JR東日本 583系 国鉄型寝台昼行兼用特急電車

(2003年頃の秋田所属の9両編成および、2002年頃と2007年頃の仙台所属の6両編成)




寝台と座席の両設備を兼ね備えた「581系」が登場したのは、日本中が高度経済成長に沸く真っ只中の1967年。
寝台特急電車「月光」号に投入されたことから、「月光型電車」と呼ばれ人気を博しました。
その翌年1968年には、581系に東北特急用として耐寒耐雪構造を施した583系が登場しました。

しかし、長距離輸送の主役は在来線特急から新幹線へ、そして航空機へと移行。
数々の夜行列車が姿を消し、長距離特急も次々と廃止に追い込まれ、特殊用途の583系は一気に活躍の場所を失います。

そして2003年。風雪と闘いぬいた30余年の時をそのひび割れに刻み込み、故郷「青森」をあとに散る北の583系。
わずかに残った老兵は「秋田」と「仙台」に分かれ、団体臨時用として静かな時を送っています。





グリーン車











晩年、JR東日本に残ったグリーン車「サロ581」は、南秋田車輌所の編成に組み込まれていた「サロ581-33」だけでした。
(2006年に全検入場した際、「サロ581-33」は廃車となり、現存しません。)
このグリーン車は1993年に大幅なリニューアル工事を受けていて、内装はかなり手が加えられました。

深深とした天井が特徴的だった583系のグリーン車ですが、リニューアルでは天井をなんと吊り天井化。
原型時代特有の上方向に感じる異様な寒々しさが無くなり、内装の改装ともあいまって、落ち着いた雰囲気になりました。

座席はフリーストップリクライニング機構を備えたバケットタイプのシートに交換。
当時はまだ「はくつる」などで定期夜行運用もこなしていたので、2+1の3列配置の大型シートを導入してもよさそうですが
特急「はつかり」や急行「津軽」などにも弾力的に投入されていたので、そのあたりの兼ね合いもあったのでしょう。

座席自体は「固い」部類に入ります。これはメンテナンスが悪いとか詰め物が硬化しているというわけではなく、
資料を探ってみると、どうも当初から固めに仕上げられたクッションを使っていたようです。
ちなみにソデ体は全面モケットが張られてしっかりしたつくりですが、インアームテーブルは装備していません。
シートピッチは原型から変わらず1,160mm。リニューアル車にありがちな、座席と窓割りの不一致は発生していません。

車内は化粧板を全面交換。窓ガラスにもFRP製のパネルが取り付けられて、窓周りは原型の雰囲気が一変しました。
ところで、窓際の低い位置に取り付けられた小さなテーブルは「小物置き」。
前の座席がリクライニングした際に、そのリクライニング角度に干渉しない位置があの位置らしく、
この「テーブル」ひとつとっても、583系にはいろいろと設計図の中での格闘があったのでしょうね。
(情報提供:「錆び鉄の部屋」 ちゅう様より ありがとうございます。)


荷物棚は651系「スーパーひたち」のものとよく似たFRP製のものに交換されています。
また、荷物棚の下面には減灯時にも手元を照らせるようにと「読書灯」が装備されています。








B寝台(ゴロンと仕様)
B寝台(ゴロンとシート仕様)





















画像は秋田所属車の「ゴロンとシート」仕様です。仙台車も基本的には秋田車と同じ雰囲気です。
(寝台仕様はこれに敷布団とシーツが敷かれ、掛け布団と浴衣と枕がセットされます。)

車内は1993年のリニューアルで、カーテンやモケットの交換が行われています。
寝台仕切りカーテンは、ピンク・グリーン・オレンジ・ブルー系の、カラフルな4色に取り替えられました。
とはいえ、実用性重視で飾り気のない無骨な雰囲気は健在で、「国鉄」が輝いていた頃の片鱗がそこかしこに。
ちなみにベネシャンブラインドとその操作用の回転レバーは全て撤去済みです。
寝台内には読書灯・小物置き用の細長いミニテーブル・バッグなどを掛けられる小さなフックが装備されています。

寝台機構自体には手が加えられていないので、寝台サイズは登場当時のままを固持しています。
上段は、長さ190cm・幅70cm・高さ68cm
中段は、長さ190cm・幅70cm・高さ68cm (パンタグラフ下の中段は、長さ190cm・幅70cm・高さ103cm)
下段は、長さ190cm・幅102cm・高さ75.5cm


上段と中段は寝台内で体を起こすのはほぼ不可能。
特に上段の「高さ68cm」は最大ヘッドクリアランス数値。実際には天井がカーブ面で構成されるため、かなり窮屈です。
中段も、天井は平面になっていますが、それでも圧迫感は相当なもの。
上中段は「寝るだけ」と割り切って乗車されることをお勧めします。
下段では膝を抱えた状態でなんとか座ることができます。また、ワイドな窓は下段だけのもの。
上中段ではシャッターカバーの付いた小さな覗き窓が各寝台に装備されています。

さて、「鉄」の間では言わずと知れた「パンタ下の中段寝台」は、583系寝台の中で最強の居住性を誇ります。
寝台高さは下段をはるかに凌ぐ1メートル強。窓が小窓であるものの、通路から寝台への出入りも下段以上にラクです。
ちなみにJR東日本に残った583系が「ゴロンと/寝台」仕様で走る場合、
秋田車・仙台車とも、2号車と4号車の1番・2番・11番・12番・13番・14番の中段が「パンタ下の中段寝台」になります。

寝台と通路を仕切るカーテンは厚手のもので両開きのかたちでセットされます。
カーテンの繋ぎ目となる部分は軽くクロスした状態で固定できるので、通路から中の様子が覗かれる事はまずありません。
このカーテンはマジックテープ式の「通風口」があり、閉めきった状態で通路側に穴をあける事ができます。








普通車


















画像は仙台所属車の座席仕様です。
ちなみに往年の雰囲気が復活した「青モケット」は仙台車で、秋田所属車は従来からのカラーモケットとなっています。

583系の「昼夜兼用スタイル」については、いまさらここで説明するまでもないので端折ります。
昼用列車用にボックス席でセットされた車内は、天井の高さがとても目立ちます。
座席から天井に掛けて、客室全体から感じる「ゴツゴツ」した印象は、この583系ならではの機能美でしょう。。

ボックス席は30年前の設計とはいえ、特急用に開発された車輌なだけあって、ゆとりある設計になっています。
ボックス間のピッチは1,900mm。窓側にはアームレスト代わりとなる窪みまで付けられています。
背もたれには傾斜がけっこう深くつけられていて、体をもたれると不思議と落ち着いた姿勢が取れます。
通路側の席にはアームレスト部分に収納されたテーブルがあります。
このテーブル、出し入れがやや難解な上、引き出すのにちょっとチカラが要ります。

客室内に「業務室」と書かれ、「乗務員室」のピクトグラムを掲げた小部屋があります。
昔は非常口を備えたスペースだったそうですが、現在では非常口は全て埋められています。

さすがにボックス席で特急料金を取るのは会社側にも躊躇われるようで、
現在では、過去数回運転された「リバイバル国鉄特急」を除き、たいていは特別料金不要の「快速」で走っています。








洗面台 デッキ コックピット




















仙台車・秋田車ともに、洗面台は大きな鏡とパーテーションを備えてリニューアルされています。
原型の頃は、3台の陶製シンクを備えていましたが、現在は2面シンクになり、占有空間が広くなりました。
蛇口はセンサー式の自動給水式に。さらに湯温が自由に調整できるタイプになっています。
洗面台脇に残る「冷水サーバー機」は、仙台車では使用中止になっていますが、秋田車では現役で稼動中。
トイレは全て和式ですが、こちらも内壁の張替えとFRP製便器に交換されていて、明るい雰囲気に変わりました。
(ちなみに廃車されてしまった「サロ581-33」では2箇所あるうちの1箇所が洋式トイレになっていました)

独特な幅の狭い折り戸は、登場時そのままに健在。冬季の凍り付き対策でヒーターが組み込まれています。
相当熱くなるのか、ドアには「注意してください」とのステッカーが貼られています。
各デッキには、壁面にゴミ箱がビルトインされています。

運転席直後のデッキからは、窓越しにコックピットを見ることができます。運転席はかなり高い位置にあるのが分かります。






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