博多−西鹿児島(現:鹿児島中央)の全線開通に先立って、新八代−鹿児島中央間の部分区間で先行開通した九州新幹線。 「JR九州」にとっては初となる記念すべき新幹線車両は、800系の形式が与えられ、愛称も一般公募から「つばめ」に決定。 伝統の愛称がこの真っ白な車両で、ついに日本を代表する高速列車「新幹線」の愛称にまで登り詰めました。 車体は既存の700系をベースに、ドーンデザイン研究所がオリジナルの顔を作り上げ、700系の面影もないほどの斬新なデザインに。 車内はJR九州オリジナルの車両ということもあって、大胆で枠にとらわれない奔放さがこれまでの「新幹線」とは一線を画しています。 |
「ゆふいんの森3世」、885系白い特急シリーズで「木」をワンポイント素材としてきたJR九州ですが、 同社初の「新幹線」となる800系では内装のメイン素材にこの「木」を展開させました。 それら全ては「九州産」というこだわりで、「九州初の」「九州だけの」という、JR九州とデザイナーの情熱が感じられます。 そのため、新幹線車両はもちろん、既存の鉄道車両にもなかった雰囲気が、全車に渡って圧倒的な迫力を醸し出しています。 座席は、背面・肘掛部分にプライウッドを使い、そこに西陣織のクッション材を貼り付けるという、新幹線初の試み。 客室全体を見回した時に、この木材部分が視覚に強く訴えかけてくるので、まるで森の中にでもいるような感覚にさえなります。 これがレストランやカフェではなく、時速260キロで走る新幹線の中だというのだから、にわかに信じがたい光景です。 クッション材は背面部分が4段に分かれて張られていますが、これは背の高い人にフィットするもののように感じます。 私の場合は、一番張り出した頭部分と、一番下の段と2番目の段(ちょうど腰の部分)のフィッティングがやや漫然とした感じでした。 モケット柄は「つた」と「草」が複雑に絡み合ったもので、古くから「皇室」で好まれてきた模様だとか。 カラーは号車によって3種類。シートバックの「木」の部分もモケットによってテーマカラーを変えています。 1号車・4号車は「緑青(ろくしょう)」で、深いモスグリーン。シートバックは「桜色」。 2号車・6号車は「瑠璃(るり)」で濃いパープルブルー。シートバックは「柿渋色」。 3号車・5号車は「古代漆(こだいうるし)」で発色を抑えた「赤錆」色。シートバックは「「楠色」。 各車の妻面寄りの座席にのみ「電源ジャック」を備えています。 もちろん走行中に「無電源状態」にならないようになっていて、パソコンの連続使用が可能。 このジャックを備えた部分には固定テーブルがありますが、「ひかりレールスター」のようにテーブルを引き出すことはできず、 また、座席のテーブルは収納式の半円形テーブルのみなので、パソコンを使うにはキビシイ環境と言えそうです…。 客室内にはあちこちに「木製」素材が使われていて、妻面壁は一面が「木」。鹿児島産の楠の木を加工してアルミ板に貼りつけています。 ブラインドも木製の簾(すだれ)。ここは鹿児島産の桜の木をきちんと簾状に編んだものを使っています。 この800系、ベースは「のぞみ」で使われている700系ですが、700系の残像が見えるのは荷棚下の「空調吹き出し口」くらいでしょうか。 シートは全席自動回転装置を備えていて、折り返し時間が短い「新八代」駅などでは車内清掃時間の短縮につなげています。 |
アルミパネルや特殊な照明器具を多用してギラギラな印象の強いJR九州の列車内サニタリーですが、 九州新幹線では鉄道サニタリーの原点に帰るかのように「純白」で清潔感を出す手法になりました。 トイレは設置個所によって様式が異なっています。 1号車と6号車は、車椅子対応サニタリーと男性用トイレ。3号車は洋式トイレと和式トイレと男性用トイレ。 車椅子対応サニタリーでは、手がかりでも特に触れることが多い個所には木の使って、握った際の「冷たさ」を払拭させています。 洗面台にはカーテンではなく、なんと暖簾(のれん)が掛かっています。 これは八代産のイグサを編んだ「縄暖簾」で、通りかかると草のよい香りが漂い、畳敷きの和室の匂いを思い出させます。 |
車体の出入り口には各デッキとも号車表示の数字と「つばめ」のロゴを大書き。 JR九州のロゴやサインには美しいと定評がありましたが、その反面ではお年寄りなどには「分かりにくい」という声もありました。 これなら、子供もお年を召した方も一目で分かりますね。 デッキ部分は壁面は「柿渋色」、ドアは「古代漆」で深みのある色を使い、ダウンライトで暗めの演出。「しっとり」とした雰囲気が漂います。 この暗めのデッキから、自動ドアが開いて白熱灯色の客室が目の前に広がった瞬間は、何度体験しても新鮮です。 「暗」と「明」の対比。夏休みに田舎のおばあちゃんの家に行った時、暗い玄関から明るい部屋に入った時の思い出が蘇ります。 電話室は、2号車と6号車の鹿児島中央寄りに。入り口には「つばめ」マークがまるで家紋のようにプリントされた暖簾が掛かっています。 自動販売機は、4号車の鹿児島中央寄りデッキにのみ、1箇所だけあります。 |
本来、企業広告が入るであろう「広告枠」には、800系「つばめ」のイメージイラストが掲げられています。 |