JR九州 キハ147系 特急「はやとの風」


2004年の九州新幹線開業に伴い、鹿児島中央駅から南九州エリアの観光地へとリレーするために登場した「はやとの風」
かつて鹿児島への唯一の道であった肥薩線は長い歴史を持つと同時に、沿線には見所や絶景が多く点在する、隠れた「名眺望」路線。
そんな肥薩線を、「はやとの風」は鹿児島中央から吉松へと走ります。

ボディは「ロイヤルブラック」一色。屈強な蒸気機関車のイメージか、はたまたかつての「隼人民族」の勇猛さをフューチャーしたものか。
霧島連山の山間を駆ける漆黒の覇者は、刹那の風。そんな薩摩隼人の新特急の車内は、木の温もりで包んでくれる優しさに溢れています。








普通車

画像は、2004年デビュー時に登場した「キハ140-2066」と「キハ147-1045」です。
当時はこの2両のみが「はやとの風」として揃えられたので、検査などで運転できない時は運休する臨時列車の扱いでした。
2006年に、後述する3両目の車両が登場したことによって予備車両を持つことになり、定期列車になりました。

2004年デビューの2両は、深い色調の木素材が使われていて、全体的にシックな雰囲気が漂っています。
この車両は元々がローカル線の通勤車両でしたが、改造によって全席が回転式リクライニングシートに換装されています。
シートピッチは980mm。九州内の都市間特急として使われている特急車両と比べても遜色ない広さを確保しています。
しかし、窓割りは元々の通勤車両時代のままなので、全体の1/3程度しか座席と窓の位置が合っていません。
指定席として使われることの多い「キハ147-1045」だと、吉松行きの上り列車で、2番6番8番10番の各列が比較的窓割りが合っています。

座席は、背もたれ部分が800系新幹線と共通したプライウッドパーツ、肘掛回りから台座部分は885系特急のものを組み合わせています。
背もたれ部分は、腰部分とヘッド部分のみクッション材が張られた特異なスタイル。
ちょうど背中の中央部から肩に掛かる部分は木製パーツそのものに当たるわけで、この段差がなんとも変に感じます。
しかも、旧型ディーゼルカーがガシガシと山道を走って行くものだから、車内の揺れは相当なもので、この段差部分で背中に圧迫感。
あまり長くは座っていられない気分になる、奇妙な座席。このあたりはデザイン優先に仕上げたのでしょうか。

車内は白熱灯色の照明が使われ、灯具も凝ったデザインのものが天井と壁面に設置されています。
トンネルに入ると、驚くほど車内が美しいアメ色に染まります。

「キハ140-2066」と「キハ147-1045」では似たような色調に見える客室ですが、よく見ると微妙に色調を変えています。
「キハ140-2066」の座席モケットはオレンジ色が強めの色調で、「キハ147-1045」のほうはモスグリーンが強めの設定になっています。




    

こちらの画像は、2006年に追加投入された「キハ47-8092」です。
2004年に登場した車両との違いは一目瞭然で、こちらでは白木をメインに使っていて、車内がかなり明るい雰囲気に変わりました。
座席そのものは同じ仕様のものが設置されていますが、モケット表面柄が赤系のドット模様になっています。
荷物棚は、パイプ剥き出しのものから木製パーツを使ったものに変更されています。
また、車椅子対応席が新規に設置されています。(ただし、乗降口はステップがあるなど車椅子対応にはなっていない)

運転席直後の席は、座席を向かい合わせに固定して、中央部にテーブルを設置したボックス席仕様。
座席背後は壁や間仕切りとなるため、リクライニング機構は殺されています。(ボタン部分が埋められています)
背もたれは直立の姿勢で固定されているので、かなりキツい体勢での着席を強いられます。
グループで乗車して、ワイワイやりながら移動する・・・・という利用以外では、おそらく3両の全席中で一番のハズレ席。

ちなみに「キハ47-8092」だと吉松行きの上り列車で、5番7番9番列が比較的窓割りが合っています。(ボックス席除く)

3両の共通仕様として、テーブルは全席インアームテーブルを装備。広げると800系新幹線の座席のような展開となります。
シート背面には収納式のフックと革製のマガジンポケット。ポケットはペットボトルがなんとか入るくらいに口が開きます。
ブラインドは木製パーツを使ったロール収納式のものを装備しています。









コモンスペース サービスコーナー
    

各車両の中央部には、大きな窓にベンチとカウンターテーブルを設けたコモンスペースが設置されています。
フリースペースなので、乗客は誰でもここから巨大な窓と天窓に流れて行く車窓を楽しむことができます。

「キハ47-8092」と「キハ140-2066」の吉松方にはサービスコーナーが設けられています。
(両方の車両が連結されている場合は、内どちらか一方のみが使われます)
肥薩線の観光案内冊子や記念スタンプが設置されていて、乗客は誰でも自由に冊子を手にとってスタンプが押せます。
「はやとの風」では客室乗務員が乗務していて、車内販売もワゴンで行われます。
沿線の名物などが揃えられていますが、土日限定の品が多いので「はやとの風」の乗車は土日がおすすめです。








サニタリー デッキ コックピット
   
   

「キハ47-8092」と「キハ140-2066」にはトイレが設置されています。いずれも洋式トイレで小さな洗面台が個室内に設置されています。
「キハ47-8092」のほうは車椅子対応となっていて、個室内には手すりが増設されています。
個室内は狭いので中で車椅子の取り回しは無理そうですが、通路部分が広く取られていて、のれんで視線を遮る工夫がなされています。

デッキ部分は、かつての通勤車両時代にデッキと客室を仕切る壁がなかったため、今もデッキ仕切り壁はありません。
ただし、客室とデッキ間には木製の間仕切りを設置しており、簡単ながらも空間を仕切っています。
ちなみにゴミ箱は金属製のボックスなどではなく、竹を編んだ手作りの籠。凝ってますね。








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