南海電鉄 50000系 空港特急rapi:t(ラピート)

 

1994年に開港した海上空港「関西国際空港」。陸側とは連絡橋で結ばれ、道路橋と共に鉄道橋も整備されました。
鉄道の空港アクセスとして、JR西日本とともに南海電鉄も空港へと乗り入れが決まり、双方趣向を凝らした特急車を誕生させました。

JR西日本が生み出したのは「日本の都−京都」をイメージさせる特急「はるか」。
一方の南海電鉄が誕生させたのは・・・・大人しい意匠の「特急はるか」に真っ向から対決意識を剥き出したかのような奇怪な電車。
まるで「SF映画」から飛び出してきたかのような顔つきは「鉄仮面」「鉄人28号」と評され、たちまちに話題をさらいました。
愛称は、ドイツ語で「速い」を意味する「rapi:t−ラピート」に決まり、1994年9月4日の関空開港と同時に営業運転を開始。

楕円の意匠とキャメルを中心にした色使いを施した車内は、かつてないゴージャスさ。
登場直後は格安料金でこの豪華さ、強烈な存在感と話題性で、JR特急「はるか」を超える人気を博しました。
しかし、京都・新大阪・天王寺を中心にしてJRアーバンネットワークに乗る「はるか」の利便性は高く、徐々に利用客数は逆転へ。
現在は、空港アクセスを主眼に置いた速達型の「ラピートα」を減らし、途中停車型の「ラピートβ」で短区間利用客の取り込みを図っています。





−50000系 rapi:t デザインコンセプト−
50000系 rapi:t
ボディカラー : ラピートブルー(ブルーマイカ)
トータルデザインコンセプト : 「アクセスロビー」「レトロフューチャー」
エクステリアデザインコンセプト : 「ダンディ」=粋・端正・信頼・躍動
インテリアデザインコンセプト : 「エレガンス」=洗練・美的・華麗・豊か・ゆとり





スーパーシート
スーパーシート(特別席)

「空港アクセス特急」という、かなり限定された用途がここまでの奔放さを許したのか・・・・
日本の鉄道アコモデーション史に強くその名を刻み付けた南海電鉄50000系「ラピート」です。

客室内は「楕円形」を共通のモチーフイメージとして、客室全体の空間すら楕円形にしてしまう凝り様です。
一本の長い円柱を通したかのような天井照明は蛍光灯なのですが、客室内の化粧板がオレンジで占められる割合が多いため、
客室内は温かみのある、まるで白熱灯照明を用いているような印象を受けます。

さて、肝心の座席ですが、豹柄のモケットからしてタダゴトではありません。“浜崎あ○みプロデュース”かと思ってしまいます(笑)
シートピッチは1,200o。フットレストを装備していないので、足元が1,200oのピッチ以上に広く感じられます。
ちなみによく見ると・・・・足元のシート台座まで楕円形にデザインする凝り様です。恐れ入りました。

アームレスト先端の丸いアールデコ調の飾りが施されています。
「偉いな」と思ったのは、この飾りの隙間部分にホコリが積もるようなこともなく、清潔に保たれている点。
デザイナーの押し付けを南海が仕方なく受け入れているのならば、こうした部分にまず「綻び」が見えてくるはず。
それを、南海でも「ラピート」登場の頃のメンテナンスレベルを保っていこうとする姿勢がうかがえますね。

電光情報表示装置は、上段に日本語・下段に英語が流れますが、文字ニュースは日本語と英語で違った内容が流れます。
バイリンガルのあなたなら、1回のスクロールで得られる情報量は2倍!

このスーパーシート、座席幅などの「大きさ」以外の点では、後述のレギュラーシートと大した差は感じられません。
それでもスーパーシート選んでしまう理由は、200円の追加料金では申し訳ないほどの座席の大きさと占有空間の広さですね。


 テーブルはインアーム収納テーブルのみを装備。
 乗車時間の短さを考慮してか、楕円形の小型テーブルとなっている。
 肘掛の先端は円形の飾りが取り付けられており、その真ん中の黒いボタンがリクライニングボタン。
 この「飾り」は座席機能には全くリンクしていないが、こうした小さな装飾が「ラピート」のイメージを作り出している。
 楕円形の窓。かつてないこの形状は、窓の外の景色より窓そのものが記憶に残るような鮮烈さを持っている。
 車内が空いている時に客室全体を眺めると、光差す楕円の窓はおよそ列車内とは思えない雰囲気を醸し出す。
 窓にはカーテンではなく、ブラインドが内蔵されている。
 その窓の独特な形状ゆえか、ブラインドを下まで降ろしても窓の下部までピッチリと閉まらないのは惜しい。
 荷物棚は蓋付きの「ハットラック」形状。小さなボストンバッグやアタッシュケース程度の収納力。
 フタにはガススプリングが取り付けられていて、ラッチを引くだけで開けることができる。
 デッキと客室の仕切り壁上部には電光情報表示装置が設置されている。
 上段は日本語での案内、下段には英語での案内がほぼ同時にスクロール表示される。
 南海50000系「ラピート」は、1995年に「ブルーリボン賞」を受賞。
 1号車と6号車のデッキ仕切り壁の上部に、受賞プレートが誇らしげに取り付けられている。
 スーパーシート車の乗降ドア。ドア脇に掲出されているピンク色の小さな「SS」マークがワンポイント。






レギュラーシート
レギュラーシート(普通席)

シートモケットはスーパーシートとは逆で、シルバーベースにオレンジをサブカラーに使用。
とはいえ、カラーコードが「スーパーシート」と同じなので、パッ見でスーパー・レギュラーの区別がつきません。
窓から客室全体に広がる楕円形状、壁や天井・床面のカラーリングなど、両クラスはほぼ共通仕様となっています。
おそらく両クラスは座席の大きさと人的サービスでランク分けをして、インテリアは完全な統一イメージをめざしたのかもしれません。

スーパーシートの人的サービスがなくなった現在、レギュラーシートは俄然ハイレベルの様相を呈してきます。
シートピッチは1,030oと余裕の広さ。座席幅も最大40分程度の乗車ならなんら不自由を感じることはありません。

テーブルはインアーム収納式のみを装備。スーパーシート同様に円形の華奢なテーブルが搭載されています。
センターアームレストは座席間に収納することが可能。
座席背面のマガジンポケットはあまり口が大きく開かず、ペットボトルを差し込むのは不可能です。
3号車デッキ寄りには車椅子スペースがあり、車椅子固定用のバーと非常用の呼び出しボタンが設置されています。







洗面台・トイレ

サニタリーコーナーは3・5号車の2箇所に設置。どちらもまったく同じレイアウトといます。
3号車の客室には車椅子スペースが設けられているのですが、サニタリーは車椅子対応になっていません。






ラゲージスペース

バゲージスペースは全ての車両に設置。荷物棚は3段の設定で、ストッパーとなるスライドバーは下段のみ装備されています。

「ラピート」のバゲージスペースはデッキ扉の内側、つまり客室内にあるのが特徴。
新型車ではいまだにこうした大型荷物置き場が客室外(デッキ)に設置されるケースが多いのですが、
自分の荷物を目の届かない場所に置くことには不安と抵抗を感じるのは、みなさんが一番よくご存知かと思います。
「ラピート」のこの荷物コーナーの配置は、利用者側からすればかなり安心感が得られるものです。

4号車には「CAT荷物室」があります。難波駅で空港チェックインを可能としたサービスの設備で、
駅でチェックインした旅客の荷物をここに積み込み、空港駅で下ろした後は国際線荷捌場へ直行という
かなり画期的なサービスだったのですが、思ったほど利用者に定着せず、結局サービス終了となってしまいました。






デッキ設備 ミニバー・サービスコーナー 運転席

乗客がまず触れる部分−デッキ。「ラピート」はこのデッキまで抜かりなくデザインして雰囲気を盛り上げています。
メタリックゴールドで装うデッキのパネル類はどこか宇宙的。天井まで前述の「楕円形」による統一イメージを欠いていません。
電話コーナーは1号車と3号車と6号車、自動販売機は3号車に設置されています。

6号車デッキには、丸いカウンターのサービスコーナーが設けられています。
「ラピート」の運行開始直後には客室アテンダントが乗務して、スーパーシートのドリンクサービスを行ったりしていました。
その後アテンダントの乗務がなくなってからも冷蔵庫が置かれ、スーパーシート利用者のミニバーコーナーとなりましたが、
「成田エクスプレス・グリーン車ミニバー」と同じく、レギュラーシートの利用者による持ち去りが絶えず、このサービスは打ち切りに。
結局、運行当初の会社側の意気込みだけを残す「遺構」となってしまいました。

「ラピート」は難波駅・関西空港駅とも、発車時間までデッキと客室を仕切る自動ドアが開放された状態で待機しています。
そして難波駅・空港駅を発車すると、チャイム音とともに全号車の自動ドアが一斉に「ススー」と閉じる演出を行っています。
なかなか洒落た演出ですので、ぜひ一度は体験してみてください。








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