京阪電鉄 8000系 京阪本線・鴨東線 特急用車両「エレガン都 エクスプレス」

  

私鉄王国「関西」。国鉄〜JRと対向すべく、名車・名伝説を多く生み出してきた関西の私鉄にあって、一際輝かしい存在の「京阪」。
その名のとおり、歴史と華の街「京都」と関西の一大首都「大阪」との間を行き来する、2大都市を結ぶ路線です。
その「京阪電車」のトップに君臨するのが、平成元年に登場した特急車両「8000系」電車。
奇をてらわず、名特急車3000系をより近代的・スタイリッシュに「正常進化」させた姿は、「京阪」の伝統に対する姿勢を感じます。

「エレガン都 エクスプレス」のキャッチフレーズで、軽やかにスピーディに走り抜ける京阪特急。
伝統のテレビカーに優雅な気分に浸れる2階建て車、運転席直後の展望席と、どこに乗ろうかと迷ってしまうほどの多彩な設備。

「鳩」マークの特急サインも輝かしく、オレンジとレッドのツートンカラーの風が、古都京都と商都大阪を駆け抜けます。


■■ 京阪8000系は新CI導入による内装・外装のリニューアルが完了。ここで紹介する仕様の車両は現存しません。 ■■


ボディ上部:マンダリンオレンジ
ボディ下部:カーマインレッド






レギュラーシート

関西圏では、大阪を中心に各方面へ通じるJR西日本と私鉄各社の競争が激しいため、
高いスピードと同時に、居住性の高い電車が特別料金不要の優等列車に投入されている例が多々あります。
中でも大阪圏と京都圏を結ぶパイプは、JR西日本の「新快速」に阪急電鉄、そして京阪電鉄がしのぎを削る競争の激しい区間。

京阪電鉄が「特急」「K特急」に投入しているこの8000系は、京阪のイメージリーダーでありフラッグシップでもあり、
関東圏在住の人間からすると「ホントに特別料金払わなくてもいいんですか?」と思うほどグレードの高い電車になっています。

8両編成中の1〜3号車・5〜8号車は、全席が転換クロスシートを備えた車両。(出町柳方が1号車/淀屋橋方が8号車)
シートピッチは920mmで、これは京急2100形の850mmやJR西日本「新快速」910mmよりも広いピッチ数値となっています。
座席はバケットタイプで、座面・背面とも体をよくホールドしてくれます。
アームレストにもモケット張りで、窓側席にも窓下にアームレストが設置されていて腕載せのスペースをちゃんと確保。
クッション材も比較的柔らかめ。料金不要でこのグレードの座席は、さすがバブルの残り香感じる「平成元年」生まれです。

座席モケットはブラウン系のものとピンク系の2種類があり、1両おきに色が変えられています。
各座席にはビニール素材ながらもヘッドレストカバーが装着されており、全景で見た際に「優等列車」らしさを感じる圧倒感。

運転席直後には、2列で計8席の座席が設置されており、展望席となっています。
出町柳行きの先頭車は誰でも前面展望が楽しめますが、淀屋橋行きの先頭車の展望区画は「優先席」となっているのでご注意。

座席は全席、空気圧による全自動転換装置を装備。終着駅では乗客が全て下車したのを確認後、座席を一斉に転換させます。
「淀屋橋」と「出町柳」では、特急乗車目標とは若干ズレた位置で電車が到着。
乗車待ちの行列と下車する乗客の波が互いに干渉しないようにして、スムーズな下車を実現しています。
乗客下車後、ドア位置を乗車目標に合わせるために、ドアを閉めて電車を少し動かしますが、この時に座席を一斉に自動転換。
まるで電車の動く慣性の力で座席を転換させたかのような錯覚を覚える、一種「芸術的なショー」が見られます。



 座席下は完全に空けられていて脚を伸ばすことができるので、ピッチ920mm以上の広さを感じられる。
 特急車の車内には広告の類が一切ない。これは京阪の「特急」というステータスへの考え方を反映した伝統。
 壁面には沿線の風景を描いた絵画が飾られていて、実にエレガントな雰囲気が漂う。
 京阪伝統の「テレビカー」。今では、2階建て車のほうに乗客が集まる傾向にあるが、
 始発駅での乗客流動を見ていると、「テレビ」が良く見える席を狙って並んでいる利用者はけっこう多い。
 テレビは「出町柳」方のみにあり、「淀屋橋」方には設置されていない。
 「淀屋橋」行きの電車では、テレビ付近の座席はテレビ向き(進行方向と逆向き)にセットされる。
 テレビは32インチの液晶ハイビジョンテレビ。チャンネルは「NHK大阪総合チャンネル」が基本。
 ちなみにテレビ付近の席は、テレビが良く見えるように基本的に照明が落とされている。
 運転室の直後には展望席がある。運転士側・助手席側・通路扉とも窓が大きく、良好な走行展望が楽しめる。
 淀屋橋側・出町柳側の地下区間では運転席側はブラインドが降ろされるが、助手席側は開放したまま。
 展望席最前列からの眺め。京阪本線では電車の運行頻度が高く、次々とすれ違い電車が目の前に飛び込んでくる。  
 特急車の運用による車内では、なんと乗車記念の「スルっとKANSAI Kカード」が車内限定販売されている。
 販売区間は京橋〜七条間の昼間限定。車内巡回中の車掌さんに声を掛ければ販売してもらえる。







4号車にはダブルデッカー「2階建て車」が連結されています。この車両は1997年〜1998年に登場しました。
一般的に2階建て車が連結される理由としては、乗客の増加に伴って定員増を目指しての連結ということが挙げられますが、
京阪の8000系2階建て電車は、「特急の新たなイメージ作りと、更に魅力ある存在に仕立てる」という理由が大きいそうです。
前後に連結される車両とは約10年の時間差がありますが、統一感のあるデザインで仕上げられていています。

2階席・階下席・平屋席とも、前後の一般車両と同じく転換クロスシートが装着されています。
シートの柄は、ブラウン・ピンクに続いて、新たにブルー系の柄入りのものが採用されました。

2階席は階段スペースの関係から一部が固定シートとなっていて、必ず4人ボックス席となる区画があります。
首都圏のJRの2階建てグリーン車などと比べると、側窓が張り上げ構造となっていないことからどこか閉鎖的な雰囲気。
シート背面は背が高く、背面のトップ部分が湾曲した天井と近いことから、区画ごとにかなりのプライベート感があります。
車体幅の関係からか、窓側席のアームレストについては省略されています。
照明のさらに上、天井とのわずかなスペースに荷物棚がありますが、ごくささやかなものなので大きな荷物は置けません。

1階席は全席が転換シート。座席は2階席と同じで差はありませんが、こちらは窓側席のアームレストも装着されています。
壁面には凝ったデザインの照明灯具があり、壁自体も柄モノで、客室全体に優雅な雰囲気が漂います。

シートピッチは2階・階下・平屋部とも、前後の平屋型の車両より若干狭い910mm。それでもJRの「新快速」と同じピッチ数値です。
やはり「2階建て車」への人気は絶大で、始発駅で特急を待つ行列は「2階建て車」のところが最も混雑しています。


 外観の2階窓と1階窓の間に描かれているイラストは、京都三大祭の一つ「時代祭」。
 祭りの行列が細かに描かれている。車体の左右ではイラストが異なっている。







デッキ 運転席

乗降ドアは全て片開きですが、幅1メートル強の広さで開くので乗り降りはけっこうスムーズにできます。
買い物袋を両手いっぱいに持っても余裕があるので、「くずはモール」でお買い物しすぎても安心?!

客室同様に、デッキ部分にも広告の類のものは一切掲出されていません。
ドア上に路線図と停車駅案内表示があり、ドア脇の金属脇には広告ではなく京都の風景写真などが飾られています。

ドア付近と客席部分の境目には仕切りがあり、「デッキ」と「客室」の明確な区分がされているように感じられます。
仕切りにはジャンプシート(補助椅子)が格納されていて、利用可能な時間・区間では乗客が自由に引き出して座れます。
(補助椅子の引き出しが施錠されているときは「ただ今補助いすは使えません」のランプ表示が表示されています。)

5号車のテレビカーのテレビ設置側には電話室があります。
客室とは完全に仕切られた個室で、特別料金不要の車両の設備としては破格のしっかりした造り。電話はテレカ専用。
今では、車内で携帯電話で気兼ねなく話せる設備として、乗客に重宝がられているようです。

連結面ドアは、一見すると手動による引き戸のようですが、なんと取っ手に触るとドアが自動的に開く「自動ドア」。




2階建て車のドア付近にも収納式の補助椅子があり、平屋建て車両と同じに、時間や区間によってロックが解除されます。
階下席へ階段を降りたすぐの空間にも補助椅子があり、こちらは1人掛け。
この補助椅子には施錠機能がなく、常に利用可能ですが、混雑する階段の真下ということで、なかなか使うには躊躇われます。

2階席・階下席とデッキフロアを結ぶ階段は直線構造。
2階席へは階段を上がるとそのまま2階席の通路ですが、階下席は階段と通路がカギ型になって繋がっています。
ちょうど階段を下りると、真正面は階下席の客席とぶつかるのですが、ここはさすが京阪。
目隠しにフロスト加工されたデザインパネルが立てられていて、目線のぶつかり合いを防いでいます。









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