JR東日本では、最高時速360Km/hでの営業運転を実現すべく、高速試験車E954系「Fastech360S」を開発、試験走行を開始。 高速走行試験や高速度運転時の環境への影響などのデータを元に、最高時速320Km/hとした営業運転が現実的という結果に至り、 本格的な営業運転に向けた車両として、E5系新幹線が製造されました。 日本の鉄道初となる「ファーストクラス」の設定が予告されるなど、高速運転のみならずソフト面でのサービス向上も話題に。 愛称は、伝統のブルートレインで名を馳せた「はやぶさ」の名が返り咲き、ファーストクラスも「グランクラス」に決定。 2011年3月より東京〜新青森・仙台間で一日3往復で運転を開始しました。 今後、東北新幹線の車両は「やまびこ」「なすの」を含めて、このE5系で統一されることが決定しています。 |
「グリーン車」よりもさらに上位になる「グランクラス」。日本の鉄道車両初のファーストクラスが誕生しました。 E5系は、高度の空力処理能力と環境への配慮から先頭車のノーズが15メートルにもなるデザインが施されています。 そのため、先頭車は客室が極端に小さな空間となってしまっています。 その小空間に、利用者からの要望が高かったと言う上級クラスの客席を設置することで、新幹線版ファーストクラスが計画されました。 当初のプレスリリースでは「スーパーグリーン車」の仮称で発表されましたが、2010年5月に「グランクラス」の名が決定・発表されました。 「グランクラス」の名は、フランス語で「大きな」を意味する「Gran」に、英語の「Class」を合わせた造語。 キャビンデザインコンセプトは「特別な旅のひとときをあなたに −"Exclusive Dream"−」。 客室に使われる素材には、座席に「本革」、床絨毯に「ウール」といった質感の高い素材を厳選して採用。 さらに温かみのあるライトワークによって、非日常的で洗練されたインテリア空間の演出を狙っています。 客室内は、JR東日本自らが「ファーストクラス」を謳うだけあって、思わず息を呑むほどの美しさと高級感。 横3列配置で並べられた座席は、後部がシェルで包まれる独立した斬新なデザインで、半個室に近いプライベート感があります。 この座席は、JR東日本と、設計製造が川重車両コンポとレカロ連合で、シート意匠デザインが日立製作所の共同開発。 鉄道車両の製造で世界に羽ばたく日立製作所と、シートメーカーとして世界トップレベルの川重-レカロが開発に手を携えているという点で、 「グランクラス」の座席は、まさに世界水準でもハイレベルな最高級シートといえるのではないでしょうか。 シートのリクライニングはオール電動。手元のコントロールパネルのボタン1つで操作することができます。 シート全体を、「背もたれの傾斜」「座面の高さ」「レッグレストの伸縮と高さ」と、3つの部位に独立して動かすことが可能となっています。 これにより、自分だけの、自分に最も合った寛ぎの姿勢をキープすることができるようになっています。 背もたれは最大で45度まで倒れます。 座席が体の両脇をホールドするような盛り上がったデザインになっているので、まさに「包まれている」という感覚に。 座席を倒しても後部のシェル部分は動かないので、最大角度で座席を倒しても後ろの座席に干渉することはありません。 シートピッチは、グリーン席標準1,160mmよりさらに広い1,300mm。 前の座席が目の前に倒れてくることもないので、足元はピッチ数値以上に広くてゆとりが感じられます。 たださすがに、2人掛け席の窓側の人が通路に出るには、通路側席の人の足を跨いで出る必要があります。 そのほか座席周りには、付帯設備が豊富に揃っていて、乗車中はまず不便さを感じるところはないでしょう。 アテンダントもグランクラス専任で乗務しているので、いつでも飲み物のオーダーをすることができ、まさにファーストクラス。 |
読書灯はフレキシブルアーム ピローは上下に高さ調節が可能 シートコントローラーは手元に集約 |
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肘掛先端にはコンセント 窓周りはパネルによるLED間接照明 ダイニングテーブルはワイドに広がる |
レッグレストは伸縮・高さの調節が可能 座面には通気性を良くするパンチ穴 曲線デザインが美しい肘掛 カクテルトレイは広げても使える 2人掛け席のカクテルトレイ |
「グランクラス」では、ファーストクラスに相応しいサービスとして「軽食提供」と「フリードリンクサービス」を行っています。 こうした飲食サービスのほかに、乗客をケアするため専任のアテンダントが2名が乗務しています。 「グランクラス」発表時に大きな話題となった「軽食」の無料提供サービス。 「洋食」か「和食」のどちらを選ぶことができ、乗客にはこのどちらか1食のみが提供されます。 どちらも東北新幹線沿線の名物や特産品などをメインに使った食材で構成されていて、上下列車で内容が異なるようにしています。 内容は季節ごとに変わることが予定されていて、乗るたびに違う食材に出会える楽しみがあります。 また、軽食とは他にお菓子も1品提供され、和菓子に「おかき」か洋菓子に「アップルパイ」のどちらか1品が選べます。 ドリンクはアルコール類を含めて、全てフリーで提供されます。ドリンクメニューが各座席にあり、その中から選びます。 ドリンクメニューのラインナップは以下のとおり。 --アルコール-- ・ビール ・ワイン(赤/白) ・日本酒 ・青森シードル --ソフトドリンク-- <ホット> ・コーヒー ・緑茶 ・紅茶 ・ハーブティー <アイス> ・コーヒー ・緑茶 ・黒烏龍茶 ・アップルジュース ・ダイエットコーラ ・ミネラルウォーター ドリンク類は、特にアルコール類は持ち帰りができないように徹底されており、ビールは缶が開いた状態で出てきます。 ワインは瓶のキャップが無い状態で提供されるので持ち帰れませんが、空になった瓶は持ち帰れます。 (ワインはグランクラスオリジナルラベルとなっていて、乗車記念として持ち帰る人も多いのでアテンダントさんに申し出てみよう) 飲食サービスのほかに、航空機の上級クラスサービスを意識したかのようなアメニティのサービスもあります。 各座席にスリッパが最初から用意されていて、ポーチにはグランクラスマークが入ったオリジナルアイテム。 このほかに、ブランケット・靴ベラ・アイマスクが常備されていて、必要な時はアテンダントさんに申し出れば提供されます。 (以上の飲食提供品やサービスの内容は、2011年6月乗車時点での情報による。今後変更される可能性もあります) 【2016年3月26日以降のグランクラス・サービス】 E5系車両の充当列車の拡大に伴い、人的サービスを省略した「シートのみサービス」の列車が増えています。 ・各駅停車の「なすの」号の全列車 ・東京−仙台間運転の「やまびこ」号の全列車 ・仙台−新函館北斗間運転の「はやぶさ」95号・96号 ・盛岡−新函館北斗間運転の「はやて」93号・98号 ・新青森−新函館北斗間運転の「はやて」91号・100号 ・一部の臨時列車 これらの列車では、シートの提供のみのサービスとなり、アテンダントの乗務は行われていません。 アテンダントコールボタンを押しても、アテンダントはもちろん、車内販売員も座席まで来ません。 そのため、食事やドリンクの提供や、アイマスクなどのアメニティのサービスは行われていません。 (スリッパのサービス提供はあり。ブランケットはハットラック内に準備済みのものをセルフサービスで利用できます) |
【客室】 座席・壁面のアイボリーと床面のダークレッドのコントラストが想像以上に美しく、また照明効果によって客室全体に柔らかさを感じる。 とにかく息を呑むほどの美しさ。 何かと「旅客機のファーストクラス」を意識したデザイン・サービスとしていることを雑誌や新聞・ネット記事などで見ていたが、 旅客機ではどことなく排除しきれない「ドライ感」がグランクラスにはなく、それとは別物に仕上がったことに嬉しさが込み上げてくる。 【座席】 | 腰掛けた瞬間に、文字通り「しっとり」とした座り心地が体全体から感じられ、グリーン席よりも上位なのだと実感できる。 本革に包まれた座席は、革特有の滑りや独特な匂いは全く無く、直立の状態でもホールド感に優れている。 ヘッド部分のピローは、「はやて」号のようなクッションではなくネックピローのような感じに仕上げられている。 最大角度まで倒して、このピローを後頭部よりやや下にセットすると、かなりリラックスした状態で寝るような体勢になれる。 ただ、全体がアイボリーの座席はところどころ黒染みができ始めていて、今後の座席メンテナンスが注目されるところ。 【リクライニング】 | リクライニングやレッグレスト・フットレストはオール電動。ボタン1つで操作が可能で便利。 動きがゆっくりなので、自分の最優良ポジションを探しながら止められるのがいいが、逆にすぐに座席を戻したい時に遅くて困る。 また、デフォルトの直立状態に一発で戻すボタンもないのがちょっと不便に感じた。 旅客機では必ずこのボタンがあるが、新幹線では「離着陸で座席を戻す」などということはないので省略されたのだろうと思うが、 トイレに立つ時などに、リクライニング状態からは傾斜が深くて立ち上がりにくいので、一発戻しボタンが欲しいと感じた。 【フットレスト・レッグレスト】 | レッグレスト部分は本革。その先のフットレストは、レッグレスト先端からプラスチック素材が伸びてきて足全体を載せられる。 最初、このプラスチック素材があまりに安っぽいので、全体の高級感とのギャップに驚いた。 しかし実際に使ってみて、何てことはない、靴のままでフットレストに足を載せても汚れを気にしなくていいようにというものだった。 【テーブル】 | テーブルは座席の内側から引き出す、鉄道車両ではあまり見られないタイプ。 (JALのエグゼクティブクラスシート「シェルフラットシート」ではお馴染みのタイプのもの) このテーブルの動きがギクシャクで、引き出すにも収納するにも一苦労。 座席によってはスムーズに動くところもあるので、個々の仕上げの差のようだが、これのハズレ席に当たると飲食する機会が多い グランクラスではちょっと悲しい気分になってしまう。 【ミールサービス】 |
グランクラス発表時に話題をまいた軽食サービス。 乗車前から話には聞いていたが、その量の少なさにはちょっと幻滅。 この量では腹ごしらえにもならず、ちゃんとした食事を望むなら乗車前に弁当などを自分でしっかり準備しておく必要がある。 (ちなみに、和食の方が洋食よりは若干しっかりとした内容となっている) また、お菓子のサービスも「おかき」か「アップルパイ(スティック)」のどちらか1つのみというのもちょっと貧乏くさい。 アテンダントさんの人的サービスもまだまだ粗が目立ち、旅客機内のCAさんのサービスでは有り得ないことが次々と。 まだグランクラスがスタートして日が浅いので、今後の習熟・飛躍に大いに期待して、次の乗車チャンスを楽しみにしたいところ。 |
グリーン車は9号車。ブラウン系のナチュラルな色彩で統一された空間は目に優しく、安らぎのひとときが過ごせます。 木目シートにはライトウォールナット、メタル素材部分にはメタリックカッパーを使って、未来的な中にもエレガントさを演出。 座席は、E2系「はやて」のグリーン席をさらにグレードアップ。 ヘッド部分にはピローを装備。「はやて」のクッションにようなものに比べて、首から頭にフィットするネックピローのような形に。 パーソナルライトはヘッドレスト脇から手元を照らす、N700系新幹線のタイプ。照明のON/OFFは手元のボタンで行います。 足元は、レッグレストで足全体を支えるようになっています。 足先のフットレストは省略されましたが、「はやて」タイプに比べると足元がすっきりとして、足がグンと伸ばせるようになりました。 パーソナルコンセントは中央肘掛の先端に装備されています。 下向きの角度が付いた面にコンセントが設置されているので、先端が大きな形状のアダプタは若干差し込みにくいのが難点。 背面収納テーブルは、展開後手前に引き出すことができるので、お弁当やパソコンを手元により近くへと引き寄せられます。 通路側/窓側の外側肘掛にはインアームテーブルが装備されていて、その大きさからカクテルテーブル代わりに使えます。 座面は、リクライニングと連動して後方にチルトする構造となっているので、体全体でリラックスした体勢が取れます。 ちなみに、座面は「はやて」タイプのグリーン席より5mmからの拡大が図られていて、ちょっぴり贅沢な余裕が。 背中全体を支える座席背面も、背中を軸に両脇から包み込むような成型がなされているので、体が座席にフィットする感覚。 シートピッチは、これまでのグリーン車両と同等に1,160mm。 乗車後、グリーン席専任のアテンダントからのおしぼりとドリンクサービスが受けられます。(現在はサービス提供終了しています) |
1号車〜8号車は普通車。これまでの新幹線と同様に、2+3座席配列となっています。(山側2列・海側3列) 客室は濃淡のグレーに彩られたシートが整然と並び、一見するとクールな雰囲気ですが、 荷棚周りの白木調の木目シートが貼られ、また蛍光灯よりも優しい光を放つグローブライトで全体的にソフトな印象です。 普通車座席は、「はやて」のE2系車両から大幅なグレードアップが図られています。 見た目にすぐ気が付くのは、全座席のヘッド部分にピローが装備されている点。 普通車座席の全席にパーソナルピローが装備されるのは、新幹線車両としては初の快挙で、利用者には嬉しい進化です。 ピローはグリーン座席やグランクラス座席と同様に、首周りから頭を支えるネックピロータイプ。 上下に高さ調節が可能なので、自分にちょうどフィットする位置にあわせることが自由自在です。 シートピッチも、これまでのJR東日本の新幹線の普通車標準の980mmから1,040mmへ一気に広がりました。 東海道新幹線では以前から1,040mmが標準でしたが、実際に座ってみるとやはり1,040mmだと足元がかなり広く感じられます。 座面には、リクライニングすると自動的に前へと迫り出す機能を持たせています。 また、不人気の3人掛け席については横幅を拡大。A・C席では430mmを440mmへ、最も不人気のB席は460mmにまで拡大されています。 普通車にもパーソナルコンセントが設置されましたが、各列の窓側下に1口ずつなので、窓側席の乗客のみの特権という感じ。 ちなみに、車端部のデッキ仕切り壁に面した席は、壁に大きなテーブルと共に1口づつのコンセントが設置されています。 この列だと中央席・通路側席でもコンセントが使えるのですが、事前指定の段階で埋まっていることが多い人気の席。 デッキから客室に入ってくる乗客に流れが煩わしいという点はありますが、空いていれば事前指定して損は無い区画です。 (東京行き上りだと各車両1番列、下り列車だと各号車の最も大きな番号の列が相当します) |
サニタリーコーナーは奇数号車の新青森寄りデッキに。1・3・7号車には洋式トイレ・男性用トイレ・洗面台・女性専用トイレ。 洋式個室内には、ベビーベッドとベビーキーパーが設置されています。 5・7・9号車には、車椅子対応の大型多機能トイレと、間口の広い車椅子対応の洗面台が設置されています。 グリーン車・グランクラス客専用の9号車のトイレは、ウォシュレット付きとなっています。 女性専用トイレは、洋式個室と洗面台が専用の空間が通路とは直角に設置され、出入りする時の他者視線への抵抗感を和らげています。 トイレ個室内には姿見と着替えをする時に使える踏み台が、洗面台には側面鏡があり、身だしなみを整えるのに便利になっています。 |
デッキは、これまでの新幹線車両がプラスチック素材むき出しな感じだったのに対し、木目を意識した色合いに塗られ、 全体的に温かみのある、乗った瞬間に「ホッと」するような雰囲気作りがなされています。 多目的室は5号車に、公衆電話の設備は3号車と5号車に、AEDは5号車のデッキにそれぞれ設置されています。 |