
2004年6月、JR東日本から「ハイグレード車両と特別車両の製作概要について」という、 |
1本のプレスリリースが発表されました。 お召し用車両「1号編成」に替わる、天皇皇后両陛下・皇族・国賓ご利用の特別な電車を製造。 そこに「カシオペア」や「お座敷電車」の要素を持った、高級感に満ちたハイグレードな車両とし、 新しい旅行のスタイルを提案していこうという内容。 「お召し列車」用車両を、普段は一般向け「ジョイフルトレイン」としても活用するというものです。 そして発表から3年という時間を費やして、2007年7月ついに姿を現したのがこのE655系電車です。 651系「スーパーひたち」の流れを汲む流線型に、いかついフェイス。 光の加減によって褐色から漆色そして紫色へと変化するマジョーラ塗装のボディには、ノーブルな金のライン。 さらにディーゼルエンジンを積んで、機関車の牽引で非電化区間への入線も可能とした設計となっています。 愛称は「利用する人みんなに和んでもらいたい」というところから「和(なごみ)」に決定。 通常は、皇室向け特別車両を抜いた5両編成で、ツアー列車と活躍しています。 エクステリア・インテリアデザイン:TDO(Transportation Design Organization)+剣持デザイン研究所 (撮影時期:2008年) |

グリーン席(VIP車両) (FIRST CLASS for VIP)
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3号車「モロE654-101」は、通常に編成を組成する他号車の4両とは異なり、「VIP車両」として仕上げられています。 車内レイアウトの約1/4が座席を搭載した客室となっていて、客室構成の大半が要人対応の「VIP個室」となっています。 (この個室内には応接間のほか、専用サニタリやドレッサーコーナーがあります。通常は施錠されていて公開されません) 車内の真ん中には売店があり、デッキ寄りにはわずか3列×3席:合計9席のVIP仕様のグリーン席が設定されています。 VIPグリーン席は、ほかの一般グリーン席が布織物張りなのに対し、真っ黒な総本革張りとなっています。 通りかかりに見ただけでも、ここだけは明らかに違う車両というのが分かるほど、重厚でどこか威厳のある雰囲気。 シートピッチは通常グリーン席と同じ1,160mmで、特別にピッチが広いということはありません。 また座席周りの付帯設備も電動リクライニングやシートモニターなど、他号車の一般グリーン席と同じになっています。 乗車時に試しに座らせてもらいましたが、革特有の滑り感が若干あり、ホールド感には欠ける仕上げに感じられました。 革の感触は、同じ革シートのJR九州885系よりは、スターフライヤーのシートに近い感じがします。 ツアーの「VIP設定コース」の乗客がここに指定され、その設定がない時は添乗員の控え室となっていることが多いようです。 また「なごみ」編成自体が「お召し列車」や「要人輸送列車」となる時は、VIPの付き人が利用する車両となるようです。 |
リクライニングとレッグレストの操作スイッチ。 | いずれも電動式で、かなりゆっくりと動く。
シートモニターはアームレスト内への収納式。 | 引き出すにはちょっと力を要し、お年を召された方が引き出すにはちょっと苦労しそう。 (現在はシートモニターは撤去されています)
テーブルはアームレスト収納の小型のものだけを装備。シート背面テーブルはない。 |
窓上部には読書灯とスポット空調。 | 読書灯のスイッチは手元ではなくこの部分へ手を伸ばす必要がある。 読書灯の照明は白色LEDで、手元はかなり明るく照らされる。
荷物棚は旅客機タイプの収納蓋付き。 | 荷棚内の天井部には、取り忘れの喚起のためにミラーが付いている。
3号車車両の大半を占める「VIP個室」の脇の通路。 | 画像左側の壁の向こうが「VIP個室」。
「VIP個室」は通常の一般向けツアー列車では非公開。 | 窓のブラインドも個室側から固く閉じられていて、通路からは中の様子は全くうかがえない。
このVIP個室の通路の絨毯が、毛足が大変長くて鉄道車両の中とは思えないほどフカフカしている。 |
絨毯は波模様を描き、まるで「枯山水」が電車の中に敷かれたかのように見える。 |

グリーン車 (FIRST CLASS)
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1号車(クモロE654-101)・2号車(モロE655-201)・4号車(モロE655-101)・5号車(クロE654-101)は「ハイグレード・グリーン車」。 「なごみ」ではこの4両が一般車ということになりますが、さすが「ハイグレード車両」を謳うだけの設備を誇ります。 全車両が2+1の3アブレストで、シートピッチは特急グリーン席の標準ピッチの1,160mm。 座席の表面は、和装を意識した市松模様の布織物が全面に張られています。 窓下の化粧板はプラスチックではなく布素材と思われるものが張られていて、ここも細かい市松模様が入れられています。 窓間には鎧戸を思わせる飾りがあり、上下式のロールカーテンは障子のように明るい透明感を持っています。 このように、全体的に「和室」「和装」のイメージに重点を置いた仕上げとなっていますが、重々しさはなく好印象。 外国人が好みそうな派手な日本の装いに傾くこともなく、実にしっとりとした雰囲気となっています。 着席した時のバランス感は、あの革張りVIP席よりもこちらのほうが落ち着きあるように感じられました。 リクライニング時には座席の後方がチルトしますが、あのN700系グリーン席よりはチルトの落ち込みが浅め。 この座面落ち込みをもうちょっと深くするか、でなければ日本航空のクラスJのようにチルトスライド式の座面であれば、 もっとこの座席は居心地の良いものになったんじゃないかなぁと、思いました。 |
2号車サニタリースペース側のドア寄りの座席。 | デッキ通路幅に合わせるため1+1で座席が配置されている。 2列の座席に干渉しないよう、簡易仕切りが設置されている。
5号車デッキ寄りの2席は車椅子対応席。 |
車椅子対応席は通路側を向いての固定が可能。 | 車椅子からの移動をしやすいように考慮されている。
車椅子席の付帯装備は、もちろん他の席と同じものが用意されている。 | (シートモニターは現在は撤去されています。)
ヘッドレストは上下可動式。 | 両端は引き起こすことができるウィング式で、頭をしっかりホールドできる。
レッグレストは電動フリーストップ式。 | ちなみにフットレストは、VIP席も含めて全席で装備されていない。
リクライニングとフットレストの操作パネル。 | 旅客機のビジネスクラスを思わせる作り。
前席の背面にはマガジンポケット。 | ポケットのクチがけっこう大きく開くので、ペットボトルも余裕で入る。
テーブルはアームレスト収納式を装備。 | 背面収納テーブルは設定されていない。
前席の背面の下部にはドリンクホルダー。 | 首都圏の普通グリーン席と同じもので、ちょっと安っぽい感じ。
座席の回転は台座の足踏レバーではなく、アームレスト後方のレバーで。 | E3系新幹線「こまち」の初期製造車の座席と同じタイプ。
座席上部には、通路移動時の手がかりとなる木製パーツが装着されている。 |
各座席には、シートモニターの使い方シートと専用のイヤホンが入っている。 | (現在はシートモニター撤去に伴い、これらも撤去されています)
ロールカーテンは、障子のような風合い。 | よく見るとここにも細かい市松模様が入っている。
窓の枠と框部分はFRPではなく木製パーツ。 | 框部分にはドリンクや小物などが置ける。
仕切り壁寄りの席のマガジンポケットは、壁に装着されている。 |
照明は間接照明。 | 白熱灯色の明かりと、室内を飾る木目パネルが高級感あふれる空間を演出する。
荷物棚の下には読書灯とスポット空調の噴出し口。 | 読書灯は白色LEDで、かなり明るい。
荷物棚は旅客機のハットラックタイプ。 | 蓋付きなので、空間がスッキリとして見える。
電光表示板は鏡面材の中に埋め込まれている。 |
まるで文字が浮かび上がっているように見える。 |
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「なごみ」に装着された座席の一番の見どころであり興味をそそるのが、全席に装備されたシートモニター。 画面をタッチすることで操作することができるので、誰にでも簡単に使えるようになっています。 サービスメニューはおおまかに「車内販売」「ゲーム」「オーディオ・ビジュアル放送」の3メニュー。 「車内販売」では、さまざまな商品をモニターに表示される写真を見ながら注文ができます。 在庫があるか、売切れになっているかも画面ですぐ分かるので便利。 商品を決定して「注文」ボタンにタッチすると、情報が売店へと送信され、アテンダントさんが商品を席まで届けてくれます。 「オーディオ・ビジュアル放送」は、地上デジタル放送やBS放送、運転台カメラ放映など多彩なチャンネルがあります。 地上デジタル放送は、NHK(1ch)とNHK教育(2ch)、BS放送はBS1・BS2・BS-Hi(BS3)。 「ビデオ1」ではJR東日本を代表する新幹線や特急、リゾート列車やローカル線を紹介するPVが放映されています。 「運転台カメラ」は1号車・5号車が選べ、座席に居ながらにして全面展望と後方展望のどちらも楽しめます。 「位置情報」はGPSによる位置情報が表示され、列車が今どこを走っているのかが一目で分かります。 イヤホンジャックはパネル脇に。その下にはUSBポートがあり、将来なにか広がりのあるITサービスが展開されるかも!? (これらの画像にあるシートモニターは、現在はすべて撤去されています。) |

売店・多目的室/SHOP・MULTI SPACE
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4号車と3号車には「売店」兼「車内販売準備室」が設置されています。 いずれも窓側には小さなカウンターが設置されていて、プチビュッフェとしても機能しています。 (ただ、車内販売品のダンボールがドカンと置かれていて、居心地はよくありません) 電子レンジ・アイスストッカー・コーヒーメーカー・シンクなど一通りの設備が整っていて、充実の共食設備となっています。 マルチスペースは5号車の客室内に設置されています。見た感じでは他の特急車両の設備と同じようでした。 5号車には車椅子対応席もあり、トイレもマルチタイプの大型個室となっていて、バリヤフリー設備が集約されています。 |

トイレ・洗面室/TOILET・SANITARY SPACE
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サニタリーコーナーは1号車・2号車・5号車に設置されています。 1・2号車は洗面台・洋式個室・男性用個室で構成されていて、5号車は車椅子対応の大きなマルチ個室。 洋式便座はTOTO製、全てにウォシュレットを標準装備。日本の在来線列車のトイレでは初装備となります。 |

乗降口・デッキ設備・/ENTRANCE・DECK SPACE
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デッキと客室アプローチ部分にはパープルの絨毯が敷かれていて、ここから豪華な旅の始まりを感じさせます。 足元にはLEDの間接照明が、アルミパネルの照明効果でまるでクリスタルが光っているような明かりが灯ります。 デッキと客室との仕切りドアは、全てタッチセンサー式。全ての通路部分には手摺りが設置されています。 1号車を除くすべてのデッキにはジャンプシートが設置されていて、要人輸送の際の警備員配置場所と思われます。 デッキには、やたらと長いアプローチが多いことに気がつきますが、非電化区間を行く際のサービス電源や、 万が一の時のためのバックアップ用機器の二重系システムが格納された機器室となっているためです。 |






