに田舎のおばあちゃんの家に行った時、暗い玄関から明るい部屋に入った時の思い出が蘇ります。

電話室は、2号車と6号車の鹿児島中央寄りに。入り口には「つばめ」マークがまるで家紋のようにプリントされた暖簾が掛かっています。
自動販売機は、4号車の鹿児島中央寄りデッキにのみ、1箇所だけあります。















本来、企業広告が入るであろう「広告枠」には、800系「つばめ」のイメージイラストが掲げられています。









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