成田空港B滑走路延伸に伴う国際線離発着回数の増加で、益々の利用客の増加が見込まれる中、 JR東日本ではこれまでの成田アクセスに活躍してきた253系「成田エクスプレス」に新型車両の投入を決定。 2009年10月に「E259系」なる新形式の「成田エクスプレス」専用に特化した新型特急がデビューしました。 座席数の増加に加え、車内無線LANの完備に、全席にパーソナルコンセントを装備するなど車内サービスを一段と向上させています。 今後は2010年に、ライバルである京成電鉄が新線経由で所要時間を大幅に短縮した「新型スカイライナー」を運行開始させる予定。 「成田アクセス」をめぐる新たな戦いの火蓋の幕が、今まさに切って落とされようとしています。 |
グリーン車は、6両編成の成田空港方先頭車:6号車(12両編成の場合は6号車と12号車)に設定されています。 初代「成田エクスプレス」の253系では、オープンキャビンに加えて4人用個室がありましたが、E259系ではグリーン個室はありません。 グリーン席は2+2の4アブレストとなりました。 先代253系デビュー当時の1+1や2+1のランダム配置など、自由奔放なキャビンアレンジメントはいまや「伝説」となりつつありますが、 E259系ではおそらく、需要面から見た現実的な座席数確保という点で2+2配置に設定したのではないかと思われます。 (事実、車端部に大型のユニバーサルサニタリーを設置したことにより、グリーン車キャビンはさほど大きくありません。 この大型トイレを普通車に持っていくと、普通車の定員が大幅に減ってしまうので、その点ではグリーン車が割を食った感じでもあります) 2+2配置になったことで、1+1や2+1時代を知っている世代にはどうしてもグレードの低いグリーン車というイメージになってしまいますが、 座席そのものは上品・上質な出来栄えとなっています。 座席は総革張りで、座ってみるとすぐ分かりますが、リクライニングしない状態では革張りソファーに腰掛けたような感覚になります。 革張り座席というと、表面が滑る感じや、革の張りが強すぎると椅子に体を乗せているだけという感じがしますが、 この座席は、座面に下ろした腰が柔らかく沈む感覚があって、これまで鉄道車両で出てきた革張り座席とは一味違う座り心地です。 この座席の絶妙な点が、フルリクライニング時の角度と前席の下部に取り付けられたフットレスト・バーの関係。 軽く腰掛けた状態でバーに足をかけると、バーが異様に高い位置でストッパーが掛かる(バーがあまり下まで降りない)のに気がつきます。 これ、実はフルリクライニング(もしくはそれに近い角度)で背をもたれた姿勢でバーに足を掛けると、足がかなり楽な状態でホールドされます。 ヘタなレッグレストよりかは、こちらのほうがはるかにリラックスした姿勢を保持できるように感じられました。 さて、実際に乗車してみて、やはり割高な「A特急料金」の設定であることがどうにも引っ掛かってきます。 座席そのものの、革の素材感とか腰掛けた時のゆったり感はなかなかのものですが、4列設定ゆえの「ゆとり」の無さが気になります。 通路を隔てた隣同士(B席とC席)でも、その隣に座っている乗客の存在が気になるほどに近さを感じさせてしまっています。 通路を隔てても「隣客」を感じるのですから、他人がすぐ隣り(A/B席同士やC/D席同士)に来た場合には、全く落ち着きなど感じられません。 付帯サービスである「無線LAN」「コンセント」も普通席と共通であり、さらに普通席ではシートピッチが広がってグレードが高くなったので、 「グリーン席だからこそ、このサービス」「グリーン席でしか受けられないサービス」という、プラスアルファが正直見出せません。 客室中心部の天井に設置されたLCD情報装置も、リクライニングした姿勢で目線に煩わしく、グリーン席でこのノイジーな空間作りはガッカリ。 「乗車中に、リアルタイムでたくさんの情報を提供」をウリにするなら、A特急料金のグリーン車ならE655系「なごみ」並みの個別液晶モニターを 全席に個別に設置して、「見たい人は見る」「静かに過ごしたい人はモニター電源を切る」くらいのパーソナルな設備として欲しいものです。 海外からの利用者からすると「成田エクスプレス」の料金設定はかなり割高に感じるそうで、その高級列車の「ファーストクラス」である グリーン席がこの程度のものだとは、JR東日本ほどの大会社が持つ「国際感覚」の程度を疑ってしまいます。 次項で紹介する「普通車」のグレードがかなり良くなっているので、「成田エクスプレス」の利用は普通車で充分満足を得られるものと感じました。 シートピッチは1,160mm。さらに、雑誌などによれば座席下は250mm高を確保して荷物が置けるようにと想定しているそうです。 (そのためか座席の回転がアームレスト後方のレバー式に。このレバー式回転が使いにくい。座席が重いので実に回し難く感じる。) 床面は全面が市松模様の絨毯張り。革張りシートが並ぶ「重々しい雰囲気」をカジュアルながらも上品な雰囲気に変えることに成功しています。 |
普通車は1号車〜5号車の5両。(12両編成の場合は1号車〜5号車と7号車〜11号車) ボックス席から集団離反配置席へ。一部にリクライニングシートがあるものの窓割りが全く合っていないなど・・・・ 253系の破綻した状態の普通車から、利用者はいよいよ開放される日が近づいています。 客室は2+2配置。黒ベースに赤のワンポイントを入れた座席は、これまでの「N'EX」のイメージを上手く残していて、安心感があります。 逆に「ブラック&レッドはN'EXのイメージカラー」というのが、一般にも深く浸透したからこそではないでしょうか。 座席表面は市松模様が施されていて、真っ黒な座席よりもポップさが感じられるので、客室全体に楽しい雰囲気が生まれています。 この市松模様が、背もたれ表面や背面上部で円弧を描くように切り取られるデザインになっているのは、日本らしい風流さを狙った演出。 リクライニング機構のみを有し、JR東日本の特急車の標準装備となった「座面スライド機構」は有していません。 座席背面には収納フックと収納テーブル、その下に網袋とドリンクホルダー。このあたりはE257系などですでに見慣れた配置となっています。 車内の設備案内・編成案内などは、ラミネート加工されたインフォメーション冊子が全席の背面ポケットに入っています。 国際空港アクセス特急らしく、日本語・英語・韓国語・中国語の4ヶ国語案内。ちなみに車内放送もこの4ヶ国語で流れます。 シートピッチは1,020mm。JR東日本の定期特急の普通車としては最大級で、驚きの広さを現実のものにしてくれました。 事実、座ってみるとかなり足元が広く感じられ、ピッチ910mmのE653系に乗り慣れた我が身には、前の席が遠くに感じられたほどです。 さらに驚くべくは、全ての座席のアームレスト先端に電源コンセントが装備されていて、普通車にして全席電源付きと実現に! さほど太くは無い肘掛け内部に電源が仕込まれている点からも、一見ごく普通の座席体ながらも実は手の込んだ座席なのがうかがえます。 床面もインテリアコンセプトに沿った市松模様。床面材質はゴム製だそうです。 |
5号車の成田空港寄りには車椅子対応席が2席設置されている。 その直後の席は、向きによって前の席が存在せずテーブルが使えないため、インアームテーブルを装備している。
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車椅子対応席は通路側を向いての固定が可能。車椅子から座席への移動をしやすくしている。 |
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窓の遮光はブラインド。よく見ると、細かい雲のような模様の隙間に市松模様が使われている。
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座席背面にはマガジンポケットとドリンクホルダー。マガジンポケットにはラミネート加工の車内案内。 | 車内案内の内容はこんな感じ→ 【表紙と裏表紙】 【見開き】
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座席の回転は、両脇肘掛け後部のレバーで操作。 | E217系の最初の型のグリーン席や、E3系新幹線の初期タイプでおなじみ。最近ではE655系もこのスタイル。
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アームレスト先端には電源コンセント。この位置に電源があると、例えば通路側席に座って電源を使っても、 | 窓側席の人が通路に出る時にも充電コードなどが行く手を阻むことなく、邪魔にならない利点がある。
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ヘッドレスト部分には、普通車にして上下可動式のマクラを装備。 | スムーズに動くが、上に上げたマクラを下まで下ろした際にカコンと乾いた音が響くのが若干気になる。
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気が付かれにくい点だが、座席背面上部や背もたれ表面の市松模様が円弧を描くデザインとなっているのが楽しい。 | 市松模様が客室を全体で眺めた時に雰囲気作りに大きく影響していて、この新N'EXでは重要なデザインポイント。
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座席ヘッド部分の大きな出っ張り。片側は真っ赤なデザインで、この部分は硬い材質の詰め物となっている。 | おそらく通路移動時の手掛かりという意図ではないかと思われるが、座っていてここを掴まれるとやはり気になる。
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センターアームレストは座席間に持ち上げて収納が可能。 |
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窓下の框部分には物置程度の幅が確保されており、飲み物や携帯電話などが置いておける。 |
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床面は一面が市松紋様となっている。 | 日本の伝統文化に根付いた紋様を採用してのことだが、外国人にはチェスのマス目に見えるかも?
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荷物棚の下には個別空調の噴出し口があり、スポット的に空調を体に当てることができる。 |
荷物棚は、雑誌などによれば高さがこれまでより低い位置になり、荷物の取出しがしやすくなっているという。 |
先代の253系「成田エクスプレス」では、LEDスクロール式の情報装置がデッキや客室端部の天井部に設置されていました。 今回の新型E259系では、17インチのLCD情報装置をデッキのほか、客室内では車端部のほか客室中ほどにも設置しています。 様々な情報が日本語・英語・中国語・韓国語の4ヶ国語で次々と美しく表示され、これは外国人から高評価を得られそうです。 |
サニタリースペースは、編成中2ヶ所と少なめの設定。1号車と6号車(12両編成の場合はさらに7号車と12号車)の編成端部に設置されています。 そのため、編成の真ん中に近いところに座っている人ほどトイレがとても遠く感じられるはず。 1号車(7号車)は、洗面台・洋式個室・男性用個室。洋式個室には収納式のベビーキープとベビーベッドが設置されています。 グリーン車の6号車(12号車)は、電動車椅子でも入れる大型の洋式個室となっていて、内部はE655系「なごみ」のそれとほぼ同じになっています。 残念ながら、「成田エクスプレス」ではウォシュレット設備は設置されていません。 |
各車輌とも客室とデッキの間に大型バゲージスペースを備えています。 バゲージスペースには、おそらく日本初となるであろうダイヤル式のロックチェーンが装備されています。 暗証番号をセットしてチェーンにロックを掛けることで荷物盗難を防ぐ目的があり、利用者からすると安心して荷物を置いておけますが、 出入りの激しいデッキに面した狭いこのスペースで、どれだけの人がこのロックチェーンを利用するか・・・ なんとなく、数年後には撤去されてしまっていそうな予感も。 ちなみにデッキの全ての乗降ドア上部には防犯カメラが設置され、デッキにも防犯カメラ作動中のステッカーが掲示されています。 |
デッキ乗降ドア付近には、253系の電光表示板に変わって液晶画面での列車案内表示装置が設置されました。 日本語と英語で列車名と停車駅(ルートマップと表示)を表示。停車駅案内には現在位置で電車のアイコンが動く仕掛けも。 ユニバーサルデザインを推し進めている中で、この液晶表示板の下には点字での車内設備案内板が貼り付けられました。 デッキには折りたたみ式のジャンプシートも設置されています。電話コーナーはグリーン車の6号車(12号車)に、カード専用電話が。 1号車の成田空港寄りのデッキにはAEDが設置されています。 多目的室は6号車(12号車)に設置。通路を挟んでその前には車内販売準備室があり、アイスストッカーや流し台などが設置されています。 エクステリアのドア付近にはフルカラーLEDによる行先表示機。日本語と英語を交互に表示します。 LED表示の起動時には、SSTをイメージしたN'EXのシンボルマークが赤いラインを引いて飛んで来る動画が流れるという凝り様。(→■) |