遠くて不便と、外国人からも不評だった成田空港。その空港アクセスに大変革をもたらしたのが「成田エクスプレス」。 列車愛称「N'EX−ネックス」が一般利用者にまで浸透するほどに、空港への移動を手軽で身近なものに変えました。 で、N'EX登場告知のTVCFのように、「ヨクナッタ!」と外国人の方が言うようになったかは・・・・さて?! 「空港アクセス」に特化した車輌のため、特異なインテリアをふんだんに取り入れているのが特徴です。 その後、輸送力の改善でリニューアルが施され、車内インテリアは様々な「顔」を見せるようになりました。 ■■ 253系は新形車両E259系への置換えが完了。「成田エクスプレス」運用からは全車両撤退済みです。 ■■ |
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「成田エクスプレス」デビュー当時、グリーン車には2タイプの車輌がありました。 ひとつが1+1で座席配置を配置した「クロ253型0番代」。 このシート配置は、「151系特急「こだま」パーラーカーの再来」と話題になりました。 実際の車輌開発上では「パーラーカー」を意識したコンセプトではなかったようですが、 この車輌の客室構成は、運転室−個室−デッキ−開放室・・という流れになっており、パーラーカーのそれとそっくり。 座席はデフォルトで30度角度に窓を向いた状態でセットされています。(もちろん正面向きでの固定も可能でした。) さらに、通常なら窓を大きくして眺望を良くするところを、253系では窓を小さくして、外界と隔離した空間を目指しています。 そのため、全体的に車内が薄暗くて異常なまでに「異質」な感じのする空間になっています。 一度だけ“大枚はたいて”このグリーン席に乗ったことがありますが、バカ高いグリーン料金に見合うかは微妙でした。 座席自体は良い感じでしたが、ミニバーサービスが無くなってしまっていたのが「痛い」ところでした。 座席から窓までの距離感があって窓が小さいこの車輌では、窓向きの座席配置は何を目指したものかよく分かりません。 全1人掛け席でのプライベート感はさすがで、空港までのひとときに自分だけの時間を過ごすには打ってつけの座席でした。 しかし、アッパークラスの座席としてのウィークポイントが、高速運転時に座席の台座ごと軋む揺れ。 窓向き角度での座席固定に台座が無理を強いられているかのようで、ギシギシと軋む音がすごかったです。 現在、この特異なタイプの座席配置は、全て2+1に座席を配置したオーソドックスな客室に改装されて姿を消しています。 デビュー当時の2タイプのグリーン車のもうひとつが、1+1と2+1を変則的に配置したクロ253型100番台です。(画像右4枚) こんな摩訶不思議な座席配置の客室は、この車輌が「最初で最後」ではないでしょうか。 なぜこんな不規則な座席配置の客室が生まれたのか・・・・・ 1+1だけだとグループや夫婦での乗車時に不便だろうという判断の元だそうです。 2人掛けと1人掛けをランダムに配置すれば、向かい合わせにしたときに「3人グループ」「4人グループ」にも対応できますね。 ちなみにシートマップはこんな感じになっていました。 シートピッチは1,340mm。ハンパない広さです。あまりに広すぎて逆に落ち着かないのではないかと心配になります。 当時の登場チラシによれば「外国からのお客様にもゆったりサイズの・・・」だそうです。・・・納得? この不思議な空間のグリーン車は、その後の不景気や普通車利用の需要の高まりから普通車へと改造。 特異な座席配置の車内は消えていきました。(「クロ253-101」のみ、後述の2+1配置のグリーン車へと改造されました) 当時のグリーン車はサービスレディの乗務が花盛りの頃でしたが、 この成田エクスプレスは高頻度運行ダイヤのためかグリーン車の人的サービスは一切ありませんでした。 それを補うようにデッキ側にグリーン乗客専用の無料ドリンクサービス(ミニバー)が設置されました。 数種類の缶飲料が冷蔵庫にストックされ、車内誌「風(FUU)」がセットされていましたが、 普通車乗客がグリーン客室を通り抜けての持ち去りが後を絶たない為、1年ほどで全て撤去されてしました。 |
現存する「成田エクスプレス」のグリーン車は、全てこれら画像にあるような2+1の3アブレスト配置になっています。 このオーソドックスなスタイルのグリーン車は、2000年にサッカーワールドカップが日韓共同開催されるに伴って 輸送力増強で登場した久々の増備車、253系5次車(クロ253型200番台)から登場しました。 その後2002年から、1+1配置のサロン風な内装だったクロ253-0番台もこの5次車と同じ内装に次々と改装されました。 シートピッチは0番台・200番台とも1,090mm。グリーン席(しかもA特急料金!)にしては、あまりに貧相なピッチ数値です。 100番台で謳った「外国からのお客様にもゆったりサイズ」は何だったのでしょうか? 後から増備された200番台が、1+1配置だった0番台のピッチ1,090mmに合わせて登場したのは、 この時すでに0番台の改装を見据えてのことだったのかもしれません。 (座席定員を合わせておけば、後々に指定券販売や車輌遣り繰りの上で有利ですから) 座席はE3系「こまち」の座席をベースにしていますが、走行距離の短さを考慮してか、 リクライニング角度が浅くなって、インアームテーブルは無装備という「軽量化」を図っています。 (車椅子対応席の後ろの席のみ、インアームテーブルを装備しています) 天井周りは座席と同じく大きく手が加えられ、照明は「間接照明」から「半間接照明」へ、読書灯・スポット空調も撤去され、 荷物棚はハットラック式からオープンなものになって、以前の包み込まれるような雰囲気は無くなりました。 全体的に「グレードダウン全開」・・・・というより「開発当時のコンセプトの見事な崩壊」となっています。 こうして見ると、ほとんど見分けが付かない0番台と200番台ですが、密かに違いが分かる部分があります。 200番台車はデッキ仕切りドアが木目調で、床面が一面のじゅうたん張り。 一方の0番代車は、デッキ仕切りドアが従来からのグレーで、座席台座下にステンレス製の板が剥き出しになっています。 |
グリーン車デッキと運転席の間には、「VIP利用」を考慮して設定されたグリーン個室が1室あります。 普通車に改造された元クロ253-100番台にもグリーン個室だけはしっかりと残され、「クロハ」に名前を変えていますが、 この個室が使われているのをほとんど見たことがありません。ホントに需要があるのでしょうか? (ホントの「VIP」と呼ばれる人は、公共交通機関は使わないんじゃないかと思うが。) そんなわけで、個室前の通路にはしばしば車内販売のワゴンが押し込められて「車販準備スペース」になってます(^_^; テーブルを挟んで2人掛けソファーを対面に配置。ソファーが大きくそそり立っているので、空間内がより狭く見えます。 このソファーは電動リクライニング機構を備えていて、バックレストの傾斜と同時に座面がスライドするようになっています。 ドアは内側からのみロックすることができ、完全な密閉空間にすることができます。 ドアの両脇にあるガラスはマジックミラーで、スイッチ1つでオンとオフの状態の切り替えが可能に。 ソファーの頭上には荷物収納棚が設置されていて、1次車〜4次車まではオーバーヘッドストウェッジ式の収納タイプ。 5次車だけは収納扉のない、オープンな「棚」タイプとなっています。 |
「253系−成田エクスプレス」の公式パンフレットによると、インテリア開発についてこんな風に語られています。 ------------------------------------------------------------------------------------------------ 成田エクスプレスの最も大きな特徴は、その新しい車両設計の考え方にあります。 海外からのお客様への充分な配慮を車両設計にどう取り入れていくのか。 その結果、旅の快適さとインターナショナル性を兼ね備えた近未来感覚の全く新しい車両の開発にふみ切りました。 海外からのお客様にも充分満足していただける、世界に誇れる列車の誕生です。 ------------------------------------------------------------------------------------------------ で、「ボックスシート」!!? 「ヨーロッパの列車なんかでは、このスタイルはごく普通」だと言われ、またJR自身でもそう謳っているようですが、 N'EX程度のインテリアアコモのボックスシートは、「インターシティ」と呼ばれる「種別:急行」で見られるもので、 N'EXほどの高めの特別料金を取る「特急」でこの程度のアコモは、まず有り得ません。 「料金」と「国際感覚」から見ると、なんとも「・・・・?」な感じのN'EX普通車ではありますが、 ボックス間ピッチは1,020mm。座席自体に充分な傾斜があり、最大2時間弱の乗車時間なら、さほど疲れません。 座席の背面間は荷物置き場としても活用。大型のトランクも入るほどの余裕があります。 座席自体は壁側の支柱1本で支えられているので、座席下にもバッグが置けるスペースがあります。 日本の特急のなかでも、唯一のこの独特な雰囲気はある種「日本を離れた」という感覚と同時に、 「未知なる世界への一歩」という空港アクセスらしい雰囲気は十分に感じられましたが・・・・ やはり日本では前を向いて座る(特に特急列車では)というのが一般的で、 このようなボックス席は「近郊電車で乗るもの」という感覚が強すぎて、日本人にはウケが悪かったようです。 ちなみに、どうでもいいのですが1次車の普通車は、座面まで赤のアクセントが付けられていました。 |
で、2002年「ワールドカップ用増備車(この下の項を参照)」が出てきた直後あたりから、 普通車のボックス席は次々と工場へ送られ、リニューアル工事が行われました。 で、「集団見合い配置シート」!!? かつての背中部分が丸見えとなってしまった座席には、折り畳みテーブルが申し訳なさ程度についています。 なんか・・・このテーブルがまた悲壮感漂うもので、「A特急料金」って何なんだろうと思わずにいられない。 「でも、おフランス製の舶来物シートなのよ」と言いたいのか、「コンパン」社製を記すシールが貼られています。 当然ながら、以前のボックス席を“向き変え”しただけなのでリクライニング機構などあるわけがありません。 天井回りには「ズドン!」と空気清浄機が設置されました。そのため、ビミョーに空間の奥行き感が損なわれています。 開閉式のハットラックと読書灯などの設備は変わらずです。 ちなみに以前はシート番号の振り分けがボックス時代と同じになっていましたが、 現在は他の昼行特急と同じく横列でABCDと並ぶ座席番号振り分けとなっています。 |
普通車には、大所帯の253系から見て「ごく一部」に回転リクライニングシートを備えた普通車が存在します。 2002年の「日韓共催サッカーワールドカップ」の開催で乗客増加を見込んで増備した5次車の253系200番台と、 かつて2+1と1+1のシートを不規則配置していたグリーン車(クロ253-100番台)を普通車に改造した車両がそれです。 座席はE257系「あずさ・かいじ」の普通車座席をベースとしたものが搭載されていて、座面スライドも可能。 シートピッチは既存の普通車と同じ1,020mmで展開されており、JR東日本の特急普通車としては広めのピッチ数値です。 ただしグリーン車改造車は、窓幅がグリーン車時代のまま(1,340mmピッチ)なので、窓割りが全く合っていません。 また、この改造車は連結面側に荷物置き場が増設されています。(余剰空間の有効活用??) 前述の「リクライニングしない集団見合いシート」に比べれば、特急列車らしい設備で移動ができますが、 ワールドカップ増備車の6両編成:200番台車は、他の6両編成と共通運用なので当たるかどうかは運次第。 一方、元グリーン車の改造車は、3両で組成される編成の9号車(または12号車)がこの座席に当たるので、 3両編成が連結されている列車を選べば、号車指定買いでリクライニングシートに当たる確率は高くなります。 |
トイレは、基本的に2号車・5号車・8号車・11号車とグリーン車(とグリーン改造普通車)にあります。 6両編成と3両編成をフレキシブルに活用して、6+6・6+3+3・6+3で編成を組むので一部ではサニタリ位置が一致しません。 個室は男子用と洋式で、和式個室は設置されていません。 車椅子対応席が設置されている普通車には、もちろん車椅子対応個室があります。 洗面台は増備された時期で雰囲気を異としていて、1〜4次車はノーマルな雰囲気ですが、5次車ではストーン調に。 |
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各車輌とも客室とデッキの間に大型バゲージスペースを備えています。 棚部分には滑り止めを施してあるので多少軽いバッグでも落ちる心配はありません。 一番下のトランク置き場には支えのバーがあるので、カーブなどでトランクがはみ出す事はありません。 デッキは照明の照度が低く、昼間でもかなり暗めです。 各車デッキには電光行先表示板があります。 上り「成田エクスプレス」は横浜行と新宿/大宮行で、行き先の方向が大きく異なる列車の併結運転となるので、 誤乗防止を積極的にアピールする優れモノ。日本語と英語が交互に表示されます。 電話室の一部は外国人用の「JRインフォライン」が設置されていましたが、電話設備ごと撤去が進んでいます。 |