青函トンネルの開通によって、青森から函館までの延長運転が決まったJR西日本の寝台特急「日本海」号。 その「日本海」号の更なるグレードアップと札幌までの延長運転を視野に入れて開発されたのが「トワイライトエクスプレス」です。 1989年7月に、まずは団体ツアー専用編成として登場。同年12月からB個室車を組み込んで、週4日の定期的な運行が始まりました。 開発当初から「豪華クルージングトレイン」として計画されたこの列車は、その豪華さで話題を呼び、爆発的な人気に。 1991年には3本目の編成が増強されて、繁忙期の毎日運転が実現しますが、寝台券の入手困難な状況は現在まで続いています。 2009年に20周年を迎えた「トワイライトエクスプレス」。 名実共に「日本一の豪華寝台列車」として日本の鉄道車両の頂点に君臨し、今なお旅人の憧れの存在として走り続けています。 |
「トワイライトエクスプレス」で、「スイート」と並んでチケットの入手が困難となっているのが、この「ロイヤル」です。 年間を通して、季節を問わずプラチナチケットとなっているこの個室。1号車に4室、2号車に4室の合計8室が設定されています。 室内の主な設備は、ソファーベッド・デスク・椅子・シャワーブースから成り立っています。 まず、ソファーは電動で背もたれが倒れてくる仕掛けになっていて、この背もたれが倒れきるとセミダブルサイズのベッドに。 この背もたれを動かすには入り口脇のボタンを押すだけ。全く手を掛けずにベッドメイクを行うことができます。 ソファー幅は800mmですが、ベッドをセットした時の全幅は1,400mmにもなります。(室内全体がベッドになってしまいますが) このセミダブルサイズにより、「ロイヤル」では2名利用の料金設定もあり、2人用個室としても使うことができます。 デスクとソファーはコンパクトに。いずれも、ベッドセット時にはシャワー側まで寄せればベッド幅には干渉しません。 室内に入ると、デスク上にはぎっしりと、アメニティポーチ・灰皿・車内案内ファイルなどが置かれています。 これらをどかせば、文章を書いたり、パソコンを置いたりできるだけのスペースはあります。 このデスクの脇には折り畳み式のテーブルもあります。 デスク上の照明具は固定されていて動かせないので、パソコンなどはこのテーブルを出して使ったほうが便利です。 ソファーの対面には全身鏡・ドライヤー・オーディオ装置、入り口脇のわずかなスペースにはコートクロークがあります。 ドライヤーは風量がかなり強いので、女性でも満足して使えるはず。 その下の液晶テレビは、車内放映のビデオ番組のみで一般のテレビ放送や衛星放送は映りません。 ビデオチャンネルは3つあり、1chは映画・2chは紀行番組・3chは車内設備の案内となっています。 オーディオチャンネルは4つあり、ビデオ・オーディオとも3ヶ月ごとにプログラムが交換されています。 コートクローク内にはハンガーと洋服ブラシがセットされています。 シャワーブースは、「北斗星」のロイヤルとほとんど同じ構成となっています。 折り畳み式の洗面台が上段に、下の段は収納式のトイレ。部屋から出なくても洗面を済ますことができます。 「北斗星」の洗面台はバタン!と一気に出てきますが、こちらはダンパーが仕込まれており、展開時にゆっくりと降りてきます。 シャワーは20分間の利用が可能。20分の制限時間内であればに何度でも使え、夜に10分、朝に10分と分けての利用も可能です。 「北斗星」のシャワーは制限時間のリセットボタンがありましたが、「トワイライトエクスプレス」ではリセットボタンはありません。 トイレットペーパーは蓋付きで壁に埋め込まれていますが、蓋をしっかり閉めていてもシャワーを使うと中にお湯が入り込むので、 シャワーを使う前にはトイレットペーパーを取り出しておいたほうが良いです。 A寝台個室の乗客の特権として、食堂車がパブタイムに限り、ドリンクメニューのみルームサービスを頼むことができます。 また、乗車後には「ウェルカムドリンク」が、朝にはモーニングサービスとしてコーヒーか紅茶と朝刊がデリバリーされます。 朝刊は下り列車は「洞爺」で、上り列車は「富山」で積み込み。その後、各個室前の廊下に置く形で配布されます。 個室のドアロックはカードキー式。カードキーは持ち帰りできるので、乗車記念として手元に残しておくことができます。 |
------------1号車展望スイート------------ | | |
| --------------------------------2号車スイート-------------------------------- |
「日本一豪華な寝台個室」として、夜行列車の設備のトップに君臨するのがこの「スイート」ルームです。 1号車に展望タイプが1室、2号車にリビング併設タイプが1室。1列車にわずか2室。当然そのチケットの入手は困難の極み。 室内のレイアウトは、客車上での設定位置が異なることから、1号車と2号車では全く違う個室のようになっています。 1号車の展望タイプは、「トワイライトエクスプレス」のステータスシンボルとしておそらく誰もが知っている存在ではないかと。 シャワーブースまで含めた部屋の広さは、横幅約2,900mm、縦奥行き約4,900mm、天井高さ約2,000mmという圧倒的な広さ。 車端部から展望窓・リビングスペース・ベッドルーム・シャワーブースと玄関から成り立っています。 リビングスペースにはソファーが2台ありますが、これはエキストラベッドにすることができ、スイートは3名での利用も可能。 液晶テレビは、「ロイヤル」同様に車内放映のビデオチャンネル専用。 液晶テレビの下には、スイートのみの設備である冷蔵庫とポット。茶器も用意されているので室内でお茶を淹れることができます。 ベッドは、以前はダブルベッド(1,900×1,600mm)でしたが、リニューアル後はツイン仕様(1,900×820mmが2台)に。 ベッド上にはスイートの乗客のみのサービスとして、バスローブがセットされています。 リビングスペースとベッドルームはカーテンで仕切ることができるので、夜間の就寝時も窓から寝姿を覗かれる心配はありません。 シャワーブースは「ロイヤル」とほぼ同一のタイプ。スイートではシャワーの制限時間が25分とちょっと長めになっています。 シャワーブース脇には全身鏡とドライヤー、食堂車へのインターフォンが設置されています。 展望スイートは一番人気の個室でもあることから、停車中にはホームから窓越しに中を覗かれることも多く、 リニューアルでは展望スイートの窓面にはスモークフィルムが貼られ、窓越しに覗き込んでも中がよく見えないようになりました。 2号車のリビング併設タイプは2号車の真ん中に位置し、乗り心地では1号車の展望タイプより優れています。 シャワーブースまで含めた部屋の広さは、横幅約1,950mm、縦奥行き約5,700mm、天井高さ約2,300mmでこちらもかなりの広さ。 2号車スイートの一番の特徴は、リビングスペースにそそり立つ、天井にまで届く巨大な窓。 リビングペースのソファー2台は、こちらもエキストラベッドになり、3名での利用が可能となっています。 通路側には液晶テレビ、その下には冷蔵庫と電気ポットがセットされています。 ベッドは1,900mm×820mmが2台。ツイン仕様で並べられています。ベッドルームとリビングの間はカーテンでの仕切りが可能。 2号車スイートのシャワーブースは1号車とは異なり、シャワーブースとトイレ・洗面室が分かれている点。 シャワーとトイレそれぞれが独立した空間になっているので、よりホテルに近い設備になっています。 |
----------------------B寝台2人用個室 ツイン---------------------- | | |
| -----------------B寝台1(2)人用個室 シングルツイン----------------- |
B寝台の個室というと「デュエット」「ソロ」がスタンダードですが、トワイライトエクスプレスではゆとりある空間を提供するため、 二人用は「ツイン」、一人用には「シングルツイン」という、これまでのB個室とはちょっと違った広めの個室を設定しています。 「ツイン」は5号車と6号車にそれぞれ7室、7号車に9室の、合計23室。 部屋の広さは横幅(枕木方向)が約1900mm、縦奥行き(線路方向)が約1400mm、天井高は約2300mm。 天井が高く、2段の大型窓からの採光により個室内はかなり広々と感じられます。 個室内はリビングとして向かい合わせのソファーが2台と、その頭上に上下可動式のベッド。 2台のソファーは就寝時にはベッドになり、上のベッドを下ろせば2段式寝台となります。ベッド幅は上下段とも700mm。 上段のベッドは電動式で上下し、ボタン1つで操作が可能となっています。 約500mmの高さで上に動かすことができ、最大限に上まで上げておけばソファー利用時には広々とした空間が得られます。 ソファー間のテーブルは折り畳み収納式。ルームサービスの「日本海御膳」などの利用を考慮してか、かなり大きめ。 壁面にはオーディオコントロールパネルがあり、車内放送のBGMが4チャンネルから楽しめます。 各車両の1番個室と2番個室の仕切り壁はスライディングウォールとなっています。 両個室側のロックを解除すると壁を収納することができ、2室続き部屋となって4人個室になります。 「シングルツイン」という摩訶不思議なネーミングの個室は、1人用としても2人用としても使えることから命名されています。 5号車と6号車にそれぞれ6室の、合計12室設定。個室番号8・9・10が日本海側、11・12・13が山側になります。 室内の構成は「ツイン」をベースに居住空間を削ってレール方向に並べ換えたようなスタイル。 ちょうど開放型A寝台を壁で仕切って、上下2段寝台を組み込んだ個室に仕立て上げたような感じになっています。 「ツイン」ほどの開放感はなく、通路からドアを開けるとドアギリギリにソファーが置かれているので、入室する前から窮屈感が。 部屋の広さは横幅(枕木方向)が約1000mm、縦奥行き(線路方向)が約1900mm、天井高は最大値で約2300mm。 下のソファーは折り畳み式のベッドになっています。また上段のベッドは「ツイン」の上下可動式とは異なり、降りた状態での固定式。 「シングルツイン」では上段ベッドに沿った窓はなく、下のソファースペースの細長い窓だけになります。 画像ではちょっと分かりにくいのですが、通路側壁面にコンセントが1つ口用意されています。 さすがに2人で使うと窮屈そうですが、1人で気ままにトワイライトエクスプレスの旅を楽しむにはこのコンパクトさはちょうど良さそう。 |
8号車と9号車は昔ながらの2段式B寝台となっていますが、通路側にパネル壁とサッシ戸が設置された簡易個室になっています。 4人利用の際は、サッシ戸を閉めて使えば「4人個室」のようになります。 1〜3人利用で見知らぬ同士が相部屋となる時は、サッシ戸を開放しておけば普通の「開放型B寝台」に。 ちなみにサッシ戸はロック機能がなく、内側からも外側からも鍵を掛けることはできない、ただの仕切り戸。 広さは横幅(枕木方向)が約1900mm、縦奥行き(線路方向)が約1900mm、天井高は中央部が約2300mm。ベッド幅は700mm。 ベッド内の壁面には読書灯・オーディオ操作パネルがあり、イヤホンがあればオーディオサービスを楽しむことができます。 各寝台はカーテンで仕切ることができるので、就寝時にはプライベート空間を確保することができるようになっています。 下段ベッドには通路側に折り畳み収納式のテーブルを設置。窓側には固定式の共用テーブルが設置されています。 荷物収納スペースは上段の通路側、ちょうど通路の天井裏となるにスペースがあり、ここに荷物を置いておくことができます。 |
-----------ディナーコース(2009-2010冬メニュー)・パブタイム----------- | | |
| -----------------モーニング(洋定食)----------------- |
3号車に連結されるレストランカー、愛称は「ダイナープレヤデス」。 「北斗星」の食堂車「グランシャリオ」が豪華な内装で話題になりましたが、「ダイナープレヤデス」はそれを越える圧倒的な雰囲気。 特に夜間のホール席の雰囲気は、思わず息を呑むほどの煌びやかさ。列車の中とは思えないほどに感じられるはずです。 この食堂車は北陸本線の特急電車で使われた「サシ489」型を改造したもので、外観からも特急電車時代の名残が分かります。 食堂車だけ「トワイライトエクスプレス」構想より前にすでに登場していて、「グルメ列車」など団体列車に使われていました。 その後「トワイライトエクスプレス」誕生に伴い、室内を「4席+4席」から「4席+2席」に改造して組み込まれ、今に至ります。 2001年のリニューアルではロココ調のインテリアはそのまま存続され、テーブルライトが縦長のものに交換されました。 列車は大阪発・札幌発とも午後の早い時間となることから、食堂車はディナータイム前に営業が開始されます。 大阪発の下り列車では13:00〜16:00の間で「ランチタイム」が設定されています。 パスタやカレーなどの食事モノがふんだんに用意され、特にふわふわのオムライスは営業開始後すぐに売り切れる人気メニュー。 札幌発の上り列車では14:30頃〜16:00の間で「ティータイム」が設定されています。 こちらはアルコール・ソフトドリンクメニューのみの対応で、ランチのような食事モノやおつまみはありません。 ディナーは完全予約制。フレンチのコースディナーのみが食堂車での食事を許され、和食の「日本海懐石御膳」はルームサービス対応。 ディナータイムは1回目が17:30〜19:00。2回目が19:30〜21:00。各回とも1時間30分を掛けて、ゆっくりと食事を楽しめます。 コースメニューの内容は季節に合わせて変更され、北海道をはじめとする沿線の食材をメニュー構成に盛り込む凝りよう。 「北斗星」に比べて頻繁にメニュー内容が変わるので、これを楽しみに乗車するリピーターも多いそうです。 ディナータイム終了後は、おおよそ21:00〜23:00の間で予約不要のパブタイムとなります。 パブタイムのメニューはアルコールとおつまみが中心で、レストランというよりサロンやバーに近いスタイルでの営業。 食材は下り基点の大阪側でまとめて積み込みが行われるため、上り列車では売り切れとなってしまうものもあります。 朝食のモーニングタイムは、45分刻みで時間設定がなされ、車内で申し込む完全予約制となっています。 大阪発は6:00〜9:00の間で4回転、札幌発は6:45〜9:00の間で3回転の営業。 A個室の乗客は大阪・札幌発車後のウェルカムドリンクサービス時に、優先的に朝食の予約が申し込めます。 B寝台の乗客はその後のランチ(ティー)タイム営業時か、車内販売で予約の申し込みができます。 朝食は「洋食」「和食」のどちらかから選べ、料金はいずれも1,575円。準備数は洋食が約50食、和食は約30食らしいです。 サロンカーにあるシャワー室の利用カードの購入や、グッズの購入もこの食堂車で。 ただし、ディナータイム中は基本的に食堂車への出入りを制限しているので、それ以外の営業時間内での購入となります。 食堂車および車内での全ての支払いは現金のみ。クレジットカードやICOCA・SuicaといったICカードでの支払いはできません。 (ジェイアール西日本フードサービスネットの「トワイライトエクスプレス案内」はこちらから→■) |
----------------------電話ブース・自動販売機コーナー・シャワールーム---------------------- | | | |
| --------7号車 ミニサロン-------- |
4号車にはサロンカーが連結されています。愛称は「サロン・デュ・ノール」。 デビュー当時はピンクのソファーに真鍮ポールが目立ち、今見ると、登場した頃の時代の流行を反映したかのインテリアでした。 2001年のリニューアル時に、木目柄を全体に使い、ソファーは優しいパールグリーンのものになって温かみのある雰囲気になりました。 窓は両側とも天井にまで届く巨大なもので、ソファーは全て日本海側を向いています。 これはソファーに座りながら日本海に沈む夕陽を眺めるというコンセプトからのもの。(ただし下り列車のみでの話) ちなみに北海道内での噴火湾はソファーの向きとは反対側の「背中」側になります。 通路とメインフロアは通常のフロアレベルより400mm高いハイデッキとなっていて、窓側のベンチソファーに人が座っていても、 ほとんど気にならずに窓の向こうの景色を眺めることができます。 ディナータイムの「日本海懐石御膳」はこのサロンカーで摂ることもでき、パブタイムにはここでの飲食も可能。 JR西日本エリア内を走行時には、サロンの一端に記念スタンプが置かれ、乗客は乗車記念に自由にスタンプを押すことができます。 5号車B個室車寄り側には自動販売機コーナーとシャワールーム2室があります。 シャワー室を利用するには、まず食堂車でシャワーカードを購入し、利用時間の予約を入れる必要があります。 シャワーカードは1枚310円。シャワーは6分間の給湯で、着替えなどの時間も含めて1回の利用で30分の利用時間。 途中でシャワーの給湯を止めれば残り時間のカウントも止まるので、こまめに止めればけっこう長い時間使うことができます。 なお、残り時間にまだ余裕があっても、うっかりドアを開けるとそこで残り時間がゼロになり強制終了となるのでご注意。 シャワー室内にはボディソープがありますが、シャンプーやコンディショナーは置かれていません。 食堂車でアメニティセットやシャワーセットが販売されているので、必要な人は購入する事になります。 自動販売機コーナーには飲料のほか、おつまみやお菓子の販売機もあります。もちろん時間を問わずに常時利用可能。 このほか、サロンカーの食堂車側のデッキにはカード専用の公衆電話を備えた電話室が設置されています。 7号車にはミニサロンがあり、サロンカーまでの距離があるB個室・Bコンパートの乗客の寛ぎの場となっています。 大型のレザーソファーが2台と公衆電話・マガジンラック・飲料の自動販売機が設置されています。 |
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サニタリーコーナーは、4号車から9号車までの全ての車両に設置されています。 (トイレと洗面台が室内に完備されているA個室の車両と食堂車には、共用サニタリーコーナーはありません。) 洗面台とトイレは、全てキレイにリニューアルの手が加えられていて、洗面台は全てセンサー式の自動給水になっています。 トイレは洋式と和式がそれぞれ1室ずつ設置されています。洋式個室は手摺りを設置してバリアフリーを意識した作りに。 デッキも深い木目調にリニューアルされていて実にシックな雰囲気。 「スイートエンゼル」のエンブレムを施したマットも敷かれていて、乗車時には旅立ちの気分を盛り上げてくれます。 |