台湾の2大都市である「台北」と「高雄」を結ぶ「台湾高速鐵路」。 2007年の運行開始以来、「台湾高鐵」「高鐵」として台湾国民に親しまれています。 高鐵で運行される車両は、日本のJR東海とJR西日本が共同開発した「700系新幹線」をベースにして設計・製造。 型式も「700系の台湾バージョン」という意味あいで「700T型」という形式が附されました。 最高速度は時速300km/hで運行され、台北−高雄間の約345Kmの距離を最速96分で結んでいます。 現在では一日で約10万人が利用していると言われ、台湾島内の移動手段として無くてはならない存在へと成長しました。 「シンカンセン」に似ているようでちょっと違う、「台湾風味の新幹線」の車内をご紹介いたします。 |
台湾高鐵の車両は12両編成。そのうち、編成中のほぼ真ん中に位置する6号車が上級クラスの「商務座(ビジネスクラス)」となっています。 客室内は、日本の新幹線グリーン車と同じく2+2の横4列の座席配列。 座席は赤みの強いパープルとなっていて、客室内を高級感のある華やいだ雰囲気に醸し出しています。 上級クラスの座席らしく、座席周りには様々な設備が用意されています。 リクライニングは、外側アームレストの先端にあるレバーラッチを引き上げると倒れる構造。 かなり深い位置まで倒れるので、半分くらいの角度まで倒すだけでも快適に座っていられます。 足元にはフットレスト。これは日本の新幹線とほぼ同じ構造で、高さ調節や裏表の仕様などは特に迷うことなく使えます。 センターアームレストは、両側座席を仕切るのに充分な幅。 上部にはボタンが2つ並んで配置されていて、これは読書灯のスイッチ。読書灯は頭上の荷物棚下部にあります。 先端部分には電源ポート。110Vの電圧設定となっているので、日本から持ち込んだパソコンなどはそのまま使うことが可能。 内側には、日本でも見慣れたデザインのミュージックサービスのコントロールパネル。 音楽チャンネルは4つ用意されていて、「台湾ポップス」「英語ポップス」「ジャズ」「クラシック」が選べます。 イヤホンはiPodなどのものがそのまま使えるほか、持っていない乗客には貸し出しサービスも行っています。 テーブルは背面収納テーブルのみで、アームレスト収納タイプは装備していません。 そのため、座席を向かいあわせにするとテーブルの無い状態となります。 台湾高鐵の「商務座」では、日本の新幹線グリーン車よりも人的サービスがかなり充実しています。 発車後にはワゴンを引いたアテンダントが各席を回り、軽食(乗車時は紅茶クッキー)とドリンクが乗客全員に振舞われます。 ドリンクはコーヒー・紅茶・烏龍茶など、ホット・アイスから数種類が選べます。 このほか、希望すれば330mlの小さなペットボトルのミネラルウォーターも貰うことができます。 紙コップやナフキン、ウェットタオルなど細かなところまで「台湾高鐵」のロゴが入っていて、スペシャリティな雰囲気が味わえます。 アテンダントさんは、途中停車駅からの乗車でも発車後すぐに回ってくるほか、こまめにゴミ回収に来たりと客室に姿を頻繁に見せるので、 ドリンクお替りや聞きたいことがある時など、お願い事がある時はとても便利です。 シートピッチは、新幹線グリーン車と同サイズの1,160mm。 非常にゆったりとした空間の中で、手厚いサービスが受けられて、乗車料金は新幹線グリーン車と比べて格安の運賃設定。 乗るたびに「商務座」を選択したくなってしまうほど、とても快適な時間が過ごせます。 |
12両編成のうち、1〜5号車と7〜12号車が「標準車」(普通車)。 そのうち台北方の10〜12号車の3両は「自由座」(自由席)となっています。(ただし台湾の最繁忙期は設定無し。全車指定席となる) 車内は青緑色の座席が並ぶ、プレーンな色彩が爽やかな雰囲気。 日本の新幹線で見慣れた2+3配列の横5席なので、日本人の目には何の違和感も無く「新幹線そのもの」という感覚です。 座席表面はモケット張りなどではなく、合成革のような表面がツルツルした光沢感がある素材となっています。 ただ、高速運転時に体が滑るということは無く、ごくごく普通の「鉄道車両の座席」という座り心地。 飲食物などをひっくり返した時などには簡単に拭き取りが可能なようで、そういったメンテナンスのし易さを狙った素材のようです。 座席は、JR東海の700系車両の普通車とほぼ同じタイプの製品のよう。 肘掛の形状や、座席上部のキノコのような手掛かりパーツなどには見覚えがあるという人も多いはず。 シートピッチは1,040mmで、これも東海道新幹線の標準ピッチと同じサイズとなっています。 東海道新幹線700系とほぼソックリな台湾高鐵の普通車客室ですが、台湾独自のサービスが展開されている点もあります。 まず、7号車の台北寄りに設置された車椅子専用席ですが、「専用席」と言うより「専用ゾーン」という広さ。 車椅子のピクトグラムが床面の大きく貼られ、ここの2列は左右1席配置となっていて合計4席もの専用席が設けられています。 このほかにも、自由座の車端部には「博愛座」、つまり日本で言うところの「優先席」が設けられているのも特徴。 日本では主に通勤型電車では見かけますが、特急や新幹線では「優先席」の設定を見かけることはほとんどありません。 台湾ではこうした席が公共施設や移動空間の至るところにあり、しかも健常者はその席に座らずに空けていることがほとんど。 「広い空間を確保した車椅子対応席」「新幹線に優先席設定」・・・台湾に住む皆様の民度の高さを改めて知ることができます。 |
サニタリースペースは、奇数号車の台北方に設置。 車椅子対応となる7号車を除く、いずれもサニタリースペースも洋式トイレ2室・男性用トイレ1室で構成されています。 日本の新幹線と異なるのは、独立した「洗面室」が無く、全て個室内にビルトインされた小型の手洗いシンクを利用することになります。 また、台湾独自の設備として、手洗いシンクの脇にハンドドライヤーが装備されています。 7号車のサニタリースペースは、車椅子対応の大型バリアフリートイレ。 電動式車椅子でも入ることができる広さを確保しているのですが、日本では見たことも無いほどの巨大な広さを確保しています。 飲み物の自動販売機は、1号車・5号車・11号車のデッキに設置。 いずれも缶コーヒー・コーラ・スポーツドリンク・ペットボトルの水やお茶を容易。日本で見慣れたブランド商品が揃っています。 一部のデッキに折り戸の付いた小さな部屋がありますが、ここは携帯電話コーナー。 デッキと客室を仕切るドアは全てタッチ式となっていて、無用な開閉がないように工夫されています。 |