ジョイフルトレイン「Kenji」。 なんとも不思議なネーミングですが、宮沢賢治からその名を拝借したこの列車。その愛称のとおり、主に盛岡エリアを中心にイベントや臨時列車で活躍しています。 国鉄末期からJR誕生直後くらいに、このデザインのパノラマ列車が大流行した時期がありました。 最初にこのデザインで登場したのが北海道の「アルファ・コンチネンタルエクスプレス」。そしてJR西日本でも「ゆぅトピア」「アストル」がこのスタイルを採用。 JR東日本でも「サロンエクスプレス・アルカディア」でこのタイプの展望列車を登場させましたが、デビューからわずか11ヶ月でエンジン火災を起こし1両を喪失。 残った無傷の2両はしばらく保留車となり、その後三陸エリアで開催されたイベントのアクセス列車として、1両を追加改造して再び3両編成で復活となりました。 改造元の車両は、国鉄型のキハ58・28系ディーゼルカー。 日本全国津々浦々、どこにでも走っていたこの気動車はいつの間にか全国で淘汰が進み、この「Kenji」が最後のキハ58・28系となりました。 |
3両編成の「Kenji」は、全車両が普通車となっています。 臨時列車で運転される際は、主に全席指定の「快速」として設定されることが多いです。 一般席は、2+2の横4列配置。 座席は、やけにモコモコした肉厚さが目立つ不思議な形状。 クッション材がふんだんに入っていてすごく柔らかい・・・・というわけでもなく、掛け心地はあまり特徴際立つものは感じられません。 リクライニング角度は「ちょっと倒れたかな?」という程度のものですが、「快速」の種別で乗車できる列車の設備としては豪華な方かもしれません。 センターアームレストは無く、窓側席と通路側席を仕切るものはありません。 外側のアームレストの先端には、蓋付きの灰皿があります。蓋は封鎖固定されておらず、普通に灰皿として機能していますが、もちろん車内は全席禁煙。 座席背面に収納テーブルと網ポケットが付いています。 テーブルはとても小さく、観光向けの列車として設定されることが多いわりには、いささかちゃっちい感じ。駅弁を広げると飲み物を置く場所がないほどです。 しかも多くの席で、テーブルが手前に傾いているものが多いので、走行中の揺れでテーブルに載せた物が徐々に手前に滑り落ちてきます。 各車両の車端部には、真っ黒なアルミ板で覆われた部分がありますが、これは以前カラオケ装置を積んでいた空間を塞ぐもの。 一般席の壁面には、かつてカラオケ用に使われていたと思われる、マイク端子を挿入する機器が残されています。 1号車と3号車の運転室寄りは、ハイデッカーの展望席。2+2で4列、合計12席。 マルス上では「展望席」として特別な区分けはされていないようなので、座席番号指定の指名買いで早い者勝ちの模様。 展望席には荷物収納棚が無いので、一般席と展望席の仕切り部分に簡単な荷物収納ボックスが設置されています。 展望席からの眺望はなかなかのものですが、窓ガラスに遮光フィルムが大きく貼られているため、窓の向こうの眺めがやや暗くなってしまっています。 各席の頭上には天窓が付いていて、さほど大きくはない天窓ですが、見上げると上にも眺望が広がるのでけっこ開放感があります。 座席は一般席とは異なるもので、テーブルは展望席のもののほうが大きくて使いやすいです。 外側のアームレストの形状もかつてのリニューアル用座席の代表格のR55シートに近いデザインです。 2号車の車両半分は「コミュニケーションルーム」と称するフリースペースになっています。 2+1配列と1+2配列が交互に並ぶ不思議な座席配置ですが、各座席が45度向きで固定可能となっていて、これを向かい合わせると、6人ボックス席になります。 |
乗降口は昔ながらの1段ステップ。デッキ周りはあまり化粧っ気がなく、古めかしい雰囲気です。 中間車の2号車には改造元の車両の運転台と運転室が残っています。運転室の直後には自動販売機がありますが、現在は販売停止中。 トイレは1号車と3号車のデッキ寄りにあります。 1号車は車椅子対応となっていて、ドアが幅広サイズ。個室内は洋式トイレと小さな洗面台が設置されています。 車椅子対応トイレの反対側は多目的室ですが、中は女性向けのパウダールーム兼ドレッサールームとなっています。 多目的室内には折り畳み式のベビーベッドがあり、小さな子供を座らせておけるベビーキーパーも設置されています。 3号車のサニタリースペースは、洗面台と洋式トイレ。 洗面台は、もともと枕木方向に洗面台が設置されていたと思われますが、90度転回させてレール方向に洗面台が設置されなおしてあります。 しかし、鏡は元の枕木方向のままなので、なんともアンバランスな感じです。 |