青函トンネルの開業と共に運転を開始した、上野と札幌をダイレクトに結ぶ寝台特急「北斗星」。 一躍人気列車のスターダムに伸し上がった「北斗星」は、特に個室寝台の人気が高く、最高級の「ロイヤル」は連日売り切れ。 しかし、編成内の個室車両の比率を高めようにも、改造元となる24系客車は新造から20年以上が経過した車両ばかり。 そこで、改造ではない完全新製の新型寝台客車を製造することとなり、「新北斗星」プロジェクトがスタート。 1999年7月。ステンレス製のオール2階建て寝台特急がデビュー。 愛称は、北極星を中心に北斗七星と対をなす星座から「カシオペア」と命名。 オールAクラス個室寝台で組まれた客車は、日本の鉄道では「初」の豪華さ。さらに食堂車とラウンジカーも連結。 デビューからすでに10年以上が経ちましたが、今でも特にスイート系の個室はチケットの入手が困難なほどです。 |
----------展望室タイプ---------- | |
| -------------------メゾネットタイプ------------------ | |
| -----------------共通設備---------------- |
「カシオペア」の中でも最高位のランクにあるクラスが「カシオペアスイート」。 全ての個室がA寝台個室で組成されている中で、この「カシオペアスイート」と「カシオペアデラックス」は「特A個室」と称されています。 「カシオペアスイート」は車両内の設定位置によって2タイプの部屋があります。 「カシオペア」の中で最も人気が高く、また最も寝台券の入手が困難なのが、1号車車端部を占有する1号室「展望室タイプ」。 下り札幌行き列車では最後尾となり、展望窓から流れゆく景色を独占できます。 室内は、展望窓に面した部分にソファーを配置した「リビングスペース」と、その後ろにベッドを2台並べた「寝室スペース」。 個室入り口脇には、シャワーブースと洗面・トイレユニットがコンパクトに並べて配置されています。 ベッドサイズは1,950mm×850mm。 近年のビジネスホテルのシングルベッドより若干小さいサイズですが、列車内としてはかなりの大きさ。 シャワー・トイレユニットを含めない単純な住空間としての広さは、約4,300mm×2,800mm。 天井高も約1,160mmと、室内はとてつもない破格の広さを誇ります。 「カシオペアスイート」のもう1タイプが、1つの個室の中に2階構造を組み込んだ「メゾネットタイプ」 展望タイプが1室しかないのに対してこちらは1号車と2号車にそれぞれ3室づつ、合計6室あるスタンダードなタイプ。 個室入り口ドアを開けると、まず昇り階段と下り階段が目の前に。 階段を昇ると、2階部分には対面ソファーとシャワー・トイレユニットが配置された「リビングルーム」。 階段を降りると、1階部分にはツインベッドをレール方向に配した「ベッドルーム」。 リビングと寝室のいずれもコンパクトにまとまっていて、展望室タイプのような広さはありませんが、 部屋の中が2階建て構造になっていることによって、階段を昇り降りして空間を行き来することで、気分的な占有感が味わえそうです。 なお、2階のソファーはベッドとしても組むことができ、最大3名でのトリプルルームとしての利用も可能となっています。 「展望タイプ」「メゾネットタイプ」ともに、個室構造が違うだけでアメニティ設備やサービス内容は同じになっています。 まず室内にシャワー・トイレ・洗面台が完備されているのが「スイート」クラスの大きな特徴。 シャワーとトイレはユニット構造となっていますが、シャワーカーテンがあるのでシャワーとトイレは仕切ることができます。 シャワーは18分間の利用が可能。もちろん、バスタオルやフェイスタオル・バスマットも完備されています。 トイレの上には、収納式の洗面台。「北斗星」の「ロイヤルルーム」でお馴染みの収納構造となっています。 洗面台の上にはカガミがあり、このカガミは扉となっていて、中に洗面使用時のプラスチックコップがセットされています。 ベッドの上には浴衣とアメニティポーチ。 アメニティポーチにはロゴマークがプリントされていて、中にはシャワーキットやハブラシ・クシ・シェーバーから、 メンズキットとしてシェーブローションやヘアリキッド、レディスキットとして洗顔フォームや乳液などまで入っています。 このほか、室内にはBS放送などが放映される液晶テレビやBGM装置、コートクローク、食堂車直通の電話も完備。 ウェルカムサービスとして、始発駅発車後にワインやウィスキー・ソフトドリンクのウェルカムドリンクサービスもあります。 |
1号車1号室が「展望スイート」なのに対して、2号車1号室は「スイート」と同じランクの特A個室「カシオペアデラックス」。 車端部に位置するため平屋構造で、また展望窓も持たないので「スイート」とは別の個室名が付けられています。 この個室は2号車に1室だけの設定となっています。 室内は、入り口から入るとまず目の前にシャワー・トイレユニット。そこから左へ曲がるとリビング兼寝室スペース。 ソファー状態の室内には、窓側に向かい合わせのソファーと通路側には長椅子のようなベンチソファー。 その奥は枕木方向に固定型のベッドがセットされています。 窓側のソファー2台は座面をスライドさせることによってベッドになり、またベンチソファーも座面を起こすとベッドに。 結果、室内には3台のベッドを組むことができるので、この部屋も3人用のトリプルルームとしても利用が可能です。 片側に通路があるため個室の広さは展望タイプには負けますが、天井の高さはメゾネットタイプと比べてダンゼンに開放的。 室内設備やサービスは「カシオペアスイート」と同等で、18分間の利用が可能なシャワールームも完備。 アメニティキットやウェルカムドリンクなどのサービスも充実したものを受けることができます。 |
----------------------2階室タイプ---------------------- | | | | |
| ---------------------------1階室タイプ--------------------------- |
------------車端平屋室タイプ------------ | | | | |
| --------車端平屋室(トリプルルームタイプ)-------- | | | | |
| -----------ベッド展開状態----------- |
---------------------------------------------------各タイプ共通設備-------------------------------------------------- |
「カシオペア」の中で最も数が多く設定されている個室が「カシオペアツイン」です。 1編成あたり79室が設けられていますが、「カシオペアツイン」はB寝台個室ではなく、A寝台個室のランク付け。 「カシオペア」は全個室がA寝台クラスとなっていて、B寝台の設定がない日本初の「オールA寝台個室」の列車です。 「カシオペアツイン」は部屋の設定位置や個室内の設備によって、4タイプの部屋があります。 2階建て部分の2階にある「2階タイプ」、その1階部分にある「階下タイプ」、車端部にある「平屋タイプ」。 さらに「平屋タイプ」にはエキストラベッドを備えて3人での利用ができる「トリプルルームタイプ」もあります。 各部屋タイプとも室内の設備は共通で、2脚のソファにトイレ・洗面ユニット、液晶テレビにBGM装置などを備えています。 ソファは座面を中央へスライドさせて背もたれを倒すとベッドになり、室内にL字型に2台のベッドがセットされるような仕組み。 寝具類はあらかじめ荷物棚の下に折り畳まれてセットされていて、ベッドメイキングは乗客自身で行うようになっています。 ベッドを組み立てる説明書きが室内に置かれていますが、意外と簡単に、力を必要とせずにあっという間にベッド転換が可能。 部屋の広さは各タイプとも同じ面積で、約2,700mm×2,000mm。 天井の高さは、2階が最大クリアランスで約1,850mm、1階は1,820mm、平屋部分は2,000mm。 2階ほうが1階より若干高いのは最大部分の数値で、2階室は天井が湾曲しているので、実際には1階のほうがゆとりがあります。 ベッドサイズは窓面側が約1,920mm×800mm、奥の枕木方向側が1,950mm×800mm。 A個室ということで、全室にウェルカムドリンクとモーニングコーヒー、朝刊のサービスがあります。 ウェルカムドリンクはソフトドリンクのみで、ウーロン茶かオレンジジュースからの選択。 モーニングコーヒーはチケット制で、食堂車での朝食時か車内販売、もしくはラウンジカーで券と引き換えるスタイル。 朝刊は個室ドアの入り口に、ビニル袋に入れられてドアノブに引っ掛けたかたちで配布されます。 |
4号車1号室は、編成内に1部屋だけの車椅子対応個室の「カシオペアコンパート」。 室内には対面でソファーが並び、その上に折り畳み式のベッドがセットされています。 ソファーは「カシオペアツイン」などと同様にベッドへの変換が可能で、付き添いの人との2名利用を想定した作り。 室内は車椅子での取り回しを考慮して、かなり広々としています。 個室内にはトイレと洗面台が備え付けられていますが、こちらも「カシオペアツイン」と比べてもかなりの広さ。 もちろんトイレは手すりを増設していて、洗面台は車椅子に座ったままでも使えるように低い位置に取り付けられています。 このほか、個室ドア・トイレドアの開閉は全て押しボタン式の自動ドアとなっていて、これらの取り付け位置も低めに。 またデッキから個室入り口までは、「カシオペアコンパート」部のみ広く取られていて、車椅子での移動を容易にしています。 形式図による設計上の室内の各寸法は、デッキから部屋までの通路幅が900mm、ドア開口部も同じく900mm。 ベッド幅も含めた室内の広さは約2,100mm×1,950mm。トイレのドア開口部は約1,010mm。 基本的なサービス内容は、全て「カシオペアツイン」と同等のサービスが受けられるようになっています。 |
--------------パブタイム・カシオペアスペシャル弁当-------------- | | |
| ------------------モーニング(洋食プレート)------------------ |
3号車は食堂車「ダイニングカー」。「北斗星」以来、北海道行き寝台特急では食堂車はなくてはならない名物車両。 2階建て構造の食堂車は、2階部分にホール席・1階部分に通り抜け通路を設けて、無用な通り抜け客の煩わしさを解消しています。 内装は清潔感溢れるホワイトやベージュをベースとして、木製チェアに張られた青いモケットが空間のアクセントに。 全体的にカジュアルな雰囲気で現在の「北斗星」の食堂車に通じるインテリア。 「トワイライトエクスプレス」の豪華絢爛な印象の食堂車とは180度違った雰囲気で、豪華寝台特急の双璧を織り成す好対照。 ホール席はドーム状に丸くなった天井が印象的。2人掛け席が8卓、4人掛け席が3卓で、定員は28人。 階下の通路直上となる席はフロアより一段高いセミハイデッキとなっています。 上下列車とも、ディナータイム・パブタイム・モーニングタイムの営業が行われています。 ディナータイムは3部構成で、1回目の17:15〜18:15は懐石料理コースのみ。 2回目の18:30〜19:50と3回目の20:10〜21:30はフランス料理コースと懐石料理コースが楽しめます。 ディナータイムは完全予約制で、乗車前にディナー予約券の購入が必要となります。 夕食には、予約制のディナータイムのほか、ケータリングミールの「カシオペアスペシャル弁当」も選択することができます。 3段のお重に北海の幸・山の幸・海鮮ご飯がぎっしり詰まったお弁当で、料金3,500円はわりとリーズナブルかも。 このお弁当のお届け時間は18:00〜19:30。各個室へのお届けでの利用のみで、食堂車でこの弁当を摂ることはできません。 こちらも乗車前に予約が必要となっています。 このほか、予約不要の夕食を車内で楽しむには、車内販売で駅弁などを販売しているので、それを購入して食べることもできます。 パブタイムは、おおよそ21:45〜23:00で営業。スタート時間はディナータイムの終了時間により前後することがあります。 パブタイムは予約不要で、誰でも食堂車の利用が可能。ラストオーダーは22:30なので実質1時間に満たない短い時間となります。 メニューには軽食やおつまみのほか、シチュー・ハンバーグ・パスタ・カレーといった本格的な食事も用意。 パブタイムメニューの画像はこちらから・・・ ■ ■ ■ ■ ■ モーニングタイムは6:30〜8:30で営業。ラストオーダーは8:00、または積み込みの食材が終了となり次第営業終了となります。 モーニングも予約が不要。メニューは洋食(パンセット)か和食(ご飯セット)の2種類。 おかずは共通食材となっていますが、魚料理が洋食ではムニエル・和食では焼き魚と変化が付けられています。 なお、モーニングタイムは喫茶のみでの食堂車利用はできません。 シャワー室の利用カードやグッズもこの食堂車で購入できます。 食堂車および車内での全ての支払いには現金のほか、Suicaでの支払いも可能となっています。 (NRE 日本レストランエンタプライズの「カシオペア案内」はこちらから→■) |
------------------------シャワー室------------------------ | | | |
| ------------------------ミニロビー------------------------ |
長距離を走る豪華寝台特急の長旅に、息抜きの場として、語らいの場として必要不可欠なフリースペース。 「カシオペア」では、編成の札幌方末端の12号車に「ラウンジカー」を連結しています。 グリーンとブルーのソファーに、天井もブルー。色調がメタリックな感じなので、未来的・宇宙感覚が漂う雰囲気です。 一人掛けの回転ソファーが11脚と、ウェーブ形状にデザインされた長いソファー。座ると基本的に太平洋側を向くようになっています。 一番奥は展望タイプになっていて、回転ソファーが4脚。曲面ガラスがはめ込まれていて、側面の窓は足元までガラス張り。 下りの札幌行きでは機関車と対面になりますが、上りの上野行きでは最後尾となるので、誰でも展望パノラマが楽しめます。 室内には、始発駅出発から終点到着までクラシック音楽がBGMとして流されています。 ラウンジ室の入り口脇には自動販売機とカード式公衆電話が設置されているほか、デッキ部分には売店スペースも。 食堂車の営業時間内でここの売店もオープンしていて、車内販売で扱っている商品を購入することができます。 ラウンジカーの床下には、「カシオペア」の全ての電気を賄う発電機関スペースとなっています。 床下からは常に発電機が動いている音が聞こえてくるので、まるでディーデルカーに乗っているような感覚になります。 この「ラウンジカー兼電源車」は検査で編成を離脱することがあり、その時はラウンジスペースの無い純粋な電源車が連結されます。 12号車のラウンジカーのほか、5号車と9号車には対面ソファーを設置したミニロビースペースがあります。 ミニロビースペースには飲料の自動販売機も設置されています。 共用のシャワールームは、6号車と10号車に設置されています。 シャワーを利用するには予約とシャワーカードの購入が必要で、3号車の食堂車で利用の申し込みをします。 シャワーカードは一枚310円。シャワーの利用時間は1回で30分が割り当てられ、シャワーそのものは6分間の給湯となっています。 シャワールーム内には備え付けの石鹸やシャンプー・タオルといったアメニティは全く置いてありません。 これらも食堂車で「シャワーセット」が販売されているので、必要であれば購入することとなります。 |
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「カシオペア」では全ての個室がトイレと洗面台を完備しているので、サニタリースペースは2・7・11号車のみに設置。 いずれも洋式個室で洗面台をビルトイン。独立した洗面室は設けられていません。 デッキは意外とあっさりとした印象。ドアの丸い窓が優雅な雰囲気を漂わせています。 2号車のデッキにはカード式公衆電話が設置されています。 |