最果て行き路線−「宗谷本線」。軌道強化などによる一部高速化によって、2000年に特急列車が誕生しました。 特急には新型車両の「キハ261系」が開発投入され、車両愛称は「Tilt261」。 空気ばねを利用した車体傾斜制御装置を搭載し、最大角度3度で車体を傾け、高速度のままでのカーブ通過が可能となりました。 一方、車内外のカラープラン・デザインなどには、姉妹鉄道提携関係にあるデンマーク国鉄との共同デザインを採用。 エクステリアは、「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」と同系統のデザインながらも、大陸的な落ち着きのある顔つきになり、 インテリア面ではビビッドなカラーと木の暖かみをふんだんに用いた北欧デザインが全面的に取り入れられました。 この「Tilt261」の投入で、特急「スーパー宗谷」が誕生。札幌−稚内間の所要時間は、5時間を切る速さで結ばれるようになりました。 これは急行「宗谷」時代に6時間近く掛かっていたところを1時間以上も短縮したもので、驚異的な速さが実現となりました。 |
おそらく、日本一小さな特急グリーン客室ではないでしょうか。 2+1の3アブレストがわずかに3列。たった9席のプレミアム空間が「スーパー宗谷」のグリーン客室です。 (ちなみに形式図を見ると、グリーン客室の奥行きは3,990mm。なんと4,000mmを切るショートな空間です) かなり大きめの真っ青な革張り表皮に木製パーツをふんだんに使った座席が並ぶ光景は、日本離れした雰囲気が漂います。 ここにデンマーク国鉄との共同デザイン作業の真髄と骨頂を、ひしひしと感じ取れます。 このキハ261系の北欧デザイン導入をJR北海道が成功と感じたのか、この後の789系「スーパー白鳥」や 同じ261系1000番台の「スーパーとかち」では、同様の北欧デザインを積極的に取り入れるようになりました。 シートそのものは完全新規作成のように見えますが、実はコスト削減のためキハ281系「スーパー北斗」のグリーン席をベースに 設計されているそうで、背ずり部分のホールド感を高めたデザインに変更の上、ソデ体などはキハ281系をほぼ流用らしいです。 しかし、革張りになったことや肘掛が木製パーツになったことで、まるで完全な新製品のような印象です。 登場から10年が経過しましたが、残念ながら革そのものの張替えは行われていないようで、表面のひび割れがかなり散見されました。 背ずりや座面も摺れてテカテカになってしまっていて、雑誌の新車ガイドの写真のような革の瑞々しい印象は薄れてしまっています。 腰掛けた時の、特に座面と背ずりの交わる部分のホールド感がかなり良く出来ていると感じられる座席なので、 革そのものが摺れて表面が滑りやすくなってしまっている現状は、座席のよくできた部分をスポイルしてしまうようで勿体無いです。 あと、この座席は座面のバケット処理の切り込み部分から座席先端に掛けての長さとクッション詰めのバランスが絶妙ですね。 シートピッチは1,145mm。壁に対面となる席は壁からのピッチが850mmと極端に狭くなります。 そのため、全9席中でもグリーン席たる空間となるのは6席。 付帯設備の電源ポートが窓側のみとなっているので、さらに席数が絞られてわずか窓側4席だけが「グリーン席」たる席となります。 |
普通車は3色のカラー設定がなされていて、号車ごとに色が変えられています。 1号車・4号車・6号車・増21号車はブルー、2号車・増22号車はレッド、3号車・5号車はグリーンとなっています。 ビビッドな原色パターンは、デンマーク国鉄との共同デザインによって採用されたもの。 JR九州の特急に見られる煌びやかさとはまた一味違った派手さがあり、北欧デザインらしい暖かさが感じられます。 シーチピッチは、道内の他の「スーパー」特急と同じ960mm。 1号車と増21号車はグリーン客室との合造となっているので、半室のショート空間になっています。 座面・背面ともクッション材は厚めに詰め込まれている感じで、座った時には腰にフカッと沈む感触があります。 リクライニング量は、シートピッチ数値からするとこれが後ろの席に圧迫感を与えないギリギリの角度なのかもしれませんが、 札幌から宗谷本線内まで乗り通すような長時間乗車となると、もうちょっとリクライニング角度が欲しいと感じます。 普通車では指定席・自由席共に電源コンセントを装備している座席・区画はありません。 座席間のアームレストは、座席間に跳ね上げ収納が可能です。 なお、増備型の細かい差異としては、2001年増備のSE-104編成(2両)の座席はセンターアームレストが幅広になっており、 座席の肩の部分に、通路移動時の手掛りとなる丸型の手すりが増設されています。 座席背面にはテーブルと網ポケットが装備されています。テーブルはワイド幅で、A4サイズのノートパソコンが載せられる大きさ。 網ポケットは、初期編成と2001年増備のSE-104編成では形状に違いがあります。 初期編成の網ポケットは、ゴムの伸びが大きくなっていてポケット内に飲み物などを詰め込めるようになっていますが、 SE-104編成では車内誌や車内販売メニューを差し込んでおくラック程度のもので、ペットボトルなどを奥深くまで差し込めません。 窓周りでは、窓框部分に幅があるので携帯電話や飲み物を置いておくことが出来ます。 遮光には上下式のブラインドを装備しているため、窓中央のレールがワイドな窓からの眺めをを若干スポイルしてしまっています。 床面には大きな市松模様。ダイアゴナルパターンと呼ばれる模様で、これもデンマーク国鉄との共同デザインで採用された柄です。 車内の奥行きに広がりを感じさせるもので、車内がより広く見えるデザインによる空間マジックが隠れた効果となっています。 天井は通路に沿って一直線にコバルトブルーで塗られていて、空間全体で見た時に奥行きにかなり広がりがあるように見えます。 この天井のカラーデザインやブルーの色合いも北欧らしい色彩感覚で、日本離れした雰囲気が感じられます。 車椅子対応席は、3号車と5号車の札幌寄りに設定されています。 |
サニタリースペースは2号車・増22号車の稚内側デッキと、3号車・5号車の札幌側デッキにあります。 2号車・増22号車のサニタリーは洋式個室・男性用小用個室・洗面室から成っており、洗面室もドアの付いた個室になっています。 洗面室には収納式のベビーベッドが設置されていて、赤ちゃんのオムツ交換などができるようになっています。 3号車・5号車のサニタリーは車椅子対応の大型個室となっていて、ドアは2枚扉でワイドに開き、もちろん手すりなども完備。 室内には洋式トイレ、洗面台、収納式のベビーベッドを備えています。 |
各車両ともデッキの乗降ドア内側がコバルトブルーに塗られていて、スポットライトのライティングと共に印象的な雰囲気。 昼間は爽やかに、夜間にはウォーミィに空間が彩られます。 車椅子対応席のある3号車・5号車のデッキは、他の車両よりもドア幅やデッキ空間が広めに取られています。 ドア脇には「SUPER SOYA」ロゴの入った金属板による号車番号や指定席/自由席案内。 「スーパー宗谷」では増結などで3パターンの編成組成があり、指定席・自由席も旅客流動の動向によってフレキシビリィに変わるため、 こうしたスタイルでの旅客案内を行っています。これは行先表示機がLEDではなく幕式であるためでもあります。 2号車と5号車には電話室がありますが、JR北海道では車内電話サービスを終了したため、現在では電話を使うことが出来ません。 電話室のドアは封鎖されていないので、現在は携帯電話ブースとしてこの小部屋を利用することができます。 1号車と増21号車のグリーン室と普通席客室の間には、車内販売準備室が設置されています。 通常、車販準備室はデッキ側になるですが、グリーン席へのサービス拠点としても機能しているため車両の中心に設置されています。 この空間は、普通席からグリーン客席への無用な立ち入りを防ぐ「関所」のような役割にもなっているようです。 両端の先頭車は運転室直下が通路となっているので、最前方・最後方となる場合はこの通路が展望スペースとなります。 |