近畿日本鉄道 21000系 アーバンライナー・プラス



1988年の登場以来高い人気を誇り、名阪間の新幹線利用者をごっそり奪った近鉄の看板特急「アーバンライナー」。
完成されたデザイン性と高い居住性は、1990年代生まれの新型車のなかでも常にトップクラスとして君臨してきました。

しかしデビューから15年。時代のニーズや流行の移り変わりは目まぐるしくなり、アーバンライナーですらも陳腐化が目立つように。
また車体自体も更新の時期に入っていたことから、近鉄では「アーバンライナー」に更なる付加価値を与えるべく、
大掛かりなリニューアル・客室設備刷新の工事を行うことを決定しました。

2003年から2005年にかけて全72両をリニューアル。この間の車両不足を「アーバンライナー・ネクスト」の新製で補うことに。
生まれ変わったアーバンライナーは、愛称を「アーバンライナー・プラス」とし、次世代に見合う居住空間へと大変身しました。


−21000系 Urban Liner Plus −エクステリアカラー−
21000系 Urban Liner Plus
ベース : クリスタルホワイト
メインライン : コスメオレンジ
サブライン : ジェントルベージュ







デラックスシート


名古屋寄りの「デラックスカー」はこれまでの2両から1両になり、全席禁煙席の設定となりました。
景気の変動によりデラックス車よりレギュラー車の需要の方が伸びていたこと、また公共の場の禁煙が主流となってきたことで、
これまでのように「禁煙席」「喫煙席」でそれぞれ1両ずつを設定する必要がなくなってきたことによるものだそうです。

客室内は、それまでの座席が全て取り払われ、「アーバンライナー・ネクスト」と同型の「ゆりかご型シート」が設置されました。
座席配置も「ネクスト」と同様に1+1+1配置。これまでのデラックカーとは雰囲気が全く異なり、新車のように仕上がっています。

シートピッチはこれまで同様、レギュラーカーと同じ1,050mm。これまで通り、窓と座席位置のズレは発生していません。
(ちなみに名古屋行きでは奇数番号、大阪難波行きでは偶数番号が窓を広く感じられる、当たり席となります。)
リクライニング角度は最大で42度(旧ULでは40度)、1人当たりの座席幅は500mm(旧ULでは485mm)で設計されています。
300mm幅の大きめのピローは、程良いフカフカさ加減。上下に動かすことができます。
読書灯はヘッドレスト右側に埋め込まれていますが、照らす位置や照度の変更ができないのは「ネクスト」同様。

テーブルはインアーム収納式で、「ネクスト」同様に半月型に展開されるもの。
座席背面にはマガジンポケットがありますが、あまり大きく口が開かないのでペットボトルなどは差し込めません。
ただし、窓の框部分がこれまでと同じく物が置けるようになっているので、飲料などは窓側に置いておけます。
この点は、窓框部分が斜めに切り落とされて物が置けなくなっている「ネクスト」車に比べて便利です。

天井周りは間接照明と窓上の直接照明で、これまでのアーバンライナーの雰囲気をそのままに残しています。
また、窓の柱部分上部にはカーテンライトが残されており、これも昔のアーバンライナーを思い出させるワンポイントとなっています。

デッキ仕切り壁には、細かいドット模様を街明かりに見立てた「アーバン・グラデーション」の模様が残されています。
空間全体で見た時に、このグラデーション模様があることで「ネクスト」よりも「プラス」のほうが暖かみのある雰囲気に感じられます。


 デッキ仕切り壁の「アーバン・グラデーション」。「プラス」仕様へ内装が改装された後も残された。
 デッキドアの上部には、新たに22インチの液晶ディスプレイが設置された。
 車内案内や沿線の観光案内、ニュース・天気予報などのほか、運転席からの展望中継も放映される。
 デッキからデラックスカー客室へのドア。「ds」のロゴマークがさりげなく入れられている。








レギュラーシート


レギュラーシートも座席が「アーバンライナー・ネクスト」と同じ「ゆりかご形シート」に交換され、車内の雰囲気が一新されました。
天井周りの間接照明やカーテンライトが残されており、このあたりは「旧アーバンライナー」のゴージャスさがそのまま。

リクライニング量がこれまでの40度から37度へ若干浅めになっていますが、座面の後方が沈んで前方が持ち上がるようになっており、
身体全体で椅子にもたれた時のリラックス感は、以前の座席とは比べ物にならないほどゆったりと座ることができます。
ただ、デラックス車の座席もそうなのですが、肘掛けのサイズや傾斜角度が「ゆりかごスタイル」に付いて来れていない感があり、
この点だけは、斬新なリクライニング機構の快適さを殺してしまっているようで実に残念です。

ヘッドレストは両脇が極端にそそり立ったデザインになっています。
着座時のパーソナル空間を狙って、意識してこのようなデザインにしたのでしょうが、実際には隣席の視界を遮断するほどではありません。
居眠りしている時に、頭がフラフラしすぎるのを押さえるストッパーとしてはちょうどよい大きさに仕上がっています。

足元には手前に半回転させながら展開させるフットレスト。生地張りになっていることから、素足で載せる面のみと思われます。
座席背面の網ポケットは、大きく口が開かないのでペットボトルなどは入りません。
しかし、窓框部分に物が置けるようになっているので、「アーバンライナー・ネクスト」ほど不便さは感じません。
テーブルはインアーム収納式。ブーメラン型の小型テーブルで、ビジネス仕様の特急車にしては小さすぎるように思えます。
パソコンを持ち込んで車内で広げている人もけっこう見受けられ、このテーブルにパソコンを載せるにはやはり難儀なのか、
中には自分の膝の上にパソコンを載せてキーボードを打っている人もいました。


 現在の「アーバンライナー」は全列車・全席禁煙。編成内には数箇所に「喫煙コーナー」が設けられている。
 自席から一番近い喫煙コーナーは、座席背面の車内案内で知ることができる。
 リクライニング展開時の座面をアップで撮影した画像。
 座面の前方が持ち上がり、後方が沈んでいるのが分かる。中央肘掛けも連動して動くようになっている。
 窓の柱部分に設けられた「カーテンライト」。以前の「アーバンライナー」から引き継がれた補助照明。
 客室全体を眺めた時にダウンライトのように見え、客室内に豪華さのワンポイントを与える演出になっている。
 デッキ仕切りドアの上部には22インチの大型ディスプレイを設置。
 ニュースや天気予報が随時流され、時折、運転席からの展望走行シーンも生中継される。








洗面台・トイレ デッキ設備 コックピット

   
   
   

サニタリスペースも大きく改造がなされていて、ほぼ「アーバンライナー・ネクスト」と同等となっています。
和式個室は姿を消し、全て洋式個室・男性用個室・洗面台の構成へと生まれ変わりました。
4号車(8両編成の場合は6号車)には女性用個室が、5号車(8両編成の場合は7号車)には車椅子対応個室が設置されました。
全ての洗面台にはおしぼりのストックボックスが設置され、セルフサービスでおしぼりサービスを受けることができます。

3号車(8両編成の場合は5号車)には、飲料の自動販売機とカード式電話があります。
ここは以前には車内販売準備室でありましたが、車内販売の全廃に伴い撤去されています。
(2007年10月より土休日の日中に限り車内販売が復活。1号車の喫煙コーナーが車内販売準備室となっています。)

全席禁煙化に伴い、3号車・5号車(8両編成の場合)・6号車(6両編成の場合)・8号車(8両編成の場合)に喫煙コーナーを設置。
通路を挟んで両側に、それぞれ簡単なパーテーションで仕切られています。
細長い窓が設置されているので流れる景色を眺めながら喫煙できるほか、液晶ディスプレイも設置されています。
通路との境目には天井部からのエアカーテンが噴出されていて、煙の流出を防いでいるほか室内に強制換気装置を設置。
通路天井には脱臭装置が内蔵されていて、煙と臭いが客室部へと流れ出すのをできるかぎり防いでいます。

両先頭車の運転席後部はデッキとなっていて、運転室は大きなガラスで仕切られているので、誰でも展望シーンが楽しめます。







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