国鉄からJRという民営会社に変わって、各社とも地域に密着したサービスを展開。 JR東日本が「特急」でまず手始めに革新をもたらしたのが、新宿から信州へと向かうドル箱特急「あずさ」でした。 中央高速道の整備に伴って次々と登場・路線拡大した格安な高速バスが人気を呼び、「あずさ」は猛烈な追い上げを喰らっていました。 そこで、JR東日本は既存の183系をベースにして大幅なアコモデーションの底上げを図った「グレードアップ・あずさ」を計画。 1987年12月にその第一編成が登場し、これまでの「アコモ改善車」とは格段に違う高い居住性で高速バス人気を追い上げます。 さらに企画切符や格安回数券などとも絡めて「グレードアップあずさ」は指定券が確保しにくいまでの存在に。 グレードアップ編成は次々と増強され、甲斐路を抜け、安曇野「白馬」のリゾートへと駆け抜け続けた信州の183系。 E351系の登場後も看板特急と活躍しましたが、2002年11月をもってその全てをE257系へと引継ぎ、第一線を退きました。 現在では一部の車両が団体・臨時用として残るだけになり、かつての活躍を懐かしむ語り草ともなりつつあります。 |
グリーン席は、それまでの国鉄標準の2+2配列を捨て、大型ハイバックシートが並ぶ1+2配列へと改められました。 これが見た目・着座感にも大きなエポックで、「グレードアップあずさ = 3列グリーン席」と真っ先に思い浮かばれるほどです。 エビ茶色の大型シートは堂々たる存在感で、その後に登場するJR各社のアコモ改善車・新型特急車に大きな影響を与えました。 当時は「新幹線よりも豪華なグリーン席」とまで評されたという逸話まであるほどです。 シートピッチは1,160mm。この当時ではまだオーディオサービスまでは考慮されておらず、そのパネルも未装備です。 リクライニングは「昼行特急でここまで?」と思うほどの角度まで倒れます。 ただ、前の席の人にフルリクライニングされると、どうしても圧迫感を感じてしまうのは致し方ないところでしょうか。 私が初めてこのグリーン席に座ったのは、「スーパーひたち」のグリーン席にも慣れた頃でしたが、 「スーパーひたち」のそれとはまた違った張りの良さと柔らかめのクッション感に、ちょっと感動を覚えたものでした。 そして、なによりも天地方向に拡大された大きな窓と、セミハイデッキ構造の床面による視点の微妙な高さが「!!」 このグレードアップ編成は数年に渡る改造期間があり、またその後も若干のリフレッシュの手が入ったこともあって、 全編成で同一と思われている座席は、テーブルやフットレストなどに細かいバリエーションが多い座席となっています。 (画像の座席は最後期に登場したタイプの座席です。) |
普通車車輌は、指定席となる車輌のみ座席が交換され、フリーストップリクライニングシートへと換装されました。 座席周りではシートピッチの拡大・床面のセミハイデッキ化・窓の大型化・荷棚交換などの改造の手も加えられています。 さらに読書灯が全席に付けられ、デッキ仕切りドアの上部には電光情報表示装置まで設置されました。 天井には格子状の飾り天井がつき、客室の雰囲気はそれまでの国鉄型特急電車とは一線を画すほどに変貌を遂げています。 シートピッチは960mm(先頭車は970mm)となり、それまでの910mmから拡大。 窓割りの合わない席が出てきてしまいましたが、足元の広がりには、当時はなんともいえない「ゆとり」を感じたものです。 モケットは初期は灰色と青の2色でしたが、その後に「安曇野の自然」をモチーフにした織り込み柄に変わりました。 自由席となる座席は、それまでの簡易リクライニングシートのモケット張替えただけの改装に留めています。 シートピッチもこれまでの910mmと変わらずで、指定席車との居住性の格差は「500円差」以上のものとなってしまいました。 |
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トイレやデッキは基本的にそのままの姿で、客室の変貌とのギャップが大きく感じられました。 グリーン車のトイレは洋式個室に改造され、洗面台は3面鏡と湯温調節機能つきのものに交換されました。 さらに一部の洗面台では冷水サーバーも稼動し続けて、後年も比較的キレイな姿を保っていたのが印象的でした。 グリーン車のデッキには電話コーナー。山岳地域を走る「あずさ」では通話の制限区間がかなりありました。 デッキの「くずもの入れ」の佇まいが、いかもに「国鉄型特急」という感じでしたね。 |