「アーバンライナー」がリニューアル改造されるのに合わせて、改造期間の車両不足を補うために登場したのが「アーバンライナー・ネクスト」。 「21020系」と形式付与され、アーバンライナー「21000系」のファミリー車両・後継車両として位置づけられています。 2003年3月のダイヤ改正から本格的に営業を開始。「ゆりかごシート」などの新趣向が人気を呼び、一躍スターダムへと昇り上がりました。 営業開始直後からは、時刻表に「アーバンライナーネクストで運転」といった注記も付され、ネクスト車が入る列車への指名買いも。 改造を終えた「アーバンライナー」は「ネクスト」と同等の客室設備を搭載して続々と営業復帰。 今では「ネクスト・スタイル」もすっかり名阪ノンストップ特急の「スタンダード」となりました。 |
趣味誌などで「アーバンライナー・ネクスト」の登場告知が出た際、「座席には『ゆりかご式』の座席を装備して・・・」と発表がありました。 「ついに鉄道車両にも航空機のビジネスクラスレベルの座席が搭載される時代になったか!」と、大きな期待を抱きました。 座席配置はこれまでのデラックス車と同じ、2+1配置で、海側が1人掛け・山側が2人掛けとなっています。 実は各座席が独立しているので「1+1+1配置」といえますが、山側は回転時に2席同時に回るのでやはり「2+1配置」となるでしょう。 シートピッチもこれまでと同じ1,050mm。これはJR特急の普通車標準980mmより広く、グリーン車標準1,160mmより狭い数値。 リクライニング量は42度。リクライニングは電動式で、静かなモーター音が唸りながらゆっくりと倒れ、戻ります。 今回の座席の一番の目玉であるのが、なんといっても「ゆりかご型リクライニングシート」。 座席背面を倒すと、座面の後部が沈み込むと同時に前方が持ち上がって、腰が掬い上げられるような「包み込まれる」感覚になります。 今までの鉄道車両の座席にはなかった、不思議な感覚が身体全体を包み、座った瞬間にちょっと感動を覚えます。 単にリクライニングした状態から評価すると、おそらくどんなグリーン席・スーパーシートの中でも一番のリラックス感でしょう。 が、残念ながら、それに付随する部分がこの「ゆりかご」スタイルに付いて来れていません。 アームレストにつけられた傾斜はおそらく万人受けする角度ではありません。この傾斜角度では肩に負担がかかります。 そしてこのアームレストのいただけない点は、なんといっても先端方向に寸足らず過ぎること。 おそらく座席から立ちあがって通路側へ出るときに、動線を妨げない寸法になっているのではないかと思いますが、 腕をアームレストにもたれた際、前腕を支える部分が足らずに寛ぎの姿勢を保つことが出来ません。 フットレストも、リクライニング時に足先が持ちあがるようになるので、フットレストがこの位置と高さでは足が載りません。 航空機のシートでは、レッグレストからフットレストへ流れるようなスタイルでの設計がほとんどですから、 高さ調節の出来ないフットレストを、前の座席に取りつけるという設計の時点でかなり無理が生じています。 この座席、読書灯がヘッドレスト左側に埋めこまれているのが珍しいです。埋め込み式のため角度・高さの調節はできません が、これも残念ながら全然「読書灯」としての役割を果たせていません。手元ではなく、ボヤーッと前の座席背面が照らし出されます。 座席にもたれて、この角度と高さに本を持ち上げて読む人というのはいないのではないでしょうか。 テーブルはインアーム収納式。展開させると半月状に広がりますが、この大きさでは実用性に乏しいと言わざるを得ません。 実際にお弁当などを持ち込んでテーブルに載せてみると、ちょうど円形状になる両端から落ちそうで危なっかしい感じ。 パソコンを使っている人を見ていると、やはり端の部分からパソコンが転落しそうに見えます。 |
レギュラーシートもシートピッチはこれまでと同じ1,050mm。リクライニング量は37度となっています。 デラックスシート同様に「ゆりかご式シート」となっていますが、シートインプレッションはやはりデラックスシートと同様。 こちらでは座席のリクライニングと同時に中央のアームレストも上方へ動くのですが、これまた寸足らず。 窓側席と通路側席では、座る人のリクライニング角度が異なってくることから、中央肘掛けも各々で使えるように2分割されています。 結果、肘を載せる幅とは思えないほど細いアームレストとなってしまい、何のためのものかイマイチ用途不明に。 これもデラックスシートと同様の処理なのですが、窓の框部分に傾斜が付けられていて、物が置けなくなっています。 これは、座席周りの空間を広くするためと、カーテンの動きをスムーズにさせるためらしいのですが・・・・ インアーム式のテーブルが小さすぎるため、窓框部分にドリンクなどを置きたくなるのですが、それができなくなってしまいました。 そのかわりに、窓框部分には惰円形の小さなテーブル(プチトレイ)が設置されていますが、やはりこれも使い勝手が悪いサイズ。 ペットボトルを置くには幅が無くてムリ。せいぜい携帯電話を置く程度にしか使えません。 客室内の情報提供装置には、これまで主流だったLEDスクロール式から、22インチの大型液晶ディスプレイに変わりました。 様々な動画などが活用でき、提供できる情報量は(視覚的にも)大幅に広がりました。 ニュースや旅の情報のほか、運転席のカメラから展望走行シーンが客室に生中継されます。 |
サニタリーコーナーは2・4・5号車に設置。 5号車は「車椅子用」のトイレを備えていて、デッキに大きく迫り出した曲面の壁がダイナミック。 サニタリーコーナーは通路に面した壁面がゆるい「逆S字カーブ」をえがき、どこか優雅さもあるのですが、 空間の活用という点では遊びゴコロ優先で、各トイレ個室内は今までより狭くなってしまったように感じます。 ベビーチェアの付いた洋式トイレは一応「女性用トイレ」になっているのですが、 ドアの「女性用」マークが小さいのか、はたまた走行するエリアの地方柄なのか、堂々とおじさんが使っている光景を目にします。 女性用と差別化を計りたいなら、もっとサインを分かりやすくしたり、カラーコードを変えるなどの努力しなければいけませんね。 (ちなみに画像は、怪しまれないように終点に着いてから乗客が下車したのを見計らって撮影。けっこう苦労しております。) |
「アーバンライナー・ネクスト」では全客室を禁煙車に。3・6号車のデッキには喫煙ブースを設けています。 通路を挟んで両側に簡単なパーテーションを設けてコーナーを形成していますが、 最混雑時にはここに入りきらないほどの喫煙者が押し寄せ、結果的に通路で燻らされた煙はブース内の換気機器では吸い取れず、 客室に流れ込む状況になっています。これでは全車「禁煙車」の意味がありません。 やはりこうした設備は、完全に扉で仕切った空間にしてしまうか、客室と隣り合わせにならないレイアウトにするしかないでしょう。 1号車にも喫煙コーナーが設けられていましたが、こちらは現在車内販売準備室になっています。 アーバンライナーでは2007年10月から、土曜祝日の日中に限って車内販売が復活。お弁当やお土産品の販売を行っています。 デッキはダウンライトで演出した、ムーディな雰囲気。 停車駅が近づくと、ドア開くほうの壁面にスポット照明が灯るという凝った機能を備えています。 近鉄特急のステータスでもあった「おしぼり」サービスは、デッキ壁面に開けられた穴から自分で持ってくるセルフサービスに。 3号車には飲料の自動販売機とカード式電話が設置されています。 先代の21000系「アーバンライナー」・23000系「伊勢志摩ライナー」同様、コックピットの後ろは展望仕様。 センターピラーの無い1枚窓から見る前面展望は大迫力。鉄道ファンならずとも、一般客からも好評のようです。 |