「空港アクセス特急」という、かなり限定された用途がここまでの奔放さを許したのか・・・・ 日本の鉄道アコモデーション史に強くその名を刻み付けた南海電鉄50000系「ラピート」です。 客室内は「楕円形」を共通のモチーフイメージとして、客室全体の空間すら楕円形にしてしまう凝り様です。 一本の長い円柱を通したかのような天井照明は蛍光灯なのですが、客室内の化粧板がオレンジで占められる割合が多いため、 客室内は温かみのある、まるで白熱灯照明を用いているような印象を受けます。 さて、肝心の座席ですが、豹柄のモケットからしてタダゴトではありません。“浜崎あ○みプロデュース”かと思ってしまいます(笑) シートピッチは1,200o。フットレストを装備していないので、足元が1,200oのピッチ以上に広く感じられます。 ちなみによく見ると・・・・足元のシート台座まで楕円形にデザインする凝り様です。恐れ入りました。 アームレスト先端の丸いアールデコ調の飾りが施されています。 「偉いな」と思ったのは、この飾りの隙間部分にホコリが積もるようなこともなく、清潔に保たれている点。 デザイナーの押し付けを南海が仕方なく受け入れているのならば、こうした部分にまず「綻び」が見えてくるはず。 それを、南海でも「ラピート」登場の頃のメンテナンスレベルを保っていこうとする姿勢がうかがえますね。 電光情報表示装置は、上段に日本語・下段に英語が流れますが、文字ニュースは日本語と英語で違った内容が流れます。 バイリンガルのあなたなら、1回のスクロールで得られる情報量は2倍! このスーパーシート、座席幅などの「大きさ」以外の点では、後述のレギュラーシートと大した差は感じられません。 それでもスーパーシート選んでしまう理由は、200円の追加料金では申し訳ないほどの座席の大きさと占有空間の広さですね。 |
シートモケットはスーパーシートとは逆で、シルバーベースにオレンジをサブカラーに使用。 とはいえ、カラーコードが「スーパーシート」と同じなので、パッ見でスーパー・レギュラーの区別がつきません。 窓から客室全体に広がる楕円形状、壁や天井・床面のカラーリングなど、両クラスはほぼ共通仕様となっています。 おそらく両クラスは座席の大きさと人的サービスでランク分けをして、インテリアは完全な統一イメージをめざしたのかもしれません。 スーパーシートの人的サービスがなくなった現在、レギュラーシートは俄然ハイレベルの様相を呈してきます。 シートピッチは1,030oと余裕の広さ。座席幅も最大40分程度の乗車ならなんら不自由を感じることはありません。 テーブルはインアーム収納式のみを装備。スーパーシート同様に円形の華奢なテーブルが搭載されています。 センターアームレストは座席間に収納することが可能。 座席背面のマガジンポケットはあまり口が大きく開かず、ペットボトルを差し込むのは不可能です。 3号車デッキ寄りには車椅子スペースがあり、車椅子固定用のバーと非常用の呼び出しボタンが設置されています。 |
サニタリーコーナーは3・5号車の2箇所に設置。どちらもまったく同じレイアウトといます。 3号車の客室には車椅子スペースが設けられているのですが、サニタリーは車椅子対応になっていません。 |
バゲージスペースは全ての車両に設置。荷物棚は3段の設定で、ストッパーとなるスライドバーは下段のみ装備されています。 「ラピート」のバゲージスペースはデッキ扉の内側、つまり客室内にあるのが特徴。 新型車ではいまだにこうした大型荷物置き場が客室外(デッキ)に設置されるケースが多いのですが、 自分の荷物を目の届かない場所に置くことには不安と抵抗を感じるのは、みなさんが一番よくご存知かと思います。 「ラピート」のこの荷物コーナーの配置は、利用者側からすればかなり安心感が得られるものです。 4号車には「CAT荷物室」があります。難波駅で空港チェックインを可能としたサービスの設備で、 駅でチェックインした旅客の荷物をここに積み込み、空港駅で下ろした後は国際線荷捌場へ直行という かなり画期的なサービスだったのですが、思ったほど利用者に定着せず、結局サービス終了となってしまいました。 |
乗客がまず触れる部分−デッキ。「ラピート」はこのデッキまで抜かりなくデザインして雰囲気を盛り上げています。 メタリックゴールドで装うデッキのパネル類はどこか宇宙的。天井まで前述の「楕円形」による統一イメージを欠いていません。 電話コーナーは1号車と3号車と6号車、自動販売機は3号車に設置されています。 6号車デッキには、丸いカウンターのサービスコーナーが設けられています。 「ラピート」の運行開始直後には客室アテンダントが乗務して、スーパーシートのドリンクサービスを行ったりしていました。 その後アテンダントの乗務がなくなってからも冷蔵庫が置かれ、スーパーシート利用者のミニバーコーナーとなりましたが、 「成田エクスプレス・グリーン車ミニバー」と同じく、レギュラーシートの利用者による持ち去りが絶えず、このサービスは打ち切りに。 結局、運行当初の会社側の意気込みだけを残す「遺構」となってしまいました。 「ラピート」は難波駅・関西空港駅とも、発車時間までデッキと客室を仕切る自動ドアが開放された状態で待機しています。 そして難波駅・空港駅を発車すると、チャイム音とともに全号車の自動ドアが一斉に「ススー」と閉じる演出を行っています。 なかなか洒落た演出ですので、ぜひ一度は体験してみてください。 |