次世代の寝台列車のあり方を模索するため、従来車からの改造ではなく完全新製された豪華客車「夢空間」 「オリエントエクスプレス イン ジャパン」の成功と「北斗星」「トワイライトエクスプレス」の大ヒット後に登場し、 また、登場自体に試作的な意味合いもあって、今までの寝台車の枠に捕らわれない奔放さが空前絶後のゆとりを生んでいます。 1989年の「横浜博覧会」開催時に桜木町駅前での展示でロールアウト。その後海浜幕張駅前でレストラン営業を行い、 1990年秋の「国際鉄道デザイン会議」の特別列車でついに本線デビュー。その冬には「北斗星トマムスキー」号で一般営業を開始しました。 「夢空間」は食堂車・サロンカー・寝台車の3両で組成。「夢空間」だけでは編成が完結しないため「北斗星」用の予備車と編成を組み、 北海道方面の「夢空間北斗星」号以外にも、東北方面や北陸、大阪方面さらに山陰方面にも運転されました。 製造から20年ほどの間で本線上を走ったのは僅かな回数での活躍でしたが、「老朽化」を理由に2008年3月をもって3両全てが退役。 3両のうち、食堂車とラウンジカーの2両は、埼玉県三郷市にオープンした「ららぽーと新三郷」へと移設。 ラウンジカーはフードコートの一角で休憩施設として開放され、食堂車は商業施設の一角で屋外展示されています。 |
編成の一番はしっこに連結されるダイニングカーは、前代未聞の「展望食堂車」。 しかも着席定員は個室の4名も合わせて合計22名。ちなみに「北斗星」の食堂車「グランシャリオ」の定員は30名。 テーブル配置にかなり余裕があることが数字の上からもうかがえます。 厨房脇の通路からオープンホールに向かう途中に4人用個室が設けられています。 個室内はイス席ではなくソファー席になっており、テーブルは6角形のかなり大きめのもの。 個室のドアは完全に締め切る事ができます。 「ポスト・モダン」をキーワードに、パリのビストロをインテリアイメージとしたそうですが、とにかくあちこちがゴールド一色。 バブルで日本全体が浮かれだっていた頃の片鱗がそこはかとなく(いや、否が応にも?)感じられます。 一番最後尾のパノラマウィンドの下のストックヤードには上野〜尾久間の推進運転で使う手動ブレーキ装置が隠されています。 製造は東急車輌、内装は「東急デパート」が担当しています。 |
ダイニングカーの次に連結されるラウンジカーはこれまた日本離れしたインテリア。 まさに「大人の社交場」といった雰囲気で、最も「オリエントエクスプレス」の影響を大きく受けています。 インテリアテーマは「知的遊空間」。アール・ヌーボー調の内装で揃え、こちらもゴールドの装飾がふんだんに使われています。 内装で最も特徴的なのが「窓」。列車の窓は普通、大きく枠取りをして外を眺められるようにしますが、 このラウンジカーの窓はスクラッチガラスの内窓を設けた二重窓で、外界と車内を完全にシャットアウトする演出。 車内中央のバーカウンターも他に例を見ない、かなり凝ったもの。天井のグラス照明などは到底ここが列車内とは思えません。 壁面に飾られた絵と絨毯の刺繍はともに「花」となっていて、これらは全て東北本線沿線の「市を代表する花」です。 「クリスタルラウンジ スプレモ」と愛称の付いたこのラウンジカー、製造は富士重工業、内装は松屋デパートが担当しています。 |
デッキからラウンジ室に向かう途中の細い通路の脇にはサニタリーが設けられています。 これまた仰天の豪華さで、シンク廻りはゴールドの装飾で統一。シンク自体も貝を模るという凝ったもの。 洗面室・トイレとも丸窓にはステンドグラスがはめ込まれていて、用が無くてもついつい入ってみたくなるサニタリーコーナーです。 |
「デラックススリーパー」と命名された特級Aクラス個室寝台車輌。インテリアテーマは「オールド・ニュー」。 個室数は2人用個室が3ルーム。つまりこの1車輌の総定員は6名という、とんでもない車輌です。 トワイライトエクスプレスの「スイート」よりもさらに上級の、 つまり、数ある日本の列車の中で最高クラスとなる客室がこの「エクセレントスイート」です。 車輌の3分の1を占め、占有面積は14.6平方メートル。 室内は応接室、寝室、バスルームの3セクションで構成されています。 応接室にはソファーが2脚とクローゼット、テレビにカード式電話にAV機器を装備。 車輌屋上に衛星放送用のアンテナを載せているので、テレビは衛星放送の受信が可能です。 寝室はセミダブルベッドが2台。ベッドはL字型に配置され、ちょうど「カシオペアツイン」のような配置となっています。 ただ、こちらはベッドとベッドの接触面にナイトテーブルがあるので、それぞれが独立したかたちになっています。 寝室にもテレビを装備。もちろん衛星放送の受信が可能です。 応接室と寝室にはそれぞれインターホンがあり、ダイニングカー/ラウンジカーへルームサービスのオーダーが可能。 (ただし、ルームサービス自体が行われているのかは不明です。) バスルームはなんと日本の列車としては他に例の無い「バスタブ」を備えています。 そのほか洗面シンクと洋式トイレがあり、ちょうど市中のビジネスホテルのユニットバスと同じ構成になっています。 ちなみに「エクセレントスイート」のバスルームは壁からバスタブから全てがド「ピンク」一色!! 斬新さを通り越して、恐怖すら感じます(笑) 「エクセレントスイート」より若干下のランクの客室が「スーペリアツイン」。車輌に2部屋が設定されています。 こちらは寝室と応接室が一体となっています。 AV機器類の装備品は「エクセレントスイート」に準じていますが、ソファーがレール方向に置かれ、 ちょうど窓を背にして座るようなかたちとなります。 ベッドはシングルサイズのものが、こちらもレール方向に2台並んでいて、 「カシオペアスイート メゾネットタイプ」の1階寝室のような配置となっています。 ちなみにこの2台のベッドは2つ繋げて「ハリウッドタイプ」としてもセットする事ができるそうです。 バスルームは「エクセレントスイート」と同じくバスタブを備えたユニットバス。 「スーペリアツイン」客室の占有面積は6.5平方メートル。 製造は日本車輌、内装担当は下記のスーペリアツインも含めて「高島屋」です。 |