1996年から営業運転を開始した小田急ロマンスカー30000形「EXE(エクセ)」。 箱根輸送の観光志向重視のスタイルを変え、ビジネスユースを主眼に開発された、歴代ロマンスカーの中でも異端の存在として知られています。 “小田急ロマンスカーのために設立された”と言っても過言ではない、鉄道友の会「ブルーリボン賞」を唯一受賞できなかった車両ですが、 小田急沿線の気軽な足として、また帰宅時の優雅な時間を過ごせる通勤特急として、その存在は確実に利用者に根付くものとなりました。 そんなEXEも誕生から早20年。 乗客のニーズやサービス環境の変化に対応するため、大掛かりなリニューアルが発表され、2017年3月にリニューアル編成第1号が走り始めました。 新しい愛称は、「EXEα(エクセ アルファ)」。 金色から銀色に生まれ変わった「EXE」は、小田急ロマンスカー新時代の到来を予感させるもの。 リニューアルデザインは、「VSE」「MSE」をデザインした、「岡部憲明アーキテクチャーネットワーク」が手がけています。 今後、2018年3月には展望席を擁した新型ロマンスカー70000形が登場の予定。 これにより、小田急ロマンスカーは「岡部憲明アーキテクチャーネットワーク」デザインの車両に統一されることになります。 |
客室はリニューアルによって、以前よりもかなり明るくて爽快感のある雰囲気になりました。 おそらく天井の照明の構造がかなり変わったのが、大きいと思われます。 以前は、間接照明をメインに丸型のスポットライトと荷物棚下の補助照明を組み合わせて、けっこう贅沢なライティングでしたが、 リニューアルによって、メインに直接照明を用いて木目調になった荷物棚にも照明が当たるようし、ヴォールト状の天井に補助間接照明を用いています。 これによって、客室内の明るさがだいぶナチュラルなものになりました。 座席表面の柄も大幅に変更され、これも客室内の雰囲気を以前と比べて大きく変わる要素となっています。 明るいベージュをメインに、座席両脇を紺色に近いブルーを配色。 ヘッドレストにはメタリックブルーを使って、これまでのロマンスカーの客室には無かった、どことなくサイバーな雰囲気が漂います。 座席の座面部分と背面部分は、以前のものをそのまま使い、表面カバーのみ交換したようで、EXE特有のどっしりフンワリとした掛け心地は健在。 心なしか、座面に腰を下ろした時のフィット感が増した気がするのですが、座席袖体側に大きく張り出した座面クッション材とその隙間によるものかもしれません。 ちょっと残念なのが、座席袖体が新しいデザインのものと交換されていて、「MSE」の座席のものに近いものとなっています。 以前の「EXE」のものは表面にクッション材が敷かれ、袖体が後方に傾斜した設計だったので腕を掛けやすかったのですが、 今回の「MSE」タイプのものは、表面が鋳物そのまま剥き出しで非常に固く、傾斜のない平らな直線なので、腕を掛けていると痛くなってきます。 今回のリニューアルでは、この部分だけが非常にいただけない変更となっていて、残念です。 テーブルはインアーム収納式のみを装備しています。 「MSE」のような全く使えないブーメラン形のテーブルになっていたらどうしようと思っていましたが、A4サイズのパソコンが乗せられる余裕の大きさのテーブルでした。 座席背面にはマガジンポケットのほかに、小物やジャケットが掛けられるフック、そしてフックに傘を掛けた際にそれを固定するゴムバンドが追加されています。 これまでのロマンスカーには、外国人観光客が持ち込んだ大型スーツケースの収納場所が無く、車内のあちこちに半ば無理やり押し込んでいたのが問題になっていましたが、 「EXEアルファ」では、2・5・7・9号車の客室内に、新たに大型のバゲージスペースが設置されました。 リニューアル第1編成では設置されなかった車内電源コンセントですが、リニューアル第2編成からは設置される予定で、ますます車内の居住環境が良くなるようです。 |
以前のデッキは、グレートーンの壁面に電球色のスポットライトが照明として使われていて、良く言えばムーディー、悪く言えば暗かったのですが、 「EXEアルファ」ではデッキ部分の壁面はニュートラルな明るいグレイとホワイトを使い、ドアの窓も大型化されたので、かなり明るく変わりました。 販売カウンターは撤去され、ロマンスカーの「走る喫茶室」からの流れであるビュッフェカウンターはなくなりました。 3号車と9号車には、Pasmoなどの交通系ICカードでドリンクが購入できるタイプの自動販売機が設置されています。 また、同じく3号車と9号車に「AED」も設置されています。(リニューアル前の「EXE」では6号車と7号車と、偏った位置に設置されていました) サニタリースペースは大幅に改造が施され、「MSE」や「VSE」と同等の最新式のトイレとなっています。 5号車と8号車には、車椅子のままでも入ることができる大型の「ゆったりトイレ」を設置。中には洋式トイレのほか、手すりや折り畳み式ベビーベッドも完備。 トイレはウォシュレットを装備し、オストメイトの乗客にも対応した設備が整っています。 2号車には男女兼用洋式トイレ・女性専用トイレ・男性専用トイレと、きめ細やかなサニタリーサービスを展開。 いずれも洋式トイレとなっていて、ウォシュレットを装備しています。 3号車と9号車のデッキには多目的室があり、普段は施錠されていますが、車掌さんに申し出れば授乳や着替えなどに利用することができます。 |