2009年10月に登場した、日南線初の特急列車「海幸山幸」。 この不思議な愛称は、日向地方に伝わる日本神話「海幸彦と山幸彦の物語」に由来して命名されました。 手を取り合って常に2両で走る列車は、それぞれ「山幸」車両・「海幸」車両と、神話の兄弟の名が付けられています。 まるでオモチャのような車両は、元は高千穂鉄道で活躍していたトロッコ車両でした。 JR九州へ譲渡された後に水戸岡鋭治氏の手により、地元の特産である「飫肥杉」を車内外にふんだんに使ってリニューアル。 観光資源には恵まれていたものの、注目度の低かった日南線沿線の集客起爆剤として大きな役割を果たしました。 土日祝日や連休を中心に運転され、元々の座席数が少ないため、指定席の確保が難しい人気の特急列車です。 |
南郷方の1号車は「山幸」車両。 赤系の座席モケットを使い、「情熱的」なイメージとなっています。 元がトロッコ車両のため車体幅が狭く、そのため座席は海側が2人掛け、山側が1人掛けとなっています。 普通車としてはかなり豪華な2+1配置ですが、「座席数が少ない」→「指定券が取り難い」原因となっています。 シートピッチは1,000mm近い広さがあり、足元の広さにかなりの余裕があります。 座席の台座は中央の1本柱支えなので、前の座席下に足をグンと伸ばすことができます。 リクライニングはフリーストップ式。最大傾斜もけっこう深くまで倒れます。 テーブルはインアーム収納タイプを装備。座席背面はマガジンポケットと小物掛けのフックがついています。 側面窓は縦長で、ワイドで開放的な眺望が楽しめます。 窓割に合わせて座席を配置しているので、窓の柱に当たってしまう「ハズレ席」はありません。 窓の日除けは上下可動のロール収納式のブラインド。このブラインドも、すだれのような木材でできています。 窓下にはウェーブ形の細長いテーブルがあり、飲み物やデジカメなどを手の届くところに置いておけて便利。 天井の照明はLED電球を使っており、これはJR車両としては初めての採用例となっています。 |
「山幸」車両には、客室を中心にして両端にトイレとアテンダントカウンター・フリースペースがそれぞれ設置されています。 南郷方の運転台に近いフリースペースのカウンターは、アテンダントさんが常駐する車内販売カウンター。 宮崎の名産品や沿線のお土産、「海幸山幸」グッズの販売が行われています。 また、沿線の観光案内などの車内放送はこのカウンターのマイクを使って放送されています。 トイレは、車椅子での利用が可能なバリアフリータイプ。間口が大きく開き、トイレ内の面積も広く取られています。 洗面台やカガミもトイレ内にビルトインされているので、独立した洗面台はありません。 デッキは1段ステップの段差がありますが、収納式のスロープを装備しているので車椅子でも楽に車内に入れます。 |
宮崎方の2号車は、ブルーが基調の爽やかな印象の「海幸」車両。座席周りの設備は「山幸」車両のものと同じです。 2+1の座席配置も「山幸」と同じですが、こちらは「山幸」と比べて若干シートピッチが狭く、座席数が多くなっています。 そのため、一部の席で窓の柱にぶつかって眺望に若干難のある席があります。 10列ある座席のうち、宮崎方の8番〜10番の3列:9席は、自由席となっています。 運転開始直後は、海幸車両は全て自由席でしたが、指定席が取り難いという苦情が多かったため現在の形態になりました。 自由席が9席しかないため、ピーク期には乗車制限が行われるということで、乗客が多いと乗車できない可能性もあります。 (ちなみに、自由席の10番C席は窓がありません) |
「山幸」車両との連結部に近いデッキ部分には、フリースペースのソファーと車椅子スペースがあります。 車椅子スペースにはショーケースが設置されていて、中には飫肥杉を使ったオモチャが飾られています。 |