「豪華寝台特急」として生まれ、夜行列車の新たな方向性に先鞭をつけた寝台特急「北斗星」。 折からのバブル景気と青函トンネルブームに乗って、人気列車の頂点へと一気に登り詰めました。 完全新製のオール2階建て寝台列車「カシオペア」の登場によって、王座を明け渡した感はありますが、 今でも個室のチケットは取り難い人気列車であることに変わりはありません。 「JR北海道」と「JR東日本」が各々用意した「北斗星編成」のうち、「JR北海道」所属の「北斗星」を紹介します。 |
数々の趣向を凝らした寝台個室が活躍している中で、依然「1人用個室」の頂点を極めるのがこの「ロイヤル」。 ビジネスホテルのシングルルームをそのまま「鉄道車両」サイズにして持ってきたかのようで、 数々のアメニティを味わう前に、まず室内で“歩き回れる”広さに感動することでしょう。 約5.7平方メートルの室内にはベッド・ソファー・ライティングデスク・コートクローク、そしてプライベートシャワー。 上野→札幌間を、部屋から一歩も出ずとも不自由なく過ごせるほどです。 ベッド幅は80cm。各種B寝台のそれより10cm幅広で、1人で寝るには充分なワイドさです。 このベッドの下にはエキストラベッドが収納されていて、これを引き出すとダブルベッドに早変わり。 ベッド幅140cmという驚異的な大きさになります。(もっとも部屋全体がベッドになってしまうような感じですが) このベッド、入線時からベッドモードでセットされているのですが、簡単にソファーへと変えることができます。 窓と背もたれのわずかな隙間にレバーがあり、これを引くと壁面の背もたれが下りてきます。 下ろした背もたれは、若干のリクライニング角度が付けられていて、これで立派なソファーの出来上がり。 |
室内の装備品(例えばルームサービス用の電話機やオーディオコントロールパネルなど)は、 ボタンやスイッチ類が若干ヘタレてたりして・・・今となってはやや古めかしさが漂う、ちょっとレトロな雰囲気。 天井等はON/OFFのほかにも、光量を絞ったり明るくしたりすることができます。 夜間の車窓に見える星空を眺めたり、2人でちょっとムーディな雰囲気になってみたりと、用途によって自由自在。 ドライヤーは風量がとてつもなく弱いので、特に女性の方は自前のドライヤー持参での乗車がベストです。 備え付けの電話は外線発信はできません。食堂車にルームサービスなどを頼む際に使えるハウスフォーンです。 ロイヤルの乗客は、食堂車がパブタイムの時間に限りルームサービスを頼むことができます。 また乗車後に部屋にはウェルカムドリンクがサービスされるのですが、 この時に朝食のルームサービスを予約しておくことができます。(ただし和定食のみ) |
シャワーブースには、メインとなるシャワーのほか、収納式の洗面台と洋式トイレを完備。 いつでも好きな時にシャワーを思う存分浴びることができ、 わざわざ部屋から出なくても歯を磨いたり、顔を洗ったり、用を足すことができる。 これらの利便性を体感しただけでも、「ロイヤル」のリピーターになってしまいそうです。 シャワーは1カウントで10分の利用が可能。 この「10分」の利用は、(多分タンクのお湯が尽きるまで)何度でもリセットができます。 リセットボタンはシャワー扉の横の丸いボタン。これを押せばタイマーがまた「10分」に元通り! ちなみに上野→札幌の乗車で、10分利用を5回(つまり50分!)ほど使ってみましたが、 問題なく熱々のシャワーを浴びることができました。 収納式の洗面台とトイレは、引き出し/折り畳みとも動きが重いので指などを挟まないようにご注意。 トイレットペーパーは壁面の銀色の小さな扉の中にセットされています。 もちろんこの扉はシャワーを使っても、中のペーパーが濡れないためのものだとは思いますが・・・・ けっこう隙間があるみたいで、シャワーを一度使うと中のペーパーは確実に濡れます。 シャワーを使う前には、先にこのトイレットペーパーをシャワーブースから出しておくのが正解! ------------------------------------------------------------------------------------------ さて、完全無欠の室内装備を誇る「ロイヤル」のようですが・・・・ 実は電源コンセントがシャワーブースの洗面台脇の奥に1つしかないという、不便な点があります。 室内でパソコンを使ったり、携帯電話やデジカメの充電をするつもりだという人は、 “お荷物”でも2〜3メートル延長コードを持参されることをお薦めします。 シャワーはシャワー室の扉を完全に閉めないと給湯機能が作動しないのですが、 扉の下は柔らかいゴムになっているので、延長コードを室内へ伸ばした状態でも扉は閉まります。 コンセントは水濡れ防止のカバー付きなので、持参する延長コードはプラグ側が可動するタイプにしましょう。 (情報提供:「錆び鉄の部屋」 ちゅう様より ありがとうございます。) |
| | |
| |
「ロイヤル」とならんで「豪華寝台特急・北斗星」を演出してきたのが、この「ツインデラックス」。 真紅の格子柄モケットを纏ったソファーにベッドは華やかで、当時の“新生JR”を印象つけるものでしたが、 実はこの「ツインデラックス」、国鉄時代末期に改造されて登場した個室だったりします。 「盛アオ」表記を身に纏って寝台特急「ゆうづる」でデビューを飾ったエピソードを持っている、 「ロイヤル」よりも「北斗星」自体よりも“先輩”なわけです。 さて、室内には前述のようにソファーと2段式のベッド(下段はソファーにもなります)にライティングデスク。 ベッドは上段が70センチ幅、下段は75センチ幅。 下段はベッドを起こすと、センターセーブル付きのソファーが現れます。 上段には読書灯のほかに小窓があり、寝ながら車窓越しに外の風景を見ることができます。 個室入口脇にはロッカーがあり、ちょっとした荷物と上段ベッド用のハシゴが収納できます。 (このロッカーがいかにも“業務用”って感じのもので、すんごい場違いなのが笑えます) 照明と空調の調整ボタンとツマミは個室入口のベッド側壁面にあります。 「カシオペア」が登場した今や、料金的に「カシオペアツイン」と同等になってしまった「ツインデラックス」。 前者が個室内にトイレと洗面台を完備、ナビゲーションシステム付きのAVサービスに衛星放送放映と、 「ツインデラックス」のはるか先を行ってしまっているのですが、 「カシオペア」が2階建て車両の空間制約が大きい中で、この「ツインデラックス」の広々とした空間占有は、 乗車時間の長い分、かなり大きな選択要素になるものではないでしょうか? 当初、季節運転だった「北斗星3・4号」を定期化の上、個室中心としたJR東日本編成とJR北海道編成で隔日と運転するため、 平成元年頃に、両社で一般寝台車の個室寝台車両化改造やロビーカー・食堂車の増備が進められました。 JR北海道では、すでに「北斗星1・2号」編成に組み込んでいた「ツインデラックス(上項)」を1両、「3・4号」用に捻出し、 新たに「1・2号」用に「ツインデラックス」車両を改造製作したのですが、この時に生まれたのがこの「ニューツインデラックス」です。 個室構造をB寝台「デュエット」と同じ上下2段の交互配置として、従来の「ツインデラックス」と同じ8室16名定員で構成。 1室あたりの空間面積は従来のタイプより大幅に広く大きくなりました。まさに絶妙な空間設計の個室車です。 個室内には900mm幅のベッドを「デュエット」と同様に合い向かいに配置。2階個室は室内に階段を抱え込む構造になっています。 室内に入ったすぐ脇には洗面台を設置。アメニティキットのサービスはありませんが、コップとタオルが用意されています。 室内にはAV装置・小型液晶テレビ・アラーム付き時計・空調コントロールパネル・読書灯などが装備されています。 この車両はこの1両だけが登場。「北斗星1・2号」で従来の「ツインデラックス」と交互に隔日運行されていました。 |
| | |
| |
一人用B個室寝台の「ソロ」は様々なタイプが登場していますが、JR北海道の仕様は比較的ベーシックなスタイル。 上段と下段を千鳥状に交差させて配置させ、上段個室は室内に階段を抱え込んだ設計になっています。 上段はこの階段部分で、下段は天井方向へ突出した部分で完全に立ち上がることができ、着替えもラクラク行えます。 寝台幅は上下段とも70センチ。空調と室内音楽放送のコントロールパネルも設置されています。 上段は大きく湾曲した空間になっていて若干圧迫感がありますが、 天井へと繋がるかのような曲面窓ガラスからは、まるでプラネタリウムのような星空が・・・・! お世辞にも「広々とした・・」なんて表現はできませんが、1人で気兼ねなく過ごすには充分な空間です。 個室内には電源コンセントはありません。移動中の充電などはできませんのでご注意を。 ちなみに「JR北海道」編成の「ソロ」は、「ロイヤル」や「ロビー」と合造になっている車両(6号車・9号車)と、 「オールソロ」と呼ばれる1両丸々が「ソロ」になっている車両(5号車)では、室内の雰囲気が若干違います。 合造タイプの「ソロ」はドアロックがカギ式で、室内は落ち着いた雰囲気。 「オールソロ」タイプはドアロックが電子式で、室内は明るめになっています。 二人用B個室寝台の「デュエット」は、かつての「博多あさかぜ」のリニューアルで初お目見えした個室です。 「北斗星」では当初、このJR北海道車だけの設定でしたが、のちにJR東日本車にも「デュエット」が登場しました。 「ソロ」同様に、2名利用なら「開放型B寝台」を2人で使ったのと同じ料金でこの個室が利用できます。 室内はベッド(兼ソファー)を向かい合わせにした構成で、ソファー利用時ならテーブルを挟んで楽しくおしゃべり。 ベッド幅は70センチで、一般的なB寝台のレギュラーサイズです。 北海道行き「北斗星」ということで、カップルや夫婦での利用が圧倒的に多いようですが、 ファミリーユースで親御さんと小さなお子さんが1つのベッドで添い寝、というのもよくあるようです。 ベッド利用時に「気心知れた相手だけど、寝顔を見られるのはちょっと・・・」という人のために、 それぞれのベッドを目隠しする仕切りカーテンも装備しています。 上段個室は室内に階段を抱え込んだ構成で、この階段でなら室内で立ち上がることが可能。 一方の下段個室は、室内中心の天井が高くなった部分で立ち上がることが可能となっています。 ただ、上段個室のほうが開放感があるので、上下段のどちらを選ぶかはこのあたりが選択肢となりそう。 この「デュエット」も「ソロ」と同じく、「ロイヤル」と合造になっている車両(10号車)と、 「オールデュエット」と呼ばれる1両丸々が個室になっている車両(2〜4号車)では、室内の雰囲気が若干違います。 合造タイプの「ソロ」はドアロックがカギ式で、室内は落ち着いた雰囲気。 「オールデュエット」タイプはドアロックが電子式で、室内は明るめになっています。 ちなみにJR東日本車が充てられる「北斗星3・4号」に比べ、JR北海道車の「北斗星1・2号」は個室の数が多くなっています。 「ソロ」で約3倍(東-12室/北-35室)、「デュエット」ではなんと約6倍(東-7室/北-46室)の数を誇ります。 特に出発・到着時刻の制約がない旅行なら、個室をゲットできる確率が高い「北斗星1・2号」のほうがおすすめです! |
JR北海道担当の「北斗星1・2号」では、基本的に従来の「開放型B寝台」は連結されません。 編成両端の「B寝台」は各区画にガラス扉と電子ロック錠を備えた準個室「Bコンパート」となっています。 4人での利用なら充分「個室」として機能するので、かつて「さくら」「みずほ」で活躍した「カルテット」の再来とも言えそうです。 そんなわけで、「北斗星1・2号」は客室の「オール個室化」が完了していることになります。 (一部、車両検査や団体利用での貸切などで「開放型B寝台」が連結されることがあります) 室内は前述の扉とロック錠以外は「開放型B寝台」と同等で、ベッドや読書灯などおなじみの装備が整っています。 ただ、この「Bコンパート」と同じ料金で使える「ソロ」「デュエット」が充実している「北斗星1・2号」ですから、 積極的にこちらを選ぶという人は、まずいないでしょう。 |
フレンチディナーコース(2006年1月頃) |
登場したばかりの「北斗星」で、メディアがこぞって取り上げたのがこの食堂車「グランシャリオ」 日本初の“完全予約制フレンチディナーフルコース”を導入したことで、庶民の「北斗星」への高級感はいっそう高まり、 また「いつか乗ってみたい」と思わせるに充分なインパクトを与えてくれました。 JR北海道の「グランシャリオ」は、ご存知の通り重厚なアールデコ調のインテリアとなっていて、大人の雰囲気たっぷり。 この雰囲気の中でワインとフレンチディナーに酔いしれる瞬間はもちろん、 走り去っていく「北斗星」にこの食堂車の明かりを見ただけでも、旅する憧れが沸いてくる、「北斗星の名役者」です。 室内は海側に2人席テーブル、山側に4人席テーブルの配置。赤系の椅子がなんともゴージャスです。 この椅子は、照明の加減や朝夕の陽の入り方で色が真っ赤なワイン色に見えたり、赤茶色にも見えたり。 そんなわけで、「北斗星」ご乗車の際は、ぜひ夜の食堂車と朝の食堂車のどちらも体験していただきたいところです! 化粧板は木目調で、かなり濃いめの色調。これがまた赤いランプシェードに照らされると艶っぽい色になるんですねぇ。 パントリー側の壁面にはステンドグラスを埋め込むというこだわりようで、しかもしっかり「JR」ロゴ入り(^^) 食堂車「グランシャリオ」の営業は・・・・ 【北斗星1号】17:30〜18:50−1回目のディナータイム 19:10〜20:30−2回目のディナータイム (いずれも要予約) 【北斗星2号】18:00〜19:20−1回目のディナータイム 19:40〜21:00−2回目のディナータイム (いずれも要予約) 予約不要のパブタイムは1号・2号とも、2回目のディナータイム終了後〜23:00までとなっています。 (稀にパブタイムの開始時間が前倒しとなることがあります。) (日本レストランエンタープライズの「北斗星食堂車案内」はこちらから→■) |
キッチン内部は、調理器具がぎっしり設置されていることもあって、想像以上に狭いです。 ここであの芸術的なフランス料理が調理されるんですねぇ。 余談ですが、「グランシャリオ」は「GRAND CHARIOT」と綴り、フランス語で「大熊座」のこと。 「GRAND CHARIOT=北斗七星」という解釈があるようですが、厳密には北斗七星は「大熊座」の一部になります。 この「大熊座」を従える「熊の番人−Arcturus(アークトゥルス)」と「Spica(スピカ)」「Denebola(デネボラ)」で構成される 「春の大三角」など、北斗七星がはっきり見える春の季節には、満天の夜空に見どころがいっぱい隠れています。 |
| | |
| | | |
| |
「北斗星1・2号」の6号車にある「ロビー室」には3脚の回転スツールにソファー。 電話コーナーとシャワーブースも備えていて、小さいながらも、けっこう充実した空間になっています。 お弁当を持ち込んだグループ客がここで小宴会を開いていることがありますが、 ほかの利用者が居づらくなってしまい、また壁を隔てた隣は寝台個室なので、ハシャギ過ぎにはご注意。 JR北海道では1両丸々が「ロビー」で構成されている、純粋な「ロビーカー」も持っています。 「カシオペア」登場する以前、「北斗星」が3往復運転だった頃の「北斗星3・4号」は JR東日本とJR北海道の編成が隔日で交代に充当されていました。 この列車に使われていたのが、ここで紹介する「全室ロビーカー」です。 室内はすべてのソファーが海峡側を向いて設置されていて、JR東日本のロビーカーの構成とは一味違った雰囲気。 ソファーは滑らかな弧を描くラウンドタイプで、このあたりも直線的なソファーのJR東日本車とは対照的です。 客室内にはバーコーナーのようなカウンターが設けられています。(使われたことはないようですが) 車端部にはもちろん電話コーナーとシャワーブースを完備。デッキには、おつまみの自販機も備えていました。 シャワーブースはA室とB室の2スペースがあり、利用するにはまず食堂車でシャワーカードを購入して予約が必要。 利用時間は上野(札幌)発車後から23:30までと、翌朝6:00から札幌(上野)到着の30分前までです。 シャワーカードは1枚310円で、1回の利用で30分の時間が確保できます。 シャワーは6分間の給湯で、途中「一時停止」を使えば、身体と頭を洗って泡を流し、体を暖めるには充分な利用時間です。 (洗髪に時間を掛ける女性には6分は短いかもしれません) 残り時間が1分を切ると、室内に「緊急事態発生!」の如くブザー音が鳴り響き、ちょっとビックリします。 残り時間に余裕があっても、うっかりドアを開けるとそこで残り時間がゼロになり、利用終了になるのでご注意を! 更衣スペースには、脱いだ服を入れる簡単なカゴとカガミ、ドライヤーがあります。 ドライヤーは風量が大変弱いので、なかなか髪の毛が乾きません。女性は間違いなくドライヤーを持参したほうがよいです。 このシャワー室にはタオルや石鹸などは一切設置されていないので、利用者が自分で用意する必要があります。 もし洗面用具を忘れてしまっても、食堂車でこのようなシャワーセットが売られているので大丈夫。 このシャワーセットは1セット420円。タオルには「北斗星」のロゴ入りで、持ち帰れば旅の記念になりますね。 |
| | |
| |
洗面台とトイレは、全てキレイにリニューアルがなされていて、「寝台列車」特有の暗く侘しい雰囲気は全くありません。 車両によってリニューアルの内容が異なり、三面鏡を備えた洗面台もあれば、ブラックベースでシックに生まれ変わったものも。 そんな中、ほとんどの洗面台で「冷水器」が元気に稼動中なのが、面白くもマニア的に心強いです。 トイレはほとんどが「洋式」に改造済み。こちらも清潔感あふれる仕上がりになっています。 一部の車両のデッキには縦長の荷物置き場が設置されています。 スーツケースやカバンを入れるには、あまりに中途半端な大きさの空間で、おそらくスキー板・スノボ収納用ですね。 6号車「ロビー室」のある車両のデッキには飲み物の自動販売機が設置されています。 以前は「サッポロ・クラシック」や「エビスビール」なんかがラインナップされていたのですが、 自販機におけるアルコール類の販売制限が強くなってきた頃に姿を消しましたが、食堂車で営業時間内に購入が可能です。 |