日本の川崎重工製E2系1000番台「はやて型車両」をベースに製造された、中国高速鉄道車両「CRH2」シリーズ。 その中でも「CRH2E」タイプは、日本では961系試験車両での試作だけに終わった「寝台新幹線」となっています。 16両編成のうち、両先頭車が「ニ等座」座席車、8号車が食堂車、それ以外の車両は全て寝台車という編成で組成。 北京−上海間などの夜行列車のほか、一部では昼行列車として日中走行の高速列車にも投入、運行されています。 |
編成中のほとんどを占めるのが、この「軟臥寝台」(日本の「A寝台」に相当)となっています。 いってみれば、「全車A寝台新幹線」というわけで、中国人の所得から考えてもかなりの高級列車という位置づけになるかもしれません。 寝台は全て4人用個室というかたちになっており、寝台は片側に2段ずつで室内に4人が納まる設計。 ただし、寝台券は個室単位ではなく1番寝台から順に販売されていくので、4人に満たない人数で購入すると、見知らぬ人と同室になります。 一人旅だと、同じ個室内のほかの3人は中国人という可能性が高く、旅慣れていないとちょっとハードルの高い環境になるかも。 車体そのものがE2系1000番台と同じ設計となっているところに寝台を持ち込んでいるので、天井は客車列車に比べるとかなり低め。 ただ「低い」「狭い」と言っても、「日本のB寝台客車が若干狭い」という程度のもので、例えば583系3段式B寝台ほどの狭さではありません。 寝台内の天井高さ・ベッド大きさなどは画像に示したとおり。 上段のヘッドクリアランスは、座った状態で天井スレスレかな?という高さ。下段はベッドに座った状態でも充分余裕があります。 上段寝台に上がるには、ドア脇に格納されているステップを使いますが、1段しか無いため、上段の乗客は上がり下がりがちょっと大変です。 各寝台には液晶モニターと読書灯が付いています。どちらも窓側壁面にあるコントロールパネルで操作します。 液晶モニターの音声は、パネル内のイヤホンジャックで聞くことができますが、イヤホンは自前で用意する必要があります。 室内に荷物置きになる場所はほとんど無く、新幹線サイズのため天井が低いため、上段寝台では定番の通路上の荷物置き場もありません。 室内のテーブルには、ポットとトレイが1つずつ用意されています。 ポットは、サニタリースペースにある給湯器のお湯を部屋で使うため、トレイはゴミ入れに使います。 (中国人は、寝台でよく果物やひまわりの種などを食べるので、そのためにこのようなゴミトレイが用意されている) また、画像ではちょっと分かり難いですが、テーブルの下には電源パワーポートが1口だけ設置されています。 ベッドそのものは、やや固めのマットレスという感じですが、寝心地は悪くありません。掛け布団もそこそこいい掛け心地です。 枕はかなり低いので、頭が高くないと眠れないという人は、枕代わりのバスタオルなどを用意したほうがいいかもしれません。 日本では「デュエット」「カルテット」でも当たり前だった寝台を仕切るカーテンがありません。 そのため、寝相や寝顔は全て、同室者にオープンな状態で寝ることになります。 窓は小さく、下段の乗客専用といった感じ。上段からだと見下ろしても窓の外の風景はほとんど見えません。 寝台はドアで通路と仕切ることができ、内側からのみロックすることができます。ただし、外側からはロックできません。 通路には、日本のB寝台と同じ折り畳み収納の椅子があり、壁面下部には電源パワーポートが数ヶ所に用意されています。 |
編成中の、両先頭車1号車と16号車は、JR新幹線の普通車にあたる「ニ等座」座席車となっています。 客室内は2+3の横5列で座席が並び、客室全景で見るとJRの新幹線にそっくり。 シートピッチは、車体そのものがE2系1000番台に合わせた設計となっているので、980mmピッチだと思われます。 座席タイプは、「CRH380A」のリクライニングのみのタイプと、JRの「はやて」号のような座面スライド機能も持った2種類が出回っています。 座席背面には、収納テーブルとマガジンポケット。ポケットには車内誌とゴミ袋がセットされています。 シート間のセンターアームレストは、座席間に収納が可能となっています。 編成中の基本となる寝台車が全て「A寝台」に相当する「軟臥寝台」のため、料金が高い設定となっています。 そのため、乗車料金が安くて済む「二等座」は、どの列車も大変な混雑となっているため、夜行列車での利用はおすすめできません。 |
8号車には食堂車がありますが、厨房で調理した食事が出てくるわけではなく、レンジでチンのレトルト食品やカップメンなどを売る売店代わり。 基本的に一晩中営業しているようですが、夜間は列車員や警備員の溜まり場になっていて、深夜に食堂車に行くと露骨に怪訝な顔をされます(笑) レトルトの弁当やカップメンのほか、飲料(冷えていない)、軽食にお菓子やマフィンのようなパンケーキ、ハブラシやタオルなどが売っていますが、 ネットなどで情報を見ると、その日その時その列車によって食堂車に用意される商品は全く異なるようで、搭載量もさほど多くない模様。 朝食を買いに朝、食堂車に出向いてみると全て売り切れということもよくあるようなので、乗車前に朝食まで含めて買い込んでの乗車がおすすめ。 なお、食堂車営業とは別に車内を廻るワゴン販売も行われています。 サニタリースペースには、洗面台が2台と、洋式トイレと中華式とでもいう和式に似たタイプのトイレが各1室ずつあります。 洋式トイレのほうには収納式のベビーベッドがあります。トイレ内の設備や雰囲気は、日本の新幹線と非常に似通っています。 給湯器は2両に1ヶ所くらいの割合で設置されています。給湯器脇にはお湯を飲むために紙コップも用意されています。 このサニタリースペースですが、朝になると、前夜出発時に見た時とはまるっきり雰囲気が変わってしまいます。 洗面台は汚れ、ハンドソープは空っぽ。全てのトイレはペーパーが無くなっていて、給湯器のコップもありません。 朝は、洗面台もトイレも利用者で待ち行列状態なので、降りる駅の到着時刻よりもかなり余裕を持って準備に取り掛かったほうがよいです。 デッキには「人民鉄道」という新聞が用意されていて、自由に客室に持って行って読むことが出来ます。 もちろん全て中国語で、中国鉄道部発行なのでそれなりに「鉄道部にとっていいこと」ばかりしか書かれていませんが、写真入りなので面白いです。 中国の夜行列車では、1車両に最低1名の列車員が乗務していて、夜間も車内に異常が無いかなどを見回りをしています。 しっかり教育された列車区の乗務員だと、とても親切にいろいろと世話をしてくれるとか。このあたりはどんな列車員に当たるか、運次第?! |