JR西日本 500系新幹線 「のぞみ」



1996年に先行量産車が登場。翌1997年に鮮烈なデビューを飾った500系新幹線。
およそ列車形式などの知識がなく、また興味もない一般利用者にまで「500系のぞみ」の呼び名が浸透するほどの人気者です。

さらに最高時速300キロは、当時のTGVアトランティックと並んで世界最速。
「シンカンセン」を再びスピードキングの座へと返り咲かせた、言うなれば鉄道界の救世主“ニッポン代表 シリーズ500”。

徐々に増備が進むN700系に押され、東京−博多直通「のぞみ」での活躍は2010年2月28日をもって終了。
花形である「のぞみ」での活躍は13年でピリオドを打ち、8両編成の「こだま」用に改造されて山陽新幹線で余生を送ります。


★☆★☆★ ここで紹介する500系16両編成(W編成)は2010年2月28日で運転を終了しました。現在の500系は「こだま」用8両編成のみとなっています。 ★☆★☆★





グリーン車

とかく500系というと「最高時速300キロ」「パンタはフクロウの羽」「横揺れ防止ダンパー」「セミアクティブサスペンション」など・・・
技術面での話題が多く取り上げられ、それこそが「500系 マスト ゴー オン」の全てでもあるわけですが。。。。
独特な雰囲気のあるインテリアは、登場当時でもあんまりマスコミとかに取り上げられなかったですね。

車体コンターがほぼ円形をしているため、「こんな客室、見たことない!」が素直な感想ではないでしょうか。
そして「リニア」を連想した利用者はどれくらいいたんでしょうね。
天井に向かって大きく曲線を描く壁面、柔らかく包み込まれるような「狭さ」は未来的。

東京エリアに乗り入れるということは、JR東海エリアにも入るということで、
つまりそれは「300系のぞみ(当時)」に定員や客室設備を合わせないとJR東海の機嫌を損ねるということで・・・

と、まあそんなわけでJR東海と共通の4アブレストのグリーン車を踏襲して、他のJR東海車と設備を共通化させています。
そんな中で、照明やシートモケットなどでオリジナリティを出して、ハイクオリティな「上級ランクの客室」を演出しているのですが・・・
・・・・どうも消化不良なカンジです。あのアグレッシブな外観には似合わないほど、座席まわりは「フツー」の設備。

唯一、ヘッドレストのピローが上下に可動という点で、JR西日本のささやかな隠れた(東海への)抵抗を感じるのですけど。
ランバーサポートにレッグレスト、液晶TVにカクテルテーブルまで装備した「新幹線最速最強シート」、見てみたかったですねぇ。
この感想、あくまでも想像でしかありませんが、でもこの後の「ひかりレールスター」であそこまでやってくれると
JR西日本としては、フラッグシップトレインである「500系」では、客室設備でもっといろいろやりたかったんじゃないでしょうか・・?

ちなみに、JR西日本では500系充当の列車に「のぞみ」とは別の新しい愛称を与える予定だったのですが、
JR東海が「のぞみ」で統一するようにと新名称付与を却下したという経緯があります。


 ヘッド部分にはピローが据え付けられています。上下可動式で、任意の高さに変えることができます。
 座った姿勢や寝た姿勢など、その時の用途によってちょうどいいマクラとして活躍します。
 ヘッドレストカバーを取ったピロー本体。
 柔らかさは他の新幹線・特急のグリーン席ピローと比べても随一。
 フットレストは靴で載せる面と、靴を脱いで載せる面の2面構造。
 ペダルで高さの調節ができますが、展開させた際には足を載せていないと展開状態を保持できません。
 テーブルはインアーム収納式。背面収納テーブルは装備していません。
 両面展開・片面展開と、テーブル利用時の用途によって使い分けることができます。
 オーディオパネルは稼動中。東海道・山陽どちらの区間でもオーディオサービスを受けることができます。
 ただし、イヤホンは自前で用意する必要があります。(イヤホンの貸し出しサービスは行われていません。)
 センターアームレスト先端のボタンは「読書灯」の点灯・消灯ボタン。
 読書灯はオーソドックスなタイプ。照度を変えることはできません。
 窓側壁面と座席背面には小物掛けがあります。壁面のはジャケットやスーツを掛けておくのに便利です。
 壁面が大きく湾曲しているのが500系の特徴。そのため荷物棚の収納力が他系列の新幹線に比べて大幅に劣ります。
 窓間のアコーディオン状のものは空間意匠。そこを照らす間接照明が「JR西日本」らしい上品さです。
 ブランケットは車端部の荷物棚に数枚が用意されていて、セルフサービスで使うことができます。
 こげ茶色は座席とのコーディネイトともよくマッチしています。
 サービスらしいサービスが無いのが東海道・山陽新幹線のグリーン席の特徴(?)ですが、
 唯一「おしぼりサービス」は行われています。東海エリアと西日本エリアで配布されています。






普通車














普通車はパープル系のシートモケットで、味気ないモケット柄の300系が「のぞみ」の大半を占めていた頃、
この「500系」の客室雰囲気は、まさに“特別”なものでした。
現在の「のぞみ」運用を分担している700系では、シートモケットがポップなものを採用しているので、
今の「500系」は“シック”な雰囲気に感じられるようになりました。

普通車のシートピッチは、300系や700系が1040mmであるのに対して、500系は1020mmと若干狭めになっています。
この要因は先頭車の「戦闘機」然とした15メートルにもなるノーズが関係しています。
300系や700系では1号車が13番列、16号車が15番列まであるのに対して、
500系では1号車が11番列、16号車では13番列までしかありません。

しかし、東海道スジ内では編成の定員を合わせるのがJR東海の鉄則。500系だけ特別というわけにはいかず、
結局、シートピッチを狭くしたりサニタリーコーナーを減らしたりして、編成内の定員をJR東海の車両と合わせてあるのです。
ちなみに中間車では、300系や700系と比べると500系は1〜2列分、席が多くなっています。

先頭車運転席寄りの2列は、シャークノーズの窄まりの影響をモロに受けているため、
天井荷棚の収容量が極端に少なくなっています。これを解消するため、座席横に荷物ラックを設置。
この2列だけ2+2席配列になっています。

窓際席は、側面が天井に向って曲線を描くようなカタチとなるので、頭上方向にかなりの圧迫感があります。
そして、天井方向への威圧感を少しでも排除するためか、バックレストの高さが他形式の座席に比べるとかなり低め。
車内が満席になった状態を700系と500系で比べて見ると一目瞭然です。

一見プリーツカーテンに見えるのは壁面の飾り。カーテンはロール収納式です。

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JR東海が車両設備の共通化を強要することで「500系の目指すワンランク上」を縛り付けているんじゃないの?と、
(暗に)述べてきましたが、なぜJR東海がそこまで定員や設備の共通化にしつこくこだわるかというと・・・・
全ては「異常事態発生」時に、全ての車両を共通化させておけば車両のやりくりが簡単で済み、
つまりそれはダイヤの復旧を早めることができるという概念を「東海道新幹線」での基礎としているから。

東海の言い分はひっじょ〜に分かりやすいのですが、裏を返せばあれだけ多彩な形式と編成を
ごちゃ混ぜにして走らせているJR東日本の新幹線システムって、実はスゴイいんじゃないの?と思わせます。
(別に東日本は「異常時のダイヤ復旧を早める」ことを放棄しているわけじゃないですから。)








サービスコーナー マルチスペース






     

7号車と11号車には、当時「のぞみ」運用を分担していたJR東海の300系と同じくサービスコーナーが設けられていました。
カウンターでの対面販売を行っていて、100系食堂車全廃後の唯一の“共食設備”でした。
しかし、「のぞみ」の大幅増発となった2003年10月ダイヤ改正でこのサービスコーナーは廃止。
カウンターは撤去され、大型の車内販売準備室が設置されました。ショーケース跡に過去の設備の名残が垣間見えます


11号車デッキには多目的室。室内は湾曲した壁面の圧迫感があり、かなり狭く見えます。
ソファーはスライド式に動かして簡易ベッドになります。座席での使用も考慮してインアームテーブルを内蔵。







洗面台/トイレ デッキ設備
     

定員確保のために客室部分を広げることで、サニタリー部分が一番の小規模化が図られています。
洋式・和式・男性用と一通りの設備は揃っていますが、既存の新幹線車両と比べるとどれもコンパクトな空間。
特に洗面台は、サニタリーコーナーに2台を設置するのが新幹線車両でのお約束でしたが、これを1台に減らしています。
さらに各タイプのトイレをJR東海車とは違う配置に組替えることで、客室拡大に成功しています。
11号車の車椅子用トイレは他形式と比べると若干大きめ。その代わりに車椅子用の大型洗面台は設置されていません。
洗面台カガミのスクエアドット電照演出は、JR西日本の新型在来線特急と同じ雰囲気。


デッキの電話室。扉付きで完全に「個室」となります。
2両おきの配置と電話室内の電光表示機などは、他の新幹線系列と同等の標準装備。
12号車の電話室は車椅子でも利用できるように室内が広くなっており、電話位置も低く設定されています。

デッキの出入り台にはエンボス加工を施して、すべり止めとすると共に出入り口であることをアピールしています。








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