正直「死ぬまでにこの座席の実物を見られることはないだろう」と思ってました。 それが、それがですよ、こんなに目の前に!こんなに眩しく! 「ああ、今日まで頑張って生きてきてよかった」 座席はアクリル板に囲まれていて、手に触ったり実際に座ったりすることは出来ませんが、 パッと見ただけでクッション材の硬化が分かります。なんせもう35年近く前の座席ですから。 この展示されている座席は、実は「完全品」ではありません。 ヘッドレスト部の「マクラ」がなく、掛けられているレースも現役時代のものとは全く異なります。 また、固定式のフットレストも保存用として残されたものは無く、座席単体での公開となっています。 「パーラーカー」の印象をより深いものにしているのが、モケットに採用された「エジプト柄」。 モケット織り込みのほつれなどもなく、また色褪せなどもほとんど見られず、かなり美しい状態です。 リクライニングと座席回転は、左右のそれぞれのレバーにて展開させていたようで、 特に「回転」レバーがこの位置に設定されているというのは、今でも大変珍しいです。 この「パーラーカー」、伝説の最強シートとして語られるだけあって、今なお様々な例として取り上げられます。 <その1:成田エクスプレス> 「クロ253」型の、運転席-個室-デッキ-開放室という車両構成は、まさに「クロ151」型のそれと同じ。 開放室の1+1シート配列も、このパーラーカーをお手本にしたというウワサです。 <その2:ソニック883> 「クロハ882」型は、グリーン車と普通車の合造車。特に普通車側に車椅子席を設けることになっていたので、 デザイナーは車椅子用の大型トイレの配置場所に迷っていました。 結局、車両の中心にデッキを設け、そこに大型トイレを設けるプランを提出したのですが、JR九州の社長は 「一番乗り心地の良い車両中心にトイレをもってくるとは何事か!」と怒ったとか。 最終的にはこのプランどおりに「クロハ882」型はロールアウトしたのですが、「車両の真ん中にトイレ」というのは このパーラーカーでも採用されていた車内レイアウトであったのでした。 |