寝台特急「はくつる」というと、「寝台特急電車583系」のイメージをこれほどまでに大変強く残した列車はなく、 晩年8年間の24系25型が同列車を務めた時代が霞んでしまうほどでした。 この24系25型客車は、先に廃止となっていた「博多あさかぜ」の余剰車を充てた編成で構成されていました。 もちろん食堂車や「デュエット」「カルテット」といった個室は編成から外されましたが、 同じ青森特急の「あけぼの」が「シングルデラックス」を連結していた関係からか、 この「はくつる」にも「あさかぜ」の「シングルデラックス」が連結されることとなりました。 東海道スジのブルトレから持ってきたこの「シングルデラックス」、 国鉄時代に生まれた、かのA寝台個室で、個室幅は約1,200mm。ベッド幅は700mm。 まるでB個室「ソロ」並みの狭さですが、約2,300mmある天井の高さにかろうじて「A個室」としての余裕が感じられます。 ベッドはソファー兼用。窓側には跳ね上げ式のアームレストが装備されていて、起きている間の個室利用も考慮されています。 このアームレストとバックレスト面になるクッションは動作が連動していて、 アームレストを下ろすとバックレスト・クッションに若干の傾斜が出るように迫り出してきます。 で、アームレストを跳ね上げると、バックレスト・クッションが壁側に平らに戻るというもの。 なかなか凝った作りで、国鉄時代の古さばかりに目を取られていたので、ちょっと感動しました。 窓側にセットされたテーブル兼洗面台は、このタイプの「シングルデラックス」ではおなじみの設備。 走行中に洗面台を開くと、排水管を伝って床下からの走行音とかすかな風が響いてきていたのが印象深いです。 カガミの下には、小物置きの細長いテーブル。このささやかな「横幅」にこの狭い個室の空間活用術が感じられます。 コンセントは「電気カミソリ用」とわざわざ書かれたものが、この小物置きテーブルの上に1つ。 もちろんシェーバー専用なんてことはなく、乗車時には携帯電話の充電に使わせてもらいました。 空調のコントロールパネルは、シンプルで実に分かりやすいもの。 いろんな機能を備えていても複雑な操作が必要で結局使えないサービス機器が多い現代では、 ここまで「単純」な操作で使えるものだと、逆に感動を覚えます。 個室ドアのロックですが、JR九州管轄の「シングルデラックス」はテンキー式のロック機構が装備されましたが、 JR東日本の管轄であったこの車輌は、カギ式のロック機構となっていました。 (国鉄時代へと遡ると、当初この個室ドアは内からのロックのみで、外からロックすることができませんでした。) ウェブ上でこの「はくつるシングルデラックス乗車記」を拝見すると、車掌さんが発車後にカギを配りに来るケース、 個室に入るとすでにテーブルの上にカギが置かれているケース、そして私のようにカギなんぞ一切渡されないケースなど、 なんだかなぁ〜と思うほどサービス内容がまちまちだったようです。 「A個室」としてのステータスサービスとしてか、短い走行時間の列車でしたがアメニティキットが配布されました。 「はくつる」のマーク入りで、内容は「あけぼの」のものと同じ。 シャワーなどの設備が無い列車でしたので、シャンプーやリンス、タオルなどは付いてきませんでした。 ちなみに個室内にはちょっとした手洗いや洗顔用に、ペーパータオルがセットされていました。 |
583系から24系25型へ変わった時点で、金帯車あり銀帯車あり白帯車ありのゴチャ混ぜ編成で組成されていて、 中には塗装がボロボロに剥がれているような車輌もつなげていて、老朽車の寄せ集めな感がありました。 編成中のB寝台は、全て開放型2段寝台。さまざまな経歴の車輌が身を寄せ合っていた編成でしたので、 内装も「金帯あさかぜ」タイプ、「品川区・出雲」タイプ、「尾久区・あけぼの」タイプと豊富なバリエーション。 いずれもモケットやカーテンが交換されてリファインが図られていましたが、古めかしさは拭いきれませんでした。 夜行列車の利用者から密かに人気を得ている、JR東日本の「ゴロンとシート」。 「VS 夜行バス」を念頭に、B寝台からリネンやマクラを取っ払って、料金は特急指定料金のみというリーズナブルさ。 「はくつる」号でも晩年近くには、この「ゴロンとシート」が1両連結されていました。 ちなみにこの「はくつる」号、583系時代に1両を昼行仕様のボックスシートの状態で夜行運用を行っていたことがあり、 これを「普通車指定席」として販売。この「ゴロンとシート」に繋がるようなサービスをやっていた時期もありました。 |
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洗面台やトイレは、ほとんど車輌で原型を留めたままの、 ある意味「貴重」な雰囲気を漂わせていました。 |