高速道路と都市高速線の直結開通により、ますますの利便性と定時性を高める九州島内の高速バス網。 この状況をただ黙って見過ごしていてはいられないと、JR九州がこの新たな戦略を打ち出したのが1999年3月。 鹿児島本線の特急は、博多発を30分間隔で西鹿児島行き「つばめ」と熊本行き「有明」が運転されていました。 かたや高速バスは運転本数の増強を図り、ピーク時には5分間隔発車という猛烈な攻勢を仕掛けてきました。 そこでJR九州は、好評の787系「つばめ」編成を増備し、特急の運転本数を増やすという作戦に打って出ます。 「つばめ」用の9両編成は7両編成にバラされ、増備した新しい先頭車を交えて大幅な編成組み換えが行われました。 これにより鹿児島本線の特急は、1時間当たりの運転本数が「つばめ:1本」「有明:2本」になり、 日本初の「同一方向特急の20分間隔発車:毎時3本運転」が完成しました。 ここでは、その時に増備された「有明」用の787系−「ありあけ編成」をご紹介します。 (九州新幹線開業後は「AROUND THE KYUSHU」のロゴを纏い、「にちりん」「きりしま」「かいおう」など九州各地で活躍中です) |
特急の20分間隔運転ともなれば、1列車あたりの乗客数は分散されることとなり、 毎時3本運転の「つばめ」「有明」の全てを9両編成・7両編成という長大編成に組み上げては、 座席供給量は過剰となり、空気輸送となってしまう車輌も出てきてしまいます。 その点が考慮されて、「有明」用の787系は4両編成で組成されることとなりました。 グリーン車は、「つばめ」用の1両まるごと「クモロ」から、普通車と合造の「クロハ」へ。 787系が787系たる設備の「トップキャビン」「サロンコンパートメント」は「有明」用車輌では省略されました。 オープンキャビン内は4列(1人掛けは3列)のミニマムな空間となり、総座席数は15席。 キャビン内は木目調の壁にライトブラウンのシートモケットで、よりナチュラルに落ち着いた雰囲気となりましたが、 「つばめ」用で感じられた“重厚感”は薄くなり、どこか軽快さが増したような感じです。 シートピッチは「つばめ」車と同じく1,200mm。座席の中折れリクライニング機構も健在です。 「有明」号ではレディさんが乗務しないため、オーディオサービスもなく、AVパネルは非装備となりました。 その分を補う、というわけではないでしょうが、各席窓側下部にサービスコンセントが設置されました。 携帯電話の充電やパソコンの利用など、乗客は自由に使えます。旅行中ならデジカメの充電にも便利! この合造車の一番の見どころは、クランク状に回り込むグリーン席・普通席間のアプローチ部分。 「ソニック883」で確立させた全面ガラス仕切りをふんだんに活かし、ハイトウィンドゥと木製カウンタも設置。 グリーンと普通席を合造化した車輌では、仕切り部分に無粋な壁をドスンと置いただけ車輌がほとんどですが、 この見事なまでの美しい「生きた空間」を見ると、JR九州の「列車は大切な商品」という企業姿勢をヒシヒシと感じます。 |
普通車は4両編成の1号車指定席となる空間が「有明」専用の装いを纏っています。 787系の普通車というと、モケットとカーペットの色彩組み合わせが“百花繚乱”状態でしたが、 この「有明」編成では、今までには無かったオリーブグリーンやモスグリーンのモケットカラーを採用。 デッキ寄りの仕切り壁は全面ガラスを採用して、半室構造による視覚的な狭さを軽減させています。 客室全体から感じるのは、787系「つばめ」をベースに「ゆふいんの森」と「ソニック」を混ぜたような雰囲気。 まさに、九州の人気3特急折衷インテリアが楽しめます。 シートピッチは従来の787系と同様の1,000mm。アームレスト先端の収納丸テーブルも装備しています。 そしてグリーン席同様に各席窓側下部にサービスコンセントを設置。 「有明」号乗車時には、4両編成の1号車指定席が「乗りドク」です。 なお、中間車は従来の「つばめ」編成から抜かれた車輌なので、初期の787系らしい派手めの装い。 (6両編成の「有明」号は、全車輌が「つばめ」仕様(「リレーつばめ」仕様)となっています) |
「有明」用に増備された車輌のサニタリは、「つばめ」とは一味違う雰囲気。 アルミパネルのメタメタ感は身を潜め、白一色による潔い色調になりました。 上品なシンクや着替え用の収納踏み台は、そのままに装備されています。 1号車デッキは、ドアが開いた瞬間から驚きです。列車のデッキとは思えないほどの広さとカラーアルミパネルの輝き。 「ゆとりある」設計とはこのことでしょう。JR九州の車輌開発理念には「詰め込み主義」という言葉はありません。 デッキは乗降台を中心に客室側にはスタンドバーカウンター、連結面側にはサニタリコーナーと喫煙室。 喫煙室は、客室内が全面禁煙になったことにより設置されたものですが、 ガラスのパーテーションで仕切られた小部屋内にはハイトウィンドゥが配され、とても開放的。 うらぶれた「隔離部屋」という雰囲気は全く無く、こんなところまでもが立派な1つの「見どころ」になっています。 |