JR東日本 24系客車 寝台特急「日本海」

  

1950年、大阪〜青森間の急行列車に「日本海」の愛称が付けられ、これが現在まで続く寝台特急「日本海」のルーツ。
長い間、京阪神と青森を結ぶ列車として親しまれてきました。

青函トンネルの開通により、2往復中の1往復が函館発着となりましたが、これも後に廃止。現在は1往復だけが残存。
編成はJR東日本の青森車両センターの24系客車を使用。
A寝台とB寝台のみで構成され、これら寝台客車には個室車は無く、昔ながらのベーシックな編成となっています。

日本全国でもわずかに生き残った寝台特急の中でも、最も廃止の窮地に近い「崖っぷち」な存在として話題に上がりますが、
京阪神と秋田・青森を結ぶ夜行バスはなく、両エリアを結ぶ対抗するライバルがいない唯一の夜間移動の公共交通機関であること、
また修学旅行期や夏冬の繁忙期には安定した乗車率を上げていることから、今後の行く末に注目が集まる寝台特急です。






A寝台

---------------------A寝台・下段---------------------
    

------------------A寝台・上段------------------

編成中に1両だけ、青森方の一番端っこになる12号車に「A寝台」車が連結されています。

現在までに残った寝台特急の「A寝台」は全て個室であるのに対して、「日本海」号のこの「A寝台」は開放型寝台。
通路を中央に配して、その両脇に寝台を設置した「プルマン式」と呼ばれるタイプです。
寝台は全て、上段と下段の2段式。
寝台サイズは下段が、幅が約1,000mm・長さが1,900mm・高さ約1,200mm。上段は幅が約900m・長さが1,900mm・高さが約1,000mm。

下段寝台はやはり一番人気。
通路からすぐに自分の寝台へと入れる手軽さと、やっぱり、大きな窓を独り占めできるのが人気の所以です。
寝台内での、寝台面から上段の天板までの高さが約1,200mmを余裕があるので、あぐらをかいた姿勢で座ることができます。
窓の下には折り畳みテーブルが収納されていますが、敷布団をちょっとずらせばこのテーブルを簡単に引き出せます。
テーブルはけっこう大きめなので、車内に持ち込んだ食料品や雑誌、小物などを置いておくのに便利。

上段寝台へは通路からハシゴを上って入ります。ちょっとした「隔離空間」的な感じ。
寝台内の天井は壁側が丸くカーブしているので、寝台空間内も独特な雰囲気です。
窓はごく小さな小窓がついているだけで、寝台内からの外界への眺望はほとんど望めません。
テーブルなども無いので、下段に比べて物置も少なく、起きている時間帯の居住性はあまり良くありません。
一方、就寝時間帯ですと、通路を行き交う人の足音や床下から伝わる列車の走行音や振動が下段に比べてかなり軽減されるので、
熟睡するには、下段よりも上段寝台の方が良い環境といえます。

A寝台の乗客に用意されているアメニティは、ハンガーと浴衣が各寝台に、スリッパが通路に準備されています。
ハンガーが服を掛けた状態では、下段では服が完全に吊るされた状態になりますが、上段では服の下方が寝台面にやや引っ掛かります。
浴衣は昔から寝台列車でサービスされていた古めかしいスタイルのもの。
スリッパも昔ながらのビニール製のもので、歩くとペタンペタンと足音がします。
このほか、寝台内の設備としては、上段・下段とも蛍光灯の読書灯が設置されています。


A寝台車両はデッキ側に乗客の共用空間として、対面のボックス座席と着替え室があります。
ボックス席はA寝台専用のちょっとしたサロンスペース。ここは喫煙スペースとなっていて、座席袖部分に灰皿が設置されています。
着替え室は中がカーペット敷きで、ちゃんとしたフィッティングルーム仕様。もちろん内側からロックすることができます。



 下段寝台のみにあるテーブル。
 本来は下段寝台をボックス席にした際の昼行仕様で使うものだが、寝台展開時にも引き出して使うことができる。
 テーブルを引き出したところ。かなり大きいので乗車時に持ち込んだ食品や飲料などを広げても問題ない大きさ。
 下段寝台の両脇にある小さな棚。 これも本来は、ボックス席にした際の昼行仕様でヘッドレストとなる部分。
 ボストンバッグやリュックサックぐらいの大きさのカバンなら置いておくことができる。
 天板や壁面には数箇所にフックが設置されている。天板のフックにはハンガーで上着などをを吊るしておける。
 壁面のフックはビニール袋や帽子などを掛けておくのに便利。
 A寝台の乗客にサービスされるアメニティは浴衣とハンガー。残念ながら洗面キットなどは提供されない。
 各寝台の壁面に設置されている小さな「カガミ」。
 寝台内の照明はこの読書灯のみ。カバー付き蛍光灯でON/OFFの2ウェイ。
 就寝時間帯に通路が一斉に減光されると寝台内はかなり暗くなり、この読書灯でも明るさはあまり充分とはいえない。
 通路に張り出した寝台番号案内のプレート。
 A寝台は個室が主流となった現在では、ほとんど見ることができなくなった「国鉄時代の遺産」









B寝台

12号車のA寝台以外は全てB寝台車両となっています。個室車両は無く、全てが昔ながらの開放型2段寝台。
通路を片側に寄せて、枕木方向に2段寝台を設置したスタイルとなっています。

各寝台のサイズは、幅が約700mm・長さが約1,950mm。寝台内の高さは下段が約1,100mm。上段が約950mm。
寝台設備のアメニティには、浴衣とハンガーが各寝台上に、ビニルスリッパは寝台下に準備されています。

「日本海」号では、B寝台を寝台料金不要で利用できる区間が設定されています。
下り列車は東能代→青森間を「立席特急券」の購入で、上り列車は青森→秋田間を「指定席特急券」の購入でそれぞれ利用が可能。
一部車両の寝台番号のプレートの下には座席番号のプレートも貼られていますが、これは特急指定席区間での座席番号。


 下段寝台の転落防止柵は、折り畳んで寝台下へと収納が可能。
 寝台内の読書灯はいくつかのタイプがあるが、これが一番オーソドックスなタイプ。
 消灯・豆電球・蛍光灯の3ウェイでの利用ができる。
 下段寝台のテーブルは、通路側の仕切りに収納されているのを起こして使う。
 ハンガーは上下段寝台ともフックに引っ掛けて使う。
 寝台上にセットされているアメニティ。布団類とハンガーに浴衣。国鉄時代から変わらないスタイル。
 荷物収納は通路天井上の荷物スペースに。上段寝台からだと荷物が取り出しやすい。
 下段寝台に収納されている踏み台。荷物収納スペースへ荷物をしまう時のステップとして使う。
 下段寝台のみにある、折り畳み式の小物置きテーブル。
 窓下のテーブルには引っ掛け式のセンヌキ。プレートの字体やイラストがレトロムード満点な雰囲気。
 テーブル下には灰皿。
 B寝台お馴染みの通路の収納座席。
 「日本海」号では下りは夕刻〜夜、上りでは早朝から大阪到着までの時間が長いのでかなり活用されている。
 気が付かれにくいが、通路の天井近くには各ボックスごとに1枚、カガミが設置されている。








サニタリー

--------------A寝台・サニタリースペース--------------
    

------------------B寝台・サニタリースペース------------------

サニタリースペースは全ての車両に完備されています。

「A寝台車」は、編成の行き止まりとなる電源車側にサニタリースペースがあり、実質的にA寝台客専用のスペース。
2つの洗面台と、和式個室・洋式個室、飲用の給水機が設置されています。
いずれの設備も素材むき出しの感が強く、昭和時代に好まれたのであろう「清潔感」が漂う雰囲気。

B寝台車のサニタリースペースは、基本設備は共通ながら、リニューアルが施されていたりいなかったりで各車で様子が異なっています。
基本的にトイレは和式個室ですが、ごく一部の車両には洋式トイレに改造されていたりします。
洗面台は水温調節が可能で、コックを押すと一定時間給水される蛇口が設置されています。

洗面台のカガミ下のコンセントは電気シェーバー用。寝台内にコンセントが無いので、現在では携帯電話の充電に大活躍。
乗車した列車では、B寝台全てのサニタリースペースに飲用の給水機が設置されていて、全機が稼動中でした。







デッキ

デッキはいずれの車両も昔から変わらぬ、ステンレスがギラつく飾り気の無い空間。
機械盤の空きスペースを活用したのであろう「くずもの入れ」も昔ながらのままです。

一部のB寝台車には「更衣室」が設置されています。扉つきで、簡単な踏み台とカガミが設置されています。
車掌室が設置されている車両が編成の中間に入っている場合、「日本海」のマークを間近に見ることができる場合があります。

「日本海」号には飲料の自動販売機は設置されていません。
車内販売も上り列車の朝方に一部区間であるだけで、基本的に車内で飲食物を購入することができません。
乗車前には、ちょっと多めに飲み物と食べ物を手に入れておくことをオススメします。








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