JR西日本 583系電車 急行「きたぐに」

 

1947年に運転を開始した大阪〜青森間の急行列車をルーツの発端とする急行「きたぐに」。
すでに60年以上の歴史を持つ列車で、現在の583系電車による運行は1985年からスタートしました。

寝台設備にはA寝台とB寝台の2クラスを、座席設備にもグリーン席と自由席の2クラスを設けた多彩な設備が特徴的。
長距離利用から短距離利用の乗客のニーズを満たすバリエーション豊かな客室設備を備えた列車となっています。

現在では583系電車唯一の定期運行列車、さらには絶滅寸前の「夜行急行」でもあり、注目度の高い列車です。







A寝台

編成中に1両だけ、7号車に連結されている「A寝台」車。
元々583系で「A寝台車」は製造されませんでしたが、「きたぐに」号を14系客車から583系電車に車種変更する際に、
14系編成に連結されていたA寝台車のニーズが高かったため、B寝台「サハネ581」をA寝台化改造して連結されたという経緯があります。

通路を中央に配し、その両脇を寝台とする仕様はB寝台と同じですが、3段式のB寝台に対してA寝台では2段式に改造されました。
寝台サイズは下段が、幅が約1,000mm・長さが1,900mm・高さ約1,200mm。上段は幅が約900m・長さが1,900mm・高さが約1,000mm。

下段寝台は側窓全体を寝台内に抱え込むようになるので、車窓を独り占めすることができます。
寝台内の高さは1,200mmあるので、普通に座った姿勢でも頭が上段寝台の天板につっかえることはありません。
窓下にはテーブル、座席展開時に窓側席の肘掛となる窪みは小物置き場として使えます。
通路が寝台への出入りが容易な反面、床下からの走行音や通路を行き交う人の足音が気になる嫌いはあります。
特に「きたぐに」号では深夜帯の停車駅での乗降が頻繁にあるので、乗客が動く物音や気配に熟睡できないという人もいるかもしれません。

上段寝台は、B寝台の上段と比べるとかなり高い天井高さ(1,000mm)が、寝台内の空間に余裕を感じさせます。
ただし、寝台のほぼ半分が湾曲したカーブ天井となっているので、この独特さに圧迫感を感じるかもしれません。
窓はシャッター式で開閉可能な小窓があるだけなので、純粋に車窓を楽しむという点では下段にかなり劣ります。
その反面、下段で感じるほどの走行音や乗客の足音などに悩まされることは、下段に比べてかなり軽減されるので、
単純に「寝て移動するだけ」という利用に割り切るなら、けっこう積極的に選ぶ要素は大きいです。

A寝台の乗客に与えられるアメニティとしては、ハンガー・浴衣・使い捨てスリッパが各寝台にセットされています。
ハンガーが服を掛けた状態では、下段では服が完全に吊るされた状態になりますが、上段では服の下方が寝台面にやや引っ掛かります。
浴衣は昔から寝台列車でサービスされていた古めかしいスタイルのもの。
使い捨てスリッパは、履いてみるとかなりフワフワの履き心地。航空会社の上級クラスでサービスされるものに匹敵する上質感。
素材としては、「トワイライトエクスプレス」のスイートやロイヤルでサービスされているものと同じものです。
このほか、寝台内の設備としては、上段・下段とも読書灯が設置されています。
カバーの付いた蛍光灯で、ボタンの調節によって「消灯」「豆電球」「蛍光灯」の3段階が選べます。


A寝台車両はデッキ側に乗客の共用空間があります。
大阪方の乗降デッキ側には、対面のボックス座席と着替え室、大型のバゲージスペースが。
ボックス席はA寝台専用のちょっとしたサロンスペース。ここは喫煙スペースとなっていて、座席袖部分に灰皿が設置されています。
着替え室は中がカーペット敷きで、ちゃんとしたフィッティングルーム仕様。
大型の姿見鏡があるので、下車後にビシッとビジネススーツに着替えて出かけるとか、女性に着替えにも充分通用するでしょう。


なお、A寝台は米原〜長岡間で通路の照明が落とされる減光が行われます。








B寝台

5号車と8・9・10号車の4両はB寝台車。「583系らしい雰囲気」が最も味わえる空間となっています。
客室仕様は登場時から普遍の、中央通路に両脇を寝台で固めたスタイル。ことB寝台では両脇が「カーテンの壁」のような様相。

一部分を除き、基本形は下段・中段・上段の3段式寝台。各寝台のサイズは、
上段は、幅が約700mm・長さが約1,900mm・高さが約680mm。
中段は、幅が約700mm・長さが約1,900mm・高さが約680mm。
下段は、幅が約1,000mm・長さが約1,900mm・高さが約750mm。

下段は側面窓を寝台内で完全に抱え込むので大きな窓からの車窓が楽しめますが、上中段はシャッター開閉式の小窓のみ。
また、下段では首が窮屈ながらもなんとか座る体勢が取れますが、上中段では完全に寝る姿勢しか取ることができません。
各寝台位置による利点・弱点は、上の「A寝台」の項で述べたとおり。
下段は寝台から通路への出入りが容易な反面、物音や走行音が気になり、上中段では物音が軽減される反面、狭さがキツい。

そんな中、B寝台にはちょっとした「お買い得」な寝台区画があり、通称「パン下」と呼ばれる、パンタグラフ下の寝台区画。
ここは車体上部にパンタグラフが設置されているため天井が低く、3段寝台が設定できないため、下段と中段の2段式になっています。
下段はほかの区画と同じサイズとなっているのですが、中段がほかと比べて圧倒的な広さとなっているのが特徴。
そんな「パン下・中段」のサイズは、天井高さが1,000mmを超える寸法になっており、583系のB寝台では最大サイズ。
パンタグラフのある8号車のみに設定されていて、1・2・11・12・13・14番寝台中段のわずか6区画のみのプレミアムゾーン。
繁忙期はもちろん、通常の時期でも他がガラガラでもここだけは満席ということも。
ただし、中段寝台なので側面窓は小型のシャッター開閉窓のみなので、そこだけ気にしなければかなりお買い得な寝台です。


寝台設備のアメニティとして、浴衣とハンガーが各寝台上に、ビニルスリッパは寝台下にセットされています。
テーブルは、下段では窓下の大きなものと肘掛の窪みを小物置きとして使えます。
中段には小さな小物置きがありますが、上段にはテーブルや小物置きの類のものが一切ありません。
読書灯は全寝台に完備。「消灯」「豆電球「蛍光灯」の3段設定が可能なものとなっています。

一部の車両には着替え室や大型荷物置き場、スキー板収納スペースなどがあります。(編成によってはこれらが無い場合もある)

5号車と8号車は「喫煙車」となっていますが、デッキのみでの喫煙が可能となっていて、寝台客室内は全て禁煙です。

B寝台でも米原〜長岡間で減光が行われます。


 上段寝台。湾曲した天井が迫り来るような独特な雰囲気。まるで屋根裏部屋のよう。寝台料金は5,250円。
 中段寝台。天井はフラットだが、全体的に金属剥き出しの無骨な雰囲気。寝台料金は上段と同じく5,250円。
 中段寝台の読書灯。配線が完全に剥き出しで這わせてあるのがすごい。
 中段寝台の小物置きテーブル。携帯電話や切符などが置ける程度。ペットボトルならギリギリ置いておける。
 下段寝台。居住性では583系のB寝台でもっとも優れている。そのぶん、寝台料金もやや高めで6,300円。
 パンタグラフ下のB寝台中段。1編成中わずか6区画のみ。設定上は「中段」なので、寝台料金は5,250円。
 B寝台の乗客にサービスされるアメニティ。浴衣とハンガー。
 上段と中段には小窓が設置されている。横スライドのシャッターで窓からの明かりを遮る。
 上段と中段のカーテンには通風窓がある。マジックテープによる着脱式。
 通風窓を開けたところ。乗客の様子を見ていると、これを実際に使っている人はほとんど見かけない。







グリーン席 サロンコーナー

6号車には「グリーン車」が組み込まれています。
座席は2人掛けのものが2+2で配置され、シートピッチは国鉄型特急車の標準ピッチ、1,160mmとなっています。

画像は「サロ581-103」のもので、これは「サロ581」基本形から改造された車両です。
平成元年に「シュプール号」などの特殊用途向けに改造が施されたもので、客室の前後がサロンスペースになりました。
そのため座席数が、2+2の4アブレストが6列の、全24席という極端に定員の少ない車両となっています。
座席は、平成元年改造時でもR27型リクライニングシートが設置されていましたが、
381系グリーン車の改座によって余剰となったフリーストップリクライニングシートが583系へと転用されて設置されました。

また、この「シュプール」向けに改造されたグリーン車は、トイレと洗面台が撤去され、車内販売準備室とリネン室に改造されました。

このように、もともと「きたぐに」専用編成であったグリーン車とは大きく姿を変えているのが特徴。
現在の「きたぐに」ではこの「シュプール編成」も混用されているので、このタイプのグリーン車に当たるかどうかは乗車当日次第。
ちなみに、元々「きたぐに」用編成のグリーン車のトイレには、改造によって洋式トイレが設置されています。

「きたぐに」には普通車指定席が連結されていないため、確実に予約しておける座席車はこのグリーン車のみ。
そのため、「指定席」代わりにこのグリーン席を購入する乗客も多いそうです。

グリーン車でも米原〜長岡間で減光が行われます。







普通車
【自由席車】

大阪方の1〜4号車は普通車自由席。
583系の昼行仕様のボックスシートを展開して、夜行列車の座席車両として使用しています。

元々が「特急車両」として開発された583系。そのためボックスシートといってもそれなりの居住性が保たれています。
座席面のクッションは若干ビョンビョンとハネる嫌いもありますが、そこそこの柔らかさと座り心地。
座席間ピッチも1,900mmとなっていて、けっこう広いなと感じます。
(もっとも1人で座ったときの感想で、大人4人で座って一晩を向き合って過ごすのはかなりキツいかと。)

窓下にテーブルがあるほかに、通路側席にもサイド部分からの引き出し式テーブルが設置されています。
ほんとに小さなテーブルでちょっとした「小物置き」程度の大きさ。ペットボトルくらいなら置いておくことができます。

自由席では夜間の減光は行われず、一晩中煌々と天井の蛍光灯が点灯した状態で走り続けます。








サニタリー デッキ 運転室
     

サニタリースペースは全ての車両に完備されていて、いずれも和式個室・洗面台から構成されています。
洗面台は、登場当時の3台から2台へと改造され、1台あたりの幅が広くなって使い勝手が増しています。
それぞれが大きな壁で完全に仕切られていて、通路との仕切りにカーテンもあります。
給湯温度の調節ダイヤルも付いていて、温めのお湯ならわりと給湯され、ダイヤル最大にするとそこそこ熱めにもなります。
カガミ下のコンセントは電気シェーバー用。一部の洗面台にはシンク下部にドライヤー用の大容量コンセントも備えています。

トイレは和式仕様となっていて、リニューアルの手が加えられていますが、やはり昔ながらの設備といった感は拭えません。

デッキは、車内の空間を客室に多く割いたためか、かなり狭め。
折り戸の乗降ドアも昔ながらの姿のままで懐かしく、手前に折れるためにデッキステップの一部が切り抜かれています。
喫煙車の設定がありますが、基本的に客室内では禁煙。デッキのみでの喫煙が可能となっていて灰皿が設置されています。

「シュプール号」向けに改造された編成は、一部デッキに飲料の自動販売機が置いてありますが、現在は全機が営業停止。
「きたぐに」号では車内販売などもありませんので、乗車前に飲料・食料は調達しておく必要があります。








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