2007年5月にデビューした、台湾鉄路局の期待の星がこのTEMU1000系「太魯閣(Taroko)」型車両。 JR九州の885系特急「白いかもめ・白いソニック」をベースにした振り子式特急車両で、製造元も885系と同じく日立製作所が担当。 最高速度は130Km/h・曲線通過速度は+30Km/hという、これまでの台湾特急車には無かった高性能車両です。 カーブの多い東部幹線の「自強」号に集中的に投入され、台北から花蓮までのスピードアップと到達時間の短縮を実現させました。 デビュー後は、国内外問わず多くの旅行者の人気が殺到し、「太魯閣」が投入された自強号は切符の確保が困難なほどに。 その人気ぶりに応えるかのように、2007年12月にはさっそく2次増備編成が台湾に到着。 編成が増えたことにより、台湾高鐵と並行する西部幹線の自強号にも「太魯閣」型車両が投入され始めました。 現在までに8両編成×6編成の48両が投入されましたが、2012年の踏切事故により1編成がTEMU1000系初の廃車に。 その後の編成増備は、東部幹線台東電化開業に合わせて投入する新型車両TEMU2000形の製造に切り替えられることになりました。 愛称の「太魯閣」は一般公募によって選定され、花蓮市郊外にある「太魯閣国家公園」から命名されました。 台湾鉄路局では「太魯閣」はあくまでも車両の愛称として、特急の愛称は「自強」のままで「太魯閣型自強号」の表記を採用。 現地で購入する時刻表には、TEMU1000系投入の列車には「Taroko」マークが入っているので、すぐに分かるようになっています。 |
「太魯閣」車両は8両編成。全てが普通車で、「商務座」のようなビジネスクラス相当の特別車は設定されていません。 画像の車両は、2007年12月以降にデビューした2次増備車両。 2005年12月以降に台湾に渡り、最初にデビューした1次製造編成の座席には、薄いブルーの革張りシートが設置されています。 2次車からは一般的な織物によるモケットシートとなりました。 シートピッチは、目測でも1,000mm以上はあるかと思われる広さ。 足元にフットレストなどはありませんが、足先をグンと伸ばせるので乗車中は快適に座っていることができます。 テーブルはインアームレスト収納式で、外側のアームレストを開くと、中から6角形のテーブルが出てきます。 振り子車両の揺れを考慮して、テーブルには飲み物を置く丸い窪みがついています。 リクライニングは、これまでのE1000系などに比べると傾斜量が浅めですが、座面位置がそれらより高いので全体的に充分な居住性。 窓は1列に1枚ずつ。遮光には上下可動のフリーストップ式ブラインドが装備されています。 窓下には、日本の特急車両でもおなじみのプラスチック製の折り畳み式ドリンクホルダー。 ちなみに窓の框部分には小物を置いておけるスペースはなく、インアームテーブルを使うか、座席背面のポケットに入れるかとなります。 天井の荷物棚の下部には読書灯。操作は真ん中の赤いボタンを押してON/OFFを切り替えます。 各車車端部となる席の窓は、窓枠上部が開閉式となっていますが、これは緊急時の脱出口。 また、客室内には、緊急時に窓を破って脱出するためのハンマーが、壁面に埋め込まれて設置されています。 |
サニタリースペースは全ての車両に設置されています。8号車〜5号車は花蓮方デッキに、4号車〜1号車は台北方デッキに。 両先頭車を除く中間車両のサニタリースペースは、全て男性用トイレと男女兼用トイレで構成されています。 男女兼用トイレは、洋式トイレと和式に似た「中華式」ともいうようなトイレが、1車両おきに交互に配置されています。 1号車と8号車のトイレは運転室直後に配置。車椅子対応となっており、個室内には男性用トイレと洋式トイレがあります。 洋式トイレ側には手摺りパイプが壁側に通されています。 全てのサニタリースペースには、日本の特急車両では当たり前の独立した「洗面室」は設置されていません。 サニタリースペースのとなりには携帯電話コーナーとして、小スペースが用意されています。 中にはメモが取れるようなテーブル台と、充電用のパワーポートが設置されています。 両先頭車の携帯電話コーナーは窓付きで、ちょっとしたフリースペースのような雰囲気。 客室とデッキ仕切りドアは全てタッチセンサー式。ちょっと古いエレベーターボタンのようなガッシリした作りのボタンです。 全ての客用乗降ドアはプラグドア。内側のデッキにはドア付近に立ったり、ドアに寄り掛からないようにと注意書きが。 振り子車両特有の、車体裾が絞られたデザインのため、駅停車中にはホームとデッキの間には大きな隙間ができてしまいます。 その隙間を埋めるため、車両側に格納式ステップが装備されていますが、E3系新幹線「こまち」などと同じものが使われています。 |