2017年4月から運行を開始した東武鉄道の新型特急 500系「リバティ」。同社の完全新製の特急型電車は、1990年の100系「スペーシア」以来、27年ぶりのことです。 1720系「DRC」・100系「スペーシア」・200系「りょうもう」と東武特急は長年6両固定編成を採用してきましたが、500系は3両編成を基本として設計されました。 3両編成を2本つなげて浅草を出発し、途中で編成を分割しながら本線系統から支線系統へと乗り換えなしでシームレスにアクセスできる特急網を新たに構築。 これにより、下今市で分割併合する「けごん+きぬ」、春日部駅で分割併合する「けごん+りょうもう」などが登場しました。 さらには、6両編成のスペーシアでは入線できなかった野岩鉄道・会津鉄道へ直通する新特急「リバティ会津」も誕生して南会津への観光輸送も担うと同時に、 浅草から乗り換えなしでアーバンパークラインへ直通運転する「アーバンパークライナー」も設定され、東武特急が新たな通勤手段としても期待されます。 「Revaty(リバティ)」の愛称は、 ・「Variety(バラエティー):多様な、様々な」−併結・分割機能を活かした多線区での運行を表現− ・「Liberty(リバティー):自由」−路線を縦横無尽に走り回る自由度の高さを表現− の単語を由来とした独自の造語で、沿線利用者に覚えてもらい易く、また口にした時の軽快な響きから採用されました。 内外装のデザインは、近年JR東日本の新型車両のデザインの多くを手掛けている奥山清行氏が代表を務める「KEN OKUYAMA DESIGN」が監修。 貫通型タイプの先頭車ながらも、未来感に溢れる斬新な流線型のデザインは、東武特急に新たな時代の到来を予感させます。 |
「リバティ」の内装は、江戸文化のモチーフを多く取り入れた「和風の装い」となっていて、外観の近未来的なデザインとは対照的です。 座席表面のブルーは江戸の伝統色「江戸紫」、表面柄は江戸小紋の「継小紋」をイメージした様々な模様で彩られ、座席袖部分には伝統工芸「印伝」の模様を取り入れています。 天井の独特な曲線カーブの間接照明カバーは、隅田川・利根川・大谷川・鬼怒川など東武沿線に沿って流れる河川のたゆたう流れをモチーフにしたデザイン。 窓間の柱には、江戸小紋で縁起物とされる「勝虫(トンボ)」をモチーフにした飾りが取り付けられていて、特に訪日外国人に喜ばれそうなインテリアとなっています。 座席は全車2+2の横4列で、2号車と5号車には車椅子対応席が1席設けられています。 シートピッチは1,000mmと余裕のサイズ。 3両基本編成のため、6両編成だと中間に運転席のスペースが入る分だけ座席定員が少なくなってしまいますが、シートピッチを狭めて詰め込み定員にしなかったのはさすが。 先代の日光鬼怒川特急「スペーシア」のシートピッチは1,100mmでしたが、「リバティ」では座席下に足を伸ばせるので、100mm分の狭さは全く感じません。 座席背面がやや立ち気味で、リクライニング傾斜角度も浅めなので、背中方向へのゆったり感があまり感じられないのはちょっと残念なところです。 座席の掛け心地は座面・背面ともに硬めで、「スペーシア」の高級感ある座席に比べるとだいぶエコノミックなものになってしまったというのが実感。 しかし、「スペーシア」が誕生した約30年前とは時代背景が異なり、バンバン金を注ぎ込んで高級志向であった頃の「スペーシア」と比べるのは酷と言うもの。 「リバティ」では、大型背面テーブルに全席コンセント完備、車内無料WI-FI完備と、今の時代に即した機能がたくさん追加されているので、「スペーシア」からの進化は充分に感じます。 ちなみに「硬め」の評価のリバティの座席ですが、小田急60000形「MSE」の板のような座席に比べたら、それはもう特急車としてのステータスを感じるほどの掛け心地です。 全体的に「通勤特急向け」という雰囲気ですが、例えば座席を向かい合わせにした時にもテーブルが使えるようにインアーム収納テーブルが装備されているなど、観光要素も忘れてはいません。 3両を基本編成とする「リバティ」は、定員を極力確保した上でコンパクトに主要な客用設備を設けるために、「スペーシア」ではあったビュッフェや自動販売機は設置されていません。 「リバティ」で運行される列車では車内のワゴン販売も行われないので、長距離を乗る際には、乗車前にあらかじめ飲食物を購入しておく必要があります。 |
デッキは、ナチュラルな色調にLED電球による照明で、明るくカジュアルな雰囲気です。 全てのデッキに絨毯マットが敷かれています。これは「スペーシア」「りょうもう」から続くもので、東武鉄道の「特急サービス」としてのステータスの表われ。 AEDは2号車(5号車)に設置。 乗降ドアの脇の手摺りにはランプが仕込まれていて、ドアの開閉時には注意喚起のためにランプが点滅する仕組みになっています。 1号車と3号車(と4号車と6号車)の乗降ドア脇には「この扉は開きません」という表示装置が取り付けられています。 これは、「リバティけごん」「リバティ会津」などの日光線系統の特急では、春日部駅で乗降扱いをするドアが2号車(5号車)に限られるため、春日部駅停車中に点灯します。 3両編成の内に、サニタリースペースは2号車(5号車)に集中的に設置されています。 車椅子対応の大型トイレは、間口とトイレ個室内の広さを確保するために、通路側に大きく湾曲した壁になっているのが特徴的。 内部には、洋式トイレのほか、ベビーベッド、ベビーキーパー、さらに着替え用のステップ台もあります。 さらに連結部面には、男性用トイレと洋式トイレがそれぞれ1室ずつ設置されています。 洋式トイレのほうには、ベビーベッドとベビーキーパーも設置されています。 車椅子トイレと洋式トイレは、どちらもウォシュレットが装備されており、壁面に操作パネルが取り付けられています。 洗面台はそれぞれのトイレ内に小型のものが設置されていて、独立した大型の洗面台は「リバティ」では設けられていません。 |