富士急行 1000系 「富士登山電車」

  

開業80周年を迎えた2009年、富士急行では様々な記念行事が行われましたが、その中のひとつがこの「富士登山電車」のデビュー。
京王電車のお下がりの1000系電車は、これまでも転換シートが装備されたり、特急用にテレビが設置されたりといった改造が行われてきましたが、
この「富士登山電車」では、内装を全く新しいものにしてしまうほどの大改造が施されました。

今回のこの「富士登山電車」で最も注目されたのが、リニューアルデザイナーに水戸岡鋭治氏とドーンデザイン研究所が起用されたこと。
ドーンデザインというとJR九州や和歌山電鉄・岡山電気軌道など、西日本エリアを中心に活躍が見られましたが、
ついに関東エリアに本格的な「ドーンデザイン」車両が登場することになり、関東のドーンデザインファンには待ちに待った日がやってきました。





レギュラーシート

大月・河口湖方の2号車は「青富士」車両。ブルー系のモケットに白木を使った内装で、とても爽快な印象です。
カラーリングのほか、この「青富士」車両は曲線やカーブが多用された構成となっています。
車内の中央部にはカーブを描くロングベンチ。これがまた富士山をイメージしたかのような優雅なカーブラインの背もたれ。
足元に目をやれば、ソファーの脚部分も曲線を用いたデザインになっているというこだわりようです。
ロングベンチの対面にはカウンター席。さらには円形のベビーサークルまでが設置されています。
出入り口付近の席はソファー席となっていて、これも単なるソファーではなく、大胆なカーブデザインが施されたソファー。

1号車との連結面寄りにはサービスコーナーやショーケースがあり、ここも白木を使った統一感ある雰囲気になっています。

「青富士」車両は基本的に自由席車両として使われています。







富士吉田方の1号車は「赤富士」車両。赤系のシートモケットとブラッドウッドの木材を使った、赤茶色系のインテリアとなっています。
2号車の「青富士」が曲線デザインが映える構成だったのに対し、この「赤富士」車両は全体的に直線的で「カチッ」とした印象。
レトロモダンというか、どことなく古い時代の「木造車両」を現代風にフューチャーした、そんな雰囲気です。

車内はボックス席が中心で、こちらも車内中央部はベンチタイプのソファーとカウンター席となっています。
ソファーベンチは2人掛けが3脚あり、その真ん中をなんと本棚が取り囲むという、これまでに見たことのない光景。
本棚には、富士山や富士急行にまつわる書籍や富士急行沿線の観光冊子などが置かれていて、乗客は自由に見ることができます。
(ちゃっかり、水戸岡氏のインタビューが掲載されていたり、ドーンデザインが特集されている鉄道雑誌も置かれていました。)

運転席直後には2段のステップが付いた、丸窓風の展望スペース。ここはもちろん子供の背の高さに合わせて設計されています。
2号車側の出入り口には車椅子スペース。手掛けたのがドーンデザインですから、当然やっつけ仕事的なスペースにはなっていません。
パイプ周りには木製カウンターが設置され、頭上にはショーケース。車椅子利用者にも健常者にも楽しいスペースになっています。

「赤富士」車両は基本的に、200円の特別料金が必要な「着席券車両」となっています。
乗車前に駅で着席券の購入が必要ですが、空席があれば「青富士」車両のサービスカウンターで着席券を購入することもできます。


「青富士」「赤富士」の共通仕様としては、ボックス席には全て折り畳み式の木製テーブルが設置されています。
ブラインドは木を使ったすだれ調のもの。ごく一部に残っているつり革も、革ではなく木製パーツを使ったものに変わっています。
床は全面フローリング。頭上の荷物棚にもそれぞれの車両の雰囲気に合う色調の木製パーツが付けられています。

ちなみに、この「富士登山電車」の外装カラーリングは「さび朱色」。開業当時の電車「モ1」号のカラーを踏襲しています。
「モ1」号電車は河口湖駅前に展示されていて、今でもその姿を見ることができます。(→





わずか2両編成の電車に、シートの表面柄はなんと11種類。さらに赤と青の革製ソファーもあるので、これを合わせると13種類!!









サービスカウンター デッキ コックピット
     
     

「青富士」車両の連結面寄りには、サービスコーナーがあります。
富士登山電車ではサービスクルーが乗務して、車内販売やフォトサービス・キャンディサービスなどの業務にあたっています。
車内販売では、オリジナルグッズに「ポストカードセット」「ハンカチ」「ペーパークラフト」「記念乗車券(限定500セット)」のほか、
富士登山電車をラベルにしたオリジナルのミネラルウォーターも販売されています。(いずれも2009年8月現在)
車内には小さな冷蔵庫が設置されているので、ミネラルウォーターはよく冷えた状態のものが手渡されます。
このほか、「赤富士」車両に乗車するために必要な着席券も、空席があればここで買うことができます。

サービスコーナーの対面にはショーケースがあり、富士山麓の銘酒や地元の特産品などが展示されています。(販売はされていません)











「富士登山電車」の運行開始に合わせて「下吉田」駅の改修も行われ、こちらも同時にドーンデザインによるリニューアルとなっています。
コンコースは高い天井と天窓が開放的で、「大正ロマン」といった感じの雰囲気を持っています。
駅の入り口や改札口、トイレの入り口に掛けられたのれんも、駅舎内の雰囲気によくマッチしています。
富士山をイメージしたベンチの上には、水戸岡氏の手による富士山の絵。さらに天井を見上げると葛飾北斎の「八方睨み鳳凰」の巨大な壁画。

2009年8月現在のダイヤでは、「富士登山電車1号」では下吉田駅でフジサン特急通過待ちの停車時間を利用して、駅の見学が行われています。









座席探訪 トップページへ  座席探訪 新幹線ページへ  座席探訪 寝台列車ページへ  座席探訪 JR北海道ページへ  座席探訪 JR東日本ページへ  座席探訪 JR東海ページへ  座席探訪 JR西日本ページへ  座席探訪 JR四国ページへ  座席探訪 JR九州ページへ  座席探訪 民鉄各社ページへ  座席探訪 海外の鉄道ページへ  座席探訪 バスページへ  座席探訪 エアラインページへ