青函連絡船の深夜便の歴史を受け継いで、青函トンネル開通の1988年3月から走り始めた夜行急行「はまなす」号。 登場当時は座席車両だけで組成された編成での運転でしたが、のちにB寝台車両も連結。 さらに道内夜行急行の廃止で余剰となった「ドリームカー」や、連絡船の桟敷席のような「カーペットカー」なども戦列に加わり、 現在では、利用者の目的に合わせたバリエーション豊かな客室設備を備えた列車となっています。 |
1号車と2号車にはB寝台車が連結されています。 乗客の利用流動が旺盛と判断された場合には寝台車の増結も行われ、この場合は1号車と2号車の間に「増21号車」が連結されます。 白帯の14系寝台車と金帯の24系が使われていますが、基本設備はどちらも同じです。 寝台は全て開放型の2段寝台。ベッド幅は700mmで特急ブルートレインの寝台車と同じ幅。 各ベッドはカーテンのみによって仕切ることが可能。 ベッドの上には枕・シーツ・掛け布団(毛布)・浴衣・ハンガーがセットされており、これも寝台特急と同等のものが用意されています。 上段寝台の通路側には、ちょうど通路の天井裏となる部分に荷物収納スペースがあります。 デッキなどには荷物を置いておくバゲージスペースがないので、手荷物は全てここに収納します。 1号車・2号車とも、「1番-2番」「3番-4番」「5番-6番」・・・の順で向かい合わせになっています。 2号車の15番上下と16番上下は女性専用となっています。 15番寝台と16番寝台は向かい合っているので、男性客と向かい合ったりするようなことはありません。 また、この女性専用区画のすぐ隣りには更衣室が設置されています。 更衣室は靴を脱いで入る小上がりになっていて、中には大型の全身鏡にスツール・化粧台があり、女性客を意識したパウダールーム風。 この更衣室は女性専用ではないので、男性客も利用可能。ラフな服で乗り込み、翌朝はスーツに着替えて下車ということも可能です。 通路・寝台区画内とも床面にはカーペット敷きになっていて、床下からの騒音と通路を歩く際の靴音を軽減させる心遣いが感じられます。 |
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通年で指定座席車両となっている5号車・6号車に連結されているのが「ドリームカー」。 対夜行バス対策として、札幌と釧路を結んでいた夜行急行「まりも」に組み込まれていた車両です。 夜行バスの3列配列・リクライニングシートに対抗した車両だけあって、急行用の普通車としてはかなりハイグレードな車両。 今でもこのタイプの座席を装備したグリーン車を連結している特急がある中、かなり乗り得な車両です。 座席は2+2配列ですが、かつての特急グリーン車座席を改造したもので、そのフォルムにかつての面影が残ります。 シートピッチは、特急グリーン車の標準数値と同じ1,160mm。リクライニング角度は特急時代より更に深く、145度まで倒れます。 ただし、フリーストップリクライニングではなく、6段階でストップ調節が効く段階式リクライニング。 外側の肘掛には収納式の小物置きが、昔の機能のままに装備されています。 座席周りには座席背面を含めてテーブルらしい設備がない(窓の框部分には物が置ける)ので、これが唯一の「テーブル」。 座席背面にはゴム製の網ポケット。口が広く開くので、ペットボトル飲料くらい軽々と差し込んでおくことができます。 その下にはフットレスト。グレーのビニール張り面が土足用、座席と同じモケット張りのほうが素足用です。 脇にあるレバーで高さ調節ができるので、自分の体格・寝る体勢にあった高さで足載せを使うことができます。 頭上の荷物棚はプラスチック製のものに交換されていて、やや新車チックな雰囲気。荷物棚下には読書灯が設置されています。 シートピッチ拡大により、座席位置と窓割りが合っておらず、一部では窓の柱にぶつかる席もあります。 ただ、「はまなす」号は上下列車とも深夜発・早朝着なので、窓の外の景色がよく見えないのはあまり気にならないかと。 5号車のデッキ寄り1番列から3番列までの12席は女性専用席。リネンにも「女性席」の刺繍が施されています。 ドリームカーの車端部にはフリースペースが設置されています。 場末のスナックかバーのような雰囲気ですが、今では夜行列車でのこのようなスペースは数少なく、貴重な存在です。 スツールが4つと大型テーブルが1つ。これが通路を挟んで1区画ずつ設置されています。 以前はここが喫煙スペースとなっていましたが、現在は全面禁煙に。テーブル上にあった灰皿も撤去されています。 デッキ仕切りドア側には巨大な空間があり、「まりも」時代はここに飲料の自動販売機がありました。 現在は自動販売機は撤去され、荷物収納スペースとなっています。(自動販売機は3号車と7号車のデッキに設置) |
3号車と7号車に(増結時には8号車〜10号車も)連結される自由席車です。 車内にはR51型シートがズラリと並び、モケット柄が変わっているものの、この座席が並ぶ光景は今では壮観そのもの。 車両によっては、キハ183系で使われていたと思われる座席に換装されているものありますが、スペック的にはほとんど同じ。 リクライニングはさすがに「簡易リクライニング」ではありませんが、ストッパーは最大角度のみで効くだけの機構。 シートピッチは940mm。こちらのシートピッチは昔からのままなので、全ての席で窓割りと座席位置が合っています。 座席周りの設備は、窓下にささやかな小物置きがあるのと、座席背面に網ポケットがあるくらい。 JR北海道内では指定料金が300円なので、指定席のドリームカーとこの自由席では料金差がわずか300円。 ドリームカーが急行としての設備のさらに上を行ってしまっているので、この自由席が異常なまでに貧相になってしまいました。 ちなみに、指定席車両が拡大される時期は、この車両の3号車が指定席となります。 (また車両検査の車両やりくりの都合で、ドリームカーの位置にこの車両が入ることも稀にある) ドリームカーは1番から12番までの座席番号なので、指定券を購入して3号車が発券された場合や、ドリームカーには設定がない 13番から16番の座席番号の指定券が手渡された場合には要注意。 |
「はまなす」号で、ドリームカー以上に人気の設備なのがこの「カーペットカー」。 4号車に連結されていて、年間を通して売り切れなことが多く、繁忙期にはプラチナチケット化するほどの人気を集めています。 青函連絡船の「桟敷席」にヒントを得たと言われていて、画像のようにカーペット敷きの床の上にゴロ寝するというもの。 料金は寝台料金不要で、急行料金+指定料金だけで利用が可能。つまり、ドリームカーと同じ料金で利用ができます。 1階区画は1番から17番区画が3人〜5人おきに階段で仕切られていて、各区画は頭部分だけがカーテンで仕切られています。 階段の先にはロフトのような「中2階」部分を設置。ここは実質「個室」のような感じになり、当然一番の人気区画。 各区画には寝具として枕・毛布・ハンガーが用意されています。 似たような設備にサンライズエクスプレスの「ノビノビ座席」がありますが、こちらは寝具が一切提供されないので、 はまなす号のこの「カーペットカー」のサービスはかなりのもの。 階段脇となる区画には階段下を刳り貫いた小物収納スペースがあるお得な区画。(その分階段の昇り降りが気になりますが) 床面にはさらに紫色のカーペットが敷かれていて、これがなんと電気カーペット。頭部分に操作パネルが付いています。 (これはさすがに冬季のみのサービスで、他の季節では電気カーペットは敷かれていないようです) 頭上には読書灯が付いていますが、仕切りカーテンにもうっすらと光が透過してしまうようです。 就寝時間帯は消灯した方が周囲の乗客にも迷惑が掛かりませんので、夜間はやはり早めに寝たほうがよさそう。 2階区画はB寝台とほぼ同じ広さが占有できて、しかも指定席料金で利用できるとあって、中でも一番の人気。 通路側はカーテンなどはありませんが、比較的高めの仕切りがあるので通路側から寝姿が見えることはありません。 小さな小窓が付いているので、寝そべりながら外の景色を眺めることもできます。 1番〜4番と上段の21・22番の区画は女性専用席。4番区画と5番区画の間には階段があり、これが仕切りになっていますが、 さらに天井からもカーテンが吊るされていて、女性専用区画だけをこのカーテンで完全に仕切ってしまうこともできます。 この女性専用区画の先のデッキには更衣室があります。 B寝台車の更衣室に比べると簡素な設備ですが、ちゃんと内側からも鍵を掛けることができ、フックや鏡も設置されています。 ここは女性専用ではないので、男性客も利用することができます。 |
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サニタリースペースは全ての車両に完備されていて、いずれも和式個室・洗面台から構成されています。 洗面台は改造時期によるものか差異がかなりありますが、やはり寝台車のものが一番グレードが高くなっています。 和式個室はいずれも昔ながらのスタイルのままで、そこそこのリニューアルはされているようですが、やはり古めかしさが漂います。 いずれの車両にも洋式トイレを備えたサニタリースペースはありません。 デッキはどの車両も「国鉄型車両」を感じさせる無機質な雰囲気。 自由席車になる3号車と7号車のデッキにはソフトドリンクの自動販売機があります。 (増結車両によって自動販売機のある車両の位置が変わることがあります。) |