JR東日本 651系 「伊豆クレイル」

 

「景色を眺めながら、食とお酒と会話を楽しむリゾート列車」のコンセプトで、伊豆に登場した「伊豆クレイル」。
「クレイル」のネーミングは、イタリア語の「Cresciuto(クレッシュード):大人・成長した」をベースに、「train」に接尾辞の「ile」を組み合わせた造語です。

女性をメインターゲットに据えたデザインで統一されているのが特徴。
エクステリアはメタリックピンクで、かわいらしくも上質なシャンパンを連想させるカラーリングです。
細かく絡み合うリボンのような柄は、桜の花・海岸線のさざなみ・吹き寄せる海風をモチーフにして「伊豆」を連想させるデザイン。

そして、この列車のメインは車内で提供される、伊豆の食材をふんだんに使ったオリジナル料理のボックスランチ。
料理をプロディースするのは、女性からの人気も高く、数々のメディアに出演して有名な「秋元さくら」シェフが担当しています。



(ここでご紹介する写真・食事内容は、2016年10月に提供されたサービス内容となります。)














下田寄りの先頭車となる1号車は、海側を向いた2人掛けのカウンター席と、山側は向かい合わせの2人掛け席で構成されています。
肘掛やテーブルは木製パーツとなっていて、ナチュラルな印象を受けます。

海側の天井は座席上の荷物棚を撤去していて、おしゃれな間接照明の灯具を取り付けています。
元々の651系は、さほど天井が高い構造ではありませんが、カウンター席の椅子が小型なのもあって、空間全体が広々としています。

一方、山側の対面席は背もたれ部分が高く、通路の幅が広いこともあって、セミコンパートメントのようなプライベート感があります。
山側席は、床面が通路より若干嵩上げされていて、わずかばかりですが「セミハイデッキ」となっています。
これは「山側席からでも海側の眺望を楽しめるように」という配慮からの設計ですが、651系自体が窓の大きな車両ではないので、
山側席からだと、海岸線の近いところを走行中だと海が見えるものの、「海と空の境目まで見える」というほどの雄大な眺望はほぼ不可能です。


下り列車の始発駅の小田原駅と、上り列車の始発駅の伊豆急下田駅からそれぞれ乗車する場合、運転席側のドアのみから乗車が可能で、
乗車時にはドア脇にアテンダントが立ち、切符のチェックが行われます。
2号車寄りのドアは開くものの、ロープで封鎖されているため、こちら側から乗車することはできません。

1号車は「びゅう旅行商品専用車両」のため、乗車するためには「びゅう」のホームページか、駅のびゅうプラザで旅行商品として購入する必要があります。
そのため、駅の窓口で一般販売はされていません。




















2号車は「定員0」の「ラウンジカー」です。
下田寄りにカフェバーカウンター、小田原寄りには木製ベンチを配したフリースペースとなっています。

カウンターでは軽食やお土産品の販売が行われています。
軽食は「箱根ベーカリー」のパンを使った「ブールサンド」と、ニューサマーオレンジを使った「オレンジチーズタルト」が一押し。
飲み物はアルコールやソフトドリンクがいろいろ揃っていて、「小田原冷凍みかんサワー」が人気商品です。
お土産品は、JR東日本がプロディースする地産品を活かした「のもの」商品がほとんどで、「伊豆クレイル」をロゴなどを使ったグッズはありません。
「伊豆クレイルオリジナルグッズ」として、車体の花柄と3号車の暖簾の柄を染めた「かまわぬ」のてぬぐいと、「鎌倉四葩(よひら)」のあぶらとり紙が販売されています。


フリースペースには木製のベンチが4台置かれています。このベンチは固定されていないので、乗客が自由に動かして使うことができます。
ここでは車内イベントとして、地元の歌手によるミニライブが行われています。
3号車寄りには大型ディスプレイと、小田原から熱海・伊豆エリアに伝わる工芸品が展示されているショーケースが設置されています。
ディスプレイでは、伊豆の観光情報が流れるほか、伊豆クレイルのイメージ映像が流されています。
ショーケースの工芸品は展示のみで、車内で販売はされていません。

窓の上には、真鍮製の照明器具が取り付けられていて、そのデザインは船上をイメージさせるようなおしゃれなものとなっています。






















3号車は、全ての席を海側に寄せた「コンパートメントシート」となっています。
4人掛け席が5区画と、車椅子利用にも対応した2人掛け席が1区画で構成されています。
コンパートのソファーは鮮烈なオレンジ色で、非常に華やかで明るい雰囲気を醸し出しています。
このオレンジ色は「西伊豆に沈む夕陽」をイメージしたものだそうです。

コンパートメント内部は、五能線のリゾート列車「リゾートしらかみ」のそれを連想させますが、こちらはいたって普通の半個室席。
しらかみのように座面を引き出してフラット席にするようなギミックは搭載していません。

1区画あたりの空間はかなり広々としていて、1区画は最大4人掛けの定員ですが、大人でもつめれば6人は納まりそうなくらいに広いです。
窓の上部には荷物棚が残されているので荷物の置き場には困りませんが、この荷物棚が座席上部のパーテーションに干渉するため、
座席上部の仕切りは中途半端な高さとなっていて、結果、隣りのボックスとの仕切りが浅く、隣りのボックスの話し声は筒抜けです。
また、ソファーの大きさに対してテーブルの大きさはどうにも中途半端。
乗車時にすでにテーブルに用意されているボックスミールのほかに、飲み物や買って来た軽食を置くとテーブルがいっぱいになってしまいます。

各ボックスと通路は、ドアではなくのれんで仕切られています。
のれんは各ボックスで柄が異なっていて、この模様は「伊豆クレイルオリジナルてぬぐい」の柄にも使われています。


下り列車の始発駅の小田原駅と、上り列車の始発駅の伊豆急下田駅からそれぞれ乗車する場合、4号車寄りのドアのみから乗車が可能で、
乗車時にはドア脇にアテンダントが立ち、切符のチェックが行われます。
2号車寄りのドアは開くものの、ロープで封鎖されているため、こちら側から乗車することはできません。

3号車は「びゅう旅行商品専用車両」のため、乗車するためには「びゅう」のホームページか、駅のびゅうプラザで旅行商品として購入する必要があります。
そのため、駅の窓口で一般販売はされていません。


















4号車は、「スーパーひたち」の頃から使われている回転式リクライニングシートがそのまま搭載されています。
モケットの張り替えは行われていて、海側の席が青、山側の席が緑のモケットとなっています。

3号車寄りの海側の1番席と、運転席寄りの海側12番と山側13番席は、座席が向かい合わせに固定されたボックスシートとなっています。
座席間には木製の大型テーブルが設置されていて、乗降時の利便性を考慮して、折り畳み式となっています。
座席は固定されていて回転できませんが、リクライニングは他の席と同じように倒すことができます。

そのほかの席は、背面収納テーブルとフリーストップリクライニング機構を備え、基本的に特急「スーパーひたち」の頃と変わりありません。
背もたれの肩の部分に、通路移動時の握り取っ手としてグリップが追加されています。

3号車寄りには、4席の座席を撤去して、大型の荷物置き場が設置されています。

4号車の座席は、みどりの窓口や「えきねっと」などで一般販売されています。
全席が快速グリーン指定席となっているので、乗車券と普通グリーン指定券で乗車できますが、青春18きっぷでは乗車することができません。























「びゅう旅行商品」で1号車・3号車に乗車すると、下り列車では「ランチボックス」、上り列車では「アフタヌーンカフェセット」が提供されます。
これらの料理の監修をしているのは、東京の目黒にある「モルソー」のオーナーシェフ、秋元さくらさん。
女性に絶大な人気を誇るフランス家庭料理レストランです。

画像は、2016年10月乗車時に下り列車で提供された「クレイルスタイル・オータムランチセット」です。
箱根寄木細工をイメージしたボックスは、小田原駅入線時にはすでに各席にセットされた状態となっています。
小田原駅を発車すると、アテンダントが各席を回り、飲み物のオーダーを取って、たいていはその飲み物が届いてから、蓋を開けて食事となります。

(右上)南伊豆温泉メロンと生ハムのオードブル ピクルス添え
(右下)駿河湾産釜揚げシラスの入ったブランダッドと箱根山麓豚と伊豆産椎茸のピンチョス テリヤキマスタードソース
(中上)小山町産金太郎マスと秋茄子のキッシュ
(中下)南伊豆獲れ伊勢海老と長芋の冷製フラン
(左上)伊豆野菜を詰めた若鶏のバロティーヌとピペラードを詰めたコンキリオーニ
(左下)ローストビーフ たっぷりキノコのドゥミグラスソース

ランチボックスのあとは、デザートも提供されます。
(上)ピーカンナッツの入ったしっとりガト−ショコラ   (下)伊豆みかんのプリン

飲み物は最初からテーブルに、観音温泉ミネラルウォーターが1本セットされています。
発車後のオーダードリンクとして、ベアードビールかニューサマーサイダーのどちらか1本が無料で提供されます。
デザートの時は、何も言わなければコーヒーが付いてきますが、頼めば紅茶も出してくれます。
飲み物は飲み放題ではないので、これら以外の飲み物は2号車のカフェバーカウンターで購入する必要があります。



















デッキは、壁もドア内側も木目調のシートが貼られ、「ひたち」「草津」時代と比べるとナチュラルで落ち着いた雰囲気になりました。
3号車のトイレ側の乗降ドアは、車椅子での乗り降りがしやすいように、幅の広いドアに改造されています。

各車両とも両端2ヶ所ずつに乗降ドアがありますが、1号車と3号車は、下り始発駅の小田原と上り始発駅の伊豆急下田では、片側からのドアのみが使用可能。
もう片側のドアにはロープが掛けられ、乗降できないようになっています。
これは、1号車と3号車は「びゅう旅行商品専用車両」となっているためで、ドア脇で「びゅう旅行商品」のバウチャー券のチェックを行うためです。


洗面台とトイレは、1号車と3号車の小田原方にそれぞれ設置されています。
1号車は洗面台と男女兼用の洋式トイレと男性用トイレが、3号車は洗面台と車椅子対応の大型トイレと男性用トイレで構成されています。
洗面室とトイレ個室内は、花柄のシートが壁に貼られ、この列車のメインターゲットである女性客を意識した装飾が施されています。
男女兼用トイレと男性用トイレは、「ひたち」「草津」時代からの仕様をそのまま引き継いでいます。
洗面台は、シンクが丸ごと交換され、丸いボウル型のシンクに、シンプルな曲線を描く蛇口となっていて、ここも女性客の視点でデザインされています。

車椅子用の大型トイレは、大掛かりな改造によって、今回新規に設置されました。
最近の新型車両の車椅子対応トイレに近い設計で、通路側に大きく張り出したカーブデザインでトイレ内部の面積を大きく取り、車椅子での取り回しを容易にしています。
洋式トイレと車椅子用トイレの便座はいずれも、ウォシュレットは付いていません。

3号車客室の小田原方には、車椅子で入ることができる多目的室が設置されています。
「ひたち」「草津」時代の多目的室よりも室内が広く、大きく取られています。この部分の通路デッキは山側に寄せられています。
多目的室内には小さなソファーと小物置き用の台があります。ソファーはベッドに可変するギミックは備えていないようです。
















下り列車の始発駅である小田原駅には、改札内コンコースに「伊豆クレイル」乗客専用のラウンジが設置されています。
このような特定列車の乗客専用の待合ラウンジが設けられるのは異例のことです。
ラウンジの入り口にはアテンダントが立ち、入室の際にはびゅうのバウチャーか「伊豆クレイル」の指定券をチェックされます。

室内は小田原産の木材を使用した和風の作りとなっていて、温泉旅館の一部を思わせるような雰囲気。
南側に大きな窓があり、晴れていれば採光が良く、窓からは小田原城が一望できます。

ソファー席が12席と、木製のベンチが4脚12人分が用意されています。
1号車と3号車の「びゅう旅行商品」を購入した乗客向けだとしても椅子の数が足りません。
ここにグリーン指定席の4号車の乗客も入ってくるので、発車直前にのラウンジは、居場所がないほどの混雑となってしまっていました。

室内には小田原や箱根の工芸品や美術品が展示されているほか、マガジンラックには旅行雑誌や小田原・箱根・伊豆にちなんだ書籍が用意されていて、
ラウンジ利用客は室内で雑誌類を自由に閲覧することができます。

航空会社の空港ラウンジとは違い、ドリンクなどのサービスは一切ありませんが、ペットボトルなどを持ち込んで室内で飲むことはできます。
(これだけのスペースで、これから車内で食事が出るので、さすがにラウンジ内で食べ物を食べている人はいませんでした)

乗車した2016年10月には、ラウンジ内で「伊豆クレイル」グッズ(うちわ、チケットホルダー、メモパッド)が配布されていました。
車内では「伊豆クレイル」のロゴや列車をデザインしたグッズの販売が無いので、そういったグッズはここで入手できるだけです。

ラウンジの利用は、10時30分から伊豆クレイル発車の10分前までです。














JR東日本 651系 「伊豆クレイル」 シートマップ 座席表












































(Pictogram powerd by TFV

















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